SSブログ

本城直季 『TREASURE BOX』 [Books]

TREASURE BOX

TREASURE BOX

  • 作者: 本城 直季
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/06/09
  • メディア: 単行本

カンゲキが大好きな理由のひとつに、「劇場」という「空間」がとてつもなく好きだから、というのがあります。

大きな密室状態の中で生み出される、演者と観客による、一期一会の真剣勝負。その場に居合わせた者同士にしかわからない、濃密な舞台の感動と、それに心揺さぶられる観客の熱気…そういう瞬間に居合わせた時、目撃した時。劇場の片隅で、そのたまらない瞬間を分かち合えた喜びで心が震え、幸せに満たされるのです。

これは、写真家・本城直季氏による宝塚歌劇の舞台写真集。撮影は東京宝塚劇場。

本城さんは、被写体をまるでミニチュアモデルのように見せる撮影手法で知られている写真家なのだそうです。この写真集でもその手法を使い、まるで歌劇の舞台が「宝石箱」のように浮かび上がります。宝塚の劇場で言えば、B席のてっぺんから舞台を見下ろしているような感覚でしょうか。

ファンであれば、だいたいどの公演の写真なのか予想がつくと思いますし、最終ページに撮影した公演名も紹介されています。でも、その場面に写っている生徒さんは、顔がぼんやりとしていて判別がつかないほど。それだけ徹底的に舞台を俯瞰した状態で撮影しているのです。

かえってそれが、宝塚歌劇という「舞台」が持つ大きさを実体として感じことができます。特に芝居で、トップコンビ2人だけのシーンなどは、その背後に広がる広大な空間に、あらためて「宝塚の劇場」の巨大さを実感させられますし、レビューのシーンでの群舞では、舞台全体に美しく広がるスターたちの波に感動を覚えます。

完璧に作られた宝塚の舞台は、いつシャッターを切っても「決定的瞬間」を捉えている。(本書“撮影ノート”より)

息詰まるような芝居のワンシーン、スターがスポットライトを浴びた瞬間、娘役のドレスのすそが翻る瞬間、中詰が最高潮を迎えた瞬間…宝塚歌劇のファンであればいつも体験している感動の瞬間を、まるで宝石箱を覗き込むかのように見るのは、不思議な感覚です。

それは、本城さんご自身も撮影を通してそう実感されたようです。

観客席から見る舞台はまるでドールハウスを覗き込んだような世界で、踊っている姿はきらきらと光る宝石箱の中のオルゴール人形を見ているようである。(同上)

本城さんの写真は本当に不思議で、ページを繰っているうちにこれは宝塚の舞台そっくりに作られた舞台模型で、舞台の上にいるのは精巧に作られたミニチュアドールなのでは?という錯覚を覚えるほど。でも変わらずにページを繰っていくと、写真に満ちている「気」で、やっぱりこれはたった1度しかない舞台の、たった1度の瞬間をとらえた写真だと確信します。

宝塚という舞台は唯一無二の世界だと、しみじみと実感させてくれる素敵な写真集です。

★撮影された公演★
花組:『太王四神記』、『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』『EXCITER!!』

月組:『ラストプレイ』、『Heat on Beat!』

雪組:『風の錦絵』、『ZORRO 仮面のメサイア』、『ロシアン・ブルー』、『RIO DE BRAVO!!』、『Carnevale 睡夢』

星組:『My dear New Orleans』、『ア ビヤント』、『太王四神記 Ver.Ⅱ』

宙組:『薔薇に降る雨』、『Amour それは…』


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。