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大銀座落語祭2007 究極の東西寄席Fブロック [伝統芸能]

2007年7月15日(日) 銀座ブロッサム 17:00開演

第1部 人気者三人会

第2部 三遊亭圓楽トークショー
※圓楽休演により、「豪華福袋寄席」に変更

第3部 桂歌丸の会

7月12日から16日まで銀座一帯で開催された「大銀座落語祭」。東京の「洒落」が残る街、銀座に江戸の「粋(いき)」と上方の「粋(すい)」が結集する、年に一度の大イベントです。

メイン会場の銀座ブロッサム(銀座中央会館)では、「究極の東西寄席」という、文字通り東西の落語界のトップランナーとトップリーダーたちによる競演が連日にわたって開催されました。その中で、今回はFブロックを見物。チケットを手配して下さいましたO様、心より感謝いたします。

さて、皆さま既にご存じかと思いますが、この日第2部で出演予定だった三遊亭圓楽師匠は、体調不良のため休演となりました。休演はとても残念でしたが、かえって落語界のチームワークとフットワークの素晴らしさを実感した素敵な舞台となりました。

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第1部 人気者三人会

三笑亭夢之助 「宗論」

最初に、にこやかに登場されたのは夢之助師匠。

噺家の名前についてのマクラから、キリスト教に改宗した若旦那と大旦那(つまりお父さん)のおもしろおかしいやりとりです。正確な発音と軽妙な語り調子が印象的でした。

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三遊亭楽太郎 「猫の皿」

続いての登場は、「笑点」でもおなじみの楽太郎師匠。圓楽一門のスターですね。お決まりの(?)圓楽師匠ネタから歌丸師匠罵倒ネタ(笑)の後は、古道具を素材にした短い一席。

旅人がある茶屋に入ると、そこは猫を飼っていました。その猫の餌皿に使われていたのが、なんと300両(だったっけ?)は下らない高麗の絵皿。

茶屋の主人はその絵皿の価値を知らないのだと思った旅人は、その皿を横取りしようと猫を3両で買い取ります。ところが茶屋の主人はその絵皿の価値を知っており、譲ってくれません。「それなら何であの皿を猫に使ってるんだ」「へい、ああしておりますと猫が3両で売れますので」。

楽太郎師の高座は「笑点」そのままのイメージ。頭の回転が速くて、言葉のリズムが緩急自在でメリハリがあって、男らしい素敵な声で。演目も企み屋の楽太郎師匠らしい噺でしたしね(笑)。

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三遊亭好楽  「見世物風景」

第1部を締めくくられたのは「笑点」のピンク(笑)でおなじみ、好楽師匠。今では珍しくなった「見世物小屋」の風景をおもしろおかしく聴かせてくださいました。

一度、テレビで見世物小屋を特集した番組をチラッと見たことがありますが、あのちょっと異様な高揚感というのは独特ですね。その雰囲気を思い出しながら聴いていました。

それにしても、寄席やテレビで大活躍されている方が、幕開きに一気に3人も登場されるなんて、落語祭ならではの豪勢さですね。

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第2部 豪華福袋寄席

第2部は、圓楽師匠によるトークショーの予定でしたが、体調不良のため突然の休演となってしまいました。開場の際に手書きで書かれた張り紙を見たときは、驚きで思わず立ちすくんでしまいました。

代わりに催されたのが「豪華福袋寄席」。出演者は始まるまで一切明かされませんでした。まさに福袋。

職業病か、はたまたやじうま根性か、こういう時は誰が出るのか…と、いろいろと想像してしまいます。

「主催の”六人の会”から何人かは出るだろう」とか、「落語芸術協会の会長(歌丸師)が出るから、それに匹敵する立場の人を、ということでEブロック(この日のお昼公演)に続いて三枝師匠(上方落語協会会長)が上がるのか、でも1日2ステージはちょっと大変かしら…」とか、「さっき、夢之助師匠がマクラで木久蔵師匠の話をした時に袖を気にしていたから、木久蔵師匠も来てるんじゃないか」とか、様々な憶測が私の頭の中で勝手に飛び交いました(笑)。

「福袋…。当たりもあれば、外れもあるもの…」と、妙な悟りを開いた心持ちで迎えた「豪華福袋寄席」。これがまったく、大当たりだらけでした!!

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春風亭昇太 「ストレスの海」

突然のアクシデントで、少々落ち込み気味の客席の前に元気よく飛び出してきたのが、昇太師匠!!

