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★ とろりんのお気に入り ★ ~カンゲキ参考文献~ [お気に入り]

先日、愛読者の方から、
「カンゲキで参考になるような文献を教えて欲しい」
とのメールをいただきました。

基本的には、本屋さんで、それぞれ読みやすそうな本を
選んでもらうのが最適だと思いますが、人に頼られると
調子に乗って木に登るとろりんさん(笑)、自分がよく読んでいる本を
ご紹介します。

【 宝塚歌劇 】

■ 各公演プログラム / 舞台写真集 『ル・サンク』 ■

これはどのジャンルにも当てはまりますが、
特にカンゲキ初心者の場合は、プログラムは買っておくと便利だと思います。
私は、もう最近は買ったり買わなかったりですが…(苦笑)。

プログラム(歌舞伎では「番附」と言います)は、各作品のあらすじだけでなく、
上演作品の歴史的・風俗的背景が詳述されているので、舞台の進行も
分かりやすくなります。

宝塚だと、出演者それぞれの顔写真が掲載されますが、
舞台写真と素顔写真が掲載されます。親近感もアップするのでは?

宝塚歌劇は、たいていの作品がまず兵庫県宝塚市の宝塚大劇場で
上演されたあとに、東京の東京宝塚劇場で上演されます(=東京公演)。
すると、東京公演のプログラムには、大劇場公演時の舞台写真も
少し掲載されるのです。ちょっとお得☆

『ル・サンク』は各公演ごとに発行される舞台写真集です。
最後のページにはお芝居の脚本が全て掲載されています。
私はお芝居を振り返ったりするのが好きなので、
いつもは『ル・サンク』を買い求める事が多いです。

■ 宝塚おとめ ■

宝塚歌劇団が毎年春に発行する、生徒年鑑。
学年順、席次順に各生徒の素顔写真とプロフィールが掲載されています。
入団8年目以上のタカラジェンヌは、素顔写真とともに舞台写真も掲載。

余白部分には、歌劇団の略史や組の構成方法など、初心者が
知りたい情報も載せてあります。歌劇に少し興味のある人は、
1冊持っておいても良いかもしれませんね。

タカラジェンヌの太平洋戦争

タカラジェンヌの太平洋戦争

  • 作者: 玉岡 かおる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 新書


日本の近現代史を振り返る時、避けて通れないのが2度の世界大戦。
特に第2次世界大戦=太平洋戦争は、日本のその後の命運を
大きく分けた戦争です。

本書は、これまであまり語られることのなかった、太平洋戦争時の
歌劇団の道のりが、当時のファンや団員の口から語られています。
日本を大きく包んだ暗雲の中、日本の演劇の歴史はどのように
巻き込まれ、復活と再生を遂げたのか…。
この本を読むたびに、数多くの舞台に触れることの出来る今日の幸せを思います。

宝塚百年の夢

宝塚百年の夢

  • 作者: 植田 紳爾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 新書


宝塚ファンで知らぬ者はいない、歌劇団の専属演出家の重鎮、
そして歌劇団の前理事長である植田氏による著書。
彼の作品は……そうですねぇ……
よく言えば「豪放」、控えめに言えば「ハッタリ」って感じですか(苦笑)。

日本の近現代に発足した演劇集団で、戦争の時期を越えて
宝塚歌劇ほど変わらずに隆盛を保持している劇団はありません。
(ちなみに、東京宝塚劇場の稼働率は100%以上なのだそうです)

では、90年もの間、なぜここまで宝塚歌劇が人々の支持を
受け続けてきたのか…。本書では、筆者の見解が明らかにされています。

要約すれば「学校主義」、これが歌劇団の根幹を成しているからだろうと。

詳しくは……、どうぞ、ご一読ください☆

【 劇団四季 】

■ 公演プログラム ■

四季も、一番参考になるのはプログラムでしょうかね。
ほとんどのプログラムに浅利慶太氏の対談が載っていますが。
解説、あらすじ、背景など丁寧に紹介されています。
舞台写真もふんだんに盛り込まれていますしね。

ただ、四季のプログラムはちょっと高めなので、躊躇しちゃうんですよね…。
1500~2000円って、ちょっと考えてしまいますよね。
CATSは、改訂されるたびに新しいの買ってしまうのですが(苦笑)。

劇団四季と浅利慶太

劇団四季と浅利慶太

  • 作者: 松崎 哲久
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 新書

前後に設立された劇団の中では、宝塚と匹敵する動員力を誇る
劇団四季。本書では、その動員力と集客力の秘密を解き明かしています。
ちょっと古めですが、団員リストもあります。

【 歌舞伎 】

■ 番附 ■

歌舞伎の公演プログラム。
実は関西の言い方らしく、江戸では「筋書」と言います。
この違い、どこから出てきたのでしょうね?
江戸は作品重視、上方は役者重視、って事だったのかな?

