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『TAKARAZUKA ∞ 夢眩』 感想(2) [宝塚歌劇]


感想(1)は、コチラからお入りください。


5th Stage MUGEN LOVERS
音楽/手島恭子
振付/AYAKO

ファンタジー戦闘ものっぽいファンファーレのあと、パッと照明がつくと、赤い戦闘服風の衣装に身を包んだ望海風斗と蘭乃はなを中心とした若手男役&娘役のダンス。望海と蘭乃が、「Preserved Roses」を歌います。もともとは、T.M.Revolutionと水城奈々によるコラボレーション曲ですね。

蘭乃の衣装は、『Misty Station』(2012年月組)で蒼乃夕妃が着ていたもの。他の皆さんはおそらく『ワンダーランド』(2005年雪組)で使用された冒険家風の衣装です。

疾走感あふれるメロディーとともに、上手袖から鳳真由、下手袖から瀬戸かずやが登場します。

ここはもう、私にとっては「スーパー瀬戸くんタイム」ということで、瀬戸くんをがっつり追っかけてましたっ!!

だって、らんとむ出てないから、落ち着いて瀬戸くんのダンスを堪能できるんですもの!(←本命が見ていないところで浮気している件)

望海と蘭乃が「短い夢を重ねて 永遠にして逝く花の♪」と歌う時の振りがめっちゃ好きです。

敬礼しながらその場で足踏みをして、ピーンと身体を伸ばしてから床に倒れ込むように伏せるんだけど、片足を振り上げた反動でパッと上半身を起こすのです。床に倒れ込む動きをするたびに、「おおーっと」みたいな顔を毎回している瀬戸くんに萌えます。…ダンスが綺麗な人なので、そこまで顔芸する必要はないと思うんですけれどね(笑)。

あとは、銀橋の投げキッス!時々、どこを狙うのか迷って曖昧になっているのが微笑ましい感じですけれど(笑)、狙いを定めて見事に命中させた時の威力と破壊力は凄まじいです!さすが、花組が誇る鬼畜系男役!(←すっかり認定)

銀橋を渡りきって、上手から本舞台に戻る時の「短い夢を重ねて(リプライズ)♪」の振りもカッコいい!!右足を軸にしたアラベスクの形をとるのですが、右腕を頭の後ろに振りかぶるようにして持っていくのです。その勢いとキレの良さ!

…すみません…この場面だけは、瀬戸くんロックオンでした(笑)。


6th Stage MUGEN DIAMANTE
音楽/甲斐正人
振付/瀬川ナミ

このままオラオラ系で進んでいくのかと思いきや、いきなり雰囲気が変わって、中東~スパニッシュという宝塚王道の中詰。

来ました!ターバンが異常に似合うトップスター、蘭寿とむ、降臨!!

幕が上がると、本舞台少し奥のセリ上に既に蘭寿がスタンバイしています。音楽とともに蘭寿の姿が照らし出されていく瞬間が、本当に素敵。

曲のイントロ部分で、両腕を頭の上に振り上げ、顔を上げて頭上の腕をゆっくり広げながら下ろしていく、という振りがあるのですが、この瞬間がたまらなく好きです。

サスライトで照らされた横顔に陰影がくっきりと浮かび上がり、そこにスポットが当った瞬間の美しいことと言ったら…!毎回、拍手することも忘れて、ひたすらその瞬間を目で追いかけています。

そして、「しゃっくっねつっのぉ~♪」とねっとり歌いながら本舞台センターへ歩み出る蘭寿さん。昭和の香りがこんなに似合う男役、素敵過ぎる…!!

衣装は、白とオレンジ。これも、今までの蘭寿で見たことのない組み合わせの衣装でしたが、灼熱の濃艶な場面なのにどこか爽やかさを感じさせるもので、好きでした。

ここはもう、男役・蘭寿とむの真骨頂と言っても過言ではないでしょう。熱く、濃く、艶やかな瞬間。これぞ蘭寿とむ!!

銀橋にわたる時に歌い上げる「あ~あああああああああぁぁん♪」と、「は~ああああああぁぁん♪」が、もうらんとむ全開で大好き!!「その名は MUGEN でぃあま~~~~~んて~~~♪」も、らんとむ全開すぎて悔いなし!!

さすが、らんとむ!ラストステージでも赤面爆弾の投下は忘れない!!この悩ましい声に合わせて流し目絨毯爆撃も忘れない!!そしてとどめの投げキッス…!!確信犯すぎて、大好きです!

