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OSK日本歌劇団 『春のおどり』@日生劇場 感想(2) [講座・現代演劇]

公演の出演者やスタッフについてと、第一部『桜絵草紙』の感想は、コチラへどうぞ☆


第二部『Catch a Chance Catch a Dream』も、OSKらしい、スタンダードながらエネルギッシュなレビュー。

古き佳きハリウッドの香りあふれるミュージカルナンバー、軽妙なジャズ、情熱的なタンゴ、そして優雅なフィナーレ…。OSKで90年間引き継がれてきたであろう、オーソドックスで優美な「ザ・王道レビュー」の世界でした。

こちらでも、印象に深く残った場面を書き留めておきます。


* * * * *


高世・牧名がメインの「追憶」(振付/名倉加代子)。年老いたかつてのショースター(高世麻央)が、若かりし頃の輝きに満ちた時代とパートナーであった恋人(牧名ことり)を回想する…という場面。

白を基調にしたタキシード&ドレスに、シルクハットとステッキを持ちながら軽妙洒脱に踊りぬける高世と牧名がとても素敵でした。名倉先生の振付は優美でスタイリッシュで、大好きです。

最後はほっこりと癒される結末で…。高世の(男役としての)高音がとても澄んでいて、耳に心地よく入ってきます。


「ピエロの恋」(振付/佐藤洋介)は、若手の真麻里都(まあさ りと)、舞美りらが中心の場面。

ピエロが人形に恋をして…というファンタジックなストーリー性のあるダンスシーンなのですが、ここで観客の度肝を抜いたのが、人形を演じた舞美の「人形ぶり」!!

舞美は、ぜんまい仕掛けの人形のように両腕を上げて、頭から上体が不自然に傾いだ姿で椅子に座っています。

通常の人間ならばしんどい角度で傾いでいるのですが、これが身動きひとつ、瞬きひとつしないのです。

最初登場した時は、あまりにも身動きしないので、「あれは本当に人形が置いてあって、どこかのタイミングで舞美さんにチェンジするのかな?」と思っていたほど。2階席後方からの観劇だったので、ますますその思いを強くしてしまいました。そう思ってしまうほど、微動だにしない。

もっと言えば、「人間の空気」を見事なまでに消していたのです。

その無理な体勢のまま、ピエロたちに持ち上げられ、床に下ろされたところでパッと動きだして、真麻と踊りはじめるのです。そこでやっと「あ!本当に舞美さんが演じていたんだ!!」と思いなおして、さらに吃驚してしまいます。

真麻と舞美が楽しいダンスシーンを繰り広げた後、舞美は再び人形に戻って、他のピエロたちによって連れ帰られてしまいます。

激しく踊った後にも関わらず、スッと呼吸を鎮めて、再び上体が無理に傾いだ姿勢のまま、ピエロたちに持ち上げられていく舞美。ここもまたもや瞬きせず、身動きもせず。そして場面が終わると思われた瞬間に、真麻に向かって投げキッスを繰り出し、そこでまたピタッと身体を止めて、場面が終わります。

最初の人形ぶりにも驚きましたが、完全に消したはずの「人間の空気」を瞬間的に再生させ、再び一気に消してしまえる身体的能力の高さと間合いの巧さ。ダンスの基礎がきちんとできていて、鍛錬が正しく積み重ねられているからこそ出来る技です。そしてその技を、OSKでは若手である舞美が既に身に付けているということにも驚嘆しました。


「ラプソディ・イン・タンゴ」(振付/KAZUMI-BOY)は、トップスターの桜花昇ぼる・高世・牧名による、大人っぽくて耽美な、3人だけのダンスシーン。

最初は、ひとりの女(牧名)をふたりの男(桜花・高世)が争う…というありがち(でも大好き☆)な展開だとばかり思っていたのですが・・・

そのうち、男同士がお互い惹かれ始めたらしく…

…あれ?あれあれ?あれーーっ??(*ノ∀ノ)キャッ☆ な、展開に(笑)。

宝塚だと、こういった場面は冒頭から男役同士が絡むもの(むしろ、場面としては男役しか出てこないイメージ)。今回は、まずひとりの女に男たちが絡み、次第に男同士が絡み始め、それに嫉妬した女が男たちに絡んでいく…という倒錯的な展開が斬新で面白かったです。ダンスの中で変化していく心情すらもあぶり出されていくような……結末までドキドキして目が離せませんでした。

牧名のダンス、いつ観ても好きです。キビキビとした動きの中に娘役らしいしなやかさもやわらかさもあって、艶も色香もありながら、娘役としての品は決して失われない。素晴らしい娘役芸ですわ~☆


「バラ色の人生」(振付/名倉加代子)は、男役スターによる「La Vie en rose」の歌い継ぎが素敵で素敵で、胸がときめきます。

桜花は優しくて甘くて気品があって、あくまでも王道の王子様。ひたすら王子様。高世は端整なマスクに端正な歌声。そして桐生は、キリッと男らしくてイケメン☆

ものすごいマニアックなツボになりますが、私、桜花が歌や科白などで発する「さぁ」の、「ぁ」の部分がすごーく好きなんです!(←本当にマニアック過ぎ)。

というか、母音の「a」の発音にすっごくときめくのです(笑)。「さぁ」の「ぁ」とか、「ほら」の「a」とか。ちょっと吐息まじりで掠れたような声になるのがもう、なんか、たまらないのです(笑)。優しくて、包容力があって、大らかな、桜花の母音「a」の発音…思い出すだけで癒されてしまいます(笑)。

あれ?なんか、らんとむにも同じこと言っていたような…。そっか、私は母音「a」の発音が素敵な人にときめくのかな…。いや、たぶん吐息まじりのヒトが好きなんだな…(笑)。


