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ミュージカル『エビータ』 [劇団四季]

2006年9月2日(土) 四季劇場【秋】 17:30開演


作詞/ティム/ライス
作曲/アンドリュー・ロイド・ウェーバー
製作・演出/浅利慶太
日本語訳詞/浅利慶太 岩谷時子(「スーツケースを抱いて」)
振付/加藤敬二

【出 演】
エビータ:井上智恵
チェ:芝 清道
ペロン:下村尊則
ミストレス:西田ゆりあ
マガルディ:飯野おさみ

【物 語】
アルゼンチンの田舎で、私生児として生まれたエバ・ドゥアルテは
幼い頃のある出来事がきっかけで特権階級に根強い敵対心を持っていました。
15歳の時、タンゴ歌手・マガルディの愛人となって貧しかった家を抜け出し、
ブエノスアイレスに住みついた彼女は次々とパトロンを変え、
ラジオの仕事から女優、国民的スターへと成長していきます。

華やかなスターとなったエバは、あるパーティーで陸軍大佐ペロンと知り合います。
やがてエバはペロンのスポークスマンとしての役目も負うようになり、
ついに大統領夫人へ。ファーストレディの座へと上り詰めたのです。
彼女は自身を「虹」と称して美しく着飾り、ヨーロッパ歴訪へ旅立つとともに、
“アルゼンチンの聖母・エビータ”への道を歩き出します……。

【カンゲキレポ】
まずは、アルゼンチン国内では「サンタ・エビータ」として
今も人気の高いエバ・ペロンについて、少しだけ触れておきますね。

エバ・ペロン(1919-1952)は15歳で出てきたブエノスアイレスで
声優としての才能を開花させ、アルゼンチン国内のスターとなります。
1946年、夫ファン・ドミンゴ・ペロンの大統領選出に伴い、
ファーストレディとして歴史の表舞台に華々しく登場します。

当時、アルゼンチンは牛肉などの一次産業の輸出で非常に豊かな国でしたが、
その利益は一部の特権階級と貴族によって支配され、
国民の多くは学校にすらいけない労働者によって占められていました。
学校へも行けず、文字が読めない者にとって、
ラジオは当時、唯一の娯楽であり情報源でもあったというわけです。
ラジオから聞こえるエバの声は、たちまちのうちに多くの人を魅了したと言われています。

エバにしてみれば、ラジオは自分の野心を叶える為に不可欠な存在でしたし、
ラジオでの成功がなければ、『エビータ』の物語は生まれなかったかもしれません。

「エバ基金」と称された慈善活動の実態や特権階級を敵視する
政策には疑問視する声もありますが、アルゼンチンにおける女性参政権を
勝ち取ったのもエバの働きによるところが大きく、その評価は一概に決めることはできません。

実に色々な意味で「二面性」を持つ魅力的な女性であった、という事でしょう。

***

では、レポへと参りましょう。
劇場に入るとまずは「本日のキャスト」を確認、が四季観劇の正しい順路(?)。
そして今日もいつものように、キャスト表に目を通してみると…。

「うおおおおおお!!!高倉さんと岩崎さんが出てるやないの!!!」
(↑とろりんさん一気にハイテンションの為、いきなり咆吼&故郷の言葉丸出し)

高倉恵美さんは「CATS」でタントミールを、
岩崎晋也さんはタンブルブルータスをそれぞれ演じていらっしゃいます。
私にとってタントミールは高倉さん、タンブルは岩崎さん、と決めてしまっているほど、
お2人のCATSの舞台が大好きなんです。

抜群のプロポーションで魅せる高倉さんのタントミールは
動きもしなやかでまさに「クールビューティー」。
岩崎さんのタンブルブルータスはあまり感情を表に出さないもの、
いつも寄り添っているカッサンドラに示す優しさに、
とろりんさん毎回メロメロになっておりました(笑)。

先日『CATS』を観劇した際は、お2人はキャストに入っていなかったので、
「長いこと出演されてたからな~、お休みとかに入っているのかな」
と思いつつも、お二人の舞台が観られない事に少し残念な思いをしていました。

ところが!!
このお二人、そろって『エビータ』のアンサンブルに入っていたのです!
きゃあ~、あの2人のダンスが観られるのね~、きゃぴきゃぴ☆☆☆

しかも今回のアンサンブルには、元タカラジェンヌの名前も発見。
花組で「未宙星沙」と言う芸名で、ダンサーとして知られた有永美奈子さん、
同じく花組で「七星きら」として、主に歌手として活躍された鳥原如未さん。
とろりんさん的には(勝手に)「プチ・同窓会」な気分。

