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渋谷が、カブく。 ~渋谷亀博、開催!~ [歌舞伎]

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名称:
四代目 市川猿之助襲名記念「二代目 市川亀治郎大博覧会」

開催期間:
2012年4月28日(土)~5月9日(水)

場:
渋谷ヒカリエ 9F 「ヒカリエホール」

入場料金:
一般1200円、学生1000円、子ども600円



※チケットは3月中旬よりイープラスにて発売予定

詳細は、コチラへ☆
市川亀治郎大博覧会

6月に四代目猿之助襲名が決まっている亀ちゃん、またまたダイナミックなことをしますね~!

渋谷ヒカリエは、今年4月にオープンが決まっている新しい劇場施設。「東急シアターオーブ」や「ヒカリエホール」、クリエイティブフロア「8/ (はち)」など、渋谷からの文化創造・文化発信の拠点として注目が集まっています。

「ヒカリエホール」のオープニングイベントとして開催されるのが、今回の「渋谷亀博」。

ヒカリエ発のプレスリリースによると、以下のような構成だそうです。

【市川亀治郎の軌跡】
初舞台からこれまでの出演舞台を振り返る

【市川亀治郎の肖像】
フォトグラファー・斎藤芳弘氏による写真の展示

【市川亀治郎の宇宙】
本人所蔵の浮世絵コレクション、陶器、自筆書画、舞台衣裳などを展示

【亀治郎シアター】
2010年『第8回亀治郎の会』で『四ノ切』の狐忠信を勤めた際の稽古や早替わりの様子をドキュメンタリーフィルムを上映

* * *

個人的には、【市川亀治郎の宇宙】がすっごく楽しみ!評論家もうならせるほどの収集数を誇る彼の浮世絵コレクションはいつかぜひ見てみたいと思っていましたし、自筆書画とか、きっと亀ちゃんの頭の中をちょっとのぞけるような気がして、想像するだけでワクワクします☆

ちょうどゴールデンウィークの真っ最中で開催期間も短いので、結構な混雑が予想されますけれども…これはぜひ、足を運びたいと思います。


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壽 初春大歌舞伎 夜の部 [歌舞伎]

2012年1月7日(土) 新橋演舞場 16:30開演

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演舞場に掲げられた櫓を優しく照らす月。

今年のカンゲキ初めは新橋演舞場から。夜の部を観劇してまいりました。お正月らしく晴れやかさ、にぎやかさの中に、「芸の継承」を目の当たりにする感動的な時間にもめぐり会えた、幸せな夜でした。


歌舞伎十八番の内
矢の根

曽我五郎/坂東三津五郎
大薩摩主膳太夫/中村歌六
馬士畑右衛門/坂東秀調
曽我十郎/澤村田之助


お正月らしい晴れやかさ、祝祭感と曽我物らしい勇猛さが絶妙な一幕。これを観ると、「いやぁ、お正月だなー!」という気分に浸れますねー!

三津五郎の五郎は、期待通りの重厚感と安定感。荒事らしい稚気の中に強さもきちんとあります。声よし、姿よしで、ツラネにうっとりと聴き惚れて、ひとつひとつの動きに見惚れてしまいます。

三味線の音(ね)に合わせて、後見2人が五郎に仁王襷をかける場面があるのですが、こちらもテキパキとした仕事ぶりで、お見事!でした。

五郎の夢の中に現れて自らが囚われの身になっていることを告げる兄・十郎には田之助。儚げな風情の中に気品があって、短時間の出番の中でも余韻を残す好演でした。

そういえば、銀座界隈のお店で入手できるフリーペーパー(というには豪華な顔ぶれが並びますが)、『銀座百点』に、田之助さんが「銀座つれづれ」というタイトルでコラムを連載中です。今月号では、昨年亡くなられた中村富十郎丈と中村芝翫丈の思い出についてもふれられています。

銀座百点


五世中村富十郎一周忌追善狂言
連獅子

狂言師右近 後に 親獅子の精/中村吉右衛門
狂言師左近 後に 仔獅子の精/中村鷹之資
僧蓮念/中村錦之助
僧遍念/中村又五郎


昨年1月に亡くなられた中村富十郎丈追善の舞台。富十郎丈の長男・鷹之資と、富十郎丈の遺志によって彼の後ろ盾を勤める吉右衛門による『連獅子』です。

これほど心揺さぶられた獅子はない、これほど心を震わせて観た獅子はない。少なくとも私にとっては、感動的な舞台でした。『連獅子』を観て泣いたのは、今回が初めてかも。

この幕が終わった直後、1階ロビーへ駆け下りた私。1階客席正面入り口向かってすぐ左横に置かれた富十郎丈の遺影に向かって手を合わせ、「素晴らしい舞台を観させていただきました。ありがとうございました」と感謝の気持ちをお伝えしました。そうせずにはおられぬほど、胸がいっぱいでした。

実生活でも親子関係、血縁関係にある役者さん方で勤めることの多い『連獅子』。今回は、血縁関係やお家関係を飛び越えて実現した舞台です。

歌舞伎という芸能は、「血」だけで継承されていくものではなく、偉大なる人を思う「心」によっても受け継がれていくものなのだと実感し、「芸を継承する」ということに対するひとつの新しい「絆」のかたちを目の当たりにしたような。深い感動を覚えたひと幕でした。

まずは前シテの右近と左近。揚幕がサッと上がって吉右衛門と鷹之資が登場する瞬間から、場内を「播磨屋!」「天王寺屋!」という大向こうが埋め尽くします。

鷹之資は12歳。その年齢で、すでに「天王寺屋」という家の名をその身ひとつで背負わなくてはいけません。「天王寺屋!」「天王寺屋―ッ!」と大向こうがかかるたび、背負うものの大きさと重さが、まだまだ幼さの残る背中に積み重なっていくようで・・・。役者を盛り立て、舞台や客席を活気づけるはずの大向こうが、この時ほど重く胸に響いたことはありませんでした。「鷹之資!」とか「大ちゃん!」と大向こうをかけた方が、鷹之資も力むことなく勤められるんじゃないかな・・・でも大向こうさんも、鷹之資を励まそうとしての事だろうしなぁ・・・。

