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劇団四季ミュージカル 『アイーダ』 [劇団四季]

2006年11月11日(土) 福岡シティ劇場 13:00開演

【作 曲】 エルトン・ジョン
【作 詞】 ティム・ライス

【出 演】 濱田めぐみ(アイーダ)/五東由衣(アムネリス)/阿久津陽一郎(ラダメス)

 

*****

3年ぶりに、ミュージカル『アイーダ』に再会しました。

『アイーダ』は、ミュージカル『ライオンキング』の成功に続いてディズニーが放った作品。
2000年にブロードウェイで開幕した後、2003年に大阪MBS劇場にて日本初演。

当時、ブロードウェイで上演された作品が東京に先駆けて大阪で開幕することは
極めて異例で、「初の関西発信ミュージカル」として関西地方の文化シーンでの
話題を独占しました。

大阪公演終了後は京都劇場での続演を経て、九州に上陸。
福岡シティ劇場での上演が始まりました。
『アイーダ』福岡公演は、来年1月8日に千秋楽を迎えることが既に決まっています。
次はどの街に登場するのか、ミュージカル界の注目が集まっています。
(とろりん的には、おそらく次は名古屋だろうと予想しています)

【物 語】

時は古代アフリカ大陸。
領地拡大を狙うエジプトは、若き将軍ラダメスの導きのもと、
最大の敵国であるヌビアをじわじわと圧倒していました。

ある日、ラダメス一行はヌビア人女性の一団をとらえます。
その中に、1人で抵抗を試みた勇敢な女性がいました。
女の名前はアイーダ。
なぜか彼女に惹かれるものを感じたラダメスは、アイーダを虜囚として扱わず、
自分の婚約者でファラオの娘であるアムネリスの侍女として献上します。

実はアイーダは、ヌビアの王女だったのです。
エジプトに奴隷として連行され、過酷な扱いを受けていたヌビア人虜囚たちは、
アイーダの存在に希望の光を見いだし、団結していきます。

アムネリスはお洒落に目がない無邪気な王女様。けれどその心は孤独でした。
彼女に対しても物怖じしないふるまいと思慮深さを見せるアイーダに、
アムネリスは次第に友情と信頼を寄せるようになります。

一方、父からアムネリスとの結婚を進めるよう言われるラダメス。
ファラオの娘と結婚することは、エジプトの王として立つこと。
しかしそれは、彼が愛して止まない冒険の生活を捨てることでもありました。
悩むラダメスに、アイーダは
「自分の運命が気に入らないなら、変えればいい。」
と、彼を突き放します。

アイーダとラダメスは反発しながらも惹かれあい、やがて結ばれます。
そんな時、アイーダの父であるヌビア王が囚われたとの報せが入ります。

敵国同士の2人の愛が、祝福されるはずはありません。
アイーダとラダメスは互いの立場を思い、愛し合いながらも決別します。
しかし、その様子をアムネリスが偶然見てしまいました。

悲しみのまま、婚礼衣裳に身を包むアムネリスと、彼女を迎えるラダメス。
その時、ヌビア国王が逃亡したとの急報が入ります。
初めて、アイーダの身分を知り愕然とするラダメスですが、彼はそのまま
ヌビア国王を逃亡させ、アイーダと共に反逆者として捕らえられます。

余命幾ばくもない父・ファラオの跡を受け、エジプトの新しい指導者となる
覚悟を胸に決めたアムネリスは、思いがけない裁定を2人に下します……。

【カンゲキレポ】

私は2003年、上京直前に運良く『アイーダ』を観劇する事ができました。
これがもう、開幕直後とは思えない、非常に完成度の高い舞台で、大感動…。
なかなか東京に来てくれない様子なので、大分県での仕事の休日に、
思い切って福岡までやってきてしまいました。

***

いや~、今回も感動でしたね~(しみじみ)。
主役トリオがしっかりと役を自分のものにしているので、安心して観られます。

特に、日本初演キャストでもある濱田めぐみ。
彼女のダイナミックなヴォーカルは、いつ聴いても鳥肌が立ちます。
第1幕ラストの「神が愛するヌビア」は、他の追随を許さない圧倒的歌唱力。
休憩に入っても、席から立ち上がれないほどの感動でした。

同じく初演キャスト、阿久津陽一郎。
前回よりワイルドさとセクシーさ倍増で、時々鼻血が出そうでした(爆)。
阿久津さんは熱唱すると、高音部分が少しかすれる感じになるのですが、
これがまたセクシーなんですね~。『クレイジー・フォー・ユー』の
ポリーの言葉を借りれば、「おへその下がくすぐったく」なっちゃいます(笑)。

アムネリスの五東由衣。
初見でしたが、王位継承を決意し、別れゆく2人へ哀悼の思いを込めて
歌うラストのソロは、苦しみも悲しみも突き抜けた者だけに許される
透明感と清らかさにあふれていました。