ちなみにこちらの悩ましい声、実況CDの歌詞ブックには「Ah」と「Woo」としか書かれていません。これが蘭寿さんの手にかかると↓


「Ah」=「あ~あああああああああぁぁん♪」

「Woo」=「は~ああああああぁぁん♪」


…さ、さすが赤面の帝王、蘭寿とむ…!!(←賛辞)



続いて、桜一花、芹香斗亜、柚香光が銀橋を渡ります。新公学年の男役を侍らせても違和感のない花組最上級生娘役、桜一花がミラクルすぎる!!芹香くんのソロの後の「ダンサ ダンサ♪」というコーラスが好きです。

本舞台は、3つのグループに分かれていて、センターは高翔みず希、上手は夕霧らい、下手は月央和沙がそれぞれシンを勤めています。高翔のダンスは、変なクセがなくて、本当に端正なダンス。中詰でも素晴らしい存在感です。



次に登場するのは、華形ひかる、桜咲彩花、仙名彩世の3人。下手から上手に向かって銀橋を渡ります。

ここでの注目は、桜咲彩花のツンデレぶり!

べーちゃん(桜咲)、ものすごく確実に観客を釣っています(笑)。ちゃんと2階席にも目線を飛ばしている!

最初はね、娘役らしからぬクールさなのですよ。無表情というか、めちゃくちゃ冷たい眼差しでじっと相手の目を見つめていると思ったら、一瞬だけ、「フッ」と魅惑的な微笑みを浮かべるのですよ!あの技を鬼畜と言わずして、何と言おうか!(←興奮しすぎ)(←鬼畜鬼畜言い過ぎ)



そして全国の娘役ファンの皆様、お待たせしました!スーパーきらりタイムです!

華耀きらりが場面のシンを取り、男役たちを手玉に取っていくというダンスです(←イメージしにくい)。曲は、「禁じられた遊び」。

ここ、きらりがめっちゃくちゃカッコイイんです!前の場面からセンターに走り込んで、後ろ向きに立ったら頭上に振り上げた扇をパッと開いて、そして身体をしならせて客席を向くのです。この瞬間、客席からちゃんと拍手が起きるのが嬉しいです。

あらゆる世代の男役(高翔、月央、瀬戸、冴月瑠那、鳳真由、大河凛、水美舞斗、優波慧)の間を、ゴージャスなアゲハ蝶のように、優雅に蟲惑的に踊り抜けていく華耀。その堂々とした佇まい!!テンションが上がる場面です。

ここでも、らんとむがいないのを良いことに瀬戸くんばっかり見てしまいました。

特にこの場面では、手の動きが本当に綺麗。彼は、自分の手の甲が持つ威力を十分に心得ていますね(笑)。背中を反らせるきらりをサポートした後に両手と片足をポーンと振り上げる動きがあるのですが、足が真っすぐ上がっていて、とても綺麗です。



上手から、明日海りおが登場。「禁じられた遊び」のメロディーに乗って、銀橋を歌いながら渡ります。

ごめんね、みりお君…この場面、本舞台で繰り広げられる男役と娘役、特に瀬戸くんと凪咲星南のデュエットダンスに釘付けなので、いつも全く見ることができません。本当に申し訳ない!

この公演で卒業が決まっている凪咲。実は瀬戸とデュエットダンス踊ることが長年の夢だったらしく、偶然そのことを聞く機会があった齋藤先生が、この中詰で実現させてあげたのだそうです。

そのようなエピソードがあったとは全く知らなかったわたくし。大劇場千秋楽の退団者挨拶でおなぎちゃん(凪咲)がそのことに触れて、「とても嬉しく、幸せでした」と語っているのを聞いて、東京公演から注目するようになったのですが…。本当におなぎちゃん、憧れの男役さんと踊れる嬉しさと幸福感が、小さな身体から漲ってます!良かったねー!

そんなおなぎちゃんを相手に踊る瀬戸くんは、イケメン度8割増!男役としての自信と責任感にあふれています。やっぱり、娘役さんに憧れられて、惚れられて、愛されていると自覚した時に、男役はぐーんと魅力と色気を増すのですね。

最後のポーズを決めるために上手端からセンターへ移動する時に、おなぎちゃんをエスコートする瀬戸くんの包容力と男らしさ、半端ないです!あれは惚れる!

