團菊祭五月大歌舞伎 夜の部 『め組の喧嘩』 幕見 [歌舞伎]
2007年5月10日(木) 歌舞伎座 (予定では)18:56開演
幕見席のある4階から見た歌舞伎座の舞台。まさに「天井桟敷」!
『神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)-め組の喧嘩-』
【出 演】
尾上菊五郎、市川團十郎、中村梅玉、中村時蔵、市川海老蔵、尾上松緑、河原崎権十郎、片岡市蔵、市川左團次、ほか
日頃より、とろりんさんが恥ずかしげもなく「愛人になっても良い」と豪語してはばからない御贔屓の歌舞伎役者、中村梅玉(ばいぎょく)さん、60歳。還暦を迎えられ、役者としての味もますます深くなりつつある高砂屋さん(梅玉丈の屋号)が当月、はなみずきさまのブログでも絶賛(!?)されるほどの大技を披露されているとの情報を入手!!別の友人からも「見るべし!」とのお言葉があり、これはファンとしては見守らねば!(笑)ということで、ウハウハと幕見に行ってまいりました。
さて、当日。仕事を終えて、大急ぎで歌舞伎座の幕見券売り場へと馳せ参じましたら、なんと一番乗り~。まだ前幕(『雨の五郎』と『三ッ面子守』)の幕見券を販売している真っ最中でした。早すぎ(笑)。待機場所に置いてあるベンチに座って、早めの夕ご飯を食べたり、持参したPHS(ワードやエクセルも編集できる優れもの♪)で宝塚花組東京公演のレポを作成していたら、あっという間に幕見券の発売時間になりました。木曜日の夜ということもあってか、幕見席はかなり空いておりましたよ。1列目でも、ひとりで2席分使えるほどでした。
「梅玉さんの大技♪梅玉さんの大技♪」ときゃぴきゃぴ想像しているうちに、やがて舞台は江戸の香り漂う世界へ…。
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【物 語】
粋を競うのが流行の江戸時代。ある日、品川の島崎楼で「め組」の鳶、藤松(松緑)と力士四ツ車(團十郎)の間でいさかいが起きます。鳶と角力と言えば、江戸の花形職業の双璧。したがって、お互いにライバル心もメラメラです。そこへ現れたのがめ組の頭、辰五郎(菊五郎)。彼はその場をおさめようと取り繕いますが、四ツ車は帯刀を許されていることをかさにきて、高圧的な態度をとります。(当時、角力は武家に庇護されており、苗字帯刀を許されていました)
怒りを殺してその場を引き下がった辰五郎ですが、四ツ車の強圧的な態度には腹を据えかね、暗闇の中で四ツ車を待ち伏せします。この計画は失敗に終わりますが、その様子をじっと見ていた者がいました。
め組と角力取りの険悪なムードは続き、ある日、辰五郎の妻お仲(時蔵)が怖れていたとおり、今度は芝明神前の芝居小屋で組の若い者と角力の間で衝突が起こりました。
堪忍袋の尾が切れた辰五郎は、め組のプライドをかけて角力と喧嘩で決着をつけることにします。四ツ車も同じ思いで、朋輩の九竜山(海老蔵)とともにめ組を待ち受けていました。
得意の怪力で角力たちが丸太をぶんぶん振り回すかと思えば、鳶たちは身軽さを活かして屋根に飛び上がり、瓦を投げつけて応戦。いよいよ双方が激突したその瞬間、スーパー大技を披露しつつ両者の間に入ったのは顔役の喜三郎(梅玉)。じつは暗闇の中で辰五郎を見ていたのは、この喜三郎だったのです。
鳶の親分として江戸の人々から慕われ、御奉行様にも通じている喜三郎は江戸町奉行と寺社奉行の法被を見せ、この喧嘩は自分に預けてくれるようにと仲裁を申し出ます。鳶連中と角力連中はそれぞれ遺恨を残しながらもぐっとこらえ、双方がお上に訴える事で合意し、喜三郎の仲裁を受け入れるのでした。
【カンゲキレポ】
この『め組の喧嘩』は文化2(1805)年、芝明神社で実際にあった鳶職人と角力の乱闘事件をもとにして作られたそうです。そして、実は明治28(1890)年初演と、明治時代になってからできたお芝居なのですね。ですから、登場人物が実名で登場しています。
1890年と言いますと、我が国では初の帝国議会が招集され、いよいよ欧米の議会政治への仲間入りをしようという年。この年に、江戸の粋を極めたこのようなお芝居が初演されたというのも、何か感じ入るところがあります。きっと、めまぐるしく変わる社会の中で、ゆっくりとした江戸時代の空気を懐かしむ人もたくさんあったのでしょうね。
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さて、お芝居。粋とイキ(の良さ)が信条の鳶と、愛嬌が売りの角力。「火事と喧嘩は江戸の花」とまで言われたこの時代、当時の2大花形勢力が首を揃えて大乱闘とあっては、江戸の庶民にとっては胸が躍るような出来事だったのでしょうねえ。しかも、お上の仲裁をあおぐといったん決まったら、文句を言わずにピシッと引く、そのけじめのつけ方もカッコイイじゃないですか。