そのため、メインキャストはもちろん、後方のアンサンブルも観なくてはいけない、
おまけによく見るとものすごい舞台装置の転換も見逃せない、と
忙しく瞳をキョロキョロ動かし続けていたので、最後の方は目が回りそうでした(笑)。

***

前置きが長くなりましたが、まずは全体の感想を。

「もう1度観たい!!!!」

この一言に尽きます。
音楽と舞台装置、そして役者が見事に一体化していました。

いや~…アンドリュー・ロイド・ウェーバー、侮れんな…。

まず、彼の音楽は本当に素晴らしい!!
台詞も歌に乗せていくオペラ形式の舞台なのですが、
その流れるように展開する舞台と共に、メロディーが途切れることなく、
破綻をきたすことなく様々なリズムを奏でます。
でも1曲ずつは、その場面に相応しくあるよう、綿密に計算され、
練り上げられたメロディーを持っています。

「Don't cry for me, Argentina」の格調高い旋律、
「ブエノスアイレス」の、心が沸き上がるような陽気なリズム、
「チャリティコンサート」での、大人の男女のゲームを想像させるような
気だるいメロディー、「空を行く」の浮遊感漂う美しいメロディー。

ひとつひとつの曲自体は、実はかなり際どい事を歌っていたりするのですが、
とにかくメロディーの流麗さと幅広さにまずは感嘆します。

「Don't cry for me, Argentina」(劇中では「共にいてアルゼンティーナ」)は
この舞台に欠かせないメロディーですが、よ~く聞いていると、
この旋律は様々な歌の中にさりげなく織り込まれています。
しかしリズムを変えてあるために、なかなか気づきません。

また、舞台はエバの葬列のシーンから始まるのですが、
ここで流れているメロディーはラスト、エバが絶唱する
「エバのラメント」でも、もう一度使用されます。

この、音楽の輪廻と、サークル(環状)を基本とした今回の舞台装置が
何とも言えない因果関係を示しているようで、感じ入るものがありました。

その舞台装置も、凄いんです!!
『オペラ座の怪人』のようにド派手な演出というわけではありませんが、
さりげなくすごい(笑)舞台転換が毎場面用意されています。

装置の基本はサークル(環状)をモチーフにした舞台機構で、
中央に円形のセリ、奥と手前にも装置があるのですが、
これが場面ごとにセリ上がるだけではなくて、いったん陥没したり、
客席へ迫り出したりするように設計されているのです。
ですからちょっと気持ちを緩めていると、
「え?今のどこから出てきたの?今のは一体何があったの??」
と、頭にはてなマークが飛び交ってしまう始末。

この舞台装置の転換もとてもスムーズで、音楽に酔いしれている内に
スーッと次の場面が完成されている、その工夫とセンスもさすがです。

美しい音楽とハイテクを駆使した舞台装置をバックに展開される
ダンスも、とっても素晴らしい!!劇団四季屈指のダンサーを揃えてきています。

エバの死を嘆く幕開けの場面、「サンタ・エビータ」で
彼女を聖女と敬愛する場面の静けさ、しなやかさ、たおやかさ。

一転して、少女のエバが都会を夢見る場面でさりげなく踊られるアルゼンチンタンゴ、
ブエノスアイレスの乾いた明るさ、エバとペロンが労働者の支持を勝ち取っていく
「ニュー・アルゼンチーナ」であふれるエネルギー。
「静」と「動」のメリハリがつきながらも躍動感あふれるパワフルな舞台も堪能できます。

***

それでは、心に残った出演者を…。

まずはタイトルロールを演じた井上智恵。
…素晴らしい舞台でした!本当に、圧倒的存在感と輝きでした。

今日はいつにも増して「素晴らしい」を連発しておりますが、
すみません、言葉が見つからないんです…。

四季の『エビータ』と言うと初演の久野綾希子、
再演の野村玲子のイメージが強いと思うのですが、
そのイメージを払拭させるように、予想以上に素晴らしい演技でした。

舞台冒頭、葬列のシーンが延々と続いた後、舞台センター奥に
光が落ちて現れるのは、聖母マリアのような衣裳を身にまとったエビータ。

「♪さようならアルゼンチーナ お別れの時が来たの…♪」
と彼女が歌いだした瞬間、劇場にえもいわれぬ荘厳な空気が出現しました。
それほど優しく、美しく、そして周りを圧倒する母性を湛えた美声でした。

このふくよかな歌声が響きわたった瞬間、舞台に満ちていた
悲しみの空気が浄化され、人々の嘆きと涙が癒されていくような、
そんな清々しさにあふれていました。
この瞬間だけで、私は「この舞台に出逢えて良かった」と思いました。

年末のカンゲキ☆アワード、主演女優賞ノミネートです!!