そして、ポーズを決めた後の、手の位置が本当に綺麗。指が長くて細くて大きくて、あれは本当に男の手ですよ(真顔)。自分の手の魅力をよく知っているようで、角度や決め方も、ちょっとだけ他の男役さんとは違う工夫をしているのが素敵だと思います。



などと言いつつ、盆セリが回り始めたら、照明がつく前からセリ上がってくる蘭寿にロックオン!

セリ上がって来て照明が当たる直前の蘭寿の横顔が、たまらなく美しいのです!!

「MUGEN CITY」や「無限の愛」の場面でもそうなのですが、私は照明が当たる直前の蘭寿の表情がすごく好きです。

照明が当たった瞬間、その輝くような笑顔とともに圧倒的にポジティブなパワーを客席に送り出す蘭寿。その輝くパワーを自身の内面で高めて溢れだす直前の、何とも言えない気迫に満ちた顔。内に秘めた輝きを放出する直前の、沸点にいちばん近い状態、とでも申しましょうか…。

本当に、美しくて、綺麗で…。いつも言葉を失くします。

赤いスパニッシュ衣装に着替えた蘭寿は、それはそれはオトコマエ!!「エル・アモール!」の掛け声もオトコマエ!!

スパニッシュと言えば、らんとむの十八番ですから!まさに鬼に金棒ですから!また左肩に生えたキジ羽根が、ピシュッ!ピシュッ!とイキの良いこと!(笑)

この場面の影ソロを勤めているのは、羽立光来。

あるブロガーさんが、「ここの羽立の影ソロは、美穂圭子さんだと思った」(※美穂圭子…専科。美しいソプラノで、歌手として重用されている)と書かれていたのですが、私はこの文章を読むまで、ナチュラルに美穂圭子さんだと思い込んでいました(笑)。事前に録音したのかな?と、勝手に脳内補完していたくらい(笑)。それだけ凄いです、ここの影ソロ!羽立くん、ナイスパフォーマンス!



そして中詰もクライマックス。「MUGEN ディアマンテ」で銀橋へ。

そうです、「しゃっくっねつっのぉ~♪」から「その名は MUGEN でぃあま~~~~~んて~~~♪」まで、もれなくリフレインですよ!

次の場面の準備のため、明日海は途中で袖に引っ込むのですが、ここが密かな楽しみでした(笑)。

蘭寿が本舞台から銀橋上手に移動するまでは、望海と並んで踊っているのですが、だいたい、蘭寿が銀橋上手に立つタイミングで、「では、ワタクシはこれにてっ」みたいな感じで、シュタタターッと袖にはけていくのです。その生真面目な段取りっぷりが、全力でみりお君(笑)。

「熱い熱い日差し背に受け♪」と歌うところで蘭寿さんが繰り出す、「背中反らして流し目攻撃」は、最強兵器です!!あの熱い眼差し(背中反らし付き)に流された者は、めくるめく情熱の波に翻弄され続けることでしょう…ふっふっふ☆(←不気味)

中詰の振付は、瀬川ナミさん。齋藤作品では何度か振付をされた経験があるようですが、複雑かつ流麗なフォーメーションとか、ファンが「これこれ!こういうダンスが見たかったの!」と思わせてくれるダンスや場面ばかりで、とっても素晴らしいです!

中詰クライマックス、出演者が銀橋に並んで「ディア~マ~ンテ~ ディア~マ~ンテ~♪」と歌いながら、肩を左右にクイックイッと揺らす振付が、すご~く好きです!!上がりきったと思われたテンションが、また上がりますから!(笑)



ディアマンテの興奮は、まだまだ続きます!蘭寿・華形・望海・瀬戸・芹香の男役5名が残り、「ツィゴイネルワイゼン」に乗って、情熱的なに踊ります!

一人ずつ、「ディアマンテ~♪」と歌い上げるのですが、それぞれに歌い上げ方に個性が出ているのがいかにも花メンな感じがして、つい客席でニヤニヤしてしまいます(笑)。

この時、5人はスパニッシュ帽をかぶっています。少しつばが大きいスパニッシュ帽は、特に2階席への目線の飛ばし方が難しいのですが、さすがに蘭寿・華形・望海の3名は手慣れたもので2階席にもしっかり目線を飛ばし、時々ウィンクまで飛んできました(笑)。

対する瀬戸・芹香はあと一歩!というところでしょうか。それでも前方席のお客様への貪欲なアピールは花メンらしくて、良いことだわ~☆(←誰)

とにかくここは、蘭寿さんが楽しそうで楽しそうで!表情に出ることはないのですが、とにかく全てを発散させて男役だけの場面を楽しんでいるな~と感じます。「バイラ」と掛け声をかけるところで、前に差し出した手の指を1本ずつ、ゆっくり折り曲げていくところが超絶オトコマエ!!


