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新国立劇場 バレエ入門講座 第2回 [講座・現代演劇]

先週は、月に1度の新国立劇場バレエ入門講座へ行って来ました。


オペラシティタワー。
この超高層ビルを大黒柱にして、片方にオペラシティコンサートホール、
そしてもう片方に新国立劇場が両建てになっています。

*****

今回は軽くおさらいをした後、新国立劇場の公演『白鳥の湖』を
ビデオ鑑賞しつつ、演出や振付の様式の違いを学んでいく、
というのが主な内容…の、予定。

しかし、おしゃべり好きの講師・森龍朗先生、そのまま予定通りにはいきません。
いつしかお話は、とろりんが舞台芸術で今、最も興味を持っている
「構図」のお話へと突入ーーーー♪

要約してしまえば、舞台の「構図」は東洋・西洋関係なくしっかりと図式化されていて、
その中で、役者の位置は定められているのですよ、という事でした。

舞台を図式化してみると、このようになるそうです。

------------------------------------------------
下手          ホリゾント(舞台奥)        上手
     
              ↑
              北(冬)/玄武(黒)

西(秋)/白虎(白)              東(春)/青龍(青)
   ←                      →

              南(夏)/朱雀(朱)
              ↓
-------------------------------------------------
   客席

星宿図などでもこのように方角によって色や季節が決まっているように、
欧米でも、舞台の方角と季節は同じように考えられているそうです。
南=夏、とか。面白いですね~。

***

…と、いう話で既に講義時間の半分が経過(笑)。

さてさて、遅ればせながら始まった『白鳥の湖』。
今回は英国ロイヤルバレエのプリマ、ダーシー・バッセルと、
新国立劇場バレエ団の星、酒井はなちゃんのオデット(白鳥)を比較。
(公演年度など、詳細は不明です…申し訳ありません)

やっぱり時間が足りなくなってきたので(笑)、今回は第2幕の、
王子とオデットが出逢い、パ・ド・ドゥを踊るシーンを重点的に(?)鑑賞。

前・新国立劇場バレエチーフプロデューサー・森先生、
ここでもこぼれ話絶好調です。

まず最初に、美しい音楽を奏でるオーケストラと指揮者の先生が映し出されます。

「実はこの(指揮者の)□■先生、当日になってのピンチヒッターだったんですよ。
わざわざロシアから読んだ指揮者が公演前日になって倒れちゃって、真夜中の
11時くらいに急遽電話して、お願いしたんですよ~。
でも本当に素晴らしい指揮で、 こんなことは□■先生しかできませんね。」

…た、大変だったんですね…。

そして、舞台奥の湖を、白鳥の影(小道具)がスーッと横切り、
オデットの登場を暗示する場面。

「これ、初日だったから失敗しちゃったんです。
音楽に合わせてこの時に消えていなきゃいけないのに、
まだこんなトコにいるでしょ?ほら、オデット出てきちゃった(笑)」

確かに、ゆったりと湖面を進んでいた白鳥の影が、途中から徐々に
スピードアップしていくなぁ…と思っていたら、突然ものすごい勢いで上手に
引っ込んだのとほぼ同時に、バッセル演じるオデット姫が同じく上手から登場!

白鳥、間一髪(笑)。

バッセルが登場したところで、再び森先生の楽しいお話に花が咲きます。

「これ、実は都ちゃん(吉田都。英国ロイヤルバレエ団エトワール)を
呼ぶ予定だったんですが、来日直前に都ちゃんが足を痛めちゃって。
それで同じロイヤルバレエのダーシー(・バッセル)に来てもらったんです」

…アクシデント続きの公演だったんですね…。

ところが!
ここで面白い事が起きるのです。

バッセルは突然の来日、そして突然のオデット出演だったので、
新国立劇場側が考えていた演出に合わせる時間がありませんでした。

そこで彼女の方から
「申し訳ないが、今回は自分が学んだオデットで踊らせて欲しい」
との申し出があり、森先生は快く了承。(それしか方法がないですから)

