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THE CONVOY SHOW Vol.26 『ATOM'06』 [講座・現代演劇]

2007年5月11日(金) 五反田ゆうぽうと簡易保険ホール 19:00開演

【出  演】
瀬下尚人、石坂 勇、舘形比呂、右近良之、徳永邦治、黒須洋壬 / 今村ねずみ

「会いたくなったら会えばいい、それだけでいい。その時、僕たちはまるであの日のように語り合えるだろう。僕たちは、ATOMなのだから。」 (公演チラシより引用)

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とあるご縁をいただいて、男性パフォーマンスグループ「THE CONVOY(ザ・コンボイ)」のステージを観劇することになりました。

「ザ・コンボイ」と、その活動のメインである「ザ・コンボイ・ショー」については名前を知っている程度で、40歳代のおっさんのグループ(?)という大変失礼なイメージしかありませんでした。観る直前まで「おっさん好きやし、一度くらい観ておいてもいっか~」くらいのテンション(大変やる気なし)。

ところが、幕が開いた瞬間、これまで体験したことのない新鮮でドラマティックな時間が始まったのです。ええ、正直に言います。ヤバい、ハマりそうだぞ、コンボイ!!

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「ザ・コンボイ」はメンバー全員が6人+主宰の今村ねずみを合わせた、40歳代の男性7人によるパフォーマンスグループです。1986年、赤坂にあるショーパブでダンサーをしていた今村を中心に、同じくダンサーとして働いていたメンバーで自作自演のパフォーマンスショーを始めたのが結成のきっかけとか。

このショーは北野武氏が絶賛したこともあり、口コミで人気と評判が拡大し、一大パフォーマンスグループとして名を馳せるようになりました。そして昨年、結成20周年を記念して『ATOM'06』を上演。今回は、この時の追加公演だそうです。(なので、”'06」”なのです)

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さてさて、1年3ヶ月ぶりのゆうぽうと。開演前は、初体験カンゲキには欠かせない「客層ウォッチング」。圧倒的に女性が多いですね~。女子高生からマダムまで、あらゆる世代の女子が揃っていて、まさによりどりみどりです(意味不明)。

他には、ダンスをしているらしい若い男性や、どう見ても業界関係者っぽい(スーツにノータイでシャツは必ず第2ボタンまで開けてます)男性がちらほら。前日に歌舞伎座で見た光景とは、180度違いますね(笑)。

華々しい活躍をしているザ・コンボイらしく、ロビーにはゴージャスなお花であふれかえっております。友人(←同じくコンボイ初体験)と一緒にチェックしながら、「あ、小倉(智昭。フジテレビ「特ダネ!」)さんから来てるで~」「うお!SM○Pや!」「おお!名倉加代子先生や!!(←宝塚歌劇の振付でもおなじみのモダン舞踊家。メンバーの舘形さんが師事していたらしい)」「おおお、さすがバ○ニングプロ!!立派な薔薇の花やで~」と、なぜか大阪弁で興奮(笑)。

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ショーは休憩なし、約2時間40分。大きく2部構成に分けられています。1部はミュージカル仕立ての物語部分。2部は詩をモチーフにしたショー部分。「詩」をテーマに、1部と2部はつながっています。

プロローグ。B'zの名曲 「LOVE PHANTOM」のイントロが流れる中、7人の男性たちが颯爽と舞台に登場します。黒のパンツにひざ丈のロングジャケット。バッとその身をひるがえした瞬間、鋭い光線が観客を照らし、ショーが始まります。

オリジナルではない既存の曲で舞台を構成する形式は、ブロードウェイミュージカル『コンタクト』で使用された手法です。まさか日本のエンターテイメントでも同じ手法を使ったものがあるとは思っていなかったので、これはかなり新鮮でした。

「LOVE PHANTOM」のスピード感あふれるメロディーに乗って、ジャケットの裾を翻し、いきなりハイテンションのダンスを見せてくるザ・コンボイ。その振付や動きは、非常に宝塚のそれに近いものがあるのですね。ということは、このグループ、非常に「正統」なダンスで魅せてくる、という事なんです。(そこはかとなくムツゴロウさん口調)

ショーパブでのパフォーマンスから発展したと聞いていたので、もっとクラブ系というか、ストリート系と言うか、そういう系統のダンスなのかなと思っていました。しかし実際は予想と違って、クラシックバレエからモダンダンスの流れを意識した、かなり忠実に「王道」をいくダンスです。これは新鮮な発見でした。かえって王道をいくからこそ、20年にもわたってパフォーマンスを生み続けてこられたのですね。

