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「永遠の0」の面影 ~宇佐市平和資料館~ [旅]

初めて、大分県宇佐市を旅する機会に恵まれました。

宇佐市と言えば、宇佐神宮・・・くらいの知識しかなかったのですが、戦時中に海軍航空隊、後に神風特別攻撃隊の中継基地があり、ここから多くの若き兵士たちが空へ飛び立っていったことを初めて知りました。

現在でも、宇佐市内には空襲を受けた建物や航空機を退避させるための掩体壕(えんたいごう)の遺構などが点在しています。

現在、宇佐市では平和ミュージアム(仮称)の建設を目指し、宇佐海軍航空隊の歴史や資料を収集しているそうです。

その第一歩となるのが、「宇佐市平和資料館」。


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昭和12(1937)年に中国との戦いが始まり、米国との開戦も必至の情勢であった昭和14(1939)年10月1日、宇佐海軍航空隊(宇佐空)は艦上爆撃機、艦上攻撃機の搭乗員養成のための練習航空隊として開隊しました。卒業後は実戦部隊へ送り出され、真珠湾攻撃などにも参加しました。昭和20(1945)年2月には、神風特別攻撃隊の中継基地にもなり、多くの航空機が宇佐に集まりました。また、宇佐空でも神風特別攻撃隊が編成され、154名もの搭乗員が特攻出撃して戦死しました。このような状況下で、宇佐空は米軍の艦載機や爆撃機の空襲を受け、多くの命が失われました。
(宇佐市平和資料館パンフレットより)

こちらに暫定展示されているのが、12月公開予定の映画「永遠の0」撮影用に制作された、零式艦上攻撃機21型実物大模型です。


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原寸大の模型です。

初めて知ったのですが、艦上戦闘機というのは、航空母艦から発艦する戦闘機のことで、大まかに2種類に区分されるのだそうです。

目標物に肉薄して魚雷攻撃を行うものを艦上攻撃機、高空から爆撃を行うものを艦上爆撃機と呼ぶそうです。空母からの離艦というのは非常に高い技術が要求され、特別な訓練が必要でした。

宇佐海軍航空隊はその航空技術の基礎訓練を終えた搭乗員に実戦機を用いた訓練を目的として開隊されましたが、後に神風特別攻撃隊の中継基地となりました。


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コックピット内も、非常に精巧に復元されています。主演の岡田准一くんも、実際にこのコックピットに乗りこんで撮影を行ったそうです。


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映画撮影に使用されたコックピットと、映画のポスター。


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当時、日本の軍用機は採用年次を表記する際に「皇紀」という年号の下2けたを使っていました。初代天皇とされている神武天皇が即位した年を紀元前650年として元年ということにすると、昭和15(1940)年は「皇紀2600年」ということになります。

したがって、この年に採用された軍用機が2600年の下2けたをとって「00」=「零式」と呼ばれるようになりました。


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この艦上戦闘機の胴体の下に着いているのは、燃料機。

零戦機には機外と機内の2か所に燃料装置があり、目的地までは機外の燃料装置を使用して飛行します。目的地に到着すると機外の燃料装置を切り離し、機内の燃料装置に切り替えます。このため、零戦機は俊敏性と軽量性が飛躍的に上がり、大戦初期には優秀戦闘機として恐れられました。

写真でもご覧いただけると思いますが、操縦席を保護する屋根(と言うのかな?)の部分は、簡単な骨組みで作られています。戦闘機は空中戦の際、後ろから追撃されることが致命傷になるため、欧米の戦闘機などは操縦席を守るために、この部分は厚い鉄板で覆われているのが普通なのだそうです。

この、徹底した軽量化と高度な運動性能を追求して完成された零戦機は、まさしく「闘うこと」だけを考えて開発された戦闘機でした。

映画撮影のために精密に復元されたこの零戦機は宇佐海軍航空隊第721航空部隊・神雷部隊が使用した21型です。神雷部隊は、人間爆弾「桜花」を攻撃兵器とした初めての航空特攻専門部隊です。宇佐で特別攻撃隊の訓練を受け飛び立った若者たちは、81機154名にのぼりました。

「桜花」は、1人乗りの特攻専用兵器で、陸上攻撃機(地上滑走路から離陸する戦闘機)に吊り下げられて運搬されました。目標物を発見すると、戦闘機から切り離されます。その後は搭載された3本のロケットに順次点火して加速し、目標物に突入しました。

「桜花」が切り離されて発火・爆発するまでは7秒。その7秒の間に、桜花に乗りこんだ搭乗員はより正確な戦果のために、目標物に照準を合わせて突入したのだそうです。


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7秒。

今までで、いちばん重く、厳しく突きつけられた7秒でした。

宇佐を訪れなければ、決して知ることのなかった歴史の事実。

歴史は誰かから、何かから学ぶだけではなく、自ら知ろうとする意識も必要なのだとあらためて感じさせられました。


=宇佐市平和資料館=

住所:〒879-0455 大分県宇佐市大字閤440-5
交通アクセス:JR日豊本線「柳ヶ浦」駅から車で約15分
TEL/FAX:0978-33-1338
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始(12/29~1/3)
入館料:無料


映画 「永遠の0」公式サイト

永遠の0 (講談社文庫)

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  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: 文庫
 

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