森先生によると、バッセルはボリショイバレエ学校で学んだ経験があり、
その時にオデットの踊りを学んだのだそうです。

ですから、彼女のオデットの踊りというのは初演の振付に
かなり忠実なものだったそうで、現在ではほとんど演じられることのない
マイムのお芝居が入り、今にして思えば、非常に貴重な舞台となったのです。

その場面を観てみると、「あなたはなぜ、こんなところにいるのですか?」
という王子による問いかけからマイムが始まっています。

バッセル扮するオデットは、
「私は魔王の呪いにかかり、この母の涙でできた湖で昼は白鳥として時を過ごし、
夜の間だけ、人間に戻れるのです。呪いを解く方法はただ1つ、誰かが私に、
永遠の愛を誓ってくれることだけなのです」
という身の上話を、踊りではなく完全にマイムを使って丁寧に表現しています。

対する酒井はなのオデット。
ほとんどマイムの芝居はなく、手の動きで「永遠の愛を~」というしぐさの後、
すぐに王子とのパ・ド・ドゥに入ります。
森先生によると、現在はこの演出が主流なのだそうです。

演出や解釈、振付の異なる手法というのは、ダンサーの踊りにも
深く影響を与えているのだな、という事を実感させられた、大変意義深いお話でした。

最後に、森先生のお言葉を。

「僕ね、どうしても分からないのが、王子が永遠の愛を誓います、
と右手を空に向かって高く差し伸べた時、オデットは『そんなことなさらないで』
って、腕を下ろさせるんですよね。これが何でなのか、今でも分からない」

先生…。
バレエの事は百戦錬磨でも、
女心を読み取るのはまだまだ修行が必要のようです(笑)。


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コメント 5

ラブ

へぇー、こんな講義があるのですね。
完璧だ…と思う舞台にも、いろいろトラブルあるなんて
おもしろいですね。マイムがたくさん入るバレエ、見て
みたいなぁ。
by ラブ (2006-02-15 09:37) 

“某友人”

とろりん師匠の「バレエ講座」、まだかいな?
…と思っていた途端に更新されており、嬉しい驚きでした。
そして、いつもながらに興味深いお話でございました。
スピードアップしてパドブレで横切る白鳥…ウケちゃいますね(笑)。
突如、ギアチェンジ!ですね。(焦ったでしょうねー。「遠いよっ(汗)。」みたいな。)
バレエにも「型」みたいのが、あるんですね。
私は、ロイヤル系、ボリショイ系…意識せずに習ってきてしまったので、よく分からないのですが…。面白いですね。
by “某友人” (2006-02-15 09:39) 

★とろりん★

ラブ様、コメント&nice!をありがとうございます。
様々なトラブル、アクシデントを如何に乗り越え、
完璧な舞台を目指すのか、それが舞台の見どころですね。

”某友人”殿、いつもコメントありがとうございます☆
歌舞伎の「型」が役者によって受け継がれていくのに対して、
(「音羽屋型」とか)バレエの「型」は、振付家や演出家の
解釈によって受け継がれていくようですね。そこも面白い視点ですね。
いよいよ来月は最終回ですよ~。…終われるのか?(笑)
by ★とろりん★ (2006-02-15 10:40) 

櫻

うわあ、面白そう。
その講義、受けてみたいです。
これから国立劇場情報に注意してます。
最終回はどんなことやるのかな?興味シンシンです。
by (2006-02-16 05:08) 

★とろりん★

櫻様、お越しいただきありがとうございます☆
最終回は…果たして無事にお話はまとまるのでしょうか?(笑)
でも森先生はとても上品な感じのおじいさま、という感じで素敵です。

新国立劇場には「情報センター」があり、そこで公演した
舞台のビデオやプログラム、演劇関連の書籍を閲覧できます。
演劇ファンにはたまらない場所ですよ~。
by ★とろりん★ (2006-02-16 11:10) 

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