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OSK日本歌劇団 『レビュー 春のおどり ~桜咲く国』@日生劇場 感想(1) [講座・現代演劇]

2013年4月5日(金) 日生劇場 18:00開演

OSK日本歌劇団創立90周年記念公演
『レビュー 春のおどり ~桜咲く国』


第一部 『桜絵草紙(さくらえぞうし)
第二部 『Catch a Chance Catch a Dream』



【出演】


桜花昇ぼる、高世麻央、朝香櫻子、桐生麻耶、緋波亜紀、牧名ことり、折原有佐、平松沙理、真麻里都、恋羽みう

ほか OSK日本歌劇団


【スタッフ】

第一部構成・振付/山村若
第一部演出/吉峯暁子
第二部作・演出・振付/名倉加代子
音楽/中川昌、鞍富眞一、麻 吉文◇長谷川雅大
振付/西川箕乃助、花柳基、花柳寛十郎、山村若有子◇麻咲梨乃、KAZUMI-BOY、佐藤洋介
美術/倉田克己
装置/立田豊
照明/平木信二
音響/畑中富雄
衣装/宮川正明◇森津妙子


* * * * *


かつて「歌の宝塚、ダンスのOSK」と称され、宝塚と並んで西日本を代表する歌劇団のひとつでありながら、2003年に解散に追い込まれたOSK日本歌劇団。

その後、多くの人々の熱意によってその志は受け継がれ、試行錯誤を繰り返しながら、2009年から株式会社OSK日本歌劇団として運営開始。現在は大阪市内を本拠地にして、近畿圏を中心とした舞台活動を続けています。

OSKの存在を知ったのは、本格的に宝塚ファンになるちょっと前のこと。実は、光GENJIファンだった頃に買った、(「じゃがいも」という名の)某アイドル雑誌でOSKについて取り上げられていたページを読んだのが最初のきっかけです。けれどもその時は、「へぇ、宝塚のほかにも女性だけの劇団ってあるんやなぁ」という程度の印象でした。

その後、宝塚ファンになったわけですが、宝塚の本拠地が実家から行きやすい場所にあったのに対し、OSKは当時、奈良県にあった近鉄あやめ池公演内にある円形大劇場が本拠地でした。交通事情からして、興味はあっても気軽に「行こう」と思える距離ではありませんでしたので、たま~にテレビで放映される舞台中継を見るくらいでした。

ということで、初めてOSKの舞台を観ることが出来たのは、2011年9月の三越劇場公演『桜NIPPON・踊るOSK!』。この時に、個々のパフォーマンスの完成度に目を奪われ、牧名ことりちゃんの可憐な娘役芸に心を撃ち抜かれたのでした(笑)。

90周年記念の区切りとしてOSKが挑んだ、東京・日生劇場公演。劇団員フルメンバーで東京公演を行うのは再スタート後初めて、「春のおどり」を東京で上演するのは、実に73年ぶりとなるそうです。


* * * * *


「春のおどり」は、和物ショーと洋物レビューの2本立て。

OSKは組がなく、トップスターとして桜花昇ぼるが君臨しますが、他にも数名、スタークラスの男役・娘役が在籍しています。公演ごとにカンパニーが組まれ、その都度、主演を務める生徒も変動します。

今回の公演はスターも総動員ですので、桜花を中心に、いくつかの場面で男役スターの高世麻央や桐生麻耶がシンを張ります。また娘役も、朝香櫻子と牧名ことりが場面ごとに交互にヒロインを務めると言う豪華ぶり。朝香は主に和物ショーで、牧名は洋物レビューでの活躍が目立ちました。

どちらのショーでも言えることですが、とにかくテンポとリズム感がめちゃくちゃスピーディー!

