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劇団四季ミュージカル 『クレイジー・フォー・ユー』 [劇団四季]

2006年4月8日(土) 四季劇場「秋」 17:30開演


約半年ぶりに、「CATS」以外の劇団四季の舞台を観てきました。

1990年はじめにブロードウェイで初演され、続く1993年に日本初演。
「プロデューサーズ」の成功によってブロードウェイでも映画界でも
今脚光を浴びているスーザン・ストローマンが振付を担当し、
そして音楽は「ラプソディ・イン・ブルー」などの名曲で知られるガーシュイン。
洗練されたようでありながら、ちょっと素朴なラブコメディです。

【出演】

ボビー・チャイルド・・・荒川 務
ポリー・ベーカー・・・樋口麻美
ベラ・ザングラー・・・栗原英雄
ボビーの母・・・斉藤昭子

【物語】

時は1930年代のニューヨーク。
銀行の跡取り息子、ボビーは三度の飯よりダンス好き。今日も仕事を放り出して、
大物プロデューサー・ザングラーに自分のタップを売り込んでいる始末。

母親の怒りに触れたボビーはある物件を差し押さえるため、渋々ながら
ネバダ州の小さな町、デッドロックへ向かいます。かつては金鉱の町として
にぎわったデッドロックもすっかり寂れてしまい、昔の面影はすっかり失われています。

デッドロックにたどり着いたボビーは、ポリーという勝ち気な娘と出逢い、一目惚れ。
ところがポリーは、ボビーが差し押さえに来た劇場の一人娘だったのです。
ボビーの正体を知ったポリーはすっかり彼を拒絶してしまいます。

しかし、そんな事でめげるボビーではありません。
ある日、大物プロデューサー・ザングラーが突然デッドロックの町に現れ、
ここでショーをやると宣言します。突然のことに町は騒然。
実はこの“ザングラー”は、変装したボビー。
でも、ポリーは“ザングラー”を本物と思い込み、劇場復活のチャンスと大喜び。

ボビーは“ザングラー”としてショーの準備を進めながらも、
ポリーの気持ちを自分の方へ向かせようと奮闘しますが、空回りばかり・・・。
それどころか、なんとポリーは“ザングラー”に恋をしてしまったのです!!

さあ、ボビー、ポリー、“ザングラー”の奇妙な三角関係はいったいどうなるのでしょう?
怒濤の如くハプニングが発生する中、ついにショーは初日を迎えます…が?

【カンゲキレポ】

西部のさびれた小さな町で生まれた小さな恋。
その中で繰り広げられる誤解とすれ違いが周囲の人々も巻き込み、
ついには町全体をそしてそこに生きる人々全てをHAPPYにしてしまう
ミュージカルです。

***

翻訳ミュージカルで難しいのは、オリジナルの脚本に描かれた会話が持つ
コメディセンスやシューモア、リズム感を崩すことなく、どのように表現するか、
ですが、四季「クレイジー…」では、その翻訳の表現はとても滑らかで
オリジナルのエッセンスを殺すことなく、ちょっと猥雑だけど下品にはならない、
洒落とユーモアを効かせた内容に仕上がっています。

そこで、次に問題となるのが「伝え方」の問題。つまり台詞術。

劇団四季には独自の発声法、「母音法」があります。
母音の発音に重点を置くことで、後方の観客にも言葉が明瞭に伝えられるようにと
編み出された技法で、母音法をマスターしなくては四季の舞台には上がれないと言われています。

この母音法、特に発音が流れがちになってしまう歌唱の場面では、
どのような言葉をメロディーに乗せて謡っているのか明瞭に伝わるので、効果的です。
全編がほとんど歌で紡がれていく「CATS」や「オペラ座の怪人」、
「アイーダ」などでは非常に優れた効果を発揮します。

しかし、「会話」での芝居も少なからずある本作では、言葉に感情の流れを
うまく乗せられないまま発声しているので台詞がぎくしゃくしており、
まるでロボットが話をしているような違和感が残りました。
発音に気をとられたあまり、会話の持つ洒落感やリズムが失われてしまい、
テンポが重くなってしまったのが残念でした。