狂言回しの役、チェを演じた芝清道。
この役名から「チェ・ゲバラ」に思い当たった方は多いと思います。

チェ・ゲバラはアルゼンチン出身でキューバのゲリラ活動を指導した革命家です。
生まれは1967年ですので、1952年に死去したエバとは時間的な接点はありません。

チェを狂言回しとして設定することで、エバの創り上げたアルゼンチンの未来を
暗示する存在として観ることもできます。また、第3者が舞台の進行を客観的に見つめる
設定で、美貌を武器にアルゼンチンの政治の舞台へ駆け上がっていくエバの野心性と、
自分と同じ境遇を抱えた農民たちに見せ、彼らの中で伝説となっていく聖女性が、
巧妙に浮き上がってきます。

芝さんは、相変わらずパワフルですね~。
みんながエバの死を嘆いている中、ふと登場して、いきなりエネルギッシュな
歌を披露。ガツーンと胸を打たれるような迫力で、文字通り「パンチのある」歌声です。

エバの夫、ペロンを演じた下村尊則。
個性の強い俳優さんで、『ライオンキング』のスカーなどアクの強い役が
お似合いですが、近年ではハムレットや『異国の丘』の九重秀隆など、
正統派の役にも挑戦されています。

がっしりとした体躯で、軍服がとってもお似合い。エバとの最初の出逢いから、
彼女に支えられ、翻弄されながらも政治の波へ泳ぎだしていくペロンを、
力強い歌声と堂々とした立ち居振る舞いで的確に演じられていました。

エバの最初の愛人、タンゴ歌手のマガルディを演じた飯野おさみ。
これまで観た舞台の中で、一番イキイキ☆としているように感じられたのは、
気のせいでしょうか。
楽しそうにラテンナンバーを歌っていらっしゃいました。
声にも艶があって、惚れ惚れしますね~。

もちろん、アンサンブルで出演の高倉さんも岩崎さんも踊りまくっていて、
とろりんさんきゃぴきゃぴ☆

ただしアンサンブルの皆さんは、ピンスポットがが当たりませんし、
1つ1つの振りも激しいので、一瞬見ただけでは(しかもオペラグラス装備)
判別できず、ダンス場面は大変でした(笑)。メインキャストも観ないといけないし、
高倉&岩崎さんも探さないといけないし、有永さん&鳥原さんも見つけ出さないといけないし…。

高倉さんは2階の一番後ろの席からでも何とか見分けがついて、
本当にスタイルが良いなぁ、と実感。踊りに品があるので、
小汚い貧民の扮装をしていても何だか優雅な感じです(笑)。

岩崎さんは、第2幕の「金は出て行く湯水のように」の場面で一瞬
「あれかな?」と思ったのですが、相変わらずキレのいいダンスでした。
うひょ☆(笑)

終演後、近くのタリーズでひと息入れていると、何と岩崎さんにお目にかかっちゃいました~!
ガラス越しに前の道路を歩いて行かれただけですけれどね(笑)。
ベレー帽に膝丈ズボンと、カジュアルな動きやすい、カワイイ感じでした(ファン馬鹿)。

*****

認めたくありませんが、今回の舞台、かなり見落としがあったと思います(苦笑)。
どこかに注目していたら、別の何かを見落としてしまう。おしまいには、
「もう、どこを観たら良いの~~~~~!!!」となってしまう(特に群衆シーン)

でも、本当に面白い舞台でした。18日(月・祝)に千秋楽を迎えますが、
機会があったらぜひもう一度観たい、と今でも思っているほど。

輝きに満ちた、迫力のある素晴らしい作品でした。

★オマケ★

四季劇場から。夏の終わりの空、秋の初めの空。

ついでにコチラも、ぽちっとな。


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コメント 2

itigo

こんにちわ。
そろそろキャッツ以外の物も見てみたい、エビータなんかいいかなぁ。と思っていたら18日までなんですね・・・気づきませんでした(涙)
舞台の外で俳優さんを目撃!なんて羨ましいです。でも自分が遭遇しても気がつかないかも。
by itigo (2006-09-10 08:56) 

★とろりん★

itigoさま、コメントをありがとうございます☆
私も久しぶりに、CATS以外の四季ミュージカルで
感動しました。あとオススメは『アイーダ』ですね。
四季の俳優さんて。舞台以外ではとてもナチュラルな
感じですので(cf,タカラジェンヌ)、街中ではまず
分からないですね。劇場の近くだったから何とか…。
またCATS以外のミュージカルをご覧になった時は、
ぜひぜひ遊びにいらしてくださいね☆
by ★とろりん★ (2006-09-14 17:45) 

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