「ホテル・ルワンダ」 [映画]
【監督】 テリー・ジョージ
【出演】 ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス
毎月1日は映画の日。1000円で映画を見られる日です♪
やはり、一般料金では映画を見ない、というポリシーを堅く守っての映画鑑賞。
(Σはっ!!「ミュンヘン」は一般料金での鑑賞でした…。何か、ちょっと悔しい>苦笑)
と言うことで、今回鑑賞したのは「ホテル・ルワンダ」です。
1994年、歴史的にも類を見ない規模で発生したルワンダの虐殺事件を背景に、
最終的には1200以上もの人命を救った、実在するひとりのホテルマンの行動を
題材に取り上げた作品です。
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フツ族とツチ族の内戦が終息に向かおうとしていた1994年、
ルワンダの首都・キガリ。しかし、フツ族出身の大統領が暗殺されたことにより、
事態は一転、フツ族によるツチ族への襲撃が始まります。
キガリに展開する海外資本の高級ホテル、ミル・コリンの支配人でもある
ポール(チードル)は、ツチ族である妻と子どもたち、彼を頼ってきた
ツチ族の隣人を守るため、自分の勤めるホテルに彼らをかくまいます。
しかし、やがて彼は「世界に見捨てられた」ルワンダの地で、
ホテルを、そして1200以上の人々を守る為の、壮絶な闘いへと進んでいくのです…。
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皆さん、ルワンダって、アフリカ大陸のどの辺りにあるかご存知ですか?
ちょっと地図を見てみましょう。
世界一の滝で有名なビクトリア湖の湖畔にある小さな国です。
この地で1994年、国連文書で初めて「ジェノサイド」という表現が
使われた悲劇は起こりました。
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では、映画の感想を…。
かなりネタバレしていますので、これから鑑賞予定の方はご注意ください。
何から、どのように伝えていけば良いのかわかりませんが、
とにかく、「すごかった」の一言です。
冒頭は、アフリカン・ミュージックがのどかに流れ、ルワンダの首都・
キガリの光景が映し出されます。和やかな映像とは裏腹に、フツ族の
専門プロパガンダ局、RTLMのラジオ番組が、不気味な言葉を繰り返します。
「ツチ族はゴキブリだ」と…。
陽気なアフリカの大地に、不穏な影が忍び寄っている事を如実に伝えてきます。
物語は、ポールが妻子と隣人をホテルに匿うことを決めた時から一気に動き始めます。
あとはひたすら、息をつかせる暇も、涙を流す隙も与えないほどに多くの困難が
次々と降りかかります。一歩間違えれば確実に命はない、その危機をポールが
どのようにしてかわし、突破していくのか、観客はただ固唾を呑んで見守るだけです。
映画は、繰り返し危機と希望を循環します。この展開が、非常に秀逸です。
希望の光が見えた…と思ったら、次の瞬間には救いがたい現実が待ちかまえている。
もう逃れられない、観客が目をつぶりそうになった時、間一髪の所で幸運をつかまえる。
この繰り返しはスリリングで、スピーディーで、観る人の心を絶えずつかみ、揺さぶり続けます。
そのような緊張の連続の中で、ふと束の間の安らぎを与えてくれるのが、子どもたち。
ほんの一瞬見せてくれる明るい笑顔や仕草、軽やかな踊りは、本当に束の間ではありますが
見る者に安らぎと癒しを与えます。このような手法も、非常に巧みに取り込まれています。
結果としてポールは1200人以上のツチ族ならびに穏健派フツ族の人々を
救う事になるわけですが、(実はポール自身もフツ族です)彼にとっては、
それは当然の「責務」だととらえていたのでしょう。
彼が一番に考えたことは、「ホテルに移した妻子を守る事」。
それはすなわち、「ホテルにお泊まりのお客様たち-ホテルへ避難してきた人々」
を守る事でもあったのです。
彼の手にある武器は銃でもナイフでもなく、「ヒトとカネと自分自身」。
ホテル勤務を通じて築きあげてきた人脈と、ホテルの運営資金、培われた判断力と行動力。
はったりや懐柔、時には恫喝しながら、彼は政府軍、民兵組織、国連軍と交渉し、
数々の危機的状況をくぐりぬけていきます。
このあたりの心理戦は、もう喉から心臓が飛び出るくらいに緊迫感があります。
やはりこれは、ドン・チードルの素晴らしい演技の賜物でしょう。
ポールは困難が起きるたびにオタオタしてしまうのですが、