圧巻は、喧嘩場のクライマックス。本舞台に建てられた平屋の建物に向かって、鳶連中が花道から走り込み、高さが2メートル近くあるその屋根の上へと一気に駈け上がる「飛びつき」を次々と披露します!!これには劇場中が興奮の渦に。屋根の上には前もって上がっている鳶の面々が既におり、花道から走り込んでくる仲間たちを次々と引き上げていくのですが、踏み込むタイミングと引き上げるタイミングが合ってこその場面。2人1組になって走り込み、飛び上がっていくのですが、1組上っていくたびに観客の歓声も大きくなり、全員が無事、屋根の上に飛び上がった時には、劇場が揺れるような大きな拍手に包まれました。このように、日々舞台を盛り上げて下さる名題下の役者さん方の奮闘ぶりには、いつも胸を熱くさせられます。
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この幕も、團菊の火花散る対決に梅玉さんがレフェリーを勤めるという、はからずも昼の部の『勧進帳』と同じような構図ですが(?)、見応えたっぷりながらも胸のすくような、爽快な舞台でした。
まずは鳶の親方、辰五郎を演じる菊五郎。…その男っぷりの良さには、もう惚れ惚れします!!先日に続いて、初っ端からおっさんの魅力にやられてしまう私(注…当ブログでは、「おっさん」「おやぢ」はかなり最高レベルの褒め言葉でございます。あしからずご了承ください)。
島崎楼での、怒りをぐっと我慢して障子をスッパーン!!(←本当に文字通り、「スッパーン!!」って音がしていました)と閉める姿、妻子へ注ぐあたたかい愛情の眼差し(特にこの場面は、時蔵@お仲の好演もあって情感豊かな素敵なお芝居でした)、喧嘩場でキビキビと鳶連中に指示を与えつつ、自ら先頭を切って乱闘の場へ飛び込んでいくイキの良さ。…カッコイイ!!
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男前を信条とする菊五郎@辰五郎を迎えうつのは、角力勢のリーダー、四ツ車。團十郎が演じます。たっぷりとした着肉がラブリーです。体格だけでなく、どっしりとした落ち着きと大きさに、團十郎自身の持つ大らかでゆったりとした芸格が重なります。菊五郎が押して、團十郎が引いて受け止める。両者の呼吸がぴったりと合ってこその大舞台です。
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そして今回、(私にとっては)いちばんの目的!!梅玉演じる喜三郎!!いやはや、萌え萌えです(爆)。江戸の町を仕切っている顔役ということで、キリリとした「顔役メーク」なのですが、梅玉さんがなさるとキリリとした中にもおっとりとした雰囲気があって、良いですね~♪
躍動感みなぎる「め組」レポ、ありがとうございました。いやぁ、楽しかったです(とろりんさんのレポ、が)! 階下で拝見してますとね、「高砂屋さん、キターーーっ\(゜0゜)/\(゜0゜)/\(゜0゜)/!!!」というかんじで(笑)。舞台写真では、落ち着きを取り戻したあとの梅玉丈のお写真もございましたので、機会があれば、是非♪ 今日も仕事は「いやぁ~い!」の調子でやっつけてきました。(って、あまり片付かないのですが…。)
by はなみずき (2007-05-17 19:21)
はなみずきさま
TBと引用の報告が事後承諾になってしまって
申し訳ありませんでした(汗汗)。はなみずきさまのブログも、
いつ読ませていただいても勉強になります。
>「高砂屋さん、キターーーっ\(゜0゜)/\(゜0゜)/\(゜0゜)/!!!」
うおおお!!私も「キターーーーッ!!!\(*^0^*)/\(*^0^*) /\(*^0^*)/」って叫びたい!!(爆)顔は、絶対ニヤケているはず↑。写真情報もありがとうございます!先日昼の部を拝見した時はまだ出ていませんでしたので、まだ未チェックです。千秋楽(25日)に行けそうなら、行ってみようかな~。
またお越しくださいね☆
by ★とろりん★ (2007-05-18 08:59)
とろりんさん、こんばんは。
観てきましたよ、梅玉丈の「大技」。決まりましたね~、格好良かったですね~。最後の一瞬に、音羽屋も成田屋も食ってしまう、儲け役でしたね!
でも私が拝見した日には、さすがにもう慣れてこられたのか、余裕が感じられて「必死の形相」と言うほどではなかったようです。ちょっと残念(笑)。
夜の部は「女暫」も歌舞伎らしい様式美が素晴らしくて見応えがありましたよ。ぜひご覧になって下さいね。
by mami (2007-05-21 19:37)
mamiさま
TBありがとうございます。そうですか、高砂屋、すっかり落ち着いておいででしたか…。安心しましたが、同時にちょっとつまらないな、なんちって(苦笑)「みんなに見守られる高砂屋」の図がなんだかしっくりきてましたので(笑)なんて、不謹慎ですみませんm(_ _)m千秋楽まで、どの役者さんも怪我なく元気に勤めていただきたいですね。
by ★とろりん★ (2007-05-22 19:03)