SSブログ

歌舞伎座新開場杮葺落(こけらおとし) 壽初春大歌舞伎 夜の部 [歌舞伎]

SH3K0117.jpg
2014年1月2日(木) 歌舞伎座 16:30開演

新年の初観劇はやっぱり歌舞伎!新開場して初めてのお正月を迎えた歌舞伎座の初日に行ってまいりました。

とは言え、この日にいきなり首を痛めてしまい、お昼に予定していた初詣は行けず・・・お約束していた友達、ごめんね・・・(私信)。ギリギリの時間までベッドで安静にした後、そろり、そろり・・・と身支度を調え、極力首を動かさないよう、まるでロボットのようなカクカクした動きで歌舞伎座へ(-_-;)。

この日の歌舞伎座にはNHKの生中継のカメラが入っていました。ご覧になった方も多いと思います。ロビーをやたらロボットのような動きでそろ~りそろ~りと歩いていた不審な女性がいたら、それはきっと私です(笑)。

夜の部は、時代物に舞踊に新作歌舞伎と、バランスの取れた3本。めでたい焼きに舌鼓を打ってから(←負傷していてもめでたい焼きだけは絶対にゲットする執念)、晴れやかで華やかな舞台を楽しみました。


仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居

戸無瀬/坂田藤十郎
大星由良之助/中村吉右衛門
お石/中村魁春
小浪/中村扇雀
大星力弥/中村梅玉
加古川本蔵/松本幸四郎

【あらすじ】

塩冶判官による松の廊下の刃傷。判官が高師直にとどめを刺すことが出来なかったのは、桃井若狭之助の家来、加古川本蔵が判官を阻止した為でした。その本蔵の娘、小浪と、塩冶判官に使える大星由良之助の息子、力弥は許嫁の間柄でしたが、お家取りつぶしとなったために立ち消えに。それでも力弥の嫁になりたいという小浪の訴えに、本蔵の後妻で小浪の継母でもある戸無瀬は彼女と共にに山科に蟄居している大星家を訪ね、力弥との祝言を頼みます。しかし、由良之助の妻であるお石は、浪人であることを理由にこれを拒否。絶望し、自害を決意する戸無瀬と小浪の前に、本蔵が現れます。

本蔵は塩冶判官が高師直を討とうするのを妨げたことを深く後悔し、わざと力弥に討たれます。由良之助は、わが身を犠牲にしても愛娘の婚礼を願う本蔵の心を汲み、力弥と小浪の祝言を許し、吉良仇討ちの意志を打ち明けます。すでに命尽きかけている本蔵が引き出物として由良之助に渡したのは、高師直邸の絵図面。ついに全ての手筈が整ったと感じた由良之助は、仇討に向けて出立するのでした。


【カンゲキレポ】

これぞ歌舞伎!!という感じの、大顔合わせの舞台。

雪の降る山科、新雪に囲まれた純白の舞台で、前半に藤十郎と魁春が静かで激しい火花を散らせば、後半は幸四郎と吉右衛門の兄弟競演に息をのみます。そして両親の葛藤とせめぎ合いの狭間に香る、若い恋人たちの初々しく無垢な恋心を梅玉と扇雀が表現。

藤十郎の戸無瀬は、自在。本当にこの方、年齢を重ねるにつれて若々しさと艶やかさが増していくような感じがします。

お石と対峙する時の張りつめた思い、小浪に涙ながらに祝言をせがまれ困惑する様子、思いを遂げられないのならいっそこの手で、と血の繋がっていない娘との自害を決意する表情・・・。そうした言動の中にもかすかに見え隠れする「若さ」ゆえの一途さが表現されていて、それが全くわざとらしくなくて・・・。「極められた芸」というのは、こういうことを言うのだと再実感しました。

お石を演じる魁春。良い意味での「決して邪魔にならない佇まい」が本当に好きです。芝居の中で決して出過ぎず、引き過ぎず、それでいて仕どころは充分に心得ている、ちょうど「良い加減」の芝居はいつ拝見しても心地良い。

幸四郎と吉右衛門の兄弟競演も見応えあります!特に吉右衛門の、登場しただけで舞台を、客席を一気に包みこむ包容力は流石です。

そして、そして、梅玉!!さすが永遠の前髪役者!!十代の力弥を軽やかに瑞々しく、情感深く演じていて、惚れ直しました!(*^_^*)

登場する時の機敏な動作、小浪から引き出物を手渡される際に見せる、気恥ずかしさと恋心。・・・もう、見ているこちらまで甘酸っぱい思いにとらわれてしまいました(笑)。梅玉さん、やっぱり大好きー!!