特に和物ショーでもそのテンポとリズム感にメリハリがあり、非常に楽しく観劇しました。

まずは、第一部『桜絵草紙』について、特に印象に残った場面を書き留めておきます。


* * *


今回の舞台で最も度肝を抜かれ、感動したのは、「鏡の夢」(振付/山村若)。

舞台中央に設置された、三面鏡のセット。その鏡の前に、深紅の着物に銀色の帯を締め、銀色の扇を手にした娘(朝香)が立っています。三面の鏡それぞれにも、娘の姿が映っています。

やがて、「ビギン・ザ・ビギン」のメロディーに乗って、軽やかに小気味よく娘が舞い始めます。鏡に映る娘の姿も、もちろん娘の動きに合わせて、キビキビと動きます。

ところが、実はこれ・・・

鏡に映っていると思われた娘の姿は朝香ではなく、折原有佐・恋羽みう・白藤麗華。そう、この3名の娘役が、朝香の動きと寸分たがわぬ正確さで、まるで合わせ鏡のように舞っているのです。

ただ鏡合わせに舞うだけでなく、朝香が左側の鏡の前へ近づくと、右側の鏡に映っている娘役は朝香の動きと同じ速度で動いて姿を消します。そうした「合わせ鏡の習性」までも取り入れながら、朝香の舞を狂いなく再現する、鏡の向こうの娘役たち。

全体的な振りは勿論、扇をかざす角度、扇を捧げ持つ高さ、くるりと一回転する時の足のバネのタイミングも、回転する速度も、全て朝香の動きにぴったり!!「一糸乱れぬ」とは文字通りこの事か、と舌を巻きました。

連れ舞だけでも合わせるのに苦労するのに、その場面のシンを張る人とまったく同じタイミングで、まったく正反対の動きをしていく、しかも3名同時に、というのは、技量のみならず、並はずれた努力と集中力が必要です。

この場面は、本当に本当に素晴らしかったです!!これからも、1人でも多くの方に観ていただきたい!OSKの財産として、いつまでも受け継がれていって欲しいと思います。

ちなみにこちらの「鏡の夢」、4月19日~29日まで大阪・松竹座にて上演されていた「桜絵草紙 浪花バージョン」では、男役による三番叟バージョンにて披露されたのだとか。

詳しくはコチラへ→えりあさまのブログ「徒然なる戯言~観劇の記録~」

男役バージョンも、観てみたかったな~。というか、男役・娘役でバリエーションがちゃんと存在する「鏡の夢」って…す、凄すぎる…!!


「鶴」(振付/花柳芳十郎、指導/花柳寛十郎)は、1963年に創作された場面。

桜花が親鶴となって、若い鶴たちを導くように、励ますように舞います。幽玄の中にも桜花のトップスターとしての気高さがひときわ際立つ場面でした。


「民謡メドレー」(振付/西川箕乃助)は、浪花小唄~金毘羅船ふね~ひえつき節~ちゃっきり節~佐渡おけさ~木曽節~会津磐梯山~お江戸日本橋~東京ブギウギを、息つく間もなくリズミカルに展開。

ちゃ~んと大坂(浪花)から出発して、お江戸(しかも、東京公演のホームとなりつつある三越劇場がある日本橋)がゴール地点なのがウマい!!「東京ブギウギ」は、OSKのOGでもある笠置シヅ子さんの代表曲ですしね~☆

男役は着流し、女役は浴衣。全員、手には団扇で素髪というシンプルな扮装なのですが、これがまたスピード感あふれる舞踊の連続で、くるくるとフォーメーションも変わっていって、すごく楽しかったです!!なのに出演者は歌も踊りも全くブレないし、息切れもしていないし、凄い!!


一転して「春の憂い」(振付/花柳基)は、「宵待草」のメロディーとともに、大正浪漫の香りあふれる、しっとりとした場面。

ひとりの女(牧名)と、彼女を慕う書生(高世)の、別離の前のひとときの逢瀬。切なくも美しい連れ舞に心奪われました。ストールを使う牧名の指先の動きが、相変わらず繊細で惚れ惚れしました。


最後の最後に身も心も震えたのは、桜花・高世・桐生による「三人連獅子」!!(振付/山村若有子)

親獅子の桜花に、子獅子の高世と桐生が控え、舞踊「連獅子」の、あの毛振りを見せてくれるのです!女性によるあそこまで本格的な毛振りを観たのは初めてだったので、その完成度と大迫力たるや、感動を通り越して愕然・・・!

