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石田衣良 『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』 [Books]

目覚めよと彼の呼ぶ声がする (文春文庫)

目覚めよと彼の呼ぶ声がする (文春文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 文庫

最近、カンゲキ(観劇)レポがまったくなくてすみません[あせあせ(飛び散る汗)]5~6月は毎週どこかに旅している状況でしたので、休日は体力温存(&荷物整理)のため若干ひきこもり状態になってしまい、ほとんど外出することがなかったという(それもどうだろう…)。

その代わりと言ってはなんですが、旅のお供に本をお供にしています。長編小説は続きが気になってしまうので、旅の合間に読むのは読み切りのエッセイ集や短編集ばかりなのですが。夏休みは大長編にトライしようかなっ。(言ってみただけ)

さて、前置きが長くなりますが、今回ご紹介するのは石田衣良によるエッセイ集。『空は、今日も、青いか?』に続いて読んでみました。(その時のレビューは、
コチラ

『空は~』と重複するコラムもいくつかありますが、今回は2000年から2005年にan・anや朝日新聞や文芸誌に掲載された文章を、「Love & Passion」「My Favorite」「My Hometown」「That is Life」「Colum」「Culture & Entertainment」と6つの
章に区分されてまとめてあります。巻末には、「もう、不景気のせいにするのはやめよう!」と題した語り下ろしインタビューも掲載されています。

『空は~』は、時事問題や社会現象を軽やかに切り込む一方、明日や将来について悩む若者世代への肩ひじ張らないエール集、といった印象でした。

対する『目覚めよと~』は、そういった時事への切り込みはもちろんありますが、著者自身がその世代であった頃、何について考え、模索し、どう行動を起こしていったのかということにも主眼が置かれているように思います。表紙と巻頭に著者のグラビアが掲載されているので、よけいにそんな風に感じてしまうのかも。特に「My Hometown」は、著者自身の半生記といった感じ。

個人的には、『空は~』の方が共感できる文章が多かったかなぁ。でも、すごく共感できる意見や考えというのはいくつも見つけることができます。03年~04年に朝日新聞での連載された「ゼロサン時評」(本書では「Colum」の章に掲載)では、限られた時数の中で、当時の社会現象や事件の本質を鮮やかに突いて問題提起をしたり、著者自身の周りの日常を軽やかに切り取っていて、そういった軽やかさ、自在さというのはさすが。

著者自身の半生記っぽい空気もある、と先ほど書きましたが、少年時代から本の魅力に取りつかれ、学生時代もフリーター時代も夢中になって本を読んでいたとか。その流れで、本や読書に関するコラムも数多く収録されています。

なるほど~、と深くうなずいたのが、以下の文章。

受験技術はは生きるうえで、実はさして役に立たないけれど、本を読む習慣はものすごく役に立つ。(中略)大学教育というのは、結局本をしっかり読めるようになるのが最終目的である。言葉の力と情報収集の基礎を強くするには、それが最良の方法だからだ。(中略)新しいアイディアや企画を考えだし、それを説得力をもって他人に示し、その製品やサービスを広く世の中に広めていく。仕事のどの過程でも、言葉と情報の力が欠かせないのだ。」
(「読む力は、生きる力」2004年『リクルート進学ブック』掲載)

そういえば、これまでの人生でいちばん頭が冴えていたなぁ、と思うのは高校生の時なのですが、その時期は本当に色々な文章を読みまくっていました。ちなみに、当時読んだ本の中でいちばん心に残っているのは、「たけくらべ」です。
(若干どうでもいい情報)

当時の受験勉強も、とにかく「読む」のが中心。国語や古文や英語は長文問題ばかり解いて、その中で単語や慣用句の遣い方を覚えていった記憶があります。そんな昔のことを思い出しつつ、デジタル画面ではなく、ちゃんと紙に印刷された活字を目で追うという作業は、本当に大切なんだなぁ…と実感しました。

お話がだいぶそれてしまいましたが…本書のテーマは、やっぱり「自分であること」をどう見つけていくべきか、ということかな。タイトルの「彼」というのは、誰もが内面に抱えているであろう「自分」。

膨大な情報量と変化し続けるスピードに埋もれ、流されそうになる中で、どうやって「自分」らしくいられるのか。そのヒントを、自身の体験を踏まえて示唆している一冊ですね。


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