SSブログ

芸は花なり~初めての能~ [伝統芸能]

◆◆◆ 観世会荒磯能 ◆◆◆

2005年4月14日(木) 観世能楽堂(東京・渋谷)
13:30開演 

生まれて初めて、能楽を鑑賞してきました。
「芸」は「花」であると、強く実感したひと時でした。
詳しくは全部読んでくださいねっ。(引っ張る引っ張る>笑)

昨年秋、山本会の例会を拝見して以来、狂言にも興味を持ったとろりん。
そして最近、メトロコンサートに続き、微妙に懸賞運が良いとろりん。

その名もズバリ、「能 狂言ホームページ」というHPがあります。
http://www.iijnet.or.jp/NOH-KYOGEN/

こちらの公演案内で、鑑賞券プレゼントの宣伝があり、応募してみたところ、
当たってしまいました♪いえいっ☆

とはいえ…。
やはり初めての能楽鑑賞。まずは着ていく物から困りました(苦笑)。

観阿弥・世阿弥によって能楽が確立して、約600年。
能楽五流派(観世流、宝生流、金春流、金剛流、喜多流)
の中で最大規模を誇るのが、観世流だそうです。

観世流の能楽公演は、定期公演・別会(特別公演)などがあり、
中でも今回鑑賞した「荒磯能」は、若手の能楽師による公演の事を呼ぶそうです。
歌舞伎で言うところの「若手花形歌舞伎」みたいな感じでしょうか。

まずは、それぞれの演目のあらすじをご紹介しましょう。

●●● 箙(えびら) ●●●
 
シテ 岡庭祥大(たかひろ)
ワキ 村瀬 堤

【物語】
須磨・生田の里を訪れた僧は、1人の男と出会います。
男は僧に梶原景季の源平合戦の活躍を語って聞かせます。
やがて、そこに若武者姿の景季の霊が現れます。
景季の霊は、梅の枝を箙に挿して笠印として戦った様子を
再現してみせます。

●●● 狂言 仏師 ●●●

野村萬斎

【物語】
ある田舎に住む男が、仏像を買おうと都に上ります。
初めての都に右往左往する男に忍び寄るのは
すっぱ(盗人)。すっぱは自分が仏師であると嘘をついて
男に近づき、翌日にでも仏像を渡そうと約束。
さて約束の日、すっぱは自ら仏像に変装し、男を待ちますが…。

●●● 胡蝶 ●●●

シテ 松木千俊(ちとし)
ワキ 野口能弘

【物語】
都の古い宮(お屋敷)を、ある僧が訪れます。
美しく咲く梅の花に心を奪われて見入っていると、1人の女が現れます。
実は女は胡蝶の精。彼女は縁の浅い梅花との縁を結んでくれるよう、僧に頼みます。
とりあえず僧が読経を始めるとお経の功徳によって、胡蝶は梅花と縁を結ぶ事ができました。
胡蝶の精は梅花との縁結びを喜び、舞を繰り広げます。

*****

【カンゲキレポ】
上演時間は歌舞伎や狂言と同じく、4時間あまり。

…ええ、正直に申し上げまして、まさに「苦行」の4時間あまりでございました(笑)。

能楽は、シテ方による「謡(うたい)」といわれる独特のリズム感のある台詞回しと
「地謡(じうたい)」と呼ばれる合唱の流れに寄る舞台展開が中心。
シテ方がまとう流麗な衣裳、そして抑制された動きは、それに付加された
ものである、と考えた方が良いのかもしれません。

この「謡」と「地謡」が非常に独特な音とリズムなので、何の予備知識もナシに
見ている者としては、「???」な世界。聞き取ろうと努力はしてみるのですが、
聞き取れないまま「????……Zzz…」みたいな展開が断続(笑)。

周りに座っていらっしゃる方をよく見てみると、鑑賞中でも謡の脚本
(何と呼ばれるのかは不明ですが、謡の詞と音程が記されている)
を膝の上に開いてご覧になっていらっしゃるんですね。
ということは、能楽はやはり、その詞とリズム、音を鑑賞するものなんでしょうね。