あの時の劇場の興奮と高揚感はなんと表現したら良いのか、ちょっと言葉を思いつきません。

第一部はこの獅子の場面で幕が下りたのですが(演者の体力的な負担を考慮して、最後に持ってきたのでしょう)、休憩に入った後もしばらくの間、ものすごいどよめきと拍手が劇場内を揺るがしていました。


* * * * *


最近、宝塚歌劇では和物ショーが数年に一度の割合での上演になっていますが、OSKでは必ず1年に1度は和物ショーが開催されるのですよね。そのため、トップを筆頭に下級生にいたるまで、日本舞踊の基礎がしっかりと鍛錬されているように感じます。こういうところは、ぜひ宝塚も見習って欲しいなぁと思います。

日本舞踊をベースにしながら、これだけ疾走感あふれる和物ショーを創り上げられるなんて、本当に凄いことです!最後の最後まで、楽しんだり驚いたり、まるでおもちゃ箱のようにワクワクするショーでした。


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えりあ

とろりん様

こんにちは!読ませていただきました。
同感、同じおなじ、そうそう!!と、頷きながら読みました。

「鏡の夢」、東京では女舞だったのですね。驚きました。あの完璧さは東京でこなれた後かと思っていたので。凄いですね。改めて感動です。

「連獅子」は、宝塚では雪組DC「SAMOURAI」(音月・早霧・緒月)で見て驚いたことがありますが、今回はあまりの本格的な踊りと振りに、客席驚きのまま幕で、松竹座でも劇場中凄い拍手でした。

最後になりましたが、TBありがとうございます。
なんと本文中に入れていただき、恐縮です。
いや私の思いつくままな文章が・・大阪版ということで・・ありがとうございます(礼)

以前からちらちらと読ませていただいてましたが、またお邪魔します。

by えりあ (2013-04-30 00:47) 

★とろりん★

えりあさま、

こんにちは!コメントありがとうございます。
また、別記事ではnice!をいただき、ありがとうございました。

「鏡の夢」も「連獅子」も、そして「ピエロの夢」も凄かったですね。
OSKの舞台を観劇するのはまだ3回目ですが、そのたびに驚かされてばかりです。「うおおお!すごい!」と興奮急上昇で驚嘆するのもあれば(今回で言えば「連獅子」)、「あれって…もしかして…そういうこと!?ええー!!」と、じわじわと感嘆が身体中に広がって弾けるもの(「鏡の夢」と「ピエロの恋」)もあって、毎回大忙しです(笑)。本当に、計り知れない底力と技を持っている劇団です。

OSKの東京公演は、三越劇場にて年に2回が定着しつつありましたが、この『春のおどり』をきっかけに、来年からは年3回来て欲しいな~と思います。あのワクワクする驚き、また味わいたいです!
by ★とろりん★ (2013-04-30 20:49) 

t-k

OSKレビューが好きで春•京都•武生と必ず観劇しています。本格東京東上は東京在住の者には嬉しい限りです。桜絵草紙の素晴らしさは語るまでもありませんが、日生劇場公演を観た同伴した友人が、東京でこれだけの完成度になっていると云う事は、松竹座91周年公演にはどのようになるのかと感嘆していました。 松竹座での「春のおどり」はレビュー芸術に昇華したように感じました。
by t-k (2013-05-04 22:39) 

★とろりん★

t-kさま、

はじめまして。コメントありがとうございます。

これほど素晴らしい技量と芸を持ち合わせているOSKです。91周年もその先も、常に新たな夢と目標を見いだして、さらなる高みを目指した舞台で魅了してくれることでしょう。
by ★とろりん★ (2013-05-05 08:40) 

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