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『絢爛とか爛漫とか』 モダンガール版 [講座・現代演劇]

2007年5月18日(金) 赤坂RED/THEATER 19:30開演

※「某事故」について追記しました。気になる方は「続きを読む」からどうぞ~♪

【スタッフ】
作:飯島早苗
演出:御笠ノ忠次
照明:津村裕子(アートブレーンカンパニー)
音響:前田真宏
美術:魚住和伸
衣装:中村洋一(東京衣裳)

【出 演】
沢樹くるみ、野口かおる、琵琶弓子、中谷さとみ

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またまたとあるご縁からご紹介をいただいて、ある舞台を観劇する事になりました。昔、結構好きだったタカラジェンヌOG、沢樹くるみが出演。

くるみちゃんの舞台を観るのは、彼女の宝塚卒業公演『月の燈影』(2002年、花組)以来、5年ぶりです。歌劇団在籍中から情感あふれる演技力で定評のある彼女のお芝居を再び見られるとのことで、非常に楽しみにしてやってきました。

赤坂RED/THEATERは、赤坂見附にほど近い「赤坂グランベルホテル」の地階にあります。受付は白、客席はチャコールグレーを基調にしてあり、その中で赤が効果的に配色されています。

赤坂に、こんなスタイリッシュなミニシアターがあったとは驚きです。客席には簡易テーブルがついていて、まるでお洒落な寄席に来た気分。

客席に入ると、緞帳はなく、すでに舞台装置が全面に現れています。上手に文机、下手に本棚と鏡台、どちらも昭和初期を思わせる和風のたたずまいを見せるセットです。

場内にはレトロな音楽が流れて、これから始まる物語への期待を高めます。セットの奥は中庭の作りになっていて、ニワトリが、

………え?ニワトリ?
え!?ホンモノ!!??

そう、なんと中庭では、ホンモノのニワトリが何食わぬそぶりで餌をついばんでいるのです。これにはびっくり!!(お芝居が始まっても、普通に中庭を歩き回っておりました)その後も注意して見ていると、さりげなく桜の花びらが舞い落ちたり、芝居が始まる前からとても風情のある芝居を予感させます。

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【物  語】
時は昭和初期、東京にある屋敷の離れの一室。文学を志す4人の女性ー文香(沢樹)、かおる(野口)、まや子(琵琶)、すえ(中谷)はよき友人として、よきライバルとして日夜議論を戦わせ、友人の活躍に嫉妬を覚えたり、恋の話に花を咲かせています。しかし、四季が巡っても同じ時は訪れないように、やがて4人の未来も関係も、大きく変化していきます…。

【カンゲキレポ】
久しぶりに、無心に舞台を見つめていました。

約2時間半、ノンストップの台詞劇。レトロなセットや洗練された出演者の衣裳、平易ながらも真理を突く言葉の数々、暗転のたびにさりげなく替えられている小道具の数々など、見どころ満載。気がつけば、吐き気がするほど(失礼いたしました)ものすごく舞台に集中してしまいました。

セット転換は一切なく、文香の部屋の文机に飾られる花ー桜、百合、秋桜、椿ーと、ちょっとした小道具ー落花、蝉時雨、虫の音、火鉢ーだけで表現されていく、とてもシンプルな舞台。

同じ女性だからでしょうか、繰り出される言葉のひとつひとつが、時に身につまされ、時に心当たりを覚え、心を突き刺し、心を包む…人間として、女性として共鳴できる言葉やシーンが多々ありました。

これだけの濃密な台詞劇なのに、全く重さや難解さを感じさせず、言葉がするっと心に入り込んできます。これは、台詞がすべて分かりやすい言葉でなおかつ明快なリズムに乗って形成されているからと思います。

その中でも印象的だったのは、なぜかこの台詞。「睡眠薬は眠るだけじゃない。眠った分だけ、命を削られるのよ」(byまや子)。睡眠薬を服用したことは一度もないのですが…なぜか心に残りました(苦笑)。

***

もうひとつ感心したのが、暗転の演出。舞台設定である文香の屋敷には書生が数名、住み込みで働いている様子。(その中に、文香と微妙?な関係にある”りょうた”なる人物もおります。)

暗転のたびに、文香の部屋に置いてある小道具が季節にふさわしく変えられていくのですが、その場面も非常に綿密な演出がなされています。

暗転。ほの暗い中を、書生と思われる人影が動いています。人の気配を感じるのが精一杯、という程度の暗さなので、顔や着物の色までは判別できません。

そのほの暗い舞台の中で、書生に身をやつした(?)小道具さん方は、廊下の雑巾がけや電球のつけかえなど、部屋を掃除するような動きを見せながら、季節を感じさせる花や小道具などを替え、障子をおろしたりして次の場面を作り上げていくのです。「暗転中の装置替え」という作業の粋を越え、「日常生活の中で季節を迎える準備」という、完成されたひとつの場面として芝居の中に成立しているのです。とても斬新な演出でした。