歌舞伎ハンドブック

歌舞伎ハンドブック

  • 作者: 藤田 洋
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


私が、歌舞伎について勉強したい!と思った時に、
歌舞伎道の師匠から一番最初にご紹介いただいた本です。

歌舞伎が成立するまでの歴史や背景、舞台構造、役者、
作品解説がコンパクトにまとめられております。
役者の紹介ページは少々古くなってしまいましたが、作品解説のページは
今でも重宝しています。初めて見る芝居の前には、必ずこの本で筋を調べてから
劇場へ向かいます。

コンパクトでシンプル、それでいてかゆいところに手が届くような1冊。
初心者の方にも、通の方にもオススメです。

かぶき手帖〈2003年版〉

かぶき手帖〈2003年版〉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 伝統歌舞伎保存会
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 新書


毎年1月に発行される歌舞伎役者の年鑑。

歌舞伎の舞台って、劇場内も明るいまま進行していきます。
「あ、あそこでとても良い芝居をしているのは誰だろう?」
という時、すぐに番附で名前をチェックできるので、便利。

そして、「この役者さん、どんな経歴を持っているのかな、どちらの一門かな」
と、もっとその役者さんについて知りたくなったとき、大変重宝するのがこの1冊。

顔写真と舞台写真(お弟子さんや名題下の役者さんは舞台写真のみ)とともに、
屋号や代数、生年月日、受賞歴など、プロフィールも一目でわかります。
大型文庫本サイズなので、観劇のお供も苦になりません。

また、清元さんや常磐津の太夫さん、鳴り物の方のお名前なども
載っているので、これ1冊で歌舞伎の人間が丸ごと分かる!という感じです。

歌舞伎に興味を持ったら、まずは1冊、手に入れておくと良いですね。
しかし、毎年更新されているはずなのですが、プロフィール文章が
前年のものと全然変わっていなかったりするので、続けて購入するときは
注意が必要です(笑)。

歌右衛門 名残りの花

歌右衛門 名残りの花

  • 作者: 渡辺 文雄, 渡辺 保
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本

次の2冊は、中~上級編といった感じでしょうか。

7世尾上梅幸と並んで「戦後歌舞伎の立女形」と賞され、
昭和の歌舞伎界を牽引してきた女形、六世中村歌右衛門(1917-2001)。
円熟期の舞台姿は幻のような美しさ、艶麗さであったと聞いています。
私が歌舞伎に興味を持ったのと同じ時期に亡くなられたため、
彼の舞台を観ることはありませんでした。

この本は、最晩年の歌右衛門の舞台-一世一代-を中心に、
著者の思い出と共につづる写真集です。

当代随一の玲瓏な美貌と品格で歌舞伎の世界を圧倒してきた
歌右衛門が直面した、「老い」という現実。
しかし、その現実と引き換えに彼が手にしたのは、究極の「芸の本質」でした。

本書では、歌右衛門による当たり役として来た役の、
最後の舞台の写真を全ページにわたって掲載しています。
最晩年の写真なので、時にグロテスクな表情で映っているものも少なくありません。

しかし、それらの写真を透かして見えてくるのは、
年齢と引き換えに彼が手にしてきた、芸の深みと極み。
長い年月の全てをかけて彼が手にした「芸の本質」。
しかし、それを充分に表現するには、彼の肉体は既に自由が効きません。
ここに、役者としての肉体と心理の究極のせめぎあい=「芸」を見ることができます。