「ジャスト・ダンス」(振付/名倉加代子)は、前景ので甘やかな薔薇色の世界から一転して、シックでスタイリッシュな世界へ。

男役は黒いスーツ(だったかな?)にソフト帽、娘役はひざ丈の黒いドレスにソフト帽で、ひたすらダンス、ダンス、ダンス!!まるでブロードウェイのショーを観ているかのような、スピーディーで華やかで、大迫力のダンスシーンでした!!舞台に立てる喜び、ダンスを力いっぱい踊ることのできる喜びが舞台中にはじけていて、すごく感動しました。


「レット・ミー・トライアゲイン」(振付/名倉加代子)は、「レット・ミー・トライアゲイン…」と繰り返される歌に、もう泣けて泣けて…。

この場面だけでなく、『桜絵草紙』でも、桜花が主題歌を歌う場面で、涙を流していたのが印象的でした。笑顔で歌っているのだけれど、頬を一筋の涙がスッと流れていて。ここまで来るのに、この東京公演まで来るのに、本当に色々と長い道のりだったんだなぁ・・・と思うと、ついついもらい泣きしてしまいそうでした(←感情移入しやすい)。

桜花だけでなく、舞台上に漲る気魄とか熱気が、もう全然違いました。ただ初日だから、というだけではない、言葉にならない思いがそのまま熱をもって昇華していくような。すごい興奮と高揚感でした。

また、この場面で歌われるのが「レッツ・トライアゲイン」ではなく、「レット・ミー・トライアゲイン」なのも、OSKらしい謙虚さと慎み深さがにじみ出ていて、何だかしみじみ。


ラストは勿論、OSK名物「桜パラソル」での「桜咲く国」~♪

この歌、ついつい口ずさんでしまいますよね~。さく~らさ~く~くにぃ~♪


* * * * *


アンコールのあいさつで、桜花が「まさか、宝塚さんのお隣で公演させてもらえるとは思ってもいませんでした…」と言っていて、思わず笑ってしまいました。

そうなんです、4月5日~8日の間、日生劇場では桜花昇ぼる率いるOSKが、そしてお隣の東京宝塚劇場では、私がこよなく愛する蘭寿とむ率いる宝塚花組が公演を実施。文字通り、"桜"と"蘭"が「花いくさ」を展開していたのです!それに気づいて、ひとりテンション上がりまくっていたのは、誰あろうこの私です(笑)。

この日は初日限定プレゼント企画がありまして、スター3名の直筆サイン入り「桜パラソル(レプリカ)」抽選会が舞台上で開催されました!

3名に当選…ということで、桜花→高世→桐生の順番に、1回ずつくじをひいていくことに(くじ箱ガールはことりちゃん☆)。

トップバッターの桜花がくじを引く時、「ガラガラガラガラ…ジャーン☆☆☆」と自分で擬音語を発しているのに気づいて、「可愛い、自分で言ってる☆」と大ウケだった高世と桐生。しかしこの2人も、自分たちの番ではしっかり擬音語を発していました(笑)。可愛い☆

「○階、△列、□番のお客さま!!」と声高らかに当選番号が発表され、当選した座席に座っていた観客の方は一応立つことになったのですが、いかんせん照明がきらびやか過ぎて、ステージ上の3名からはよく見えない様子。

「えーと、□番…どの辺?」「あの辺、あの辺」「あれ?お帰りになった?」「いや…」「いらっしゃる?」「う~ん…」とか言いながら、3人そろって額に手をかざして、必死で当選者の方を確認しようとするトップトリオ。その様子がお茶目で可愛らしくて、たまりませんでした(笑)。

ステージ上のわちゃわちゃ(笑)に照明さんが素早く対応して、当選者の方をピンスポットで照らしたので、その姿を確認できた様子。満面の笑顔で、「おめでとうございまーす!!」と声をそろえて祝福するトップトリオ。…素敵過ぎる…!!(そして照明さん、グッジョブ!)

そして、桐生のひいたくじは、何と私が座っていたお席と、たったの5番違い!!うわー、凄いニアミス!!桜パラソル(レプリカ)、欲しかったなぁー!「さく~らさ~く~くにぃ~♪」ってやる気満々だったのに!!準備も万端だったのに!!(笑)。


* * * * *


圧倒的なスピード感とリズム感でひた走りながら、どの場面も非常に完成度が高く、最後の最後まで目が離せないOSKの舞台。何よりも、薫り高きレビューの世界観がしっかりと受け継がれているところが素晴らしいと思います。

東京では、9月に三越劇場公演が決まっているそうな。短い公演期間ですが、機会があれば足を運びたいと思います。


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t-k

宝塚とOSKを比べる事は無意味と思っています。各々特徴があり、どちらにも良さがあります。私はOSKの群舞が好きで、彼女達からエネルギーと、生きる希望を頂いています。宝塚がゴージャスだとしたら、OSKはシンプルだと思います。踊るために機能的で配色のバランスの良い衣装は髪飾り、靴にまで繊細に揃っています。舞台化粧も美しい。今回の洋舞は個人的には砂漠の景とジャストダンスに特に胸を打たれました。
by t-k (2013-05-04 23:01) 

★とろりん★

t-kさま、

こちらの記事にもコメントありがとうございます。

レビュー芸術と男役という日本独自の文化を担う宝塚とOSK。これからもお互いに切磋琢磨し、日本のエンターテイメントに活力を注入していって欲しいと思います。ジャスト・ダンス、私も大好きな場面です。
by ★とろりん★ (2013-05-05 08:44) 

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