そこに気付いたとき、一気に彼らの世界に引き込まれてしまいました。

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プロローグが終わると1部へ。プロローグにまず歌と踊りがあって、それから本筋に入るというのは、やはり宝塚的(笑)。

【チラシに掲載されているSTORYを引用】

哲学者を名乗りあう「デモクリトスの会」の6人の仲間たちが、「真夜中の詩人の会」を開くために、とある倉庫に集まってきた。互いに詩集を持ち合い、己の存在をかけて「真夜中の詩人の会」を始めようとしたその時、謎の人物が現れた。戸惑う6人に、「お前たちの中で俺は実存する」と言い放つ男。そんな彼に対して投げかけられた合言葉とは・突然の出会いが偶然だったのか、必然だったのか、互いの存在が見え隠れしながら、その合言葉の意味が明かされる。

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幕前でのお芝居があった後、とある倉庫のような、ガラクタがたくさん置かれて雑然としたセットが広がります。この舞台装置が、非常によくできています!同じく五反田で上演中の劇団四季『CATS』も真っ青。このガラクタの中に様々な小道具が潜んでいて、場面ごとにしっかり取り出してはきっちり片づけていくメンバーの無駄のない動きにも感心。ガラクタに混じって、テレビ画面が数台、舞台や花道に設置されています。これは2部のショーで大活躍でした。

1部は、ザ・コンボイとその主催である今村さんのこれまでの道のりと、これからの方向が差し示された舞台だったのかな、という印象。

しかしながら、初体験の観客を巻き込むことも忘れません。「舘形さん=顔がデカイ」「舘形さん=女役専科(劇中、嬉しそうにセーラー服や割烹着を着こなしていらっしゃいました)という身内ネタだけでなく、今昔の流行ギャグ(だっちゅーの、ゲッツ、ギター侍、タカアンドトシ、あるある探検隊などなど)や、懐かしのドラマ(「太陽にほえろ!」「はぐれ刑事」など)も飛び出し、懐かしのネタ満載。先日発覚したばかりの「辻(希美)ちゃんおめでた婚」もさっそくネタになっていました。

中でも、「♪微妙な中年、微中年~、美しい中年、美中年♪」という自虐的ギャグには爆笑。おっさんパワーをひしひしと感じました(笑)。

もちろん、このコント(!?)の間にもふんだんに歌やダンスが盛り込まれています。もっとも1部のダンス場面は、全員が鉄腕アトムの被り物を着用したり、名倉先生の扮装をしたりと、ひとクセもふたクセもあるものになっています。

***

物語部分が終わると、舞台上方から吊り物が下ろされて、青色のジャケットが人数分つるされています。メンバーがそれを羽織ると、いよいよ2部の開始。この時のダンスも、とてもエネルギッシュで素敵です。

2部では、まず7名がそれぞれ1編ずつ詩を紹介します。やっと「真夜中の詩人の会」が始まるわけですね。

紹介されたのは、「千の風になって」(作者不詳)、「崩れゆく肉体」(萩原朔太郎)、「母親というものは」(葉祥明)、「凧の思想」(大岡信)、「雨ニモ負ケズ」(宮沢賢治)など。

こうして、7つの詩をモチーフにしたショーが始まります。しかし、どの場面もただのダンスナンバーに終わらず、和太鼓の演奏やバンド演奏、タップダンスやソロ、フォーメーションに工夫をこらした群舞など、様々なエンターテインメントが繰り広げられていきます。あらかじめ設置されていたテレビ画面が、別角度で撮影された映像や前回公演の映像を流したりと、ここで大活躍。

どの場面も創意工夫に満ちていて素晴らしいパフォーマンスでしたが、中でも非常に感動的だったのが、右近さんによる「雨ニモ負ケズ」と、舘形さんによる「崩れゆく肉体」。

「雨ニモ負ケズ」では、右近さんを中心に、メンバーが見事なタップダンスを披露。特に右近さんのタップが凄い!!こちらの目が回りそうになるくらいのスピーディーな足さばきで、とても迫力があって、軽快で、音が多彩で…。「これがタップダンスというものか!!」と目からウロコがバリバリ。初めて、本物のタップダンスを見たような衝撃と感動でした。右近さんと瀬下さん(だったと思います…)によるかけ合いのタップは、最高でした!!