読者は「芸の残酷さ」を痛感すると同時に、それでもなお、
その本質を求め、演じようとする役者の執念とも言える情熱に圧倒され、
言葉を失います。

昔、ある歌舞伎役者がこう言っています。
「60歳を過ぎて、本当の意味で、初めて若い娘の役ができるようになった」と。

例えば、若い娘が走る、という何気ない場面ひとつ取っても、
若い時分には何も考えずにさっと走ることができる。
しかし、老いが迫ってくると、今度はどうやって若い娘らしく走っているように
観客に見せるのか、考え、工夫するようになる。
そうして初めて、娘らしい身のこなしを自分のものにする事ができる、と。

***

ちょっと話が大げさになりますが、私はこの本を読んで、
「芸とは何か」について大きく示唆を受けただけでなく、
(その集大成が「芸は花なり~初めての能」です。↓
http://blog.so-net.ne.jp/kangeki/2005-04-12
「生きるとは何か」という事についても、深く考えさせられました。

「年相応」という言葉があります。
実は私、この言葉がお気に入りです。

年齢の割に若く見られたい」とか、外見的な事は全く関係なく、
年齢と共に、肉体的な衰えは個人差あれど、現実的なものですよね。
もちろん、出来る限りのセルフケアはしたいものですけれど、
その年齢だからこそ見えてくるもの、感じられることってあると思うのです。

年齢が進むにつれて、肉体の衰えとは反比例に
精神も人間性も、どんどん豊かになっていく。
それが「年相応」ということだと思います。
(も…もちろん、若く見られたいけど…←まだ悟りきれていない>笑)

***

閑話休題。
「芸」と「生」について、深く考えさせられる一冊です。

■ 女形の芸談 (六世尾上梅幸、演劇出版社) ■

女形の芸談

女形の芸談

  • 作者: 尾上 梅幸
  • 出版社/メーカー: 演劇出版社
  • 発売日: 1998/01
  • メディア: 単行本


明治後半から昭和初期を代表する立女形のひとりである
六世尾上梅幸(ばいこう)が、役柄の性根や胆、立ち居振る舞いや仕草など、
「女形」としての心得を聞き書きという形でつづり、まとめた一冊です。
昭和初期に出版されたものを、演劇出版社が再版しました。

その細かいアドバイスや注釈、解説から、今でも「女形の教科書」として
大切にされ、歌舞伎役者の名題試験の参考図書にも定められています。

***

聞き書きをそのまま収録してある感じですので、
梅幸丈の生い立ちやエピソードを語っていたと重うと、
次のトピックスはいきなり役柄の拵えについてだったり、
そうかと思うとまた四方山話に戻ったりと、構成的にはちょっと読みにくいので、
一度、目次をサーッと流し読みしてから、興味のあるトピックスを拾い読みする、
という感じがオススメです。

「歌舞伎トリビア」が満載なので、いつ読んでも飽きません。
『源氏店』のヒロイン、お富が使用する手ぬぐいのことや、
『忠臣蔵 落人』でおかるが着用する着物のことや、
若い娘と年増(20代後半~の女性)と老婆が自分を指差すときの
それぞれの違いなど、「へえ~っ!!」と思うことばかりです。

トリビアだけではなく、『累』や『土蜘』、『紅葉狩』など、自身の当たり役に
ついてはその拵えや鬘、着物の柄まで詳細に書きとめてあり、役者さんの
教科書、と言われるゆえんも納得です。

*****

いかがでしたでしょうか。
どのジャンルも、基本的にはプログラムがスタンダードですね。
ちなみに歌舞伎のプログラムは、興行の最終週のあたりで増刷され、
当月の舞台写真が掲載されるので、買うなら最終週を狙いましょう(笑)。

では、今日はこの辺で。
次回のカンゲキレポは狂言方・山本会をお送りします♪


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コメント 2

ラブ

ほぉー、勉強になるなぁ。
これだけの情報、ブログにアップしようと思うと、
大変ですね(感心)。
観劇、特に歌舞伎は、基礎知識がないとわかり
にくいから、読んで観るとよりおもしろくなりそうです。
by ラブ (2006-01-26 09:02) 

★とろりん★

ラブさん、いつもながらnice!&コメントをありがとうございます!
歌舞伎は、やっぱり昔ながらの表現や仕草がありますから、
少しでも知っておくと、面白さが倍増しますね。
またのお越しをお待ちしております☆
by ★とろりん★ (2006-01-31 17:50) 

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