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マリインスキー・オペラ 『イーゴリ公』 [クラシック]


2008年2月2日(土) NHKホール 18:00開演

突然ですが、オペラを初体験してきました。とろりんさんウハウハ。(笑)

サンクトペテルブルグに本拠を構えるマリインスキー・オペラの日本公演で、この1週間に4演目を上演。しかも日によってはダブルヘッダーをこなすなど(午後東京文化会館→夜NHKホール)、マリインスキー・オペラの規模の大きさとゲルギエフのパワフルさを実感させる来日スケジュールです。(各劇場で出演者は異なるものの、指揮者はゲルギエフ1人でこなしているようです。)

本日鑑賞したのは、ボロディンによる「イーゴリ公」。この作品はボロディンの絶筆となり、現在でも「イーゴリ公」は未完のまま、演出を変更したりして上演され続けているのだそうです。今回も、ゲルギエフによって構成が一部改定されての上演。2部構成、上演時間3時間20分におさめるには、必要な選択だったかな、と。

本日、なんとも幸運なことに、前から2列目というものすごい場所から観劇することができました。あんまり前過ぎると首が痛くなるんじゃないかと心配しましたが、客席と舞台の間にオーケストラピット(トップ画像)があったので、適度に距離があって見やすかったです。


指揮/ワレリー・ゲルギエフ
演出/エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出/イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年)/ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェツ人の踊り」 振付/ミハイル・フォーキン
装置・衣裳/ニーナ・ティホーノワ、ニコライ・メルニコフ
装置復元/ヴャチェスラフ・オクネフ
照明/ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮/アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導/イリーナ・ソボレワ

【配 役】
イーゴリ公 (プチーヴリの公)/セルゲイ・ムルザーエフ
ヤロスラーヴナ (その妻)/ラリーサ・ゴゴレフスカヤ
ウラジーミル (その息子)/エフゲニー・アキーモフ
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄)/アレクセイ・タノヴィツキー
ヤロスラーヴナの乳母/エレーナ・ソンメル

コンチャーク汗 (ポロヴェツ人の長)/セルゲイ・アレクサーシキン
コンチャコーヴナ (その娘)/ナターリア・エフスタフィーエワ

ポロヴェツ人の娘/タチアーナ・パヴロフスカヤ

ポロヴェツ人の踊り/ポリーナ・ラッサーディナ、イスロム・バイムラードフ、アンナ・シソエワ、ゲンナジー・ニコラーエフ


【物 語】
12世紀、帝政以前のロシアは「諸侯」と呼ばれる有力者によって統治される公国と、「汗(カン)」と呼ばれる中央アジアの遊牧民の有力者による領土争いと権力闘争がせめぎ合い、まさに群雄割拠の時代でした。

プチーヴリの領主、イーゴリ公は、息子のウラディーミルとともに、遊牧民族ポロヴェツ人の汗、コンチャーク汗との戦いに出陣します。しかし奮戦むなしく軍隊は壊滅、イーゴリ公はウラディーミルとともにコンチャーク汗の捕虜となります。

イーゴリ公に敬意を抱いているコンチャーク汗は彼を客人としてもてなしますが、イーゴリ公は「もし自分が解放されたなら、再び軍隊を率いてお前を倒す」と宣言。その男気に、コンチャーク汗はますます尊敬の念を強くします。

ウラディーミルはコンチャーク汗の娘、コンチャコーヴナと恋に落ちてしまい、深く悩んでいました。ある夜、意を決してイーゴリ公は脱出し、プチーヴリへ逃亡しますが、ウラディーミルはコンチャコーヴナに強く引き留められ、彼女と人生を共にすることを決意します。

イーゴリ公が出陣した後のプチーヴリは、公妃であるヤロスラーヴナの兄による悪行に、民衆が苦しい日々を送っていました。帰らぬ夫の行方を思い、兄の乱行に憤慨して、苦悩の日々を送るヤロスラーヴナのもとに、コンチャーク汗が攻めてきたという報が舞い込みます。自分一人で闘わねばならぬ、と覚悟を決めたヤロスラーヴナでしたが、ついにその時、イーゴリ公が城に帰還。一同は力を合わせて敵に立ち向かうことを誓うのでした。

