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児雷也豪傑譚話 (じらいやごうけつものがたり) [歌舞伎]

◆◆◆ 通し狂言 『児雷也豪傑譚話』 ◆◆◆

2005年11月21日(月) 新橋演舞場 11:00開演の部

● 主な配役 ●

児雷也: 尾上 菊之助
大蛇丸: 尾上 松緑
綱手  : 市川 亀治郎
高砂勇美之助/八鎌鹿六女房お虎 : 尾上 菊五郎
八鎌鹿六娘お辰: 尾上松也 

*****

いやはや、自分のカンゲキ魂が恐ろしくなってきました。
Σはっと気づけば、今月の新橋演舞場のチケットをしっかりゲット。
い~んだも~ん、やっと今年の長旅もひと段落ついたし、
この春からず~っと観たい観たいって思ってた舞台なんだも~ん、
と、あくまでも自分に甘いとろりん。

今回は新橋演舞場での歌舞伎公演です。演舞場に入るのは初めて。
3階席の上手の端っこのお席でしたが、七三も見られてお得なお席です。


今月の演目は、通し狂言『児雷也』。
御園座、南座で絶賛された舞台が、ようやく東京にて再演。
菊之助、松緑、亀治郎と、当代の若手花形が3人も揃い、
さらに菊五郎も出演。期待できない訳がない!
幕開きからドキドキです♪

しかしとろりん、2月文楽公演に引き続き、風邪をこじらせてのカンゲキ。
観劇中も咳の発作がひどく、ものすごく迷惑な客と化していました(苦笑)。

私は風邪をこじらせると、咳が止まらなくなるんですよ。
約10分間、咳き込み続けるんです。(これを、発作と呼んでいます)
これは、本当に辛いんです…。
「もう、長くないかも知れん」とか、本気で思ってしまいます(笑)。

観劇中に発作が起きると、もう最悪。
最初は白い目で見られるんですが、そのうち、
「こ、この人、大丈夫か…!?事切れるんちゃうか…!?」
と言う感じの、心配そうな視線に変わっていくのが雰囲気で分かります(笑)。
今回は、見知らぬおばちゃんにのど飴をもらってしまいました(笑)。

っていうか、そこまでしてカンゲキしたいか、とろりん…(苦笑)。

いつ咳の発作に見舞われるか、という不安と
薬を飲んでいたため、意識が朦朧とした中でのカンゲキに
なってしまったのが残念。でも楽しいお芝居でしたよ~。

*****

【物語】

日本を戦乱の世に導き、暗黒に包まんと欲する大蛇丸は
その妖術で月影照友に取り憑き、領主の座を奪います。

かねてより月影家と親交の深かった尾形家・松浦家は滅亡させられますが、
尾形家の一子・雷丸と松浦家の息女・綱手姫は一命を取り留め、
ある修験者・仙素道人の元で育てられます。

やがて成長し、修行を積んだ2人に道人は真実を話し、両家の仇討ちを
果たすようにと、雷丸には蝦蟇(ガマ)の妖術を、そして綱手姫には
蛞蝓(ナメクジ)の妖術を授け、2人を夫婦とします。

夫婦となり、雷丸は名を児雷也とあらため、綱手とともに
大蛇丸追討の旅に出ますが、道行く先には様々な困難が待ち受けています…。

【カンゲキレポ】

「ハイパー歌舞伎」という、小洒落た冠がつけられたこのお芝居。
物語自体のあらすじが明瞭なだけあって、とにかくエンターテイメントとスペクタクルに
徹していて、アイデア盛りだくさんで、ひたすら楽しめる舞台でした。
その上、『摂州合邦辻』や『紅葉狩』などなど、他の歌舞伎の芝居から、
パロディの部分も巧く取り込まれています。

初心者の方は歌舞伎の新たな一面を発見し、
既に歌舞伎通の方にはパロディの部分で「ああ、『紅葉狩』ね~」と
ちょっとしたひねりを味わえるような演出になっているのがニクいっ!!

***

斬新な演出も多数盛り込まれているのですが、それが良い意味で
「歌舞伎」の枠組みをはみ出さないように工夫されているのがまた素晴らしい。
新しい演出を、何とか歌舞伎の手法を使って編み出そう、という姿勢が
伝わってきました。

今回、歌舞伎の世界の枠組みを越えた演出の1つが、映像の使用。

第1部のクライマックス、菊之助扮する児雷也が、鷲の背に乗って
悠然と飛び去っていく場面を、宙乗りで見せてくれました。

ここで宙乗りの演出方法を少し説明しておきます。
通常宙乗りをする際は、花道(舞台下手)沿いにワイヤーが張られ、
吊り上げられた役者は、3階(または2階)席下手(花道の真上辺り)の
席をこわして臨時に設営された鳥屋(とや)に引っ込む、というのが一般的。

さて、今回の宙乗りでは、3階席鳥屋付近にカメラを設置し、
宙乗りで見得を切る菊之助を真正面から撮らえた映像を、そのまま
本舞台に下ろされた大型スクリーンでライブ中継する、という試みがなされたのです。
この演出方法は、今回の新橋演舞場で初めて導入された試みではないかと。

この方法は、「1階席のお客さんには、宙乗りの役者の表情がよく見えない」
という事が判明し、採り入れた新演出だそうです。

確かに、宙乗りは2階席・3階席の観客にとってまさに夢の一瞬とも思える時間ですね。
あこがれの役者さんが、本当に近くまで来て下さるので、もう感激してしまいます。
その代わり、1階席の観客には、ちょっと遠い所に行ってしまったかのような
感覚にとらわれるのもまた事実。