そんなこちらの気持ちなど吹き飛ばしたのが、当の鷹之資。12歳とは思えないしっかりとした踊り、安定感のある足腰の動きに早くもお父様の面影を感じさせて、たまらず号泣・・・。

後シテの仔獅子の精でも揺るぎのない力強さと勢いを感じさせる踊り。お父様に教わったこと、先輩方から教わったこと、お師匠さんから学んだこと、その身に吸収してきたことをきちんと舞台で発揮できるよう、ひとつひとつの動きを丁寧に、思い切りよく勤めていました。

その鷹之資を見守る吉右衛門。連れだって舞う時も、離れて舞う時も、互いに違う方向を向いている時も、常に「気」が鷹之資に向いているのが伝わってきました。その見えないはずの「まなざし」は、本当に温かくて、優しくて・・・ふたたび号泣。

父親という最大の師を早くに亡くし、どんなにか心細いことだろうかと思いますが、富十郎丈のように華も安定感もあり、吉右衛門丈のように堅実で真摯な役者さんになられますよう、応援しております。

『宗論』をもとにした間狂言は、錦之助と又五郎。軽妙かつ明るく場を盛り上げてくださいました。


神明恵和合取組 め組の喧嘩

め組辰五郎/菊五郎
お仲/中村時蔵
尾花屋女房おくら/中村芝雀
九竜山浪右衛門/中村又五郎
染井町藤松/中村菊之助
伊皿子の安三/中村松江
背高の竹/坂東亀三郎
三ツ星半次/坂東亀寿
おもちゃの文次/尾上松也
御成門の鶴吉/市村光
山門の仙太/市川男寅
倅又八/藤間大河
芝浦の銀蔵/大谷桂三
神路山花五郎/澤村由次郎
宇田川町長次郎/河原崎権十郎
島崎楼女房おなみ/市村萬次郎
霜月町亀右衛門/市川團蔵
江戸座喜太郎/坂東彦三郎
四ツ車大八/市川左團次
焚出し喜三郎/中村梅玉


「火事と喧嘩は江戸の華」!!威勢よくイキの良いおあにいさま方の躍動と、角力たちのユーモラスでダイナミックな立ち廻りが楽しい一幕です!

「め組の喧嘩」を観るのは、2007年の團菊祭以来。あの時は「大技をキメる高砂屋」をどうしても観たくて、幕見をしたのでした。(→その時の記事はコチラ

今回も大技をキメる梅玉さんに会えるー[るんるん]

鳶と角力というのは江戸時代の花形職業。その彼らが業種あげての大喧嘩を展開するのものですから、そりゃあ圧倒的迫力です!

圧巻は、なんと言っても「飛びつき」!はしごを使うことなく、壁を駆けのぼって屋根に上るという技です。花道から勢いよく走り込んで、絶妙のタイミングで踏切り、壁を駆けあがるという大技。

屋根の上で仲間が腕を引き上げますが、助走の勢いと踏み込みのタイミングなどが合わなければできない技です。これを、大人数の鳶さんで行うのですよー!もう息をするのも、瞬きするのも忘れて見入ってしまいます。全員上がればパーフェクト!拍手喝さいです!!

菊五郎さんも鳶の頭らしい大きさとイナセぶりが超絶ステキ!!女房お仲役の時蔵との呼吸もピッタリで、別れの場面では思わずウルウル。その前の痴話喧嘩風情の場面も、意地を張り合う2人の間にきちんと愛が感じられて、ちょっとニマニマしちゃいます。

辰五郎とお仲の倅・又八役に藤間大河。尾上松緑の長男です。もうね~、超カワイイ!カワイイだけじゃなくて科白の抑揚や大きさも既にただものじゃない巧さを感じさせて、将来がすごく楽しみです☆

藤松を演じる菊之助は、(私にとっては)久しぶりの立役。あんな素敵な男子、世の中にいないかしらぁ~[黒ハート] って虚実の境を失くすくらいのイケメンでした☆(あ~、でもけんかっ早いところは直して欲しいかも)(←妄想続行中)。いよいよ鳶仲間たちが喧嘩に繰り出す場面では、先陣として纏を振りかざしながら花道を去っていきます。ここが本当にカッコよかった!

そして梅玉。鳶と角力の喧嘩の仲裁に入る焚出し喜三郎役。梅玉にとっては2度目のお役ということで、大技も今回は安心して観られました~☆興奮して危険な状態にある両者に割って入るだけの大きさもバッチリです。

殺気立っている連中の気を和らげるだけのおっとりさと、両者の頭が納得の上で喧嘩を留められるだけの揺るぎなさも感じられて、うっとり。ただ、筋書(公演プログラム)に掲載されているインタビューでは、「(初役で勤めた時)梯子を上ろうとしたら手足が左右にもつれた」とかおっしゃっているものだから、梯子を上る時は若干、手に汗握ってました(笑)。

* * * * *

上演時間はちょうど4時間くらい。初芝居にはちょうど良いバランスと時間ではないでしょうか。

お正月から素晴らしいカンゲキに出会う事ができて、こいつぁ春から縁起よし!!


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『連獅子』に感動…!! [歌舞伎]

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いまだかつて、これほどまでに心が揺さぶられ、心を震わせた『連獅子』があったでしょうか…。

本当に、本当に素晴らしい舞台でした!