より詳しいあらすじと人物相関図は、コチラにてご確認いただけます。


【カンゲキレポ】
いやはや、なんとも豪華絢爛な歴史絵巻でした。オーケストラ演奏の素晴らしさ、歌唱の素晴らしさは言うまでもなく、音楽とバレエという人間が創り出した舞台芸術の全てを結集させた壮大な仕掛けに、ひたすら釘付けになった3時間半でした。

帝政(ロマノフ家によるロシア統一)確立以前の12世紀のロシアが舞台の物語。ロシアの民俗史としてはいちばん面白い時代を舞台設定にしてあります。やはり本家である強みとでも言いましょうか、衣裳や装置などに当時の風俗や風習などが細部にあわたって再現されてあり、よく時代考証がなされているなと感心しました。(もちろん、舞台映えがするようにアレンジされてはいるでしょうが)まさに、「ライブ大河」(?)を見ているような感覚。

中でも衝撃を受けたのは、プロローグ(イーゴリ公の出陣)で、舞台上に本物の馬が登場したこと。(←時代考証とはまったく関係ありませんが>苦笑)軍を指揮するイーゴリ公とウラディーミルの2人が馬に乗って、上手から下手へ横切ります。

本物の動物が舞台に登場するのは宝塚でもありましたし、そういうこともあるらしい、と知識の上では理解していたつもりでしたが、実際にその場に居合わせますと、やっぱり驚きですねー。「おおお!!馬や!本物の馬や!!」と、一気にテンションが上がりました(笑)。イーゴリ公が乗っていたのは白馬さんで、ラブリーでした。

圧倒的だったのは、第1部ラスト「ポロヴェツ人の踊り」。日本では「だったん人の踊り」という名称の方がよく知られているかもしれませんね。

非常に細やかなステップと特徴的な腕の動きが印象的な女性パート、抜群の脚力を存分に発揮してダイナミックな技を連発する男性パート、男女入り乱れての激しく華麗に展開する大群舞…。とても、100年前の振付とは思えないほど、ワイルドでセクシー。めまぐるしく転換していく圧巻の民族舞踊に目も心も奪われました。この曲が、こんなに激しく狂おしいメロディーだったとは知りませんでした。

この曲で第1部が終わった時には、大興奮の渦に客席が巻き込まれたという感じで、尋常ではない高揚感でした。

演奏は、第1部冒頭はややインパクトに欠けるかな…?という印象。第2幕はまるで見違えるかのようなメリハリのある演奏。

「ポロヴェツ人の踊り」でもこれくらいの演奏があれば、もっと感動したかも…というのは観客のわがままな感想ですね。あれだけ素晴らしいものを見せられても、もっと、もっとと高いレベルのものを要求してしまう…。欲張りです。

歌唱では、イーゴリ公一家(公、ヤロスラーヴナ、ウラディーミル)がやはり圧倒的でした。

イーゴリ公のムルザーエフは心地よく響くバリトンはもちろんの事、どんな状況にあっても自らの立場を見失わない強さや品格が自然に立ち居振る舞いからにじみ出てくるようで、立派でした~。こんな公なら、ついていきたい…(おっさん好き炸裂)。

それだけに、終幕の帰還の場面はもうちょっとカッコいい演出だったら良かったなぁ…(最後の最後に、緊迫感ギリギリの城内にいきなり滑り込んできて、「えっ、なになに?あっ、えい、えい、おーっ!」みたいな感じだったので…^^;プロローグで登場した白馬さんを再登場させるとか←勝手な妄想)

