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宝塚歌劇宙組東京公演『カサブランカ』感想 [宝塚歌劇]

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あまりに思い入れが強すぎて、どこから何を、どのように書けば良いのか…といったところでしたが、何とかまとめました。いや、全然まとめきれておりませんが、とりあえず全体的な感想を…。

ちなみにトップ画像のお花はカサブランカではなく、オリエンタルリリーです。紛らわしくてすみません(汗)。

【あらすじ】

1941年12月、フランス領モロッコの首都、カサブランカ。対岸のヨーロッパではナチスドイツの進撃はとどまることを知らず、既にフランスの首都パリは陥落、ナチスの脅威から逃れるためには、アメリカへの亡命だけがただひとつの方法でした。

当時、ヨーロッパ諸国からアメリカへ亡命するルートはただ1つ。まだナチスの手が及んでいないフランス南部の都市マルセイユからいったんカサブランカに入り、そこから中立国であったポルトガルの首都リスボンを経由してアメリカへ向かうという方法でした。

しかしフランス領であるカサブランカからリスボンへ渡るには、通行許可証(ビザ)が必要となります。既にナチスドイツの息がかかっているフランス政府がビザを発給するには大変な制約があり、多くの人々はカサブランカで足止めされる事になるのでした。

アメリカ人のリチャード・ブレイン、通称リック(大空祐飛)が経営するカサブランカのカジノ兼カフェ「カフェ・アメリカン」には、ビザの発給を待ちわびるヨーロッパ人、現地人、フランス政府の要人や軍人が集まる一大社交場として人気を誇っていました。

ある日、リックはカサブランカの警視総監ルノー(北翔海莉)から、ヴィクター・ラズロ(蘭寿とむ)という男が「カフェ・アメリカン」に来店する事を告げられます。ラズロは反ナチス運動(レジスタンス)指導者として世界中で名を知られており、特にナチスの収容所から脱走したことによって、その存在はカリスマ的なものとなっていました。ナチスの軍人、シュトラッサー(悠未ひろ)は、ラズロを収監しようと機会を狙います。

やがて、ラズロが1人の女性を伴って「カフェ・アメリカン」に現れます。その女性に気付いたリックは、顔色を変えます。彼女の名前はイルザ・ランド(野々すみ花)。彼女は、リックがまだパリにいた頃に深く愛し合った女性その人だったのです。しかしある日、イルザはたった1通の手紙を残してリックの目の前から姿を消したのでした・・・。

突然に終わった恋。そして、突然に再会した恋人たち。ひとつひとつ、明らかになっていく真実。カサブランカに、様々な思いがゆらめきます。

【カンゲキレポ】


「生きることを諦めない人々の物語」。

宙組の『カサブランカ』は、そんな舞台でした。

「生きる」ことは、「闘う」こと。この舞台に登場する人々は、誰もが何かと闘っています。

若い夫婦、ヤンとアニーナは、ヴィザをつかむ為に。ラズロは、反ナチスの立場から平和を勝ち取る為に。シュトラッサーは、ドイツの栄光を確固たるものにするために。「やり過ごす」と歌うルノーだって、日々濃くなっていくナチスドイツの影をいかにかわすのか、闘っています。

そしてリックとイルザは、過去の愛と、過去の自分と向き合う為に。

自分の正義と。自分の愛と。自分の過去と闘うことを諦めない。生きることを諦めない。その真摯な姿勢が一本の芯として舞台全体に突き抜けていたように思います。


そして、出演者の誰もが、舞台の上で第二次世界大戦前夜のカサブランカに生きていました。それだけの臨場感と緊迫感の中で、客席の我々も同じく、あの時代のカサブランカに息づいていたような錯覚を覚えたと思います。

その臨場感と緊迫感を創り上げていたのが、宙組生徒総動員で歌い上げられるダイナミックなコーラスの数々。場面によっては蘭寿や北翔などスター、宙組組長の寿つかさや副組長の鈴奈沙也など幹部クラスまでが影コーラスで参加しています。

上級生から下級生に至るまで、全員が全力を出してくるパワフルなコーラスは、宙組の誇りです。さすが演出の小池先生、その宙組の強みがひときわ光るコーラスの場面を数多く取り入れています。歌唱力のある下級生にも折々に目立つ場面やソロを与えているところにも、生徒に対する愛情を感じますね~。(個人的には、ぜひとも花里まなちゃんにもソロ場面を与えて欲しかった…)