7th Stage 夢眩少女
音楽/青木朝子
振付/羽山紀代美

ボルテージ最高潮の中詰から一転、再び不思議で不気味な世界へ…。

恋人の面影を忘れられない青年(明日海)が、ジョーカー(和海しょう、柚香光)に導かれてその魂を売り渡し、恋人にそっくりな人形(仙名彩世)とひとときの夢を味わうが…という、美しくて、少し残酷な童話のような世界観。

柚香に誘惑される明日海というパターンは、前回のショーでもあったからなぁ…。ちょっと見飽きた感もあるのですが、ここは和海しょうの圧倒的な歌唱力に惹き込まれます。

曲はMALICE MIZERの「Je te veux」。な、懐かしいな、MALICE MIZER…。

後半、これでもかと踊りまくる仙名の動きが凄いです。歌えて踊れて芝居もできる、素晴らしい、娘役。将来、女がトップ娘役として立つ姿を観てみたいなぁと思いました。

すみません…ここの場面は、中詰の余韻でぐったりしていたのと、次の場面へ意気込みを新たにしようと心の準備をしていたので、ちょっとボーっとしながら観ていました…。ご、ごめんね、みりお君…!!


8th Stage 無限の愛
音楽/手島恭子
振付/若央りさ

激しいロック調の曲から一転、穏やかでクラシカルなメロディーの中、下手花道から蘭寿がセリ上がります。

濃紺のノーブルな軍服と地模様の入った真っ白なマントに身を包んだ蘭寿は、セリ上がる間、ずっと顔を横に向けています。その横顔の穏やかで、美しいこと。

ライトが当たると同時に、正面に顔を向けてパアッと笑顔になるのですが、花が開くような明るい笑顔が神々しくて、綺麗で…。ああ、いよいよ「終わりの始まり」だ、と思ってしまいます。

銀橋を渡りながら、主題歌のひとつ「無限の愛」を歌う蘭寿。プロローグ最後に蘭乃と歌ったのと同じ曲です。プロローグではアップテンポで明るい曲調でしたが、この場面では優麗な曲調。それだけに心に沁みます。

「君を守る」と幼いプリンセス(凪咲星南)に約束した少年(花蝶しほ)。時が過ぎて、少年は素晴らしい騎士(蘭寿)に、プリンセス(蘭乃)も美しく成長し…という物語とともに展開される、美しくも切なく、胸が締め付けられる場面。

蘭寿が銀橋で歌う間、本舞台では幼いプリンセスと少年が登場し、蘭寿と重なります。

少年と幼いプリンセスの物語が本舞台で展開している間、「Broadway Melody」のメロディーがオルゴール調で流れます。そう、『ラスト・タイクーン』のモデルと言われているアーヴィング・タルバーグが製作した映画と同じタイトルの曲です。

そして、「Broadway Melody」は、蘭寿とむの初舞台ロケットの曲でもあるそうです。(教えてくださった夜野愉美さま、ありがとうございます!)

キチマサ、ここはグッジョブ!(←愛ある呼び捨て)

やがて濃紺のドレスを着た蘭乃が登場し、そして軍服に身を包んだ男役、白にラベンダー色やピンクをあしらった、ふわっとした袖のドレスを着た娘役が登場し、壮麗なワルツの場面となります。

ここで、望海と芽吹が歌う「愛の夢」がまた泣けるのです…。

眩しすぎた君の姿よ
凛々しく 強く
The Dream of Love
奇跡のような 君との日々よ

You made us happy
君がくれた Smile
Tears Heart Soul
Love Dream
季節巡り迫る 別れの時が


本当に…

蘭寿とむという男役に、舞台人に巡り合えた奇跡。愛することができた奇跡。

そして今、その旅立ちを見送ることのできる奇跡…。

軍服でイケメン度5割増の男役と愛らしい娘役がワルツを踊る、夢のように美しい場面なのに、なぜか私の記憶は、すごく遠くに感じるのです。蘭寿と蘭乃を中心に、男役は端正に、娘役は幸せそうな微笑みを浮かべてくるくると回って踊っている舞台の映像が、すごくすごく遠くに感じるのです。