***

登場人物は4人の女性。皆、それぞれのしがらみや焦り、鬱屈を抱えています。その思いが激しいばかりに、時には取っ組み合いの喧嘩や酔いつぶれて暴れてしまいますが、心の底でしっかりと友情で結ばれているので、関係が壊れることはありません。

友情に対する4人の信頼感に、「今の私に、ここまで真剣に怒ってくれる友人はいるだろうか」と、思わず考えてしまいました。

4人の出演者は、各自の役をそれはそれはキュートに、そして個性的に演じていました。まるで役を自分自身にしてしまったかのようにイキイキと舞台を勤めていました。

5年ぶりの再会となった沢樹くるみちゃん。いちばん台詞の多い文香を演じました。宝塚在団時から魅力的だった瑞々しいたたずまいと透明感のある演技にますます磨きがかかっていて、嬉しい好演です。

特にクライマックス。スランプを乗り越えてようやく完成した新しい小説を、まや子に始めから終わりまで語り聞かせる場面は、圧巻です。ただ、淡々と自然に語っているだけなのに、その話の情景が浮かんできました。くるみちゃんの芝居心がなせる技ですね。

余談ですが、この新しい文香の小説は「かんざし」がキーワードなのですね。実は、彼女が宝塚を退団した卒業公演『月燈』でも、「かんざし」が重要なキーワードだったのですよ。そのことが思い出されて、当時くるみちゃんの「ちょこっとファン」だった私にとっては、なんだか胸にこみ上げるものがありました。(親心全開)

この回では、あるアクシデントがくるみちゃんに起こりました。劇中、まや子と取っ組み合いの喧嘩をする場面で、勢い余って後ろ向きに倒れ込み、その拍子に、ちょうどその場にあったラムネ瓶に後頭部を直撃。(おそらく、頭と首の付け根の間にあるくぼみの部分にジャストミートしたのではないかと…う、想像するだけでも痛い…)

ラムネ瓶は割れて、くるみちゃんも一瞬後頭部を抑えて痛みをこらえていましたが、後の芝居の流れを見ていると、あれは演出だったのかな…と思わせるような自然な展開に…?でも、すっごく痛そうでした…。くるみちゃん、身体を張っての大奮闘です。怪我しないで千秋楽までがんばってー!!

※くるみちゃんのブログ(下記に記載)によると、やはりこれ↑はアクシデントだったようです。その後の役者さんたちの対応や演技がとても自然だったので、よもやと思いましたが・・・あらためて、今回の出演者の皆さん、すごい!!

宝塚時代から、情感あふれる芝居に定評のあったくるみちゃん。今は自分のペースで自分のしたいお芝居に打ち込むことができる喜びで、キラキラと輝くようでした。

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この作品は、設定は同じで配役が全員女優から男性俳優に転換する「モダンボーイ版」も同時上演されています。こちらは観劇できませんが、どんな舞台になっているのか、すごく興味があります。

2時間半を越える長丁場にもかかわらず、終演後は、爽やかな感動が心にあふれるような心持ちでした。心なしか、駅へ向かう足取りも軽かったような(笑)。

何の雑念もなく物語の世界に入り込めること、登場人物の心の声に耳を澄ませることができること。この2点こそが、その舞台が成功するかしないかの分かれ目だと思います。(いかん、あの悪夢がまたよみがえってきた…>苦笑)

5月の夜、赤坂の街で出逢った珠玉の小品です。

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公演に関する情報は、コチラへ。
沢樹くるみちゃんのブログは、コチラ。→ くるみの栄養素
脚本の飯島早苗さんのブログは、コチラ→顔を洗って出直します

☆ オマケ ☆


くるみちゃんの卒業公演でもあった、2002年花組バウホール公演『月の燈影』のポスター。

雰囲気といい、構図といい、キャラクターの配置といい、すべてがしっかりと構成されていて好きなポスターのひとつです。芸者姿の娘役さんがくるみちゃん。粋で芯の強い芸者、「喜の字」役で、まさにこれが当たり役でした。最後の宝塚の舞台で、最高の役に出逢えて本当に良かったね、と心から思ったのが昨日のことのように思い出されます。ちなみにちなみに、鳶姿で決めているお兄ぃさま(おあにいさま)が、若き日のらんとむです。このポスター見て、らんとむに惚れました(笑)。いろいろと思い出のある作品です。

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