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市川亀治郎 @R25 ロング・インタビュー [歌舞伎]

とろりん的「日本ええオトコ四天王」のひとり・市川亀治郎が、今月15日に発刊されたフリーペーパー「R25 No.299」ロング・インタビューに登場しています。

(ちなみに残る3人は既にお察しかと思いますが、蘭寿とむ・大野智・松本潤です)

「アラブの王様、僕に1億円ください!!」という、何ともダイナミックな見出しから始まるインタビューは、24~25頁の見開き2ページ。

亀ちゃんは、白地に赤×青のシンプルなチェックの入ったシャツにダークブラウン(かな?)のネクタイ、黒のスーツといういでたち。シンプルだけど、品が良くて素敵。

来年6月に4代目猿之助襲名が決定している亀ちゃん。ページに掲載された写真を見ていると、風格・・・というか、今までのやんちゃな空気が潜んで、気構えみたいなものがしっかりできてきてるんだなぁ・・・と感じます。おこがましい言い方ですけれど、どんどん「いい顔」になっています。

「歌舞伎って全部が全部面白いものではないし、べつになくても生きていけるものですから」という痛烈な言葉で始まるインタビューは、それでも歌舞伎の入り口となるアドバイスから、自身の襲名のこと、歌舞伎のこと、そして未来のことをクールかつユーモアたっぷりに語っていきます。しっかり浅草歌舞伎のPRも忘れないのが、そつのない亀ちゃんらしいところ(^^)。

もちろん、そのクールで理路整然とした語り口の中には、歌舞伎に対する並々ならぬ愛情と熱意がきちんと込められていて。世間では特殊な職業に分類されるであろう「歌舞伎」に対するモチベーションを、「好き、以外の理由がないもの」ときっぱり言い放つことができる強さと自信、そして責任感。

自身の未来のことについて聞かれて、亀ちゃんはこう言います。

「未来は一瞬でダメになる可能性がある。未来って、今できないことの言い訳のような気がする。(中略)今。今。その積み重ねが未来になる。」

そして最後は、野望を聞かれて「・・・ない。」と答える亀ちゃんですが、やっぱりやんちゃで破天荒な、でも憎めない一言が飛び出します。

「あっ!アラブの石油王がお金くれないかな。1兆円ぐらい(笑)。まず東北に寄付して、残った1億円で芝居を作る。」
(←ここで金額を誌面に書くよう編集者に頼む亀ちゃん)

「将来、じゃなくて、今。作って続けていかないと、職人さんの技も継承されませんから」と、最後はやっぱり、歌舞伎を愛する気持ちがあふれる亀ちゃん。毒舌だけど、やんちゃな言葉ばっかりだけど、それらは全て歌舞伎を心から愛しているからこそ出てくるんですよね。本当に本当に歌舞伎が好きなんだなぁ。

ああ、亀ちゃん、ほんまにええオトコになったわ・・・(←思わず目頭をおさえる)

亀治郎の「今」が凝縮された、読み応えのあるインタビューです。


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中村芝翫丈 [歌舞伎]

訃報:中村芝翫さん83歳 現役最高峰の女方 文化功労者-毎日新聞

現役最高峰の歌舞伎女形で文化功労者の中村芝翫(なかむら・しかん、本名・中村栄次郎=なかむら・えいじろう)さんが10日午前0時50分、肝不全のため東京都内の病院で死去した。83歳。

東京生まれ。祖父、五代目中村歌右衛門、父、五代目中村福助と続く女形の名門、成駒屋の跡取りとして生まれたが33年に5歳で父と死別。同年に四代目児太郎を名のって初舞台を踏んだ。40年に祖父が没し、六代目尾上菊五郎に師事した。41年に七代目福助、67年に七代目芝翫を襲名。

六代目歌右衛門、七代目尾上梅幸に次ぐ女形として頭角を現し、2人の没後は、中村雀右衛門さんと共に現代女形を代表する存在となった。

演技はきめ細やか。時代物、世話物の両方に優れた技量を持ち、舞踊の名手であり中村流家元もつとめる。得意な役は「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の政岡、「合邦」の玉手御前、「野崎村」のお光、「鏡山」のお初、「忠臣蔵九段目」の戸無瀬、「助六」の揚巻、「金閣寺」の雪姫、「吉野川」の定高、舞踊では六代目菊五郎譲りの「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」、「鏡獅子」など。

89年に紫綬褒章、芸術院会員、96年に人間国宝に認定、2006年に文化功労者。08年より日本俳優協会会長。長男の福助さん、次男の橋之助さんは歌舞伎俳優、長女の梅彌さんは舞踊家として活躍。次女の好江さんは中村勘三郎さんの妻。

* * *

誕生日が同じということで、勝手に親近感を感じていた芝翫丈。昨年4月、歌舞伎座さよなら公演での『実録先代萩』が、拝見した最後の舞台となりました。

『女伊達』で見せる、女の粋と色香。歌舞伎座の舞台に、錦絵のようにピタリとおさまる存在感。今までも申し上げていますが、芝翫の舞台姿は「歌舞伎」そのものでした。

神谷町。長い間、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

心から、御冥福をお祈り申し上げます。


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市川亀治郎、四代目市川猿之助襲名へ/香川照之、市川中車襲名へ [歌舞伎]

市川亀治郎さん:四代目猿之助襲名へ

歌舞伎俳優の市川亀治郎さん(35)が、来年6月の新橋演舞場「初代市川猿翁(えんおう) 三代目市川段四郎五十回忌追善 六月大歌舞伎」公演で、四代目市川猿之助を襲名することが分かった。27日午後、松竹が発表する。同時に現・猿之助さん(71)の長男で俳優の香川照之さん(45)=が、市川中車(ちゅうしゃ)を襲名し、香川さんの長男政明さん(7)が市川団子を名乗り初舞台を踏む予定だ。

初代猿翁は、猿之助さんと現・段四郎さん(65)の祖父、三代目段四郎は2人の父。亀治郎さんは、段四郎さんの長男で猿之助さんのおいにあたる。猿之助さんは二代目猿翁を名乗る。

毎日jp(毎日新聞)

* * *

ついに、亀ちゃんが、亀ちゃんじゃなくなる時が来るのですね・・・(しみじみ)。

近年、澤瀉屋の芸を継承することを意識している舞台が続いていた亀治郎。ずーっと「亀治郎」でいるのかなーと思っていたし、個人的にはずっと「亀ちゃん」のままでいて欲しいな、とも思っていたのですが。挑戦することを止めない彼の、新たな挑戦が始まるのですね。

がんばって、亀ちゃーん!!

