長崎市 大野教会堂 [旅]
長崎の旅の合間に訪れたのは、外海(そとめ)地区に残る大野教会堂。国指定重要文化財のひとつです。
美しい景色が広がる海沿いの国道202号線からちょっと山道へ入り、草木に囲まれた急な坂と狭いヘアピンカーブをいくつか過ぎた後に、素朴に積み上げられた石垣と石の壁が見えてきます。
石垣の下には、淡い紫の花弁が印象的なコウテイダリアが盛りを迎えていました。
遠藤周作『沈黙』の舞台とされている外海地区。明治12(1879)年に外海地区の主任司祭として赴任したマルク・マリ・ド・ロ神父(1840~1914)は、出津教会を拠点として布教や社会福祉活動を行いましたが、道のりが険しくなかなか出津教会まで足を運べない大野地区のキリスト教信者のために建設されたのが、この大野教会です。
ド・ロ神父が設計し、明治26(1893)年に巡回教会として建設されました。巡回教会の遺構がほぼ完全なまま残されているのは、教会の数が多い長崎県内でもきわめて珍しい事なのだそうです。
すぐそばの道路から見上げてみた教会堂。
大野地区は山の急斜面に這うようにして民家が点在しており、この大野教会も山の中腹に石垣と石垣が段差をつけて築かれた平地の上に建てられています。
当時の苦労がしのばれるのと同時に、この土地に教会をという地域住民の方々の熱い思いが伝わってくるようです。
教会の壁は、見事な石造り。
これはこの土地で量産される玄武岩(←平たく割れる習性があるそうです)を細かく打ち割って平積みにし、間に漆喰モルタルで固めた技法で、当地では「ド・ロ壁」と呼ばれます。
側面の窓は上部が半円アーチ状になっており、少量の煉瓦が使用されていますが、屋根は瓦葺き。当時、煉瓦作りの技法は日本に伝わりつつあったものの、日本人職人の手では大量生産はまだ難しい時代でした。なので、教会の特徴のひとつとも言えるアーチ状の窓部分には煉瓦を使い、屋根には日本人職人の手で作られる良質の瓦が使用されたのでしょう。
西洋発祥である教会建築の技術を日本に伝えながらも、日本人の職人芸が活かされる技術はそちらを利用する、というド・ロ神父の配慮に感服します。
それにしても、本当に美しい石垣です!素朴でありながら、丁寧で緻密な積み上げられ方。ひとつひとつ、大切に、心を込めて積まれていったのだろなぁというのが伝わってきて、石垣に触れながら思わずじ~んとしてしまいました。(←そんなワタシを、遠巻きながら半笑いで見守る同行者たち)
屋根瓦に刻まれた十字架にもご注目ください☆
教会の玄関前には、マリア様がたたずんでいらっしゃいます。
ちょっと面白いなと思ったのが、マリア様の立たれている向き。
同じく外海地区にある黒崎教会や大浦教会など、多くの教会のマリア様は、教会玄関の斜め前(もしくは正面)に、教会を背中にして、つまり教会の外側に向かって立たれていることが多いのですが、大野教会堂のマリア様は、教会玄関の真横に、しかも教会の内側を向いて立たれています。
これはあくまでも私の憶測に過ぎないのですが、これまでの写真をご覧いただいた通り、大野教会堂の敷地はもとから狭い土地を苦労して平地にしてあるので、本当に小さいのです(今は教会玄関前に観光車両用とおぼしき平地がありますが、ここちらもこじんまりとしています)。
そこで、従来通りにマリア様が教会玄関の正面や斜め前に配置されると、信者の方達が教会に出入りするのに難儀されるので、比較的静かな場所に立たれることになったのかな・・・と。
個人的には、お祈りやミサを済ませた信者の方達をマリア様が両手を広げて迎え入れているように見えて、すごく素敵だなと思いました。
豊穣たる木々の緑と、どこまでも澄み切った海の青。木陰から差し込むやわらかい陽光。言葉にできないほどの美しい光景を背景画にまとい、、静かに両手をさしのべられるマリア様。
とても優しくて温かで穏やかな表情で、心の濁りがスーッと溶けて消えていくような感覚を覚えました。いつまでもいつまでも見ていたいお顔でした。
またいつか、必ずお会いできますように。
先日もご覧いただきましたが・・・五島灘の夕景。
まだまだ、日本にはこんな美しい世界が数え切れないほどたくさんあるのでしょうね。
初めまして。
たまに”旅” まれに”宝塚”をテーマにお粗末ブログをつづる 茶とんびと申します。
「蘭寿とむコンサート」で 人柄の良さがあふれ かつ舞踊が機敏で素晴らしく かつ伸びやかな歌唱が心地よく かつ演技力の素晴らしい蘭寿さんがすっかり好きになってしまった流れで こちらにたどりつきましたが 大野教会堂の記事にハッとして コメントさせていただいてます。
今秋 わたくしも外海地区に参りました。
時間が無く訪問できなかった大野教会堂の素晴らしさを教えていただきました、ありがとうございます。
少し前の記事の 池島、軍艦島も含め 長崎というところは日本の歴史が痛いほど迫ってくる土地ですね。
それにしても とろりん様の写真は素晴らしい、詩のようなタイトルも素晴らしいです。
蘭寿さんがトップでおられる限り 花組だけは追いかける所存です。
そして その都度お邪魔させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。(長文本当にすみません)
by 茶とんび (2013-01-01 23:08)
茶とんびさま、
はじめまして。コメント、ありがとうございます!!
蘭寿とむ好きの旅人ということで拙ブログにお越しくださったとの事、嬉しい限りです。
茶とんびさまのおっしゃる通り、長崎は日本の歴史の香りが今でも濃く残っていて、その土地に立っているだけで色々な思いがあふれてくるところです。その時代に生きた人の思いが伝わってくるような。訪れるたびに様々な感情が湧き上がる土地です。
蘭寿とむというタカラジェンヌを通じて、これからもっと宝塚の魅力の虜になっていってくださると嬉しいです。またのお越しをお待ちしております。
by ★とろりん★ (2013-01-02 21:33)