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「ラ」か、「レ」か ~「バレエ入門講座」補足~ [講座・現代演劇]

新国立劇場バレエ入門講座の記事をアップしたところ、
(まだ読まれていない方はコチラへ☆→http://blog.so-net.ne.jp/kangeki/2006-01-13 )
まだメルマガ配信システムだった「カンゲキ通信」を
第1回から、いえ、それ以前からの舞台レポを愛読してくれている
某友人(そう!海老様ラブのそこのアナタですよ、あ・な・た☆)
より、下記のような質問をいただきました。

「文中に出てきたバレエ、『レ・シルフィード』は、『ラ・シルフィード』なのでは…」

実は「これはご意見があるかもな」と思いつつも、
補足をせずにそのままアップしてしまったのでした。てへ。

結論としては、「どちらもアリ☆」と言うことらしいです。

記事本文をもう一度覧いただければ、と思いますが、
講師のお話では、バレエは、台詞や歌などの「言葉」ではなく、
身体と音楽(音符)の表現が確立していたからこそ、
これだけ世界に浸透する芸術になった、との事でした。

そして、「言葉」での表現の伝達=シナリオがなかっただけに、
バレエ作品には、様々な解釈が生まれたのだと。

例えば、『白鳥の湖』。
白鳥に姿を変えられたオデット王女とジークフリード王子の恋物語ですが、
プログラムなどで私が知っている限り、3つの解釈があります。

① 王子、魔女(初演当時)と激しい戦いの末、王女もろとも湖の水に飲み込まれる 
   (1877年初演<ボリショイ劇場>)
② 魔王のの呪縛から逃れられなくなった2人は湖に身を投げ、天国で永遠に結ばれる
   (1895年改訂版<マリンスキー劇場>)
③ 2人の愛の力で魔王が倒され、オデットは人間に戻り、永遠の愛を誓う
   (1937年 メッセレル版<ボリショイ劇場>)

例外 劇中劇という設定で、別れの危機にある現代の恋人たちが
    「白鳥の湖」を踊る中で再び愛の絆を取り戻す。
    ちなみに原因は男の浮気(笑>黒鳥が浮気相手、という設定)
   (2004年 ニーナ・アナニアシヴィリのガラ@太田アプリコ)

この解釈は、振付家や演出家によって違ってきます。
ちなみに私が実際に見たことのある「白鳥の湖」は、「例外版」です。
(ガラだったので、そういう設定にしたのかな、と思いますが)

これと同じように、『レ・シルフィード』もしくは『ラ・シルフィード』も、
演出家や振付家の解釈=どの場面を観客にアピールするか、に
よって、「ラ」か「レ」が違ってくるのだそうです。

『ラ・シルフィード』の「ラ」は、定冠詞。英語で言うところの「the」です。
そして、「レ」は「ラ」の複数形です。
「シルフィード」は「エルフ」、つまりここでは「妖精」を意味しています。

この作品の第1幕は、結婚を控えた1人の青年がまどろんでいると、
夢の中に1人の妖精=「ラ・シルフィード」が現れる…という場面から始まります。

そして、第2幕では、妖精を追って深い森の中へ迷い込んだ青年が、
妖精達=「レ・シルフィード」に見守られる中、夢の中に出てきた妖精と踊ります。

そう。
ここで、振付家や演出家の解釈によって、「ラ」か「レ」か、分かれるようなのです。

青年と、1人の妖精の出逢いと運命を明確に描きたい、と言うときには
「ラ・シルフィード」。
青年の運命」を翻弄してしまった「妖精の世界」を映し出したい、と言う時には
「レ・シルフィード」。

このように、その物語のどの部分にスポットを当てるかで、
その都度「ラ」と「レ」の表記を分けているのではないでしょうか。
実際にネットで調べてみますと、劇場でも、その時の公演によって
『ラ・シルフィード』も、『レ・シルフィード』も、どちらも使用されています。

***

歌舞伎の『助六』が、成田屋(市川團十郎家)がかける時と
それ以外の家がかけるときに外題を変えるのとはちょっと違うかも知れませんが、
(違うのなら、まぎらわしい例を持ってこない方が良いと思いますよ、とろりんさん)
『シルフィード』も、主題をどこに置くかで「ラ」か「レ」が違ってくるのですね。

それにしても、公演のタイトルだけでこれだけ語れるのも、
この作品ならではですよね。それもまた面白い。

*****

以上、ない知識を必死でかき集めて、頑張って書いた補足でした(笑)。


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コメント 2

“某友人”

とろりん師匠、詳しいご説明、ありがとうございました!
定冠詞(しかもそれに単数・複数ある)という概念がないだけに、
外国語のタイトルは面白いですね。
(日本語だと漢字に意味を込められますが。)
by “某友人” (2006-01-16 21:35) 

★とろりん★

某友人殿、コメントをありがとうございます!
これからもどしどし、コメントお待ちしていますよ☆
by ★とろりん★ (2006-01-17 10:35) 

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