SSブログ

サントリー美術館 「能の雅(エレガンス)、狂言の妙(エスプリ)」 [展覧会]

CA393873.JPG

2010年6月12日(土)~7月25日(日) サントリー美術館
展覧会情報はコチラ

情報が出た時から、これだけは絶対に見たい!!と思っていた展覧会。金曜の夜に行きましたが、予想を裏切ることなく、見事に暴風雨に見舞われました(笑)。乃木坂駅から東京ミッドタウンへ、ものの数分歩いただけでずぶ濡れ~[霧][雨][霧] 

仕事帰りに立ち寄ったのですが、この日はミニレクチャーも開催されたので、夜の時間帯でも結構多くの方が来られていました。

2008年に開場25周年を迎えた国立能楽堂が所蔵している能装束や面、資料などの展示。場内には簡易的な能舞台も設営され(橋がかりなし)、期間中に何度かミニレクチャーが開かれていた様子。背景にはちゃんと鏡板の幕もありましたよ。「あの松、どこかで見たことあるなぁ…」と思っていたら、国立能楽堂の鏡板の松を複写したものでした。そうか、だから見覚えあったのか…(笑)。

入場してすぐにミニレクチャーが始まるというので、展示を見る前に、先に能舞台へ。この日は観世流梅若会の若手能楽師、松山隆之師ら3名による能装束と面についての解説でした。

しかし、能楽師の方はね、ほんっと~~~~に皆さんお声が良い!!心地よい低音と落ち着いたお話し方で、さすが、能楽にはアルファ波が出ていると言いますが、本当ですねっ☆(要は、たった20分のレクチャーですっかり熟睡してしまったというまさかの失態)

レクチャーは、舞台に出るための装束の着付と、鬘をつけて面をつけるまでを実演しながら解説していく、という流れ。最後は仕舞(『熊野』)も舞ってくださいました。

能装束は、錦で作られていることが多いそうのですが、これは昔、まだ能舞台が野外にあった頃からだそうです。というのも、錦は自然の光を浴びた時のきらめき方、光の反射の仕方が非常に美しいのだとか。上流階級のたしなみだったから自然な流れで豪華な素材になっていったのかな、と思っておりましたが、それだけではないのですね。

能舞台が設営されていた第2展示場は、吹き抜けスペースで片側は全面ガラス張りになっているので(直射日光は入らない建築デザインになっています)、午後の部のレクチャーの時などは、きっとまた装束の見え方も違うのでしょうね~。

自然の光をも装飾にしてしまう能装束…薪能や野外能、機会があればぜひ行ってみたいと強く思いました。(←過去3回、行く予定にしていた野外能を荒天のため中止に追い込んでいるヒト)

レクチャーの後に、展示を鑑賞。4階は能装束と面、3階は狂言装束と能楽について中世に記された資料などが並んでいます。

舞台と客席の距離が比較的近い能楽ですが、これだけ間近で装束や面を見ることができないので、本当に貴重な時間でした。1領の装束に、本当に気の遠くなるような細かい作業が幾重にも施されていて、注文した人のみならず、制作者の熱意や誇りがひしひしと伝わってきます。

中でもいちばん素敵だな~と思ったのは、桃山時代に制作された「白地草花禽獣模様肩裾縫箔」。白地の装束の裾と背中の部分に山里の草花と鹿や鶏などの動物が縫いこまれています。

レクチャーをしてくださった能楽師の方が教えてくださったのですが、鶏さんは親子なのですが、その傍らには卵が…。そしてよく見ると、その卵の中からひな鳥が、ぴょこんと頭を出しているのです!!うわぁ、こういう遊び心があるなんて!素敵だなぁ。

優美で典雅なイメージのある能装束ですが、こういう素朴で力強い意匠もあるのですね。

もうひとつ、シテ方宝生流が『道成寺』を舞う際に必ず着用するとされている雪持椿の意匠をあしらった「紅地雪持椿模様唐織」も、華やかさの中にも柔らかさ、優しさのある装束です。

「道成寺」を勤める時だけに着用する装束の柄は各流派によって決まりがあるのですが、やはり江戸時代にはそれが確立していたのですね。

特別展示は、加賀藩前田家伝来の能装束。

能装束は、製作時期などの詳細な記録が残されていないので、制作時期も曖昧なのですが、前田家伝来のものは、いつ、誰が、何のために(どのような場で舞うために)、誰に制作を依頼したのか、という記録が装束ひとつひとつにきちんと残されているのだそうです。

確かに、展示替えリストを見てみると、他の展示品の制作年代が「○○時代 ○○世紀」と記載されているのに対して、前田家伝来の所蔵品については、「文化5年」や「文化5年 閏2月」など、かなり詳しく記載されています。こういうのは本当に貴重ですね。

その前田家伝来の装束のひとつ、「紫地霞鉄線模様舞衣」は、深みのある紫地に、金糸で鉄線の意匠が施されています。とても豪華なのに、色合いに深みがあるので華美なイメージにはならず、むしろ深みと静けさを感じさせます。時の経過とともに、良い感じで「さび」の風情がにじみ出ていて…心が落ち着きます。

3階は狂言装束と面、謡本や能楽図などの資料の展示。実は、狂言装束も楽しみにして来たのですが…展示してある肩衣の数が、少なすぎるーーっっ!!!8点だけなんて、ひどいっ!!(涙)

もちろん、他に素襖や袴なども展示されていますし、展示替えもあるのですが、やっぱり肩衣フェチとしてはですね、1ケース分くらいは肩衣の展示をしてほしかったなぁ。(肩衣フェチについての記述はコチラ→大蔵流山本会 第44回青青会

狂言面は、武悪や『釣狐』の狐の面など、見ごたえがありました。面の縁を少し削ってあったりと、演者のやりやすいように工夫がされている様子などがうかがうことができます。

少し話がさかのぼりますが、3階には能面の展示がありまして、裏側もしっかり観察できるようになっています。裏からのぞくと、演者の視界の小ささなどがよくわかります。

松山師は「(能面から見える)視界は非常に狭いので、目の部分からはほとんど何かをとらえるということはない。足の裏から伝わってくる(能舞台の)板目などを感じながら舞台の寸法を想像して動いている」とのお話でした。おおお~、なるほど…。

狂言装束についてはちょっと注文があるものの(苦笑)、これだけの数の能装束を間近で見ることができる貴重な機会です。ここ最近、能楽堂から少し足が遠ざかっていたので、こういう形で能楽の空気を感じることができて、とても嬉しかったです。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 1

コメント 2

mami

この展覧会、興味はあったんですがお能を見たことがないので難しいかな?と思って行きそびれています。
お能は歌舞伎と違って大名など上流階級で嗜まれた芸ですから、衣装なども豪華そうですよね。
by mami (2010-07-12 00:29) 

★とろりん★

mamiさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

あくまでも私見ですが、展示品ひとつひとつのキャプションや解説文がかなり丁寧にわかりやすく書いてありますので、意匠や紋様にご興味があるなら、楽しいと思いますよ。私が行った時も、能楽未体験らしき方が「今度、お能を見に行ってみよう」とおっしゃっていました。

個人的に、展示の数は物足りないかも、ですが(苦笑)、お能への興味を高める、良いきっかけになる展覧会だと思います☆
by ★とろりん★ (2010-07-12 09:18) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。