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有川浩 『空の中』 [Books]

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/06/25
  • メディア: 文庫
『阪急電車』を読んで、俄然興味がわいた作家・有川浩さん。(『阪急電車』の感想はコチラ☆

次に読んだのが、『阪急-』のほのぼのした世界観とは正反対でありながら、どこか同じような空気も随所に感じさせる、一級のSF小説です。



200X年、四国上空。高度2万メートルの空域で、謎の航空機爆発炎上事故が連続して発生します。事故調査委員会から派遣された春名高巳(はるなたかみ)は、事故の唯一の生存者である航空自衛隊所属の女性パイロット、武田光稀(たけだみき)に接触します。

生存者として必要以上に執拗かつ厳しい調査を受けた光稀は最初、「あの事故についてはもう話したくない」と頑なに高巳を拒絶します。しかし、軽いように見えながら誠実で真摯な高巳の姿勢に、光稀は次第に心を開き、事故現場-高度2万メートル空域-へ彼を連れて行くことを決意します。「ただ-信じろ。」と高巳に約束をさせて。

そして、まさに事故の起きた現場で、光稀と高巳が発見した「秘密」とは・・・?

一方、高知に住む少年、斉木瞬は父親の死を知らされていました。高度2万メートルの空の中で絶命した父親。そんな瞬は、海岸で不思議なものを発見し、幼馴染の佳江とともに自宅へ持ち帰ります。少年と少女が拾った「秘密」とは-?

大人たちが発見した「秘密」と、少年たちが拾った「秘密」。ふたつの「秘密」が明らかになった時、日本は未曾有の大混乱に陥ります・・・。



いやあぁぁぁ。超おもしろかった!!

この小説は熊本空港の本屋さんで購入し、羽田へ戻る飛行機の中で読み始めました。

「航空機の中で、航空機事故から始まる小説を読むなんて、若干ブラックですなぁ(微笑)」と自嘲するのもつかの間、あまりの面白さに夢中になってしまい、羽田空港から自宅へ帰る道中も、帰宅後も一心不乱に読み続けて、結局、ひと晩で読み切ってしまいました。

まず、発想がユニークで、描写が綿密かつリアル。そしてテンポ良く進む有川節全開の文章。まるで、目の前で事件が起きて、それが進行しているような錯覚を受けます。明日、本当にこうなったらどうしよう・・・らんとむコン千秋楽なのに・・・とか、真剣に考えちゃいました(←感受性豊かなうお座)。

本書を構成する縦軸がSF小説としての緻密さであるとすれば、横軸はヒューマン小説としての温かい視点、でしょうか。、メインはもちろん、脇役にいたるまで全ての登場人物に人間性があり、個性があって、ひとクセありつつも愛すべき人物として描かれています。

読み進めていくと、それぞれの登場人物の持つ「心の痛み」がまるで自分の痛みであるかのように迫ってきます。

「残された者」として、彼等・彼女たちがとる行動は本当にそれぞれなのですが、心に楔を打ち込まれたような痛みと重さを抱えるのは誰も同じ。それでも必死で進もうとする姿は痛々しくて、読むのが辛くなるほどです。

そして、彼等・彼女たちの抱える辛さ、苦しみが少しでも和らぎ、開放されることを期待して、ページをめくる手は止められないのです。


大人がきちんと大人であり、子どもと正面から向き合い、諭し、導いていくさまを通じて、「人間が人間として生きることの意味」を、作者は見事に示唆しています。

特に、いつもは飄々としている風にしか見えない高巳の「大人ぶり」にはシビレますし、瞬の育て親代わりでもあった「宮じい」の言葉には人生と経験を積み重ねてきた者でしか得られない深みがあります。

物語のクライマックス、呼吸するのも忘れてしまいそうなギリギリの緊迫感の中で、宮じいが静かに語り出すあの言葉の数々は、瞬でなくとも、思わずうなだれてしまうくらいの説得力です(あ、ちょっとネタばれ[あせあせ(飛び散る汗)])。

この言葉の数々は、子どもだけではなく、むしろ大人たちにかみ締めてもらいたいですね。

***

高巳と光稀の「その後」については、コチラでお楽しみください♪さらに磨きがかかった高巳の大人ぶりはもちろん、超カッコかわいい光稀さんにメロメロです☆

クジラの彼 (角川文庫)

クジラの彼 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/23
  • メディア: 文庫

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