カップルがくるくると回りながら、さらにフォーメーションを移動していくという振りがあるのですが(とあるブログではは、「ペアで自転しながら公転する」という例えをされていた方がいました。言い得て妙!!)、ここでの注目は、瀬戸かずやと桜咲彩花のペアです。

このペア、センター奥からセンターへ、そこから下手前へ、さらに下手奥、再びセンター奥へと1周した後、さらに下手端へと、半端ない距離をぐるんぐるん回転しながら移動していくのです。他のペアも動いていますが、瀬戸&桜咲はダントツの移動(回転)距離。

決められたカウント内で移動しなくてはいけないという意識が働くのでしょう、瀬戸くんのエスコートがかなり強引なのですが、べーちゃん(桜咲)を振り回すことのないように、彼女の背中と手をしっかりホールドしているのです。その男らしさとたくましさに、心の底から惚れます。べーちゃんも、ものすごい早い瀬戸くんのターンに振られることなく、身体と身体の距離が絶対に離れないようにしっかりついて行って、娘役としての気概を感じます。

蘭寿と蘭乃は、もう何も言うことのない安定感です。こちらのペアも、近くにセリ穴が空いているのに躊躇せず大きく美しくターンしているのが素晴らしい。



プリンセス(蘭乃)が騎士(蘭寿)に剣を手渡すと、一瞬ストップモーションがかかり、やがてゆっくりと華形が「夢を見たのさ…」と歌いだします。

ここからはいよいよ、サヨナラの演出。

明日海が「僕の人生は変わったのさ 君の言葉に励まされ」、蘭乃が「君の笑顔に勇気をもらった」と歌うのが、またピンポイントで、そしてファンの気持ちも代弁していて…胸がぎゅーっと締め付けられます。

東京千秋楽の日、この部分を歌う明日海の声が、いつもとまったく違った、くぐもったような震えた声になっていて…。ライブ中継での観賞でしたが、明日海が涙をこらえにこらえているのがすぐにわかり、胸が詰まりました。

そして…「Your Infinity!!」という掛け声とともに、「MUGEN DREAM」へ!!ここからいきなり明るい曲調になるのが、もう、反則です!!

娘役が両花道へ分かれて、本舞台に男役だけが集結して踊る場面とか、娘役が戻ってきて総群舞になる場面とか…とにかくみんな、笑顔なんですね。その笑顔が、本当に美しくて、美しくて…言葉を失くします。

この瞬間…「美しい」という言葉しかありません。

やがて、蘭寿ひとりが銀橋センターへ。出演者全員が上手花道から本舞台、下手花道までずらーっと1列に並びます。そして、下手花道袖に右手を差し出して、一人一人と笑顔を交わしていく蘭寿…。

「世の中に、こんなにも愛にあふれた、美しい瞬間があるんだ」。そう思わずにはおれません。

ごめんなさい…。本当に、言葉がまったく思い浮かびません。ただ、ひたすらに美しい瞬間です。その真ん中に立つ、蘭寿とむの笑顔…もう、何て言ったら良いのか…。ああ、駄目だ、書きながら涙が出てきました…。

何度、その笑顔に勇気をもらったことか。全力で勤めあげるその舞台に、何度気持ちを奮い立たせられたことか。

そう、私にとって蘭寿とむの笑顔は、「光」そのものでした。



蘭寿がひとり残り、「グッドバイモーニング」を歌います。もともとは、宇徳敬子さんと近藤房之助さんのデュエットソングとしてリリースされた曲だそうです。

「明日は全てが変わるだろう…」というところで見せる蘭寿の晴れやかな笑顔に、ぎゅっと胸が詰まります。

けれど、その向こうに待つのは、終わりではなく始まり。終わりへの感傷ではなく、始まりへの期待を高らかに歌う蘭寿の姿を、網膜に焼き付けたい、心の宝石箱にしまいこみたい。そう思いながら、必死で蘭寿の姿を追い続けている自分がいます。

