グッドガール、シンシア! [ワタクシゴト]
「歌劇のまち」として知られる兵庫県宝塚市。
実はもうひとつ、「シンシアのまち」としても知られています。
彼女がシンシア。
おそらく、「日本で一番有名な”介助犬”」として活躍したラブラドルレトリバーです。
介助犬とは、身体に不自由を抱える人に代わり、電話や新聞を渡したり、
電気をつけたりエレベーターのボタンを押したり、駐車券を取ったり、
落としたものを拾ったりと、まさにその人の手足となってお手伝いする犬です。
現在では、盲導犬、聴導犬ともに「補助犬」として法律で認定されています。
そのシンシアが、先月14日に息を引き取りました。
12歳。人間の年齢で言えば70歳くらい。
昨年暮れに介助犬を引退し、弟犬のエルモに後継を譲ったばかりでした。
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シンシアは宝塚市内に在住の会社員、木村佳友さんの元へ
ペットとしてやってきました。交通事故に巻き込まれた木村さんは
下半身が不自由で、車椅子での行動を余儀なくされていました。
あまりにもやんちゃでお転婆なシンシアに手を焼いた木村さんご夫妻は、
「少しは大人しくなってくれたら…」という思いで、介助犬の訓練センターへ
預かってもらうことにします。
これが、後に行政を、そして国会を動かした「介助犬シンシア」としての第一歩でした。
シンシアは1996年に介助犬として認定を受け、活動を開始。
その頃、介助犬はまだ法的には認知されておらず、「ペット」という認識が強かったため、
公共の交通機関や店舗などへの同伴が受け容れられていませんでした。
1998年から、毎日新聞阪神支局によって介助犬の法的認知を求める
「シンシアキャンペーン」が開始され、シンシアと木村さんの活動を記録する連載が始まります。
この連載は何と、シンシアが亡くなる直前の今年2月まで続きました。
1999年、宝塚市は「シンシアのまち」宣言を行い、
「全ての人に優しいまちづくり」を主な政策指針の1つとして打ち出します。
それと同時に盲導犬、聴導犬、そして介助犬など「補助犬」の法的な認知を
求める動きが活発になります。
シンシアの国会訪問などを経て、2002年、公共交通機関や公共建物への
介助犬の同伴を認める「身体障害者補助犬法」が制定、2003年より施行されました。
ちなみに、全国で初めて「介助犬」の入店を認めた大型店舗は、ダイエーでした。(1999年~)
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私の実家は毎日新聞をとっており、また歌劇ファンとしては
親しみ深い宝塚市の話題ということで、連載記事にはいつも目を通していました。
記事を通して見えるシンシアは、とにかくご主人のお手伝いが大好きでたまらない、
明るくて人懐っこいワンちゃん、という印象。
記者さんがやってくると、必ず「遊んでぇ~♪」とお腹を見せたりじゃれたりするのですが、
いざ、ハーネスを着けるとバリッと仕事モードに切り替わり、木村さんの指示を
一言ももらさず受け取り、従ったのだそうです。
お仕事をきちんとすると、返ってくるのは
「グッドガール、シンシア!」という、木村さんの声。
シンシアはその声を聞くと、本当に嬉しそうにしていたそうです。
そんなシンシアの様子や、周囲の人との心温まる交流を毎朝、
新聞で伝え聞くだけで、なんだかこちらまでじんわりと温かな気持ちになりました。
実際に会った事はないけれど、シンシアの記事で心を和む思いをしていた、
そんな読者は多かったと思います。(言うまでもなく、私もその1人です)
昨年末、シンシア引退のニュースを偶然知って、
「そうだよなぁ、かなり長いこと介助犬として頑張ってたもんなぁ…」
としみじみしていたのですが、つい先ほど届いた神戸新聞のメールマガジンで
シンシアの訃報を知り、驚きました。ちょっとショックでした。
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現在、補助犬として認定されている犬の数は、
盲導犬957頭、介助犬30頭、聴導犬11頭だそうです。(注:2006年3月1日の時点)
もっともっと、人のお手伝いをする事が大好きなワンちゃん達が増えることを、
シンシアも天国から見守っているでしょうね。
そのために私たち人間が1人1人、出来ることは何なのか、考えてみよう…。
そう思った、春の日の夕暮れでした。
介助犬「シンシア日記」はコチラ
厚生労働省 身体障害者補助犬法についてのホームページはコチラ
犬や猫を商品のように扱う今の日本は、ほんとにおかしな国だし、それに気づかない大人達も・・・悲しいことですね。
by Baldhead1010 (2006-04-09 16:40)
Baldhead1010さま、nice!とコメントありがとうございます☆
おっしゃるように、動物が痛めつけられるような、
人間として情けなく、悲しくなるような事件が後を絶ちませんが、
動物を心の支えとして、共に日々を歩いている方はそれ以上に多いと信じています。
木村さんとシンシアが育んできた絆は、私たち人間と動物たちとが共に歩んでいく
これからの関係について、良きアドバイスを指し示しているように思えます。
by ★とろりん★ (2006-04-10 13:28)