ヤロスラーヴナを演じたゴゴレフスカヤは、第2部で歌われたアリア「ああ、私は泣いている」(~「農民たちの合唱」へ続く)、「長い月日が過ぎ去った」が圧巻。重厚感のあるソプラノが時として公妃としての威厳、時として妻の哀しみを表現していて、感動的でした。兄のガリツキー公(タノヴィツキー)と対立する場面も、迫力で迫るタノヴィツキーに対して一歩もひけをとらず、立派でした。

後半、彼女の存在感が光るからこそ、前半の男同士(イーゴリ公とコンチャーク汗)の友情や若者の恋も際立つわけですね。ロシアの大地のような、温かな母性と凛とした強さがにじみ出る、素敵な方でした。

息子ウラディーミルを演じたアキーモフは、力強いテノールが素敵でした。恋ゆえとは言え、結果的に両親と敵対する立場に変わり、それで良いのか?と突っ込みたくなりましたが。イーゴリ公がロシアの歴史や男同士の友情の世界を体現しているとすれば、ウラディーミルはコンチャーヴナとともに作品のロマンチックな部分を担当しているのだろうなー、ということで納得。(歌舞伎でもよくあることだし…?)

イーゴリ公にとって永遠のライバルとなることを予感させるコンチャーク汗を演じたアレクサーシキン(バス)、その娘コンチャコーヴナ役のエフスタフィーエワ(アルト)もそれぞれの場面でしっかり印象を残して好演。



と、いうわけで、3時間半、思いっきりオペラの世界を楽しみました。最近、オペラ界でも名作に現代的な演出を加えて上演する形が増えているようですが、初めて観たオペラが思いっきり時代物だったのは、とても良かったと思います。その作品ができた背景や歴史に思いを馳せるにはやっぱり最適かな、と。

オペラ、また機会があれば観に行きたいですね~。…ハマるのは危険すぎるので、止めておきますが(苦笑)。


NHKホール

☆ おまけ ☆
久々の著者近影、客席にて。ちなみにNHKホールと言えば、大晦日の「紅白歌合戦」の会場でもありますね。


さて、どれが私でしょうか(笑)。(撮影してくださったFさん、ありがとう☆)


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ラブ

うわぁ〜、オペラですか? こりゃまたセレブですね。
歌舞伎は試しに行ったことがありますが、さすがに
オペラはありません。生は、迫力でしょうね。
by ラブ (2008-02-09 16:53) 

★とろりん★

ラブさま、
いやー、初めての経験でしたので、前日から何を着て行けば良いのか迷いました(^-^;当日はかなり挙動不審だったと思います(笑)なにもかもかすごい迫力で、貴重な体験をさせてもらいました。
by ★とろりん★ (2008-02-10 14:01) 

星々の音楽隊

管理人様

突然の書き込み失礼します。
「星々の音楽隊」と申します。

私たちはクラシックのプロアーティストが中心になり
「"Keep our Hope Alive!!" by 星々の音楽隊」として
東日本大震災で被災された方々の為の
第二回チャリティーコンサートを新宿で開催します。
管理人様もよろしかったら、ぜひお越しください。

ロシア国立マリインスキー劇場の専属研修生だった
ソプラノ歌手中村初惠も出演いたします。

日時:  2011年5月3日(火,祝) PM14:00~16:15
場所:  新宿文化センター小ホール
入場料: 無料(事前予約不要,お子様も歓迎)
プログラム: (司会:落語家 桂扇生)、日本の歌
       オペラ、ミュージカルより
       ケーナ&アルパなどの民族楽器の演奏 ほか

詳しくは、
主宰者:Soprano♪中村初惠のHP
http://www.hatsue-music.jp/

(有)プラネット・ワイ
TEL 03-5988-9316(平日11~18 時
FAX 03-5988-9319(24 時間受付)
までお問い合わせください。

**** 募金がチャリティーとなります。会場費を除き、全額を寄附いたします。
**** 賛同者の皆さまは出演者・協力者ともに全員がボランティアです。
**** 2011年6月12日(日) PM15:00~に The Artcomplex Center of Tokyo にて第三回チャリティーコンサートを開催します。
by 星々の音楽隊 (2011-05-01 16:43) 

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