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朗読劇 『天切り松 闇がたり』 第三夜 [講座・現代演劇]

2009年8月6日(木) 三越劇場 14:00開演

『切れ緒の草鞋』
『春のかたみに』


【出 演】
すまけい
鷲尾真知子
増田英治
藤原道山(尺八


大正時代を舞台にした浅田次郎の原作『天切り松 闇がたり』シリーズを題材にした朗読劇。2作ずつエピソードをピックアップして、すまけいの朗読、鷲尾真知子の芝居、藤原道山の尺八だけで展開されていく舞台です。

2006年の初演から3年、シリーズも第3弾まで揃いました。この作品では、「第~夜」という言い方をします。

今回は、3日間で第1夜から第3夜までを一気に上演。まだ観たことのなかった第3夜を観劇しました。

第一夜 初演の際のカンゲキレポは、コチラ
再演の際のカンゲキレポは、コチラ
(第二夜は昨年観劇しましたが、レポを書いておりません[あせあせ(飛び散る汗)]

1927(昭和2)年に開場した三越劇場は、豪奢な内装がそのまま「大正ピカレスクロマン」と銘打たれた舞台の世界にピッタリ重なります。平面の座席なので、どうしても前の席の方の頭が気になってしまいますが…。

舞台にはろうそくの灯りが揺らめく燭台が4本、枠組だけの障子戸が4枚、粗めの織物のような吊り物がかけられた舞台装置は初演のまま。下手に藤原道山が座る席、舞台中央にすまけいが座る木製の机と椅子…というシンプルな装置も変わりません。

物語は大正時代、義理に篤い盗賊・安吉親分の一家に預けられた少年、松蔵と仲間たちが繰り広げる華々しい大活躍を描きます。今回は、清水の次郎長一家の一員だった小政を巡る「切れ緒の草鞋」と、死んだ松蔵の父親の弔いをしようとする安吉親分と、それに反発する松蔵の気持ちを描いた「春のかたみに」の2話を上演。

天切り松シリーズは初演から第1夜、第2夜と続けて観劇していますが、すまけいさんの飄々とした、余分な力の抜けた朗読にはいつも感服させられます。決して朗々と響きわたるような質のものではなく(盗賊の間に受け継がれた「闇がたり」で話をしていく、という設定ではあるのですが)、時には詰まったり、かんだりすることもありますが、それも全て「味」になっているのです。

人間、話をしている中で感情が高ぶってくると声がうわずったり、どもったりしますよね。そういうのが躊躇なく出てくるので、人間味のある語りになっているのです。それとは別に、立ち回りの場面等で見せる鋭さと緊迫感は、まるでその場に居合わせたような錯覚さえ起こさせます。

黒衣役の増田英治さんとの掛け合いも、初演の頃と比べると、イキがぴったり合っています。今ではこの時間、エピソードとエピソードの合間のちょっとした息抜きとして確立しています。この舞台は休憩なしで進行していくので、ちょうど良い気分転換になりますね。最後は、藤原道山さんまでもが尺八で「自分も仲間に入れて」とアピールされていました(笑)。

鷲尾真知子さんは、これまで安吉一家の紅一点、おこんの役を演じていましたが、この第3夜では、少年時代の松蔵少年として登場。華奢な身体で足を踏ん張って舞台に立つ姿に、折れそうな心を隠して精一杯突っ張って生きている松蔵少年の姿が重なり、好演でした。



今回も、開演前に増田さん@黒衣から携帯電話の電源を切るように注意があったのに、すまけいさんが登場し、さぁ朗読にとりかかろうかというときに、「リリリーン、リリリーン[携帯電話]」と、間違いなく電話の音が劇場中に鳴り響き…。[がく~(落胆した顔)]

まだ朗読には入っていなかったので、すまけいさんも「おぅ、粋な虫が鳴いてるねぇ」と、大らかにアドリブでお済ましになっていましたが…。これが、舞台がかなり進行し、すまけいさんの朗読がクライマックスを迎えていた時だったらと考えると…こんなことがあったことを知る常連の観客は一瞬、生きた心地がしなかったと思います[たらーっ(汗)]

皆さん、劇場では、携帯電話は電源オフにしましょうね~[exclamation×2]

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 文庫




    「切れ緒の草鞋」「春のかたみに」どちらも収録されています。

三越劇場


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コメント 2

mami

浅田さんの原作は読んでいて大好きですが、こういう劇になっていたのは知りませんでした。
面白そうですね。
「闇語り」をどんな風に表現されたのか、聞いてみたいです。
by mami (2009-08-14 23:28) 

★とろりん★

mamiさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

私はこの舞台をきっかけに浅田さんの小説を読みました。どれも心の深いところを突いてくる作品ですよね。

「闇がたり」は、盗賊たちが闇夜の中でも互いに意思疎通出来るようにと編み出された、六尺四方にしか届かないとされる話法という設定です。

舞台は現代の留置場で、年老いた松蔵が毎夜、同房の者にしか聞こえぬよう、「闇がたり」で様々なエピソードを語っていく…というシチュエーションで物語が進んでいきます。(観客が同房者、という役割ですね)

まぁ、すまけいさんは「闇がたり」の部分は特に気にせず、良いお声を存分に響かせていらっしゃいます(^_^)。高ぶる感情を抑えず、ありのままに表現されている印象ですね。

その分、鷲尾真知子さんのクールで怜悧な演技が際立ちます。お二方の舞台での呼吸は絶妙です。
by ★とろりん★ (2009-08-15 16:39) 

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