それまで、「一体、誰が出てくるんだろう…圓楽師匠、見たかったなぁ…」モードだった客席が、一気に舞台へと集中し、万雷の拍手が響きました。まるで会場全体が、「昇太来たか!」「えらいぞ昇太!」「がんばれ昇太!」とエールを送っているかのよう。

常々、昇太師の無駄な元気の良さにはついていけないことがあるのですが(苦笑)、この時は、この底抜けに明るいキャラクターに会場全体が救われましたね。この状況で、このタイミングに最適なキャラクターを持つ人物は、おそらく昇太師以外にいませんでした。

アクシデントの責任はしっかり背負う、「六人の会」の心意気と、その中での自分の役割を見事に勤めあげた昇太師のナイスプレーに拍手!!

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林家正蔵 「新聞記事」

続いて登場したのは、またまた大物、正蔵師匠!!客席、引き続いて盛り上がります。

後日、プログラムで確認したところ、正蔵師はこの時、王子ホールでの出番終了後に駆けつけたようです。えらいっ!!(上から目線)

「新聞記事」は聴くのが2回目でしたので、落ち着いて楽しむことができました。私、この噺のサゲ(オチ)が大好きなんですよー。

正蔵師の高座は初めて聴いたのですが、んー、なんというか、ご自身の味を出すにはまだまだ…というところでしょうか…。

この福袋寄席、この後も大看板続きだったのですが、噺家さん達をそれぞれメインディッシュの一品料理としますわね(突然)。それで、「あの料理美味しかったね、こっちの料理も良かったねー」と、それぞれの料理の印象を語る中で、「あれ?もう一品あったよね?あれ?あともう一皿食べたはずだけど、何だったっけ…?」とメニューを確認してしまうこと、ありません?

それひとつだけを食べると美味しいなのに、いくつかのメインディッシュと並べて出ると、ほかのお皿の味やインパクトにどうしても隠れてしまう…。「そうそう、この味!」といった自己主張が薄いような…。

そんな印象を正蔵師の高座からは感じられた次第です。きっとこれから味わいが深く、ほどよく染み込んでいかれるのでしょうね。

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笑福亭鶴瓶 「青木先生」

「これはやっぱり”六人の会”が頑張るのかー。だとしたら、小朝師匠も出るかなー」と思った次の瞬間、めくりには上方落語界のトップランナー、鶴瓶師匠のお名前がっっ!!

まさかの鶴瓶師の登板に、客席は大きなどよめきが沸き上がりました。私も思わず席から飛び上がるほど喜んでしまいました。(O様、隣ではしゃぎすぎて申し訳ありません…)

鶴瓶師は、なんと浴衣に素足という超ラフな格好。師の話によると、この日は本来、第2部(圓楽トークショー)のスペシャルゲストとして出演する予定だったとか。舞台には洋装で上がる予定だったので、その衣裳を持参して浴衣で楽屋入りしたところ、「一席お願いします」と言われて仰天したそうです(笑)。「この扇子、好楽兄さんから借りましてん」と扇子を見せながらボソボソ語る鶴瓶師でした。

そんな鶴瓶師はご自分の半生をネタにした新ジャンル「私落語(わたくしらくご)」より、高校生の思い出を元にした「青木先生」を披露。怒って興奮するとなぜかどこからともなく「ピー!!」と音が出る先生との思い出を語ります(笑)。

突然の高座にもかかわらず、そしてご自分の持ちネタとは言え、鶴瓶師の熱演にバカウケ。やはりここは同じ関西の血が騒ぐのでしょうか、すっかりとろりんのツボに入ってしまいました。1人ですっごく笑ってたなー…。やっぱり大阪弁はいいなー…。

板書をするくだりでは、膝立ちで後ろを向く振りがあり、そのたびに鶴瓶師の足の裏がチラチラ見えました。その様子を見る度に、ポーカーフェイスの多い鶴瓶師がこのイベントにかけている熱い気持ちが感じられて、1人で勝手に胸を熱くしていました。

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春風亭小朝 「こうもり」

やっぱり来て下さいましたか!というようなひときわ大きく、温かい拍手で迎えられたのは小朝師匠。新作落語「こうもり」を聴かせてくださいました。

「鶴の恩返し」ならぬ「こうもりの恩返し」なのですが、このこうもりが変身する女の子が超キュート!!その名も「あおいちゃん」。名前の由来は…ぷぷぷっ(←思い出し笑)。皆さん、想像してみて下さいね。

このあおいちゃん、怪我をした時に面倒を見てくれた男のお店を手伝うことになるのですが、これがまた、かっわいーの!!小朝師の身のこなしや表情の作り方、声音、どれをとってもラブリー!!でも言うことは面白い(笑)。「じゅるるっ♪」と言う時の手の仕草や上目遣いの表情、最高です!!見逃してはいけませんよー!!