そして、亀治郎の従兄弟である香川照之さんと息子さんもそれぞれ名跡を襲名して、歌舞伎の舞台へ!映像の世界とは全く違う歌舞伎の世界で、いったいどんな舞台を見せてくださるのでしょうね。

御披露目狂言は、何になるのかな~☆来年6月の演舞場が、今から楽しみでなりません!
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三月大歌舞伎 昼の部 [歌舞伎]

2011年3月20日(日) 新橋演舞場 11:00開演

17・18日と休演して、照明や装置などの節電プランを練り直したという新橋演舞場。ロビーの照明は必要最低限の明るさに抑えられています。階段を使う時や客席に入る時などに少し気を遣う程度で、不便を感じることなく移動できました。

舞台を楽しめる、大好きな役者さんの舞台にふれることができる。歌舞伎を、舞台を観ることができる。そのありがたさをしみじみと実感し、ただ、そのことを感謝したひとときでした。


恩讐の彼方に

中間市九郎 後に 僧了海/尾上松緑
中川実之助/市川染五郎
お弓/尾上菊之助
馬士権作/坂東亀三郎
若き夫/坂東亀寿
浪々の武士/中村亀鶴
中川三郎兵衛/團蔵
石工頭岩五郎/中村歌六

菊池寛原作の舞台。大分県耶馬渓(現在の中津市)に実存する「青の洞門」をめぐり、人間のさまざまな葛藤を描いた作品です。

松緑、染五郎、菊之助、この3人は、着実に、確実に役者として成長していると実感し、感服した一幕でした。

特に松緑は、持ち前の勢いとパワフルな舞台
に、重みと厚みが加わってきたように感じます。感情をダイレクトに発露させることなく、ぐっとお腹の中にため込むことができるような。だからこそ、過去の罪を悔い、自らを責めながらもひたすら洞門を掘り続ける姿が胸に迫ります。

対する染五郎は、感情をまっすぐに表現する若き侍を好演。どんな役を問わず、感情の赴くままに突っ走る役どころというのは、この方の持ち味にすごくハマるのではないかと思います。

この2人が後半、洞門の中で見せる苦悩と葛藤は、緊迫感がありました。そのせめぎ合いが頂点に立った時、ついに洞門は貫通する・・・。洞門に光が差し込むと同時に、2人の思いも浄化されていくのですね。月明かりの下、ひっしと抱き合い空を見上げる2人の姿に涙が出ました。

市九郎(松緑)をたぶらかして悪事に手を染め続ける女、お弓を演じた菊之助。救いようのない「本物の悪女」を演じる菊之助を観たのは、これが初めてだったかも。市九郎を煽って盗人に出した後、その背中を見やりながら「おや、もう暮れ六つかしら」とつぶやく場面は想像以上の凄みと毒気で、3階席でも思わずビビってしまいました(苦笑)。

脇を固める役者陣も安定していました。石工頭として洞門の作業を手伝う岩五郎を演じた歌六は、いつもながらの手堅さと安心感。若き夫とその妻を演じた亀寿と芝のぶは、初々しく仲睦まじい若夫婦ぶりが本当に微笑ましくて、それだけにその後の悲劇を想像すると哀れでなりませんでした。

染五郎、松緑、そして菊之助。将来、新しい歌舞伎座の大看板として立つであろう3人の役者さん。彼らの進化は、まだまだ続きそうです。


六世中村歌右衛門十年祭追善狂言
伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)

御殿
床下

乳人政岡/中村魁春
八汐/中村梅玉
沖の井/中村福助
澄の江/中村松江
一子千松/中村玉太郎
荒獅子男之助/中村歌昇
松島/中村東蔵
仁木弾正/松本幸四郎
栄御前/中村芝翫

2001年にこの世を去った名女方・六世中村歌右衛門の追善狂言。六世歌右衛門の養子である魁春が初役で政岡を勤め、その兄の梅玉が敵役の八汐を演じます。

日ごろから「愛人になっても良い」と豪語してはばからない梅玉さんと、おっとり、ふんわりした風情で舞台を包む魁春さん。お二人の大ファンにとっては見逃せないひと幕です!(かっちょいい立役のはずの梅玉さんが、悪女・・・という苦悩は置いといて)

我が子を犠牲にしてまでもお仕えする鶴千代君を、御家を守り抜こうとする乳人政岡。演じるのにもその壮絶な覚悟が必要であろうこのお役は、「烈女」と呼ばれることもあります。

魁春の政岡は、母親としての情愛と、鶴千代君を守り抜こうとする忠義の心が加不足なく表現されていたように思います。烈女、というより母親としての芯の強さ、情の深さを感じました。

主君と実子という違いはあれど、鶴千代君に対しても、千松に対しても、子どもたちに対する表情やしぐさが本当に優しくて、温かくて・・・母性の強さを感じさせる政岡でした。

鶴千代君には自分が炊いたご飯しか食べさせない政岡。茶道具を使って白米を炊く「飯炊き(ままたき)」という場面があります。六世歌右衛門丈は「政岡のポイントは飯炊きです」と言うほど、この場面を大切にしていたそうです。

茶道の所作を取り入れながら、茶道具を使い、白米を炊く準備をする政岡。この間にもいろいろとしどころや思い入れもあり、なかなか大変な場面だと思うのですが、魁春丈は丁寧に所作をこなしておいででしたよ。ひとつひとつの所作をきっちりなさっていくので、観ているこちらもすごく興味深く拝見しました。

でも時々、魁春丈の不器用なところがちょっと出てきて、柄杓が釜や水指の縁(へり)に当たって、「コン」「カン」と音を立ててしまったり、炭つぎの時にこっそり炭を取り落としそうになってたりするのが、ラブリーでした(笑)。そんな、ちょっと不器用な魁春さんが、大好きです!(←いや、大好きな要素はそこだけじゃないのですよ)

そして、いよいよクライマックス。自分の目の前で我が子千松を八汐に惨殺される場面。鶴千代君をかばいながらカッと目を見開いて耐える政岡の姿に、胸を打たれました。あと、ほんのちょっとのところで張り詰めた糸が切れそうな緊張感。「さすが動じない、さすが烈女」という驚嘆よりは、「よく、よく耐えたものだ」という安堵の思いを強く感じました。

そういったところで、魁春の政岡は強固な意志をもった武家女中、という感じではなく、本当にぎりぎりのところでとどまっているような、けれど絶対にそこからは動かないような、一見、簡単に折れそうなのに、決して折れることのない、優しい強さを
もったひとりの母親、というイメージが強かったです。どこかおっとりとやわらかな存在感が持ち味の、魁春の芸風からにじみ出るものだったのかもしれません。

