SSブログ

十八代目中村勘三郎襲名披露 五月大歌舞伎 [歌舞伎]

◆◆◆ 十八代目中村勘三郎襲名披露 五月大歌舞伎 ◆◆◆

2005年5月7日(土) 歌舞伎座 11:00開演 

・菅原伝授手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ)
・芋掘長者
・弥栄芝居賑 (いやさかえしばいのにぎわい)
・梅雨小袖昔八丈 髪結新三 (つゆこそでむかしはちじょう かみゆいしんざ)

3ヶ月続いた勘三郎襲名興行も、いよいよ今月がラストスパート。
そんな感じで(どんな感じだ>笑)今月も歌舞伎座へ参りました♪

●●● 菅原伝授手習鑑 車引 ●●●
海老蔵、勘太郎、七之助、左團次

【物語】
「菅原伝授手習鑑」は、今でも人気の高い通し狂言のひとつです。

時は平安時代。
菅原道真公(作品中では菅承相)に仕えていた老人・白太夫には
梅王丸(勘太郎)、松王丸(海老蔵)、桜丸(七之助)という三つ子の兄弟がいました。

成人して梅王丸は菅原道真のもとへ、松王丸は道真の政敵、藤原時平のもとへ、
そして桜丸は刈屋親王のもとへ、それぞれ牛車の運転手として出仕します。

しかし、時平(左團次)の謀略によって道真は流罪とされ、
心ならずも梅王丸・桜丸と松王丸は、敵と味方に分かれてしまいます。

ある日、時平が吉田神社に参詣すると知った梅王丸と桜丸は
その行く手をさえぎろうとし、時平につき従っていた松王丸と争います。

【カンゲキレポ】
松王丸に海老蔵、梅王丸に勘太郎、桜丸に七之助。
若手花形の顔合わせに、時平は大ベテランの左團次が勤めるという、
フレッシュな中にも、どどーんとスパイスのきいた配役。

海老蔵は、役者としての格が本当に上がりましたね。
堂々たる登場から、梅王丸と桜丸でなくとも
周りの者が圧倒されるような空気があふれています。
さすがに荒事の家、市川家の継承者。

勘太郎の梅王丸は、初役でしょうか…?
確か浅草歌舞伎で経験があったような気がするのですが…。
(ご存知の方、情報をお願いします)

何とか乗り切ったなぁ、というのが正直な印象です。
初役の緊張からか、それともまだ乗り切れていないのか、
ひとつの芝居の中でその役を演じる体力の
ペース配分がうまくいってなかったなぁ…と。

役によって、エネルギーのペースの配分は変わって来ると思うのですが、
勘太郎は、梅王丸という役を演じる上での
ペース配分を間違えちゃって、ちょっと息切れを起こしてしまったようです。
梅王丸と松王丸が見合い、見得を切って静止した際、
呼吸が静かで落ち着いている海老蔵と違って、
勘太郎は肩で大きく呼吸しているのが、遠くからも分かりました。

こういうのは歌舞伎座の舞台をこなしていく中で、
自然と培われるものだと思います。
舞台の大きさ、大らかさは充分なので、頑張れ勘太郎!

七之助の桜丸は上品で丁寧、左團次はさすがの存在感。
若手のパワーとベテランの余裕を感じる序幕でした。

●●● 芋堀長者 ●●●
三津五郎、亀治郎、橋之助

【物語】
緑御前(亀治郎)の婿選びを兼ねた舞の会が開かれる事になりました。
しがない芋堀りながら、緑御前に恋いこがれる藤五郎(三津五郎)もやって来ました。

ただ、藤五郎は舞が全くの不得手。
舞上手の友人、治六郎(橋之助)が面をつけて藤五郎になりすまし、
素晴らしい舞を披露して拍手喝采を受けますが…。

【カンゲキレポ】
歌舞伎座では45年ぶりに復活上演されるという狂言舞踊(*)です。

(*)狂言舞踊…狂言の作品を題材に取り上げて創作された歌舞伎舞踊。
          狂言の舞台のように、松羽目の舞台で、狂言の拵えで
          演じられることが多い。有名なのは「棒しばり」「身替座禅」など。

三津五郎は2002年にも『馬盗人』を復活上演していますが、
今回の復活上演も、とても楽しくて明るい、素敵な舞台でした。

ポイントは、日本舞踊「坂東流」の家元を務めるほどの舞踊の達人である
三津五郎が「踊れない人」を演じるところ。これがまた、ホントにへっぴり腰(笑)。
これが藤五郎得意の芋掘り踊りの場面になると、俄然輝き出します。

「踊れる」役者さんが「踊れない」役を勤める時って、何だか面白いんですよね。
すごくウズウズしているのが伝わってきて(笑)。
そして、ひとたび舞い始めたときの伸びやかさ、鮮やかさに
また目を見ひらかされるような感覚を覚えます。

レビューの舞台を彷彿とさせるような連れ舞もあって、本当に楽しめました。
キャスティングがこれまた「踊れる」役者さんを揃えているので、見応えも充分!