蘭寿とむが大階段を駆け上がり、晴れ晴れとした笑顔を残して別緞帳が下がると…フィナーレです。


Last Stage TAKARAZUKA∞夢眩
音楽/甲斐正人
振付/羽山紀代美

ミラーボールが星のように煌めく中、上手花道から蘭乃がセリ上がります。シンプルな白のドレスで、髪もスッキリとシニヨンにまとめています。

ドヴォルジャークの「新世界より」のメロディーに乗って、銀橋で歌う蘭乃の後ろ、本舞台で踊るのは、桜・華耀・芽吹・遼かぐら・白姫あかり・花蝶・凪咲・仙名。

桜と華耀のたおやかな娘役のダンスから、目が離せません。娘役として築き上げてきたもの全てが、シンプルな衣装の中にもにじみ出ていて…ああ、これが花組娘役だな、と思わせる美しさと気品、柔らかさと芯の強さ。

別緞帳が上がると、大階段にも白いドレス姿の娘役がズラリ。これこそ、正統なタカラヅカの美しさ!

大階段の娘役が本舞台へ移動し、蘭乃を中心とした娘役の群舞へ。ここは本当に、うっとりするような美しさ。

そして、音楽が最高潮に達するとともに、逆ピラミッドの形で降りてくるのが、黒燕尾に身を包んだ男役たち。もちろん、頂点にいるのは蘭寿です。

もう…ここはいつ観ても涙が出てきます。本舞台で軽やかにしなやか踊る娘役の後ろから、男役たちが登場する…というシチュエーションが神演出すぎて!!なんという包容力、なんという凛々しさ…!!

黒燕尾の男役たちの気迫…こちらが思わず身震いするほどの緊迫感です。その緊張を解き放つかのように蘭寿が右手を回して後ろを向き、そこから順番に波のように同じ振りをします。最後に、「シャラン」という音でパッと客席を振り返った蘭寿に、スポットが当たります。

この時の蘭寿の表情が…気高くて、美しくて…。どうか、どうかこの瞬間を、この瞬間の光景を、死ぬまで覚えていて…と自分の心に何度願ったかしれません。

最後の音で、もう一度客席正面に向き直り、右手を左胸の前に持ってきてポーズ。すべてが完璧。



「G線上のアリア」に乗って、男役の群舞。かなりアレンジが入っているようでしたが、ここはストリングスだけの繊細な音でも素敵だったんじゃないかな~とも思います。

難しい振りや凝った振りは全くと言っていいほどありません。本当にオーソドックスな、シンプルな振りのダンス。だからこそ、卓越したカウントの取り方やタメ方が必要とされるダンス。

蘭寿の動きに集中する男役の「気」が並々ならぬ気迫に満ちていて、涙があふれます。蘭寿が築き上げてきたものを、そして遺そうとしているものを、少しでも多く、ひとつでも多く吸収して、受け継いで、新しい世代へ伝えていって…!それはもう、祈りにも似た感情です。それが、宝塚に「蘭寿とむ」という男役がいた、という記憶の証になるのだから。記録よりも、記憶に残るべき男役なのだから。

そして、月央との「黒燕尾のデュエット」。ストイックで、それでいて気高くて、蘭寿の胸を借りてのびのびと踊る月央のダンスも素晴らしく、それを受け止める蘭寿の大きさにも感動します。やっぱりウルッとしてしまうのか、よっち、いつも額のあたりに力が入っているのがとても愛しいです(笑)。よっちが決壊しないように、踊りながら目線だけでよっちを制している蘭寿さんも愛しい(笑)。

最後に銀橋のセンターに蘭寿が立ち、本舞台にずらりと並ぶ男役の気品と、真摯な美しさ。全員の「気」が、銀橋の蘭寿ひとりに向けられているのが痛いほどに伝わってきます。

時間よ、止まって…。この瞬間、いつもいつも、こう思ってしまう自分がいます。

みんなの気を受けて、客席からの愛を受けて、蘭寿が掛ける全身全霊の「フォウッ!」。

もう、全ての瞬間をひとつひとつ止めてしまいたいです。



ショパンの「英雄ポロネーズ」に乗せて、ソロから蘭乃とのデュエットダンスへ。

このソロもね、本当にオーソドックスな振りの連続で…でも、指先の位置や角度まで、すべて完璧な美しさです。

「歌劇」5月号に掲載された、蘭寿と羽山紀代美先生の対談によると、齋藤先生は曲の冒頭から蘭乃とのデュエットダンスで…と考えていたそうです。しかし、曲を聞いた羽山先生が「頭(=冒頭)はとむのソロですね」と言ってくださり、蘭寿のソロで始まる演出に変更されたのだとか。羽山先生…心から感謝します!