それともうひとつ、とても驚いたのが、魁春の所作や表情の折々に、どこか六世歌右衛門の面影を感じられたこと。

私は実際に六世歌右衛門丈の舞台を拝見したことはなく、舞台写真を見たことしかありません。けれど、たとえば政岡が無残な死を遂げた我が子を前に激しく嘆く場面。ぐーっと背中を反らして天を仰ぎ見た後、我が子の亡骸に泣き伏す魁春の横顔。ハッとするほど、写真で見た六世歌右衛門丈にそっくりでした。

やはり魁春さんは、いちばん近くで六世歌右衛門丈の芸を見つめ、教えられた人なのだなぁとあらためて感じました。

梅玉の八汐。いや~、普通に怖かったです(←身も蓋もない発言)。

主役の味を決して邪魔しない、かと言って必要以上に控え目にはならない独特の存在感が梅玉の持ち味。今回も必要以上に前に出ることなく、弟である魁春の舞台を引き立てていました。

芝翫の栄御前は、本当にいるだけで充分!本当、ありがとうございます!(←謎)

床下では、荒獅子男之助を演じた歌昇のイキの良さと、仁木弾正を演じた幸四郎の無気味な色気が強く印象に残りました。

特に、謎めいた存在感を残して、ろうそくの灯だけでスー・・・ッと花道奥に消えていく幸四郎の仁木弾正の姿は残像となってまぶたの裏に焼きついています。


曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)

御所五郎蔵

御所五郎蔵/尾上菊五郎
傾城皐月/中村福助
傾城逢州/尾上菊之助
新貝荒蔵/坂東亀三郎
秩父重介/坂東亀寿
二宮太郎次/尾上右近
番頭新造千代菊/中村歌江
梶原平蔵/河原崎権十郎
甲屋女房お京/芝雀
星影土右衛門/中村吉右衛門

平成の菊吉による競演。打ち出しの演目が大顔合わせですと、テンションがぐっと上がりますね!

まずは五條坂仲之町での五郎蔵(菊五郎)と土右衛門(吉右衛門)の顔合わせ。

音羽屋の七五調のセリフ、カッコいい!!本当江戸前の香りと色気と意気(粋)を、その身一つで体現できる御方です。

対する播磨屋は、イキの良い音羽屋をがっしり受け止める安定感。敵役としてのふてぶてしさはもうちょっとかなーと思うのですが、周囲を圧倒する風格はさすが!!

この二人を留めるのが、芝雀演じるお京。なよやかでおっとりとした芸風が持ち味の芝雀さんだけに、配役を聞いた当初は「音羽屋と播磨屋を留めきれるのか」という疑問がわきましたが(←失礼)、2人をはんなりとやわらかく留める芝雀さんのぽってりとした風情がかえって京都の色街という設定には合っていたように思いました。それにしても芝雀さん、いつでも、どんなお役をしても可愛いな~。

さて、場面は変わって、五郎蔵の妻である傾城皐月(福助)が土右衛門に言いくるめられ、五郎蔵に偽りの愛想尽かしをする場面。

福助の皐月は、とっても行儀よく舞台を勤めていましたね。傾城と言っても人の妻ですし、過剰な色気を抑えていたというか。それが五郎蔵を思う気持ちと重なって見えて、土右衛門との板挟みになってしまう苦悩がうかがえました。

対する菊之助の逢州は、登場した瞬間からパッと大輪の花が咲いたかのような華やかさを身にまとっています。その立ち居振る舞いだけで、おそらく五條坂一の美しさと人気を誇る傾城なのだろうと感じさせる存在感でした。

皐月の偽りの愛想尽かしを真に受けた五郎蔵が、皐月の替わりとしてやってきた逢州を闇夜の中で殺めてしまう場面。闇夜の中の立ち廻りで、独特のゆったりとした動きと、逢州の着ていた打掛を使った立ち廻りが倒錯的な美しさを醸し出していました。

* * *

カンゲキレポですので、いつもと変わらないテンションで書きました。どうにもこうにも、キーを打つ手がこの方向性へと向かってしまうというか・・・(汗)。

余震の不安、停電の心配などもある中で、きっちり仕事を進めてくださる舞台スタッフの皆さん(節電プランに対応する舞台進行の変更などもあったことと推測しています)、いつもと変わらぬにこやかな微笑みで迎えてくださる劇場スタッフの皆さん、そして、どんな状況でも、全力で舞台を勤めてくださる役者の方々。心からの感謝と、心からの敬意をお送りしたいと思います。


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新春浅草歌舞伎 第一部 [歌舞伎]

2011年1月22日(土) 浅草公会堂 11:00開演

お正月気分もすっかり抜けましたが、休日の浅草はやっぱり活気がありますね~。この日は浅草歌舞伎の第一部を観劇してまいりました。


お年玉 お年始挨拶 片岡愛之助

体調不良による休演で心配された愛之助丈ですが、無事に復帰されて、そしてお元気そうで良かった!花道の方まで出てお話してくださいました。

お話の中で愛之助丈が拍手の仕方について説明をされて、観客でその練習などもしたのですが、ん~、あれは必要ないのではないかと。

歌舞伎初心者・初体験者が客席をほぼ独占している歌舞伎鑑賞教室などであれば、これは効果的だと思うのですが、歌舞伎愛好家が客席を占める率が高い浅草では、通の方が初心者の方を行動でリードすれば良いと思うんですね。

私も劇場に何度も通う中で、「あ、このタイミングで拍手したら良いんだな」とか「科白の科白の間の拍手は切り良くしないと役者さんが困ることもあるんだな」とか、経験で学びましたものね。ファンがファンを育てるというか、そういう土壌は残されていくと良いですね。



『三人吉三巴白浪』

序幕   大川端庚申塚の場
二幕目 巣鴨吉祥院本堂の場
      裏手墓地の場
      元の本堂の場
大詰    本郷火の見櫓の場

お嬢吉三/中村七之助
お坊吉三/市川亀治郎
伝吉娘おとせ/坂東新悟
手代十三郎/中村亀鶴
和尚吉三/片岡愛之助

第二部の感想で少しお話したのですが、浅草公会堂という劇場は、「歌舞伎としてのライブ感」をいちばん感じられる場所だと思います。何と言うか、客席の熱気がそのまま舞台に反映されるような。客席の熱気が、そのまま舞台に反応として表れるような。ある意味、「生の歌舞伎」の空気をいちばん強く感じられるのですね。