個人的には、御贔屓の亀治郎の踊りを久しぶりに観られたので、ウハウハ(笑)。
赤姫姿でお尻をフリフリしちゃうのも、すっごくラブリ~。きゃぴきゃぴ☆

また上演して欲しいな~!今度は海老・菊・松で!!(個人的要望>笑)

●●● 弥栄芝居賑 ●●●
勘九郎改め勘三郎、勘太郎、七之助、清水大希あらため中村鶴松、
ほか幹部俳優総出演。

【カンゲキレポ】
今月は襲名披露口上がない代わりに、このお芝居が襲名披露のひと幕です。
まるで劇中劇のように、お芝居の中で新・勘三郎の襲名をみんなでお祝いするんですよ。

なぜかタイムトリップして、ここは江戸・中村座。
十八代目中村勘三郎の襲名興行をお祝いするために、江戸市中から
侠客や姐御方が総出でやってくる、というお話。

舞台設定は江戸時代の中村座なのに、その内容は、
現代に誕生した新・勘三郎をお祝いする、という感じなのです。
ここが歌舞伎の面白いところ!!

***

このお芝居のために、今月はわざわざ両花道がかけられました。

「花道」は、歌舞伎のお芝居小屋に必ずある舞台装置で、
通常舞台に向かって左側に常設されています。

これが、あるお芝居で必要になった際、客席を一部取り崩し、
向かって右側にも仮設の花道を設営します。
この、舞台両側に花道がかかった状態を「両花道」と言うのです。
この場合、常設の花道は「本花道」、仮設の花道は「仮花道」と呼ばれます。

***

狂言半ば、勘三郎一家による襲名口上が終わり、いよいよ幹部俳優が登場。
菊五郎親分(笑)と玉三郎の姐御を筆頭に、ずらずらと登場してきます。

本花道には立役が、仮花道には女形。今をときめく名花が、ずらりと勢揃い!!
これはめったに観られない光景です!!1階席はどよめきが起き、興奮の渦と化しました。
私は3階席だったので、全体の光景が見られなかったのが残念でした。

そしてお楽しみはまだまだ続きます。

なんとなんと、立役さんと女形さんが、ツラネ(*)で、
勘三郎の誕生を祝う言葉を自分の名跡なんかも巧になぞらえて、
朗々と語り上げていくのです。
しかも立役さんと女形さん、掛け合いで!!
(菊五郎→玉三郎→三津五郎→時蔵、と言う感じ)

(*)ツラネ…リズム感のある長い台詞を、朗々と歌うように語る手法。
        知られているのは、『弁天小僧』の「知らざぁ言って聞かせやしょう~」
        で始まる台詞や 『三人吉三』の「月も朧に白魚の~」、
        『暫』で鎌倉源五郎が語る台詞など。
        特に『暫』では、自分の名跡や家に所縁のある言葉を混ぜ込んで
        役者独自のツラネを聴かせるのがポイント。

3階席のお客さんたちは、どう頑張っても前から3人目くらいまでしか
見えないので、ツラネを語る役者さんの声に集中。最後はご自分の
名前を江戸前風におっしゃってくださるので(時蔵さん→「萬屋お時」とか)、
そこで拍手喝采♪

本当に素敵な襲名お祝い狂言でした☆

●●● 梅雨小袖昔八丈 髪結新三 ●●●
いよいよ、5月の勘三郎の舞台です。

勘三郎、三津五郎、菊之助、富十郎

【物語】
江戸の材木問屋、白子屋は、経営難。倒産目前です。
困った白子屋のお内儀は娘のお熊(菊之助)に、
持参金付きの婿取りの縁談を決めます。

ところがお熊は手代・忠七(三津五郎)と、忍ぶ恋路の真っ最中。
婿を取りたくないお熊は、忠七に「私を連れて逃げてくれ」と頼みますが、
忠七はお店への恩義もあって、なかなか決断できません。

それを偶然立ち聞きしたのが、前科者で髪結いの新三(勘三郎)。
新三は忠七をそそのかしてお熊を店から抜け出させますが、
何とそれは、お熊をかどわかす為の策略だったのです。

お熊は連れ去られ、絶望した忠七はすんでのところを
侠客、源七(富十郎)に助けられます。

事情が事情なので、白子屋では源七に頼み、新三と話をつけて
お熊を内密に引き取ってもらうよう話をつけに行きますが、
逆に開き直った新三に罵声を浴びせられ、源七は恥を忍んで立ち去ります。