舘形さんは「崩れゆく肉体」。ラヴェル「ボレロ」に乗せてのソロです。

前場面が終わると、まずは舞台上で生着替えを決行し、ファンの鼻血を誘発(笑)。音楽に合わせて身体をゆったりと動かしながら靴を脱ぎ、上着を脱いで黒のタンクトップ(腹部で切り替えのシースルーになっていて、アダルト♪)と短パン姿に。その上から黒のスカートを巻き付けると、耽美な世界へと観客を一気に惹きこみます。

舘形さんはモダンダンスの名手なのだそうですが、外部の舞台では「女形」としての出演も多いとか(『ハムレット』のガートルード役など)。この場面では、彼の持つ「グラマラス」な魅力が十二分に生かされています。

空に舞う腕は強靱で力強いのに、その動きはまるで女性のようにしなやかでやわらかい。高くあがる足の筋肉は男性そのものの屈強さを感じさせるのに、ピンと伸びた足先はとても繊細で美しい。

男性でもない女性でもない「中性的」ではなく、むしろ男性の部分と女性の部分をどちらも強烈に感じさせる、「両性具有」の魅力をたたえた不思議な人です。今までに見たことのないタイプの舞台人でしたので、すっかり釘付けになってしまいました。

ええ、ぶっちゃけ、舘形さんに惚れましたが何か?(爆笑)

***

エピローグの群舞は、白地に胸の部分に縫い取りのあるロングジャケットで勢ぞろい。この場面で、はホリゾントのスクリーンに青空を映し出し、なんだかとっても清々しい気持ちになれるダンスナンバーです。

大きな拍手の中、幕がいったん閉まり、再び開くと、1部のガラクタのセットが再び出現。メンバーたちが思い思いの場所で詩集に目を落としています。そう、「真夜中の詩人の会」が終わりを告げたのです。心に染み入る心にくい終幕です。

***

開演前は友人と、
「へえ、コンボイって7人もメンバーいるんや~。5人くらいかと思ってた」
「ほんまにみんなおっさんなんやな~」
「誰が誰かわからへんな~」
などと、失礼極まりない暴言の連発。ところが観劇後は…

「ちょっと!めっっちゃよかったやん!!」
「もっとチャラチャラしてるんかと思ってたら、まともやん!!」
「おっさん、侮れへんな!!」

と、評価が激変。←しかし暴言の応酬にしか聞こえないのは、なぜ?(笑)

***

それにしても本当に素晴らしい舞台でした。これはもう、舞台のどのジャンルにも入らない「ザコンボイショー」というひとつのブランドですね。彼らだからこそ表現できる世界、味わえない世界…。

世の女性たちが熱狂する理由がわかったような気がします。だっておっさん達、めちゃくちゃカッコいいもん(笑)。

グループもメンバーも20年以上の年齢を重ねて、やはりいろいろと変化はあったことでしょう。けれど、現在の彼らが、今だからこそ見せることのできる最高のパフォーマンスは何かをとことん突きつめ、それらを表現するために各自が最高のレベルまで引き上げる努力をしています。

派手で華々しいパフォーマンスとは裏腹に、「表現すること」に対するストイックなまでの探求心と真摯さを感じさせる集団、ザ・コンボイ。これからの活躍に、目が離せなくなりそうです。

美しく熱きおっさん達に、乾杯☆(あ、整体には定期的に通ってくださいね→爆)

公演に関するサイトは、コチラ

オフィシャルホームページはコチラ(凝りすぎていて、見づらい…)

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sumire

はじめまして。
ザ・コンボイ!一時期話題になっていたので、私も見に行きたい!と思っていたのですが、すっかり忘れていました(^_^;) 
そんなに良かったのですか!参考になりました。
今度チェックしてみます。
by sumire (2007-05-17 23:31) 

★とろりん★

sumireさま
こちらにもコメントとnice!をいただき、ありがとうございます。
コンボイ、良かったですよ~。タカラジェンヌにもファンが多いみたいですね。やっぱり名倉先生つながりでしょうか、振りや動きに宝塚の香りがします(笑)。とはいえ男性なので、同じような振りにしてもとても力強くてたくましいです。またあったら行きたいな~、と思っています。
by ★とろりん★ (2007-05-18 18:24) 

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