これはあくまでも個人的な意見ですが、今日は、1階席と3階席の客席の熱度の差が極端で、それで舞台も乗りきれていないような印象でした。1階席では大きな拍手が起きていても、3階席では誰ひとり拍手していなくてシーン、ということもありましたし。客席全体の集中力がまとまり切れなくて、その空気が舞台にも伝わったかな…という
印象です。

お芝居は、見どころを切り取ったダイジェスト版にしてあります。通しで三人吉三を観た経験がある人には、講談の起用や二幕目のまとめ方など巧いなぁ~と思え一方、初めて観る人には話が飛躍しすぎるような印象が強くて、舞台の世界に入りにくかったのかも知れません。

ただひとつ、今日はおそらくベテランの大向こうさんが1人いらっしゃっていて、抜群のタイミングで大向こうを掛けてくださったので、ここぞ、という場面の客席の集中度はそれで上がったのは救いでした。歌舞伎における大向こうさんの存在感と有難さをしみじみ実感しました。

大詰の、降りしきる雪の中での立ち廻りは圧巻です!真っ白な雪景色の中、七之助@お嬢吉三が着ている着物の緋色の袖が美しく翻る様子が、残像のようにまぶたの裏に焼きついています。


猿翁十種の内 
『独楽(こま)


独楽売萬作/市川亀治郎
後見/市川段之・市川段一郎

ご当地、浅草寺が登場する舞踊。短時間ながらもお正月らしい晴れやかな踊りです。

スッキリとオトコマエな亀ちゃんの踊りを、存分に堪能することができました!やっぱり、亀ちゃんの踊りは天下一品です!

後見さんのお名前も記載したのは、その素晴らしい動きの数々に心から感動したからです。

2006年の浅草歌舞伎のレポに、「後見をしている時の段之さんのファン」と書いているのですが、今回、その気持をより強く感じました。いや、「亀ちゃんの後見をする段之さん」と、「段之さんを後見にして踊る亀ちゃん」のファンです!この2つは、私にとってはもう、不可欠なもの。亀ちゃんが踊る時は、段之さんじゃなきゃ絶対に嫌だ!というくらいの勢いです(笑)。

段之さんの後見は何一つ無駄な動きがなく洗練されていて、それでいてどんな事にも素早く反応・対応されて、観ていて本当に気持ちが良いです。

今回は、亀治郎が舞台正面を向いたまま、後方に扇を放り投げ、それを後見の段之が受け取って引っ込む・・・というくだりがあるのですが、とても高い弧を描いて落ちてきた扇は、舞台奥に控えていた段之の手元に、まるで吸い込まれるように落ちて行きました。段之はただ、自分の胸の前で手を広げていただけ。

亀ちゃんのコントロールもさすがですが、扇が落ちてくる場所を見越して、そこに自然に待機している段之もお見事です。そしてそこには2人の、お互いに対する揺るぎない信頼感と安心感を感じることができます。

引き抜きの準備をする段之さんの、鮮やかな手さばきも必見です!そして引き抜きが成功した後、少しのあいだ舞台奥にとどまり、踊り続ける亀ちゃんに支障はないか確認してから、音もなく袖にはける姿が心に残りました。

「独りで楽しむ」と書く「独楽(こま)」。舞台でひとり踊る亀ちゃんは、本当に「楽」しんでいる様子がまっすぐに伝わってきました。

そして、彼の踊りには、「薫り」がにじみ出てきた気がします。

亀ちゃんはもともと踊り巧者として知られています。私がファンになった頃(2001年)もその実力は抜きんでていましたが、当時の亀ちゃんの踊りは、周囲の空気を拒絶し、切り裂くような鋭さ、孤高な存在感が印象的でした。

「本当に踊りが綺麗だなぁ~」とうっとりする反面、「この人は、何に抗っているんだろう…?」と漠然とした疑問を感じながら、彼の踊りを観ていた記憶があります。

それが最近は、まわりの空気を自分の内にふわりと受け入れ、包み込んで、ゆったりと遊ばせるような雰囲気が出てきたなぁ、と。踊りに余裕が出てきたというか、動きのキレの良さと鋭さは残したまま、ふくよかさとまろやかさが加わったように思います。

ああ、亀ちゃん、本当に良い役者になってきたな、と素直に思いました。そしてやっぱり、ええ男になったな、と(笑)。

亀ちゃんへの10年愛を、しみじみを実感した「独楽」でした。



まーったくの余談ですが、亀ちゃんのお誕生日は、11月26日。なんと、嵐リーダー・大野さんと一緒なんですよー!!先日気づいて、思いがけない偶然に驚きました。ちなみに本命の蘭寿とむ(らんとむ)さんの誕生日は8月12日なんですけれども(余談パート2)。

あくまでもこの3人が大好きなわたしの戯言ですけれど、亀ちゃん・大野さん・らんとむって、共通点があるように思います。ダンスや踊りなどで見せる身体能力と、ひとつひとつの動作の表現力が半端ない。中でも指先の動きがとても綺麗。そして、ライブ空間における自分の「魅せ方」を心得ていて、それを完全に自分のものにしてしまっている。

そっかぁ、お正月からやみくもに「大好き」を連呼してたけど、わたしが好きになるスターさんて共通点があるんだなぁ、きっと指先の動きが綺麗な人が好きなんだなぁと思って、ひとり納得しちゃいました(笑)。

今回も迷走しがちな結末のレポになってしまいましたが、観に行けて本当に良かったです。今月は歌舞伎をたくさん観ることができて、幸せだなぁ・・・☆

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国立劇場 第272回 平成二十三年初春歌舞伎公演 通し狂言『四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)』 [歌舞伎]

2011年1月8日(土) 国立劇場大劇場 12:00開演

このところ恒例となっている音羽屋さん一門による国立劇場のお正月公演。今年も行ってまいりましたよ~。

通し狂言
『四天王御江戸鏑

相馬太郎良門・鳶頭中組の綱五郎 実ハ 渡辺綱/尾上菊五郎
源頼光・茨木婆/中村時蔵
袴垂保輔・平井保昌/尾上松緑
女郎花咲 実ハ 土蜘蛛の精・一条院/尾上菊之助
やきいもの金・碓井貞光/坂東亀三郎
はらぶとの福・酒田公時/坂東亀寿
弁の内侍/中村梅枝
七里姫・豊後忠政/尾上右近
卜部季武/中村萬太郎
巨瀬国岡/尾上松也
皮肉の喜兵衛/河原崎権十郎
鰊の局/市村萬次郎
伴森右衛門/市川團蔵
星鮫入道蒲鉾/坂東彦三郎
良門伯母 真柴/澤村田之助

音羽屋の芸である『土蜘蛛』の趣向を取り入れた復活狂言です。晴れやかで華やかな大スペクタクル!やっぱりお正月は、理屈抜きに楽しめる芝居が良いですね!

