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国立劇場 第272回 平成二十三年初春歌舞伎公演 通し狂言『四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)』 [歌舞伎]

2011年1月8日(土) 国立劇場大劇場 12:00開演

このところ恒例となっている音羽屋さん一門による国立劇場のお正月公演。今年も行ってまいりましたよ~。

通し狂言
『四天王御江戸鏑

相馬太郎良門・鳶頭中組の綱五郎 実ハ 渡辺綱/尾上菊五郎
源頼光・茨木婆/中村時蔵
袴垂保輔・平井保昌/尾上松緑
女郎花咲 実ハ 土蜘蛛の精・一条院/尾上菊之助
やきいもの金・碓井貞光/坂東亀三郎
はらぶとの福・酒田公時/坂東亀寿
弁の内侍/中村梅枝
七里姫・豊後忠政/尾上右近
卜部季武/中村萬太郎
巨瀬国岡/尾上松也
皮肉の喜兵衛/河原崎権十郎
鰊の局/市村萬次郎
伴森右衛門/市川團蔵
星鮫入道蒲鉾/坂東彦三郎
良門伯母 真柴/澤村田之助

音羽屋の芸である『土蜘蛛』の趣向を取り入れた復活狂言です。晴れやかで華やかな大スペクタクル!やっぱりお正月は、理屈抜きに楽しめる芝居が良いですね!

作品としてはあらすじにやや難解は部分(特に袴垂保輔と平井保昌のくだり)があるものの、ひと幕ごとに見せ場を設けてあるので、とても楽しむことができました。

まずは序幕。龍宮城を見立てた宴の場面から始まります。お正月らしく、優美で晴れやかな空間が広がります。センターに立つ菊五郎はさすがの重厚感。七里姫として傍らに控える右近は、乙姫のような龍女のいでたちがぽってりと美しくて、舞台に華を添えていました。

二幕目は、歌舞伎独特の演出手法である「だんまり」と宙乗りが見どころ。秘伝の宝物をめぐって、息も詰まるような緊張感あふれる暗闇でのせめぎ合いが続きます。ここで誰が何を持ち去っていったのか、が後の芝居へと続く大きなキーポイントになります。

ここでは、呪術によってよみがえった土蜘蛛が出現します!!これが結構な大きさで、吃驚しました。これからご覧になる方、お楽しみに~☆

そして土蜘蛛の精(菊之助)による宙乗りは圧巻!妖艶な花魁の衣裳で、銀糸(蜘蛛糸)を派手に撒き散らしながら浮遊する菊之助は、壮絶な美しさと存在感!上手のいちばん端っこのお席から、必死にオペラグラスをで姿を追いました(笑)。

三幕目は、羅生門河岸にある茶屋「中根屋」が舞台。音羽屋が得意とする世話物の世界が広がります。

鳶頭の綱五郎と名を変えて、奪われた宝物の詮議を続ける渡辺綱(菊五郎)と花魁花咲(菊之助)の色模様は、見ているだけでうっとりとしてしまいます。ふたりのちょっとしぐさだけでも、すごく色っぽいんですよね。特に菊之助は婀娜な美しさがにじみ出るようでした。

ニュースでも話題になったAKB48のパロディ、「三宅坂48」が登場するのも、この場です!座敷での宴会の余興として、4名のかむろちゃん(女の子)が出てくるのですが、タータンチェックのミニ丈着物に、ハイソックス!超可愛い!!この姿で、長唄の「会いたかった」「ポニーテールとシュシュ」メドレーに合わせてキュートに歌い踊るのです!

舞台上の役者さん方も、嬉しそうに踊りに加わっていました。そして、そのラブリーなパフォーマンスを誰よりも楽しそうに見つめている音羽屋もツボでした(笑)。

四幕目は再び時代物へ。ですがちょっと面白い趣向があって、渡辺綱をめぐって花魁花咲(菊之助)と、綱の許嫁である弁の内侍(梅枝)が恋のさや当てを繰り広げるのです。

世話物の空気を残す花魁と、時代物らしい優美で気品ある宮廷の女官が綱をめぐって恋の火花を散らすこの場面。歌舞伎らしい独特の色っぽさがあって、良かったですよ~。この後に綱がどういう判断をするのかも見どころです(笑)。梅枝は宮廷からの使者らしく、美しく行儀の良い舞台で好演。

時蔵の頼光と、松緑の袴垂保輔(平井保昌)による芝居は時代物らしい厚みがたっぷり。松緑も、本当に良い役者になってきました。その後、頼光と土蜘蛛の精(菊之助)による闘いは、迫力と妖しさが充分。

大詰は、北野天満宮での激闘。ここも土蜘蛛の精(菊之助)は宙乗りで登場します。飛来するのは花道上ではなく舞台上なのですが、それでも上下に浮遊して舞台下にいる頼光方の家臣たちを睨みつけ、糸を放出する姿は迫力満点です。

そして、燃えさかる炎の中での土蜘蛛の精(菊之助)と、平井保昌(松緑)の最後の対決。ここは若手同士の熱気と気迫が渦巻いていて、見ているこちらまで身体中の血が熱くなるような興奮でした。照明や仕掛けも凝っていて、素晴らしかったです。この場面最後の演出は、とーってもビックリすることうけあいです!私なんて、座席の椅子から飛びあがっちゃいましたもの(笑)。

最後は、歌舞伎らしく後日の決戦を誓って幕となります。様々な趣向や工夫をこらしながらも、歌舞伎らしさ、歌舞伎の味わいはしっかりと残されているのがすごく良いなと思います。

上の文章ではなかなか触れる機会がありませんでしたが、時蔵は頼光の気品と茨木婆の凄みを巧みに演じ分け、流石です。河原崎権十郎は中根屋の呼び込みをする若い者を演じていましたが、この方は立ち居振る舞いに「江戸のにおい」が沁み込んでいて、出てくるだけで舞台に粋な風情が漂うんですよね。貴重な役者さんです。團蔵も憎まれ役を手堅く演じています。

今年も初春らしい夢をしっかりと楽しませていただいた、国立劇場でした~☆



カンゲキ☆アーカイヴ、ひっそりこっそり更新中です。今回は2003年宙組公演の記事をアップしました☆


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mami

おお、これも先を越されてしまいましたね(笑)。
お正月恒例の音羽屋のサービスたっぷりのお芝居、楽しみです。
ただ、去年も今年も、時蔵さんと菊五郎さんのカップルが観られないのが寂しいです……。私の中では、歌舞伎界当代のベストカップルなので。
by mami (2011-01-10 19:07) 

★とろりん★

mamiさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

今月は後半にいくほど時間がとれなくなりそうなので、絶対に観たい演目はすべてこの三連休までに観劇する作戦でした(笑)。

mamiさまのおっしゃるとおり、、菊五郎丈と時蔵丈は歌舞伎界のゴールデンカップルですね!この舞台の時蔵丈は、源頼光の気品と武人としての強さ、茨木婆の大らかさと妖しさを見事に演じ分けていらっしゃいますが、美しい女方のお姿も拝見したかったな、と思いました。

次の舞台では、お二人の美しくも色気のあるコンビぶりを楽しみたいですね~!
by ★とろりん★ (2011-01-11 08:54) 

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