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能舞 meets Collaboration~1st~ ~能楽師とピアニストの響宴~ [伝統芸能]

2010年2月20日(土)
高輪区民ホール 14:00開演

第1部 春
~春をテーマにした能とピアノの競演~

Scene1 能楽~百花繚乱~


祝言 高砂 山井綱雄
仕舞 嵐山 シテ:井上貴覚
仕舞 田村 シテ:山井綱雄
仕舞 東北 シテ:辻井八郎
仕舞 春日竜神 シテ:髙橋忍

Scene2 木原健太郎の世界

舞い落ちる桜のように
innocent time
be…

Scene3 山井綱雄・木原健太郎 トークセッション

第2部 絆

新作舞曲「絆~KIZUNA~」


作・演出:山井綱雄、木原健太郎
銀杯提供:上川宗照
美術:アラン・ウエスト

シテ:山井綱雄
地謡:高橋忍、辻井八郎、井上貴覚
ピアノ:木原健太郎


金春流のイケメン能楽師・山井綱雄プロデュースによる、能とクラシック、そして日本の伝統美術を融合させた新しい試み。能がクラシックとどのように融合し、新しい世界を生み出すのか、興味津々で訪れました。

会場に入ると、反響版のかかった舞台。目に飛び込んできたのは鏡板ではなく、1本の力強い松の木を芯に、日本の自然と四季が雄大に荘厳に描かれた、大きな日本画の描かれた掛軸。この掛軸が、舞台背景全面を覆っています。日本画家、アラン・ウエスト氏による作品、「絆」です。

本舞台は、上手寄りに大きくスペースがとられており、能舞台と同じ試用。下手側にグランドピアノ。早くも和と洋の新鮮な組み合わせながら、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

※2月23日追記
コチラで、当日の舞台背景を見ることができま~す。→山井綱雄公式ブログ

第1部は、それぞれの本業(?)とでも申しましょうか、能の仕舞とピアノソロ、そして山井さんと木原さんのトークセッション。

仕舞は、山井が中心となって活動している金春流能楽師グループ、座・SQUAREのメンバーが入れ替わり立ち替わり出演。詞章の中に春を感じさせる言葉が出てくる曲ばかりを集めてあるので、とても華やかで優美です。

木原によるピアノソロは、本人作曲のオリジナルナンバーを3曲。穏やかで落ち着いた、それでいて桜の花の季節に誰もが感じるような優しさと切なさを感じさせる曲でした。

トークセッションでは、山井さんと木原さん、そして第2部の新作舞曲「絆」で使用される銀杯を製作された上川宗照氏も加わり、今回の公演が実現した経緯などを楽しくお話くださいました。

2人が出会ったのは約3年前。木原さんが出演していた東京・増上寺でのイベント「100万人のキャンドルナイト」に山井さんも出演したことがきっかけなのだとか。本道としての能を極めつつ、能の新しい可能性も追求したいと考えてた山井さんは、木原さんとの出会いによって、それが実現できるかも!と強い確信を持ったそうです。

自分にとって大切な出会い、その出会いによって生まれた絆を大切にしたい・・・との思いで誕生した新作舞曲「絆」。東京銀器の職人で「現代の名工」にも選ばれている上川宗照氏、外国人でありながら日本の伝統美術に心惹かれて日本画家となったアラン・ウエストさんとの出会いも大切にするべく、背景や小道具に彼らの作品を使用したのだとか。

山井さんの熱い思いが伝わってくるトークセッションでした。



新作舞曲「絆」。

木原のクラシックピアノの伴奏に合わせて能の地謡が謡い、能装束を着けたシテ・山井が舞う・・・。能の舞台ではありえない光景なのに、何だか心が洗われたような、魂が浄化されたような不思議な清々しさ、爽やかさにあふれた舞台でした。

曲はオリジナルのメロディーに、「浜辺の歌」「ふるさと」など郷愁を誘う日本歌曲のメロディーが自然に織り込まれており、穏やかな優しさの中に時として波打つ懐かしさ、切なさなどが美しく表現されています。

西洋の伝統文化・古典の融合した作品というのは、緻密かつ丁寧な詰めをしていかないと双方のエゴが目立ち、乱雑なものとなってしまいます。それをまったく感じさせず、客席をの心を震わせる舞台にまで引きあげた演者の力量と熱情は素晴らしいと思います。

地謡も、クラシックピアノの旋律に乗ると、まるで教会のオルガンに合わせて歌われる聖歌のような響き。

特に、木原のピアノとかけ合いで謡った地頭・髙橋忍の謡には、心が揺さぶられました。ピアノの伴奏に合わせてソロで謡をうたう場面があったのですが、決してピアノの音量に負けることなく、それでいてピアノの旋律の美しさを際立たせる為に、時に朗々と、時に密やかに、自在に謡を披露。素晴らしかったです。

髙橋は、今回の演者の中では最年長。こういう型破りの舞台を成功に導くためには、この方のようにきっちり舞台を引き締めて下さる存在が不可欠ですね。

シテの山井も、情感あふれる舞。ひとつひとつの型、動作を愛おしむような風情が、これまで出会った人々との記憶、それによって生まれた絆を大切に温めていこうという山井自身の思いと重なるようで、胸が熱くなりました。



これまで、同じ日本の中でも他分野の芸術と交流する機会のなかった能楽。時にはこのような企画も、良い刺激になりますね。「1st」とあるからには、次回もあるはずと期待しているのですが(笑)、また素敵な舞台を見せていただきたいな、と思います。


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コメント 2

mami

面白そうなプログラムですね。
和と洋の競演というのは案外興味本位で終わってしまうことも多いのですが、うまくいったときは本当に新たな世界が開ける感じがします。
両方に通じてらっしゃるとろりんさんだからこそ楽しめたんでしょうね。
by mami (2010-02-24 01:26) 

★とろりん★

mamiさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

>>両方に通じてらっしゃるとろりんさん

いやぁ、単にミーハーなだけです(きっぱり>笑)。この舞台も、チラシを見て「お、かっちょいい♪」と思って観に行きました(笑)。

mamiさまのおっしゃる通り、和と洋のコラボレーションというのは興味本位や思いつきで企画される事が多いのですが、綿密な調整や打ち合わせを詰めておかないと、とんでもない結果に終わる事もありますよね。山井さんと木原さんは何度も共演した経験と、お互いの仕事に対するリスペクトの思いがあってこそ、この企画は成功したのだと思います。
by ★とろりん★ (2010-02-24 08:12) 

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