ここで仲立ちに立ったのが、新三の住む長屋の家主(三津五郎:2役)。

この家主、とにかくセコくて金には目がないおじいさん。
30両で話をつけてお熊を救い出し、無事に家に帰したは流石ですが、
なんだかんだと屁理屈をつけて、新三の持ち分30両から17両を巻き上げます。
あっけに取られる新三ですが、家主の家に盗人が入ったと聞いて、
やっと溜飲を下げるのでした。

しかし、これで済まされないのが、矜持を傷つけられた源七。
数ヶ月後、新三は焔魔堂橋のふもとで源七に仇を返されるのでした。

【カンゲキレポ】
待ってました!!中村屋の髪結新三!!
かなり前の舞台をビデオで見た事があるのですが、
これがすっごく良くて、絶対ナマで観たい!!と思っていたのです。

***

いやいやいや、何て言うんでしょう、「ワルの魅力たっぷり」って感じでしょうか。
年端もいかないお嬢さんをかどわかして手籠めにしてしまったりするような
とんでもない小悪党なのに、江戸前の粋と色気にあふれているんですよ。

見どころは、家主さんにやりこめられて、お熊を白子屋に返す場面。

迎えに来た白子屋の人間と家主さんに介抱されるお熊を、
新三は少し離れた所から、柱に寄りかかってじっと見つめます。

ヘビのようにねっとりした視線を、お熊の全身に絡みつかせるように送った後で、
さっとその気配を消し、さくっと「俺が恋しくなったらいつでも来な」などと軽口を叩く。

思わず、ゾクッ…としました。
きっと、「悪人の色気」って、こういう事を言うんだろうな~…と。

*****

意外に良かったのが、三津五郎の家主。

観る前は、「三津五郎は忠七は良いと思うけど、
家主は富十郎さんがやって、源七親分は菊五郎がやれば良いのに」
とか思っていたのですが、終演後は
「家主、良かった~~~!!忠七はフツーだったけど」に変化(笑)。
とにかく、ものっすごく楽しそうに演じていらっしゃいました。

勘三郎とは同い年と言うこともあり、長年共に舞台を勤めてきた盟友。
その以心伝心ぶりもあるのか、とにかくテンポもよくて、
家主と新三のやり取りは客席は笑いっぱなし。

これからもお二人で、楽しくて素敵なお芝居を創り上げて欲しいです。

*****

と、いうことで、またもや長文の五月歌舞伎座レポ。
お昼の部は、見応え充分!です。
華やかな「芝居前」だけでも歌舞伎の空気を存分に味わえます。

次回は大蔵流狂言の会「雪薺(ゆきなずな)会」をレポします。
お楽しみに。

今日のお星さま…★★★★☆
           (勘三郎万歳、三津五郎に乾杯☆2人で仲良く半分こ>笑)


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 2

お富

源氏店@ロス、初投稿です(笑)。

レポ、ありがとうございます、楽しく拝読させていただきました。
当店大女将(?)の報告によりますと、1階席では両花道の
役者さんを見るのに、まるでテニスの試合(顔が左右に忙しい)の
ようだった、とのことです。

5月の演目、特に「新三」と「芝居前」の配役が発表に
なったときから、我が家では「5月歌舞伎、見なくてどうする!」
でした(笑)。
役者さんも、演目も贅沢な内容で、本当に羨ましいですぅ~。
でも、もし私が見ていたならば、通ってしまいそうなので、
見ないほうが身のためだったかも(苦笑)。
(というか、やせ我慢?!)

だってだって、現在最も贔屓な役者さんたち(「最も」と
言いながら複数いる>笑!)が勢ぞろいなんですもん!
菊五郎さんでしょ、菊ちゃんでしょ、團さまでしょ、海老様でしょ、
時蔵さんでしょ、それから勘太郎ちゃんでしょ、玉さまでしょ(順不同)…。
居ないのはニザさまとラブリンくらいです。

勘三郎さん、愛されてますねー。
それだけ、勘三郎さんが、歌舞伎を愛して、他の役者さんにも
愛情と尊敬をもって接してきたからなのでしょうね。
そして、先代が大きな役者さんだったからでしょう。
うるうる。

個人的には、亀ちゃんの「姫さま姿でお尻フリフリ」の
映像が浮かんでこないんですが(笑)、なんか可愛いかんじですね。
by お富 (2005-05-11 05:25) 

★とろりん★

富ちゃん、毎回のコメント、感謝しております。
時差ボケは回復しましたか?
芝居前、「テニスの試合」のよう、とはさすが富ペアレンツ!!
これからもご指導ご鞭撻の程、
ひとえによろしくお願い申し上げたてまつりまする(笑)。
by ★とろりん★ (2005-05-12 10:47) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。