圧倒的な迫力のコーラスが劇場中に響きわたるたびに、心が強く揺さぶられ、震えました。毎回、コーラス場面では、嗚咽するくらいに泣いてました(どんだけ入り込んでいるのかワタシ)。

「ヴィザを ヴィザを!」と、フランス政府に詰め寄る人々の、追いつめられた逼迫感。

リスボン行きの飛行機を見上げて「生きていれば 命さえ永らえれば いつか乗れる 銀色の翼に」と、絶望の中にも希望を見いだそうとする、祈りにも似た思い。

「パリにナチスがやってくる」と歌う、パリ市民の言いしれぬ恐怖と混乱。

ナチスドイツに抗議するため、俊敏にもほどがあるラズロ氏による指揮のもと(←ポイント)、フランス国家を力強く歌う亡命者たち…。

どの場面も、どのコーラスも感情がそのまま真っ直ぐ心に響いてきて、その場面の主役である亡命希望者たち・パリ市民たち…あの時代に生きた人々の思いに、ひたすら感情移入していました。今思いだしても、熱いものがこみ上げてきます。宙組生の歌声なくして、あの『カサブランカ』はありえませんでした。

***

もうひとつ、秀逸だと思ったのは映像を使った演出の数々。

私は基本的に、舞台で映像が使用されるのはあまり好まないのですが、今回の舞台では、非常に効果的に使用されていました。舞台は生身の人間が主役である以上、映像が役者より前面に出てくるべきではないと思っています。

『カサブランカ』では、映像はあくまでも背景演出のひとつの手段、という基本スタンスをとっています。常に紗幕の向こうに浮かぶようなあいまいな画像処理がされてあり、その中に飛行機の機体が現れたり、パリのガス燈の明かりが流れたり、モロッコの街が流れたりするのです。登場している人間に意識を集中させるという前提は守られながら、観客の想像をかきたてるには効果的でした。

巧いな~、と思ったのは、プロローグと、イルザと再会した夜、酔いつぶれたリック(大空)がパリの思い出をたどる場面での映像効果。

まずはプロローグ。マルセイユからカサブランカにたどり着いたリック(大空)が銀橋で歌う中、カサブランカを思わせる街並みの映像が、現れます。映像の視点は、街並みを俯瞰したかと思うとぐーっと降下し、街並みへ迫っていきます。

その光景はまるで、カサブランカに着陸する飛行機から見たようなイメージ。リック、ラズロ、イルザ、ルノー、シュトラッサー、そして多くの亡命希望者たち…この作品に登場するであろう全ての人々が、最初に見たであろうカサブランカの景色なのだと考えると、何とも言えない気持ちがこみ上げます。

そしてパリの回想の場面。大空が舞台中央に上ったセリへと上ると、ゆっくりと盆セリが回り始めます。それに合わせて、ホリゾントに美しいパリのガス燈の明かりがすーっと流れていく映像が映ります。視覚的には、車の窓から明かりの流れを見ているような感覚。

その中で、リックが1年半前の自分へと戻っていくのだ、とわかります。思い出すだけでも胸が詰まりそうになる、鮮烈で苦い、恋の記憶の中へ。

大空の男役背中芸と見事な相乗効果で、この演出は素敵でしたね~。

***

やっぱりまとまりきれていないのレポになってしまいましたね…すみません。でも、この舞台を思い出すたびに胸が熱くなり、何とも切ない思いがあふれてきます。こんな素晴らしい舞台に出会えて、本当に。本当に幸せでした。

次回は、主要キャストについて書き留めておきたいと思います。


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ラブ

見た〜い!!!w
by ラブ (2010-04-16 16:42) 

★とろりん★

ラブさま、

nice!と熱烈コメント、ありがとうございます!!(笑)

ね、観たくなってきたでしょ?でしょ?(笑)。さぁ、宝塚大劇場へレッツゴー!!残念ながら『カサブランカ』は終わっておりますが、ただいま月組公演『スカーレットピンパーネル』を上演中ですよ~!!(宣伝怠りなし>笑)


by ★とろりん★ (2010-04-16 19:14) 

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