***

いちばん心に残っる場面は、お互いに惹かれあっている事を確信した
アイーダとラダメスが結ばれながら歌う、「迷いつつ」。
劇団四季のレパートリーの中でも、最も美しいラブシーンではないでしょうか。

官能的でありながら、お互いにあふれる心の綾が純粋に伝わってくる。
歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』六段目のおかる堪平の別れの抱擁の場面、
宝塚歌劇『ベルサイユのばら』の「今宵一夜」の場面と同じくらいに美しく、
洗練された極めつけの名シーンだと思います。

***

今回の『アイーダ』観劇で、あらためて考えさせられたのは、
「運命を引き受ける事」の熾烈さと、尊さ。
会報誌『ラ・アルプ』でも、遥洋子女史が同じ事を書いておりましたね。

「運命」というのは、自分の意志と関係なしに起こる必然。
それを引き受けなくてはいけなくなった時、人はどうするか。
真っ正面から受け止めるのか、かわしてしまうのか。目を背けてしまうのか。
そこに、人としての真価が問われるのではないでしょうか。

この作品は、ラダメスという1人の男を頂点に、
アイーダとアムネリスという2人の女性がラダメスへの愛、
そしてお互いへの友情という線で結ばれています。
そう、この舞台では、常に「三角形」の構図が暗示されています。

ヌビアの王女であるアイーダは、エジプトに虜囚として囚われている
多くのヌビア人奴隷をまとめ、彼らを導く事が自らの使命だと信じていました。

出逢ってまだ間もない頃、アイーダはラダメスにこう言います。
「自分の運命が気に入らないのなら、変えれば良い」。

この時のアイーダは、自分の意志で運命は変えられる、と信じています。
しかし時を経て、ラダメスへの愛に目覚めたアイーダは、ヌビア王女としての
使命との挟間に揺れ動きながら、彼との「愛」に生きる「運命」へと導かれていきます。

自分の意志で、運命は変えられない。変えるものではない。
そう悟った時、アイーダはラダメスと共に
「運命」に身をゆだねることを決意したのではないでしょうか。

一方、ラダメスの愛と、彼と結ばれる「運命」を
幼い頃から疑うことなく無邪気に信じていたアムネリス。

エジプトの王女であるアムネリスは、自分の未来の夫であり、
未来のファラオでもあるラダメスへの愛を一途に向けていくことが、
自分の生き方だととらえていました。

しかし、ラダメスの愛が自分に向けられていない事を知った
アムネリスの前には突然、「エジプトの国と民を導く」という
思いもしていなかった「運命」が突きつけられます。

自分の意志とは無関係に、運命は自分の行くべき道を指し示す。
そう自覚したからこそ、アムネリスは自らが王位を継承することを受け容れ、
その責務を果たすという「運命」を覚悟したのではないでしょうか。

2人の女性は、ラダメスという1人の男の「愛」の行方によって、
自分の意志とは全く正反対の「運命」を引き受けることになるのです。

運命に身をゆだねるアイーダ、そして運命を受け容れるアムネリス。
苦悩の果てに、2人の女性が「運命を引き受ける姿」は対照的です。

「愛」に生きることになったアイーダが見せる、安らかな表情。
「民」と共に生きる事を決意したアムネリスの、凛然とした、慈愛に満ちた眼差し。
どちらも、「運命」に出会っていない第1幕では観ることのできなかった表情です。

自分の運命を引き受ける、と言うこと。
それは、その人にしか分からない痛みと苦悩を伴います。
けれど覚悟を決めたとき、人はこれまで以上の強さと優しさを身につけ、
そして自分の人生に対して、より真摯に、責任をもって向き合えるように
なるのではないでしょうか。

*****

「愛の形」について、そして自分の「運命の引き受け方」について

様々な事を教えてくれるミュージカル『アイーダ』。

もちろん、こんなに深いテーマを読み込まなくても、さすがに
ディズニープロデュースらしく、非常にユニークなアイデアで
エンターティナー性抜群☆の舞台に仕上がっています。

第1幕、アムネリスが侍女と繰り広げる「♪お洒落は私の切り札」では、
パリコレもびっくりの素敵なファッションショーが繰り広げられますよー。
大好きな場面の1つです。

福岡に行かれた際には、ぜひアイーダ達に会いに行ってくださいね。
アイーダの場面では歌声を堪能し、アムネリスの場面ではドレスを楽しみ、
ラダメスの場面ではフェロモンむんむんのセクシーさに腰砕けになってください(笑)。

☆オマケ☆

実際にエジプトでの発掘調査で発見されたある埋蔵品のレプリカ。
1つの石棺の中に、1組の男女が眠っている様子が描かれています。
このレプリカからヒントを得て作られたのが、このミュージカルの
原型でもあるヴェルディのオペラ『アイーダ』とか…???


ついでにコチラも、ぽちっとな☆


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