少し鑑賞経験のある狂言は、萬斎さんのキレの良い鮮やかな舞台姿に感服。
何というか、彼は独特の空気感がありますね。
能がかり(花道のような舞台上への通路)から出た瞬間に爽涼な風を受けました。
これまでの睡魔地獄から、知っている方が出てきたので、
さくっと目が覚めた、というのもあるでしょうが(笑)。

*****

しかし今回、初めての能を見ながら、ふと実感したことがあります。

「芸」とはまさに、「花」のようなものだ、と。

世阿弥も「風姿花伝」という書物を残しました。
役者さんの舞台姿を「時分の花」「まことの花」と言ったりしますよね。
私もよく通信にこの表現を使ったりしますが、今回、初めてその意味を
はっきりと実感したような気がします。

今回私が鑑賞したのは、若手の能楽師による公演でした。
初鑑賞の私がこんなことを言うのは非常におこがましいのですが、
一応、歌舞伎も見ちゃったりなんかする舞台好きの端くれとしては、
「あれ、ちょっと腰が高くない?」と思った場面もあったりしたわけです。

そう思った瞬間、ふと、先ほどの言葉が思い浮かび、実感したのです。
私がイメージしたのは、やはり桜の花。

まだまだ将来性のある、若い役者さんの舞台は、「花吹雪」。

「風」という勢いにまかせ、どこまでも飛んでいこうとするその姿は、
「若さ」という勢いにまかせ、自分の目指す頂点はどこなのか
行き着くところまで行ってやろうと、がむしゃらに走り続ける
若い役者さんの姿に重なります。

花々をまき散らすような華やかな舞台姿は、
その人の、その年齢の時だからこそ見られる「時分の花」。

経験も年齢も重ねた役者さんの舞台は、「落花の舞」。

「落花」は、花吹雪もほとんど散り終わり、わずかの花を残す晩春に見られます。
風もないある日、ふと、自分の重みだけで、ひらり、と静かに散りおちる花。
真っ直ぐに、すぐ下の地面に落ちていくだけですが、
ゆったり、ふうわり、長い時間をかけて舞い落ちる事自体を楽しんでいるかのような花の姿。
それは、既に自分の芸境へと達し、観客に見せるだけでなく、
自らの芸に没頭し、楽しんでいるかのように見えるベテランの役者さんの姿に重なります。

その人にしか見られない味わいの舞台を見せる、それが「まことの花」。

*****

今回、なぜ能楽を見ながら、このような事を思ったでしょうか。
それは自分でも分かりません。
ただ、分からないなりに舞台をぼけ~…と見ていて、
突然「あ、そうか」と、ストンと胸に落ちたような感覚を受けたのです。

これはやはり、4時間ぶっ続けでレム睡眠状態だったとろりんに、
世阿弥の霊が「良いこと教えてあげるね~」って囁いてくれたのかもしれません(笑)。

*****

いやあ、今回はまたまた漠然と熱く語っておりますね~(笑)。
こういう出逢いとか、気づきがあるから、ますます舞台が面白くなってきます。

今日のお星さま…★★★☆☆(世阿弥に乾杯>笑)


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(1) 

nice! 0

コメント 2

お富

おっと、火傷しそうになりましたよ☆
とろりん師匠、なんか、正座で語っていらっしゃるかんじ?(笑)
お能を理解するには、私はまだまだ道のりがなが~いのでありますが、
とろりん師匠の道筋をたどりながら、ついて参りたいと存じます。
はい、とろりん師匠、いつまでもついていきますっ!
by お富 (2005-04-18 12:59) 

★とろりん★

富ちゃん、毎回コメントを書き込んでくださって、
どうもありがとう!!やっぱり読者の方から反応があると、
とてもとても嬉しいものです。能楽はホント、入り口にも
到達していないのですが、今、ある本を読んでいて、
また行ってみたいな~と思い始めています。
源氏店にはいつもお世話になっておりますです。
ついてきてもらうどころか、源氏店に入りびたってるかも…(笑)
by ★とろりん★ (2005-04-21 10:58) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。