蘭寿のソロを瞬きもせず見つめていて、ある時、ふと思ったことがあるのです。

「あ、燕尾が喜んでる」って。

銀橋から本舞台へのソロを踊っている時、振りによって黒燕尾の尾が跳ねたり揺れたりするものですが、何というか…まるで生き物のように見えたのです。その日は、らんとむの表情よりも揺れる燕尾に釘付けになってしまいました(笑)。

観察していると、燕尾の跳ねや揺れも、さりげなく抑制されているのです。あちこち、ままに跳ねているのではなく、蘭寿がターンして燕尾が跳ね上がったとしても、ある一定の位置までしか上がらないのです。それはおそらく、蘭寿が自分の身体をコントロールして踊っているからだと思うのです。

花組の下級生時代、上級生だった磯野千尋さんに「黒燕尾の時はそんなに肩を動かして踊ってはいけない」と注意をされたという蘭寿。その教えが、このダンスにも脈々と受け継がれているのだと実感しました。

長い時間をかけて磨き上げられた「男役芸」のひとつ。黒燕尾のダンスを、蘭寿が極めた瞬間に立ち会えたような気がして幸せでした。

そして、白スモークの中での蘭乃とのデュエットダンス。

やっぱり蘭寿は娘役と踊るとオトコマエっぷりが格段に上がりますね。

白いドレス、黒燕尾、白いスモーク、白いライト。全てが研ぎ澄まされた、神聖な空間で踊り続ける2人。

二手に分かれて、上下から銀橋を渡るシーンも好き。お互いに差し出す手の美しいこと…。そして、ぎゅっと握りあう手と手に感じる、強い信頼感。

デュエットが終わって客席からの拍手に応え、袖へ入る蘭乃を見送った後、今度はひとりでスポットを浴びて客席に挨拶する時に見せる、パァッと晴れやかな笑顔。

1階は勿論、2階の隅々まで、笑顔でしっかり見上げてくれる蘭寿。何とも表現しがたい神々しさにあふれています。



いよいよパレードです。

エトワールは仙名彩世。まろやかで透明感のある美声が、余韻で呆然としている頭と心にスーッと沁み入るように入り込んできます。

大階段のセンター降りは、仙名→瀬戸・鳳・柚香→芹香・桜・桜咲→華形→望海→明日海→蘭乃、の順番。

みんなが「MUGEN DREAM」を歌って降りてくる中、明日海だけは「MUGEN SPIDER」というブレのなさ(笑)。齋藤先生的には、明日海=蜘蛛だったのでしょうね…(微笑)。

そして、蘭寿の登場です。

「だから決めたのさ 僕は君の騎士になることを♪」と歌ったところで、シャララン♪という効果音が入り、それに合わせて蘭寿がシルクハットのつばにちょっと触れます。その瞬間がすごくすごく好き!

大劇場の時はちょっとタメが入ったのですが、東京では結構すぐに次のフレーズに行くようになったのが残念です。あそこで、もうちょっと魔法にかかっていたいのにー。

蘭寿が、「だから決めたのさ 僕は君の騎士(ナイト)になることを 君を想って君を守り 闘い抜いた♪」と歌った時、嗚咽が止まらなくなったことがありました。

この、幸せな光景。愛と光に笑顔あふれた、幸せ過ぎる光景。私たちファンにこの光景を見せるために、ここまで連れてくるために、蘭寿は18年もの長い間、この世界を闘い抜いてくれたのだ…と思った瞬間、堰を切ったように涙があふれ、止まらなくなったのです。

らんとむ…ありがとう…ありがとう…。

最後まで涙が止まらないけれど、主題歌は本当に明るくて爽やかで元気になれます。「黄金の翼舞えば 奇跡は必ず起こる 今こそ羽ばたけ 限りない未知の空♪」という歌詞がすごく好きです。

パレード終わり、緞帳が閉まる前に、蘭寿が「今こそ捧げよう 限りあい愛を君に♪」と歌う場面は、いつも涙があふれて、その笑顔が見えなくなります。でも、どうにかしてその姿を見届けようと思うから頑張ります(←?)。


* * *


何とか書き終えました。また思い出したことがあれば、書き足していくかもしれません。

最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。


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