母音法は劇団四季のマスターするべき「ツール」であって、その習得したツールを
どのように使い、活かすのかは俳優自身なのだと思います。
実際に、ヒロインを勤めた樋口麻美は母音法を忠実に守りながらも
言葉にうまく心情を乗せていて、ヒロインの気持ちがしっかりと伝わってきました。

***

「言葉」に関しては、そのように消化不良な感じが残ってしまいました。
しかし、ダンスシーンはさすがに各方面から日本屈指のダンサーを揃えている
四季だけに、心から楽しめるダンスナンバーに仕上がっています。
主役カップルの素敵なデュエットダンスやザングラー・フォーリーズ(コーラスガール)
のポップなタップダンスなど、見どころ満載です。

特に第1部ラストの「アイ・ガット・リズム」は、クラップストンプとキュートなタップが
絶妙のコンビネーションを見せ、大迫力でとっても楽しい心浮き立つ名場面でした。

***

それでは、心惹かれた出演者をちょこっと述べておきますね。

まずはヒロイン・ポリー役の樋口麻美。

今回、ともすれば「何だか消化不良だった…」という感想だけで終わりそうな感じだった
舞台への意識を、引き留め続けてくれたのが彼女だった、と言っても過言ではありません。
四季の若手女優の中でもその実力は突出しており、濱田めぐみと共に
現在、四季の看板女優として立つ野村玲子と保坂知寿の、次の世代を担うべき存在です。

彼女は、まず素晴らしい歌唱力です。
高音が伸びやかで、すごく心地よい響きです。
台詞もとても滑らかで歯切れが良く、舞台上で誰よりも役として生きていました。

今回、密かに注目していたのが、ザングラー・フォーリーズの
リーダー的存在で、ビルの友人でもあるテスを演じた有永美奈子。
実は彼女、元タカラジェンヌです。「未宙星沙(みひろ せいさ)」という芸名で、
男役ダンサーとして活躍していました。
あ、今回はもちろん女性の役です、念のため(^ ^ )。

そんな有永さんの四季での舞台姿。凛とした雰囲気が素敵で、
ビルの頼もしい友人、という感じがよく出ていました。
時々、ダンスに男役の名残が見えるのが(肩の使い方とか、アゴの引き方とか)、
何だか懐かしかったです(笑)。

***

それにしても、四季のカーテンコールは相変わらず多すぎますねぇ…。
一部観客のアンコールも、ちょっとしつこすぎるような気がします。

*****

台詞に対してはちょっと消化不良な感じの残る舞台でしたが、
音楽はガーシュインだけに「どこかで聴いたことあるな~」という
馴染みの深い曲も結構ありますし、ストローマン振付のダンスは見応え充分ですし、
色々と趣向を凝らしたダンスナンバーが豊富なので、何も考えずに楽しめる舞台です。

今日のお星さま…★★★☆☆ (ポリーとテスに乾杯☆)

ついでにコチラも、ぽちっとな。


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コメント 3

“某友人”

「クレイジー…」はひと昔前に見ました。加藤さんが主演でした。ちなみに、このミュージカルのおかげで「crazy for ...」という熟語が覚えられました。
四季の母音法、なるほど、なるほど。四季出身の方の歌唱方法に、目に見えないルールがあるような気がしていたのですが、なんとなく分かったようなきがしました。
私はピンクのお衣装が大好きです!
by “某友人” (2006-04-10 22:04) 

ラブ

おっ、いいなぁ。
芝居は、なかなか見に行けません。
劇団四季は、一度は見たい…と思っているのですが、
「いつでも観れる」と思っているとダメですね。
by ラブ (2006-04-11 08:19) 

★とろりん★

”某友人”殿、コメントありがとうございます☆
実はここだけの話、私も加藤敬二さんのボビーを
観てみたかったのですが…。次回に期待!!
私はブルー地に白い花柄模様のワンピースがお気に入りです☆

ラブさま、nice!とコメントありがとうございます☆
そうですねえ、お芝居は時間を作らないとなかなか行けませんねぇ。
私は劇場が好きなので、無理をしてでも、「体力の限界に挑戦!」
みたいな勢いで時間を作っていますが…(笑)。
by ★とろりん★ (2006-04-13 14:57) 

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