作品としてはあらすじにやや難解は部分(特に袴垂保輔と平井保昌のくだり)があるものの、ひと幕ごとに見せ場を設けてあるので、とても楽しむことができました。

まずは序幕。龍宮城を見立てた宴の場面から始まります。お正月らしく、優美で晴れやかな空間が広がります。センターに立つ菊五郎はさすがの重厚感。七里姫として傍らに控える右近は、乙姫のような龍女のいでたちがぽってりと美しくて、舞台に華を添えていました。

二幕目は、歌舞伎独特の演出手法である「だんまり」と宙乗りが見どころ。秘伝の宝物をめぐって、息も詰まるような緊張感あふれる暗闇でのせめぎ合いが続きます。ここで誰が何を持ち去っていったのか、が後の芝居へと続く大きなキーポイントになります。

ここでは、呪術によってよみがえった土蜘蛛が出現します!!これが結構な大きさで、吃驚しました。これからご覧になる方、お楽しみに~☆

そして土蜘蛛の精(菊之助)による宙乗りは圧巻!妖艶な花魁の衣裳で、銀糸(蜘蛛糸)を派手に撒き散らしながら浮遊する菊之助は、壮絶な美しさと存在感!上手のいちばん端っこのお席から、必死にオペラグラスをで姿を追いました(笑)。

三幕目は、羅生門河岸にある茶屋「中根屋」が舞台。音羽屋が得意とする世話物の世界が広がります。

鳶頭の綱五郎と名を変えて、奪われた宝物の詮議を続ける渡辺綱(菊五郎)と花魁花咲(菊之助)の色模様は、見ているだけでうっとりとしてしまいます。ふたりのちょっとしぐさだけでも、すごく色っぽいんですよね。特に菊之助は婀娜な美しさがにじみ出るようでした。

ニュースでも話題になったAKB48のパロディ、「三宅坂48」が登場するのも、この場です!座敷での宴会の余興として、4名のかむろちゃん(女の子)が出てくるのですが、タータンチェックのミニ丈着物に、ハイソックス!超可愛い!!この姿で、長唄の「会いたかった」「ポニーテールとシュシュ」メドレーに合わせてキュートに歌い踊るのです!

舞台上の役者さん方も、嬉しそうに踊りに加わっていました。そして、そのラブリーなパフォーマンスを誰よりも楽しそうに見つめている音羽屋もツボでした(笑)。

四幕目は再び時代物へ。ですがちょっと面白い趣向があって、渡辺綱をめぐって花魁花咲(菊之助)と、綱の許嫁である弁の内侍(梅枝)が恋のさや当てを繰り広げるのです。

世話物の空気を残す花魁と、時代物らしい優美で気品ある宮廷の女官が綱をめぐって恋の火花を散らすこの場面。歌舞伎らしい独特の色っぽさがあって、良かったですよ~。この後に綱がどういう判断をするのかも見どころです(笑)。梅枝は宮廷からの使者らしく、美しく行儀の良い舞台で好演。

時蔵の頼光と、松緑の袴垂保輔(平井保昌)による芝居は時代物らしい厚みがたっぷり。松緑も、本当に良い役者になってきました。その後、頼光と土蜘蛛の精(菊之助)による闘いは、迫力と妖しさが充分。

大詰は、北野天満宮での激闘。ここも土蜘蛛の精(菊之助)は宙乗りで登場します。飛来するのは花道上ではなく舞台上なのですが、それでも上下に浮遊して舞台下にいる頼光方の家臣たちを睨みつけ、糸を放出する姿は迫力満点です。

そして、燃えさかる炎の中での土蜘蛛の精(菊之助)と、平井保昌(松緑)の最後の対決。ここは若手同士の熱気と気迫が渦巻いていて、見ているこちらまで身体中の血が熱くなるような興奮でした。照明や仕掛けも凝っていて、素晴らしかったです。この場面最後の演出は、とーってもビックリすることうけあいです!私なんて、座席の椅子から飛びあがっちゃいましたもの(笑)。

最後は、歌舞伎らしく後日の決戦を誓って幕となります。様々な趣向や工夫をこらしながらも、歌舞伎らしさ、歌舞伎の味わいはしっかりと残されているのがすごく良いなと思います。

上の文章ではなかなか触れる機会がありませんでしたが、時蔵は頼光の気品と茨木婆の凄みを巧みに演じ分け、流石です。河原崎権十郎は中根屋の呼び込みをする若い者を演じていましたが、この方は立ち居振る舞いに「江戸のにおい」が沁み込んでいて、出てくるだけで舞台に粋な風情が漂うんですよね。貴重な役者さんです。團蔵も憎まれ役を手堅く演じています。

今年も初春らしい夢をしっかりと楽しませていただいた、国立劇場でした~☆



カンゲキ☆アーカイヴ、ひっそりこっそり更新中です。今回は2003年宙組公演の記事をアップしました☆


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新春浅草歌舞伎 第二部 [歌舞伎]

2011年1月5日(水) 浅草公会堂 15:00開演

年始は少しゆっくりお休みをいただいております。世間一般多くの方々が仕事初めのこの日は、歌舞伎の初芝居へ♪浅草へ行ってまいりました!



