SSブログ

奈良美智スペシャルインタビュー@「ビッグイシュー日本版」 205号 [展覧会]

SH3K0219.jpg

「ビッグイシュー日本版」205号(12月15日発売)に、奈良美智さんのスペシャルインタビューが掲載されています。

通勤途中の道すがら、「夜まで待てない」のちょっと挑発的な少女の微笑みがパッと視野に入ってきて、さっそく購入しました。奈良さんの作品って、東京のような雑多な街の中でも全く埋もれない、すごく目を惹く引力があります。

現在、青森県立美術館にて「君や 僕に ちょっと似ている」、十和田市現代美術館にて「青い森の ちいさな ちいさな おうち」と、故郷である青森県内の2箇所で特別展を開催中の奈良さん。3ページにわたる誌面には、青森県美の展示室の様子と、十和田市現代美術館の展示の中でポーズをとる奈良さんの写真が掲載されています。

見開き2ページにわたって載っている青森県美の展示室は、本展の象徴とも言えるブロンズ作品が陳列されているお部屋。真っ白な壁と限りなく白に作られた照明、その光に浮かび上がる作品と部屋の陰影。白と黒、完全なるモノクロームの世界にふわっと浮かぶオアシスのように展示されているのは、「in the Milky Lake / Thinking One」(2011年)。

横浜美術館での展示では、ブロンズ作品と絵画作品は全く別の部屋に分けて展示されていたので、ちょっと新鮮な印象でした。

インタビューは、2006年に同じく青森県内で開催された「A to Z」展前後から2011年の東日本大震災を経て奈良さんご自身が経験した心象の変化について語られています。

爆発的な人気が出るきっかけとなった「A to Z」展の後、「一番のオーディエンス」でもある自分自身との対話が出来なくなった奈良さんは、その感覚を取り戻すためにセラミックアートに没頭します。そして、ようやくセラミックから絵を描く行為へ移行しようとした矢先に起きたのが、大震災でした。

震災後、好きな事をして、心を赴くままに生きてきた事への罪悪感から「おもしろいぐらいに絵が描けなくなった」(本文そのまま)と言う奈良さん。その奈良さんの苦悩を救ったのが、ブロンズ彫刻の制作だったそうです。

「(前略)被災地の人たちが泥かきから再生の一歩を踏み出したように、土は自分にとって震災を象徴する物質で、体当たりで向かっていきたかった。そのうち、だんだんとねじ伏せてやろうという強い気持ちも湧いてきて、いつもなら疲れて終わりにしようかという時でも、もう少しだよな、よしやるか!と取り組めた」

土との、そして自分の内面との格闘を経て、奈良さんは描けなかったなかった絵に再び取り組めるようになっただけでなく、新たな表現も生まれてきた、と。

「今までは描いているものの表層だけ見せていて、そこに至るプロセスは見える人にだけ見えればいいと思っていたんです。(中略)ブロンズ彫刻という立体を手がけることで、少女の後頭部だとか"後ろ"というのがすごく大事に思えてきて、絵のキャンバスでも見えていない部分が描けるのではないかと思えたことが大きかった。それと、今までは画面のいろんなものをそぎ落とす引き算で絵を描いていたけど、震災以降のさまざまな出来事を通じて、もっと世界は複雑だろう、絵は複雑だろうと思えたことも反映しているんです」

シンプルさの中に潜む複雑さ。それは確かに、夏に横浜美術館で特別展を鑑賞した時に感じた事です。少女の肌を透かして見える通う血の温かさ、せいいっぱいに目を張って何かを凝視する少女の瞳の奥・・・。今でも鮮やかに脳裏に浮かびます。

「(前略)人間は思っているほど弱くないから、いつか必ず復興する。その10年後、20年後に美術館に求められる絵がなかったら困るから、自分はその時のためにも、しっかりと絵と向き合っていきたいと思います」という言葉で締めくくられるインタビュー。そうですね、「今、できること」を積み上げていくことが、「未来」になるんですよね。

あらためて、アートが未来に向けて抱く可能性について考えさせられたインタビューでした。

「ビッグイシュー(THE BIG ISSUE)」は、ホームレスの自立を支援するために1991年に英国で始まった活動で、売上金額の一部が販売者であるホームレスの収入になるのだそうです。

今回は奈良さんの絵に惹かれて購入しましたが、彼のインタビューの他にも、スコットランドの刑務所を題材にしたメンタルヘルス改善についての記事やエルサルバドルのウミガメの問題、興味深い特集(今号は「先住民の生き方」)など、取り上げているテーマはグローバルで多彩。へぇ、こんな話題があるんだぁ、こんな問題があるのかと興味深く読みました。

最新号は基本的に街頭販売のみですが、バックナンバーの購入はコチラから出来るそうです。興味のある方はのぞいてみてくださいね。


う~ん、このインタビューのおかげで、来月予定している青森旅行がますます楽しみになってきました!


・・・と、さらっと言ってみるテスト(笑)。


nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 5

コメント 2

カオリ

あのブロンズ像制作の裏にはそんな経緯があったんですね。
「ビッグイシュー」は読みごたえがある雑誌だと言う話は聞いてますが、なにしろ中身をパラパラめくって確認してから買う、ということがなかなかしずらい販売形態なのでいまだ読んだことありません・・・。

青森に行かれるんですね。一面の雪景色、ですよねきっと。青森犬も雪の中?なんでしょうか・・・。わたしも行ってみたいな、青森。レポ、楽しみにしてます。
by カオリ (2012-12-27 01:23) 

★とろりん★

カオリさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

奈良さんのインタビューは今までに聞いたことのない話もあって、
興味深く読みました。私もビッグイシューは初めて購入しました。
表紙の奈良さんの作品が目に飛び込んできたから思い切って
買えたような感じですね。

年明けに青森を旅する計画を立てています。
真冬の雪国を旅するのは生まれて初めてなので(スキーはあるけど)
どれくらい寒いのかドキドキしています(笑)。
by ★とろりん★ (2012-12-27 13:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

「ARASHI LIVE TOUR Po..カンゲキ記録☆2012 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。