小浪を演じた扇雀。この顔合わせでは最年少で、お行儀よく演じていたのが印象的。若い娘らしい清潔感と透明感があり上々。

これぞ大歌舞伎!と満足感のある一幕でした。


乗合船惠方萬歳 常盤津連中

萬歳/中村梅玉
通人/中村翫雀
田舎侍/坂東彌十郎
芸者/中村児太郎
白酒売/片岡孝太郎
女船頭/中村扇雀
才造/中村又五郎

新年を迎えた隅田川のほとり、大ぜいの人が渡し船に乗ってやってきたところへ、萬歳(=新年を寿ぐ舞踊や話芸を職業とする伝統芸能)と才造(萬歳の相方)の2人がやってきます。そこに居合わせた人々も踊り始め、芸達者ぶりを披露。やがて萬歳と才造が新年を祝う三河萬蔵のご祝儀を軽妙に踊り始めます。やがてにわか雨が降り始めて、皆で船へと乗り込むのでした。

ご覧のように、出演者は7名。最後にこの7名が船に乗り合わせる姿を「宝船に乗った七福神」に見立てるという、いかにもお正月の舞台にぴったりの舞踊です。

こちらの幕では、又五郎の機敏で見事な踊りを満喫しました!軸が全然ブレなくて、軽妙洒脱で、お正月からこの方の舞踊を拝見できてのはすごーく縁起が良い感じです!ありがとう、又五郎さーん!!


東慶寺花だより

信次郎/市川染五郎
法秀尼/中村東蔵
柏屋主人源兵衛/坂東彌十郎
おぎん/市川笑也
堀切屋三郎衛門/片岡松之助
美代/中村虎之介
おせん/片岡孝太郎
惣右衛門/翫雀
お陸/片岡秀太郎


【あらすじ】

江戸時代、鎌倉にある東慶寺は幕府公認の駆け込み寺として知られていました。当時、女性からの離縁申し立ては不可能だった時代。女性はこの寺に駆け込み、2年の奉公を勤めたら離縁が許されるのでした。近くには、そういった女性たちを預かる御用宿が点在していたそうです。

物語は、そうした御用宿のひとつ、柏屋に間借りする居候、信次郎が主人公。夢と現実に迷い悩む信次郎ですが、宿や寺で出逢う人々との交流を通じて、少しずつ成長していくのでした。


【カンゲキレポ】

井上ひさしの同名小説が、今井豊茂の脚本、大場正昭の演出により新作歌舞伎として初登場。

新作歌舞伎ですし、今回が初演ですので、詳しいレポは控えますが、様々な境遇と性格の女性たちが、それぞれの理由で「駆け込み」を決意し、再出発していく様子が、信次郎の優しく温かな目線で描かれています。

初演で初日ということもあり、緊張もあったのでしょうが、いくつか目立つ台詞の言い間違いが気になりましたが(特に、役名を間違えるのはどうかと・・・)、全体的には穏やかで温かい空気感に満ちた舞台でした。

好演だったのが、女性陣!孝太郎のおせんは明朗活発ながら女性らしい気の濃やかさと賢さもにじみ出ていて、この方が舞台に出てくるだけでホッとしました。

おぎんを演じた笑也は、儚げな美しさが印象的。澤瀉屋一門の役者さんがお正月から歌舞伎座の舞台で活躍されているのは、本当にうれしいことです。

そしてこの方なくしてこの舞台の成功はなかったかも!?お陸を演じた秀太郎!

髪型の商家の女主人なのですが、これがまぁキャラクターがいろんな意味で強烈(笑)。そんな濃い~役柄を、決して嫌味にならず、下品にならずにあっけらかんと演じ切れてしまえるのは、この方をおいて他にはいらっしゃいません。楽しませていただきました!


* * * * *


初春らしい晴れやかで明るい中にも、大歌舞伎の醍醐味をじっくり味わえる今月の夜の歌舞伎座。大満足でした!


nice!(7)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 7

コメント 2

カオリ

わぁ、初芝居、羨ましい。でも首を痛めてしまったとは、歌舞伎観劇には辛い状況でしたね。
初芝居を着物を着て観に行く、というのが歌舞伎を観始めてからの憧れですが、未だ実現できず、です。

首は疲れの現れらしいですよ。どうかお大事に。
by カオリ (2014-01-07 20:15) 

★とろりん★

カオリさま、

nice!とコメントありがとうございます。
今年も良い一年となりますように。

初芝居、とても良かったです。
首を極力動かさぬよう、目で役者さんの動きを追っていたので、眼球がめちゃくちゃ疲れましたが…(苦笑)。

首は疲れの現れなんですか!!そうか~、年の瀬までフライトが続いたからな~…。休暇に入って一気にきちゃったのかも知れませんね。今年も健康第一で過ごします。
by ★とろりん★ (2014-01-08 07:26) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。