うろたえつつも、今、何をすべきか、そのためにどう自分は動くか、
周囲にはどのような指示を出すか、そういったことを瞬時に判断していきます。
これは一流のホテルマンとして彼が無意識に体得した技量でもありますが、
結果的にはそれが彼を救い、1200以上の命を救う事になったのです。
けれど、ポールも「普通の人」なのです。その象徴的なシーンが、物語中盤にあります。
食料調達に出かけた帰り、彼はフツ族民兵組織によるツチ族へ対する
惨劇の後を目撃してしまいます。
ホテルに帰ってから、彼は普段通りシャツを取り替え、
ネクタイを締めるのですが、いつも何気なくしめているネクタイが、
きれい締められません。苦笑しながら、もう一度ネクタイを締め治そうとする
ポールですが、全身の震えが止まらなくなり、たまらず号泣するのです。
惨劇を目の当たりにしてしまった彼の激しい動揺ぶりを見て、
観客は彼が決してヒーローではなく、「普通の人」なのだという事を思い出し、
悄然とするのです。
ドン・チードルは、こういうポール自身の人間性と、
ホテルマンとしての有能ぶりをうまく演じ分けています。
*
人数だけでも圧倒的に不利な立場に立たされながら、
最後までホテルの滞在者を守り続けたのが、
オリバー大佐(ニック・ノルティ)率いる国連軍。
彼らの勇気には、感服する以外にありません。
当時、ルワンダには「国連ルワンダ支援団
(UNAMIR:UN Assistance Mission for Rwanda) 」が
展開されていたのですが、フツ族によるツチ族襲撃が始まると
その規模を大幅に縮小され、2500人から270人にまで減少したのです。
彼らは武装を認められていましたが、それは「自衛」の為であって、
ツチ族を守るための使用は認められていませんでした。
この時の件がきっかけで、国連とPKOの対応は、後々まで課題となります。
(この辺り、話し出すとまた長くなりますのでこの辺で…)
助けたくても、助けられない。
オリバー大佐は、国連軍のリーダーでありながら自国や欧米諸国の思惑にしばられ、
思うように動けない自分の立場にもどかしさと苛立ちを隠せません。
その思いのしがらみを断ち切って、彼がついにツチの人々を守るために
規則を無視する場面は、緊迫感にあふれながらも胸に迫る名場面でした。
*
この映画は、「台詞(訳)」も優れています。
ストレートな言葉が胸に突き刺さるのですが、それがかえって
人の心に真っ直ぐに響きます。
虐殺の場面をカメラにとらえたカメラマン(フェニックス)の
「世界の人々は、この映像を見て・・・”怖いね"と言いうだけでディナーを続けるだろう」
は、核心をつかれましたね…。
もちろん、自分が何かできただろうか、と考えたところで、何も出来なかった事は
自明のことなんですけれど、この事実を「知ろうとしたか」と考えたら、
やはり、痛いところをつかれた…と思います。
そういった、核心をつく言葉については多くのブログやサイトでも
取り上げられているので、ここでは、私が心に残った言葉を挙げておきます。
(ちょっと表現が違うところもあると思いますが…)
映画の冒頭(まだ虐殺の始まる前)、ある人がポールに向かって、こう言います。
「このホテルは、まるでオアシスだ」。
そして、ポールが支配人になった時に言われたという言葉。
「私は、ホテルの品位(品格?)を落とさないようにと言われてきました」。
何気ない一言ではありますが、その後、ホテルが担った役割を思うと、
まさにここは、「ルワンダのオアシス」であり、混乱と恐怖のルワンダで
「品位」を保ち続けた場所だったのだ、と深く感じ入るものがありました。
*
ここからは余談ですが、この作品には、ある有名俳優がノークレジットで
出演しています。ミル・コリンの親会社の社長役なのですが、短時間の出演ながら
ホテルの危機にいち早く対応し、自分の立場においてできうる限りの助力を与え、
厳格さと懐の深さを感じさせる社長を好演しています。
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「ミュンヘン」に続き、ぜんぜんまとまっていない記事、第2弾…(苦笑)。
私、映画レポは向いてないんじゃないかな…_| ̄|○ ←また出た(笑)
いや、とにかく修行修行!
とにかく色々な事を考えさせられ、愕然とさせられ、それでもやはり、
「今、生きていること」を感じ、その事に深く感謝したくなる映画です。
機会があれば、ぜひご覧下さい。
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