お年玉〈年始ご挨拶〉 市川亀治郎

浅草恒例のお年玉は、亀ちゃん登場!やったねっ☆

亀ちゃんからは、携帯電話は必ず電源オフにすること、黒手組の助六を演じる思いなどを語っていました。

「舞台は毎日毎日が違うもの。出演者と観客の皆さんの交流があってこそ初めていろいろな反応があり、印象も違ってくるもの。まさに舞台は『一期一会』なのです」というようなことをおっしゃっていました。同感ですね~。

浅草歌舞伎はほぼ毎年観劇してますが、歌舞伎としての「ライブ感」をいちばん感じる場所なんですよね。出演者の熱気と、お客さんの熱気が密接に繋がり合える空間なのかもしれません。



壺坂霊験記

座頭沢市/片岡愛之助
女房お里/中村七之助

ファンタジーな展開の中に夫婦の細やかな愛情の交流がリアルに描かれていて、個人的にはとても好きな作品ですが…もう、七之助のお里ちゃんに惚れました!

若々しさ、瑞々しさ、よく気が効いて夫の身の回りの世話を助けるまめまめしさ、夫を一途に慕うひたむきさ。こんな素敵な女性にこれほどまでに愛されて、愛之助@沢市は本当~に幸せだなぁ~としみじみ思いましたもの。

目の見えない夫のために、お里には折々にそういったことを感じさせる動作があります。それが型ではなくて、夫を思っての動作なんだなぁというのがきちんを納得させられる動き。ああ、本当にお里は心から沢市を愛しているんだなぁと思って、なんだか泣けちゃいました。

七之助の女方は、もちろん役としての型や性根を心得ていながら、それよりもまず目の前の相手を心から慕っているというのがすごく伝わってきます。それだけに、沢市が身を投げたと知ってからの半狂乱の悲しみが胸に迫ってきました。

これだけ素敵な妻に一途に愛されているのだから、愛之助の沢市も乗らないはずがありません!妻のひたむきな愛が伝わってくるだけに、沢市の中の自責の念、後悔、絶望感はどんどん広がっていきます。どちらもお互いを深く深く愛しているが故の行動、なのですよね…。

幕開けからこの2人は本当に仲良しで、お里がぴったりと沢市に寄り添っているのが本当に微笑ましいです。壺坂寺にお参りする時も、お互いの身体をくっつけてお祈りしている後姿がとても愛らしくて、思わず笑みがこぼれてしまいます。離れられない2人の、それぞれの強い思いが伝わってくるだけに、後に起こる悲劇も際立つのですが…。

悲劇から一転、ハッピーエンド!の終幕。初めて見るお里の姿に驚く沢市がラブリーです(笑)。「お前、もう杖はいらぬじゃないわいなぁ」という台詞は、やっぱり好きですね~。七之助は屈託なくこの台詞を言っていて、その瑞々しさがまた良かったなぁ。

もう、心の底からハッピーになれました!ありがとう、らぶりん、七ちゃん!



猿之助四十八撰の内
黒手組曲輪達引
(くろてぐみくるわのたてひき)

番頭権九郎・牛若伝次・花川戸助六/市川亀治郎
三浦屋揚巻/中村七之助
同 新造白玉/市川春猿
白酒売新兵衛/市川寿猿
三浦屋女房お仲/市川笑三郎
鳥居新左衛門/中村亀鶴
紀伊国屋文左衛門/片岡愛之助

亀ちゃんの助六が見られるとあって、開演前からドキドキワクワク。

市川團十郎家の歌舞伎十八番の内『助六所縁江戸桜』のパロディーということで、役名や劇中の見どころもそういった場面が多く見受けられます。煙管を足の指に挟んで渡したり、下駄を頭に乗せたり。これが全て逆になっていて、敵役の新左衛門から助六に対して行われるのです。『助六』を観たことのある人は、「ああ、あの場面ね」と思わずうなずいてしまいますよ。

この芝居では、うだつの上がらない番頭権九郎と白玉の道行から始まります。憧れの白玉と過ごせるとあってウキウキの権九郎ですが、実は白玉は牛若伝次と深い仲。白玉は伝次と駆け落ちするために、わざと権九郎を誘い出し、その路銀を奪い取る算段だったのです。

不忍池で待ち伏せしていた伝次は権九郎から路銀を奪い、彼を池に突き落とします。この場面を、亀治郎が二役早替わりで見せます。

品がなくて情けない顔立ちの権九郎から、一瞬にして水も滴る色男に大変身!カッコいい!!白玉との絡みも浮世絵のように粋で、うっとりしちゃいます。

追手が迫ってきたので、伝次は逃走します。そして池の中から、突き落とされた権九郎が這い上がってきて…。そう、ここも亀治郎が伝次→権九郎への早替わりを見せます。

この後、突然浅草の芝居小屋はライブ会場に。ネタばれのため、詳しくはお話しませんが、この日はギターをかき鳴らす亀ちゃんを楽しみました☆

さて、舞台は変わって吉原・三浦屋店先へ。亀治郎の助六が大活躍です!!

ああ、カッコいい亀ちゃんはやっぱりカッコいい(完全に目がハート❤)

そして本水の大立ち廻り!3階席から観ても、ものすごい気迫と気合が伝わってきます!客席もものすごいどよめきと拍手喝采でした。

揚巻を演じた七之助は、この芝居では吉原一の花魁という風格よりも若さが勝ってしまったかな、という印象ですが、それでも助六を心から愛する気持ち、守り支えたいという気持ちがしっかりと備わっていて好演。「その棒の端へ、わしが身へちょっとでもふれると、 五丁町は暗闇じゃぞえ」という胸のすく啖呵。やっぱりこの台詞は素敵だなぁ~。

助六を見守る紀伊国屋文左衛門を演じた愛之助は、短時間の出番ながら粋な風情を見せて印象的。敵役の鳥居新左衛門の亀鶴もふてぶてしさの中に敵役としてのオーラがきちんと出ていて良かったです。

出演者もお客さんも同じテンションで盛り上がることのできる浅草歌舞伎、大好きです!



この日は、浅草へ行く前に足を延ばして西新井大師へお参り。ふらりと入った門前のうなぎ屋さんでうな重をいただきました。昔ながらの風情のあるお店で、うなぎも美味しかったです。

うな重アップ.JPG

心身ともに栄養をもらった1日でした☆
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