これまでの通信記事をご覧いただいた方には、とろりんが舞台という
ライブ空間で映像を使用する事には、かなり否定的姿勢を取っている、
というのはご存知だと思います。

舞台は、役者の持つ個性、客席の熱気をナマで感じることが醍醐味ですから、
そこで映像による演出を持ち出すと、その空気が削がれてしまう気がするのです。
演出側の「盛り上げよう」という過剰な意図が感じられてしまうので。

しかし、今回の映像処理は、まさに舞台の「ライブ感」を、「補完」という
目的での使用だったわけです。映像を駆使することによって演出を盛り上げよう、
というわけではなく、カメラ1台を設置してライブ中継をする事によって、
1階席のお客さんにも役者の表情が伝わるように、という配慮から工夫された方法で、
これはむしろ好感が持てる演出です。

この演出を歌舞伎座でもできるかと聞かれると、「う~む」という感じですが、
新橋演舞場の歌舞伎公演における演出の可能性を引き出した、という点では
評価すべきものがあります。(頻発されると困りものですけどね~)

***

売り物のひとつであった宙乗りが1部に来てしまったので、
「これは2部の強欲母娘(後述)で、『つづら抜けの宙乗り』をしてくれるのね』」
と、私は勝手に思いこんでいました。しかし、宙乗りはやっぱり1度だけで、
「あれ?つづら抜けはしないの?」と勝手に落ち込んでいたとろりん。

せっかくだから、つづら抜けもして欲しかったな~(無い物ねだり)。

(「つづら抜けの宙乗り」とは、千両箱を模した大きな箱が宙に浮いたところで、
その箱が真ん中から開いて役者が現れる、という趣向の宙乗り。戦後では
実川延若と市川猿之助が挑戦しています)

***

音楽も実に多彩なジャンルを採り入れていて、それを下座で演奏する趣向が、
歌舞伎の味わいをさらに深めています。
三味線でヴィヴァルディ「四季・春」や「ボレロ」が聴けたりするんですよ。

あとは、歌舞伎のお芝居でライトセーバーを拝めたこと(笑)。
操る菊之助も凛々しくて、素敵な場面でした~~~☆

***

ガマとナメクジと大蛇の妖術を操る3人の男女の物語なので、
折々にこのガマとナメクジと大蛇も登場します。
またコレが最高に面白い!ちゃんと見得切っちゃうんですよ(笑)。
爬虫類 VS 両生類・有肺類連合軍の戦いや如何に!?

***

あとは役者さんについて…。

今回、私の、いや私だけでなく観客のハートをわしづかみにしたのは、
菊五郎と尾上松也演じる強欲母娘、お虎&お辰でしょう(笑)。

この母娘、物語の本筋とはちょっと離れた、いわば「口直し」的な
場面に登場してくるのですが…歌舞伎の世界を越えたケバケバ母娘っぷり(笑)。

母・お虎は、ブランド好きの派手好きで、アントワネットもかくやと思わせるほどに
結い上げた髪や首元を巨大な宝石で飾り立て、金ラメの足袋で、なぜか
羽根団扇を手に登場(笑)。出てくるだけで爆笑です。
ブランド好きという設定だけに、お着物の柄もヴィトンのモノグラムとかに
しちゃえば絶対ウケると思うのですが、著作権の問題があるかしら。

松也くんは、母親に似て派手好きで渋谷のコギャルも真っ青な出で立ち。
しかもそれが超似合っていて、可愛らしくてしょうがない(笑)。
ピンクを基調にしたハデハデ着物で、足袋もピンクラメ!
髪型は現代らしく、エクステを使ってうまく結い上げてあります。
今話題のバランスボールを使ってのヨガには参りました(笑)。

このお2人、本筋でもしっかりと活躍しております(フォロー>笑)。
菊五郎は物語の行方を見届け引き締める高砂勇美之助を、
若々しく演じて、流石です。人間国宝とは思えない若さです。

松也は月影家嫡男でありながら大蛇丸の出現によって陥れられる
月影照行を、控えめながら、きっちりと演じて好演。

松也はしっかりと声が出るようになりました。今後の活躍が大いに楽しみです。

***

主演の3人は、もう既に再々演と言うこともあって、
地に足が着いている着実な舞台と、基盤が頑丈だからこそ見られる
アクティブな姿勢が緩急自在で、舞台を所狭しと駆け回り、大活躍。
この3人に関しては、もう、言うことはありません!!
白旗!!(笑)

それにしても、今年の菊之助の活躍振りはすごいですね~。
これは間違いなく、アワードに絡んできますね。乞うご期待☆

*****

途中、何度も事切れそうになりながらも(笑)、
「いやいやいや、歌舞伎って楽しいね~~☆☆」とホクホクしてしまった舞台です。
これは、本当にオススメ!!また再演されると良いな~。

今日のお星さま…★★★★☆ (歌舞伎の未来に、カンパイ☆)


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カオリ

とろりんさま、風邪の具合はいかがですか?
体調の悪いときの観劇は長時間だけにツライですよね。空気も乾燥してるし。
『児雷也豪傑譚話』、どちらのブログにお邪魔しても絶賛!なので、楽しみです。
ワタシはなんと千穐楽の夜の部の切符が取れたので、今度の土曜日に行ってきま〜す。
by カオリ (2005-11-23 21:12) 

★とろりん★

カオリさん、いつもコメントをありがとうございます!
だいぶ回復したものの、まだまだ咳と戦う今日この頃です。
なんと!!千秋楽をご覧になるとは、羨ましい限りです。
思いっきり楽しんできて下さいね~☆
by ★とろりん★ (2005-11-24 13:21) 

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