ありがとう、小朝師...。と、なぜか感謝の眼差しで高座を見送ってしまいました(笑)。

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林家木久蔵 「彦六伝」

福袋寄席、いよいよ最後のお福分けは「笑点の黄色の人」でおなじみ、木久蔵師匠でーす!

木久蔵師は、ご自分の師匠を題材にした「彦六伝」。ほかの高座でも何度か聴かせていただいていますが、何度聴いても面白いですね、林家彦六師匠という方は(笑)。

秋にはご子息のきくおさんにご自分の名を継がせて、新たに「木久扇(きくおう)」を名乗ることが決まっている木久蔵師。今度こそ、古典落語を聴かせてくだい!(切実)。

それにしても、これほどまでに豪華な寄席をプレゼントしていただけるとは…。圓楽師匠休演で落ち込み気味だった客席が、本当に良いテンションになりました。圓楽師匠の回復をお祈りするとともに、客席を楽しませる為に全力を尽くして下さった皆さんに感謝しています。

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第3部 桂歌丸の会
「怪談 牡丹燈籠より”栗橋宿”」

Fブロックのトリを勤めるのは、歌丸師匠。夏のライフワークともなっている怪談噺の一端を披露して下さいました。

古今亭圓朝作の長編落語「牡丹燈籠」より、「栗橋宿」のくだりを。ちなみに「栗橋」という地名は、現在でも埼玉県に残っています。私は毎朝、「南栗橋」行きの電車で通勤してます(笑)。

主人・新三郎を裏切って、100両を手に入れた伴蔵(ともぞう)とお峰夫妻。2人は江戸を抜け、伴蔵の生まれ故郷の栗橋で店を開きます。

商売は繁盛しますが、伴蔵はとある小料理屋で働くお国と良い仲に。嫉妬を焼いたお峰は、新三郎への裏切りやこれまでの秘密を暴露すると言い放ちますが、伴蔵の取りなしで機嫌を直し、夫婦は元の鞘におさまります。

しかし、それは伴蔵の企み。翌日、伴蔵にともなわれて出かけたお峰は、闇夜に包まれた幸手(さって)堤の土手で、夫の手によって斬殺されるのでした。

歌丸師、相変わらずの良いお声!お峰が伴蔵の親戚である九蔵にお酒を薦めて、巧みに伴蔵の浮気を聞き出すやりとりや、浮気がばれた伴蔵と嫉妬をやくお峰の喧嘩のやりとりがメインです。思わず息を殺して聞き入ってしまいました。

印象に残った場面を…。まずは伴蔵の浮気を確信したお峰が、嫉妬を抑えるように暗い部屋で裁縫をしている場面。伴蔵の「なんだ、明かりもつけねぇで縫いもんしてやがる」という台詞だけなのですが、その前後の間と言い、視線の動かし方と言い、真っ暗な中に浮かび上がるお峰の後ろ姿が、情景として頭の中に現れてきます。その静かに動く背中に嫉妬の炎が見えるようで、ゾクッとしました。

もうひとつは伴蔵が幸手堤でお峰を殺す場面。「ああ、お前さん、蛍が飛んでるよ、綺麗だねえ」というお峰の台詞を口にする歌丸師の口調や視線の動き、表情を見ているだけで、さざめく無数の蛍の光が見えるようでした。その蛍の光の中で繰り広げられる殺しの場面…美しささえ感じてしまう、凄惨な光景です。

客席も、「福袋寄席」ではドッカンドッカン受けまくっていたのが、この時間はシンと静まり返って、ただひたすら、歌丸師の口からこぼれていく言葉のひとつひとつに、じっと耳を澄ませていました。私は2階席最後列から見物していたのですが、演者と客席の一体感を肌で感じることができました。

この作品はかなりの長編で、この日はお峰が伴蔵に斬られた場面で時間が来ました。決定的瞬間で息をのんだ直後、歌丸師の「本日はこれまで」を聞いた時には、まるで連ドラを見ていたような錯覚を受けましたよ。「ええぇ!ここで終わり!?次も聴きたいぃぃ!!」みたいな(笑)。

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この日は、戦後最大級の大型台風4号がもっとも東京に接近。どうなることかと思いましたが、少し早めの暑気払いという感じで楽しませていただきました。銀座一帯の笑い声が台風を吹き飛ばしたのかしら?

