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朗読劇 『天切り松 闇がたり ~第1夜 闇の花道~』 [講座・現代演劇]

 
 
2007年8月13日(月) 俳優座劇場 19:00開演
 
【原 作】 浅田次郎
【台 本】 中西良太
【演 出】 中嶋しゅう
【出 演】 すまけい、鷲尾真知子、増田英治、藤原道山(尺八)
 
昨年、ニッポン放送イマジン・スタジオで上演された朗読芝居『天切り松 闇がたり~第一夜 闇の花道~』が、俳優座で再演されることになりました。イケメン尺八吹き、藤原道山も前回に続けての出演と聞いて、ウハウハと六本木くんだりまで出てしまいました(笑)。
 
この作品は、浅田次郎原作『天切り松 闇がたり』を朗読芝居に仕立てたものです。すまけいの語りと鷲尾の演技、道山の尺八、増田の黒衣という4つの役どころが巧みに絡み合い、寄り添って物語に流れが生じます。
 
再演ですので、作品全体の感想は置いておいて、今回は初演との変更点やちょっと思い出したことや気持ちなどを書き留めておきましょう。
 
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舞台の様子
 
収容人数150人のスタジオでの前回公演から、今回は300人が入る劇場での上演。障子を思わせる木枠の戸、畳に粗末な木の机と椅子という、前回と同じ舞台装置。手槍や椅子にかけられた羽織など、道具関係にも変更はありません。
 
そして今回は劇場ですので、余白を埋める工夫も必要。舞台両袖には和紙の楮(こうぞ)を粗めに織り込んだような布が舞台天井から流されてあり、その奥には木陰を思わせるような陰影を描く書割りが据えてありました。
 
そして道山スポット(道山が尺八を演奏する定位置)も、前回と同じく下手袖。前回はホップステップ(ジャンプ不要)で飛びつける位置にいたのになぁー、今回は遠かったのでちょっと切なかったです…。(さりげなくイタい発言をしているとろりんさん)
 
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「無礼者!!」
 
お芝居は、松蔵(天切り松)が、留置所の中でぽつりぽつりと語り始めて、物語の幕が開きます。すまけいさんが松蔵の語りや、鷲尾演じるおこんを除いた他の人間の台詞も担当します。
 
ところが、すまけいさんが語り出して間もない頃、なんと携帯電話の着信音がっっ!!開演前にあれだけ注意があったのに…。凍りついた客席の気持ちなど知らないかのように、響き続ける着信音…。持ち主の方、早く止めてえぇぇ!!
 
その時、すまけいさんがギロリと眼を光らせて、松蔵の口調そのもので「何だぁ?」客席にくすっと笑いが漏れそうになった瞬間、すまけいさん一喝!!
 
「この無礼者!!ここから出ていけっ!!」
 
ほころびそうになった口元が、ぎゅっと締まるような緊張感が客席にはしった次の瞬間、着信音が止まったのは言うまでもありません…。その後、すまけいさんは何事もなかったかのようにすっと語りに戻られたのには感心しました。
 
でもね、すまさんのお怒りはごもっともだと思いますね。携帯をオフにするとか、観劇中の私語は慎むとか、いわば舞台を作り上げるにあたっての「役者と観客の約束ごと」だと思うんですね。それが守られてこそ、役者は舞台を勤めることに集中できるし、観客は舞台を見つめることに集中できるのですから…。そうしてその日の「舞台」が創られていくのですから…。
 
みんな、携帯電話は電源オフ!(By勘太郎@『決闘!高田馬場』)
 
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鷲尾さんに胸きゅん☆☆☆
 
脚本、というか台詞は原作通りなのですが、すまけいさんは軽くちょこちょこっと話しやすい言葉、聞き取りやすい言葉に変えて話していらっしゃいます。逆に女スリ、振袖おこんを演じた鷲尾さんはほぼ原作通りに台詞をおっしゃっています。
 
おこんの登場はいきなり啖呵を切るところから始まるのですが、これがまた、ナイスパンチ。迫力がありながらもスッと爽やかで、小粋な江戸前の女という感じがその言葉だけで見事に表現されていました。
 
またこの場面、スポットが当たった瞬間の鷲尾さんの美しかったこと!ピンと背筋を伸ばしてこちらに一瞥をくれただけで、なんとも言えない色気と輝きがありました。やっぱり「舞台」の女優さんなんだなぁ、と納得。
 
その後も、出ずっぱりのすまけいさん(&道山)とは対照的に、おこんが話す台詞がある時のみ、下手にしつらえられた畳の上に登場。場面が断続するので感情の持続が難しいと思いますが、それが途切れることなく、感情の変化がちゃんと流れになって完成されていました。
 
あと、鷲尾さんは眼差しの演技が本当に素敵です。この舞台は、すまけいさんが黒衣の増田さんと絡むシーンがあるだけ(今日は道山さんにも絡んでいましたけれど)で、すまけいさんと鷲尾さんは言葉を交わすだけで、目線を合わせたりすることは絶対にないんですね。目の前に相手のいない中での演技なのですが、その時のおこんの感情や状況によって、瞳も表情を変えていくんです。
 
啖呵を切る最初のシーンでは鋭く、山県有朋と語り合うシーンでは、警戒心を徐々に解いて親しみをもっていく様子を情感豊かな眼差しだけで表現。有朋の葬列のシーンでは、悲しげな瞳を見せた瞬間、振袖おこんとして生きていく決意を固めたキッと艶やかな瞳…どのシーンも忘れられませんね。
 
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そして道山にメロメロ(笑)
 
ちょっと今回は遠かったので、「スキューン!」とはなかなか来なかったのが残念でした(笑)。しかし、前回より格段に良い出来映えでした。すまけいさんの朗読に合わせて尺八で風や雨の音、波の音、小鳥のさえずりなども表現していくのですが、新鮮ですね。今回はそのタイミングにも躊躇ない様子で、思い切った感じが良かったです。前回はすまけいさんの様子を慎重なくらいうかがっていたところがあったので。これも、少々距離のある劇場とぎゅっと空間が凝縮しているスタジオの違いかな?
 
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すまけいさんの軽妙な語り口、鷲尾さんのふくよかな演技、道山のシャープな尺八の再競演にシビレた、六本木の夜でした。
 
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俳優座劇場


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コメント 4

愉しく拝見。
by (2007-08-15 10:03) 

★とろりん★

劇衆「漢組」さま、
またお越しくださいまして、ありがとうございます!愉しんでいただけたようで、嬉しいです。また気が向いたら足をお運びくださいませね。
by ★とろりん★ (2007-08-15 14:31) 

ラブ

そんな時に、携帯の着信音!!!!!
非常識ですよねぇ。つまみ出しましょう(笑)
でもすまけいさんのアドリブ、さすがですね。
by ラブ (2007-08-18 13:51) 

★とろりん★

ラブさま、
ね、つまみ出しましょう(笑)。私も気をつけなくてはいけないなぁ、と心を引き締めました。慌ただしく開演時間ギリギリに入場したりすると、結構そこまで気が回らなかったりするものですから…(^^;)。この舞台は、来年は「第二夜」として新作が登場するみたいです。楽しみ~♪
by ★とろりん★ (2007-08-20 10:38) 

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