この期間は銀座ブロッサム以外でも、約10ヶ所の会場で噺家さん達によるイベントが同時開催されています。次回は一体、どんなプログラムで私たちを驚愕と歓声と爆笑の渦に引き込んでくれるのでしょうか。今からとっても楽しみです!!

銀座ブロッサム

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りょう

実はこの記事がアップされるのをず~っと心待ちにしておりました。読んでみて期待通り!!とろりんさんは奥ゆかしいから主張されないけれど、端々に教養の深さが滲み出てまする~☆勉強されていらっしゃるのですね。これからもりょうにお教えくださいね。
昇太師匠の無駄な元気よさ・・・むふふ♪
一番気に入った箇所です。。。ファンとして嬉しいなぁ。
私も八月に独演会に行って参ります。楽しみ!
by りょう (2007-07-24 08:30) 

★とろりん★

りょうさま
嬉しいコメントありがとうございます!なんか…本能のまま思いつくままに書きなぐったので、とてもこそばゆいんですけれども…。昇太師匠はいつでもどんな時でも無駄に元気ですね(←褒めてます)8月の独演会、楽しんできてくださいね!
by ★とろりん★ (2007-07-24 12:26) 

はなみずき

私も、「待ってましたァ~! とろりん師匠っ」でございます。「福袋寄席」私も拝聴したかったです(ホントに)。

昇太師。あぁ見えて(笑)、昇太さんはご自分の役割をけっこう計算されてらっしゃると思うんですよね。それにしても、円楽党が大半を占めると思われる会場に万雷の拍手で迎えられるとは、私もやはり贔屓の一人として、嬉しゅうございますね。あの無駄な元気が、ファンには元気の素なんでございますよ♪

正蔵さん。小朝兄師匠から言われたら、断れなかったのでしょう(苦笑)。頑張ってるところが「見える」ところが、師匠のよいところかも、しれません。

そして鶴瓶師匠登場ですか! ポーカーフェイス! とろりんさん、言いえて妙でございます!! 鶴瓶さんのあの独特の口調、引き込まれますよね~。とろりんさんのレポ、仕草が目に浮かびます。

小朝師匠、ここで登場ですか! あおいちゃん、大好きです。あおいファン倶楽部(笑)。

木久蔵師匠。私は翌日の木久蔵師匠を拝見しました。とろりんさんの予想、当たりましたね!

歌丸師匠の味なお声もとろりんさんのレポで聞こえるようです。拝聴したかったです。

長いコメントになってしまいました。失礼をお許しくださいませ。とろりんさんの記事で、大銀座落語祭、もう一つ落語会に参加できた気持ちになれました。ありがとうございました。
by はなみずき (2007-07-24 21:49) 

★とろりん★

はなみずきさま
お待ちいただき、あぁりがとうございまぁ~っす!!(染之助師匠ちっくに)

昇太師、本当に頭の回転が早い方だと思います。無駄に元気を装いながらも、(あ、くどいようですが褒めてます>笑)その場でのご自分の役割を心得ていらっしゃいますよね。

正蔵師の高座は初めて拝見しました。大きなお名前を継いで大変なこともおありでしょうが、今はその長い道のりを歩んでいらっしゃるのですね。ガンバレガンバレ、正蔵師ー!

鶴瓶師の高座も初めてでした。「青木先生」、生徒たちが青木先生を興奮させようと企むところから始まり、ついに「その時」が来るまでの緊迫感あふれるやりとりが、最高です(笑)。

あおいファン倶楽部、私も入会しまーす!!(笑)小朝師の高座も初めてでした(初尽くしですね)。とっても爽やかな高座でした。

大ベテランの木久蔵師も歌丸師も、それぞれの持ち味を活かした素敵な高座でした。あ~、国立演芸場の中席(歌丸師による「怪談 乳房榎」)、聴きに行こうかな。

ワタクシも長いコメント返し、失礼いたしました(笑)。楽しんでいただいて、ありがとうございました!
by ★とろりん★ (2007-07-25 09:46) 

ラブ

東京は、結構落語が強いですよね。
関西は、寄席を作りましたが、どうしても
漫才が強いです。寄席も、行ってみたいな。
by ラブ (2007-07-25 15:14) 

★とろりん★

ラブさま
天満繁盛亭ですね☆一度は行ってみたいと思っているのですが、なかなか…(^-^;実は私、花月には行ったことないんです。こちらも機会があれば行ってみたいですね。
by ★とろりん★ (2007-07-25 20:47) 

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