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開館50周年記念「美を結ぶ。美をひらく。」Ⅰ 夢に挑む コレクションの軌跡―新収蔵品初公開と名品勢揃い [展覧会]

夢に挑む.jpg
2011年3月26日(土)~5月22日(日) サントリー美術館
展覧会情報はコチラ

今年、開館50周年を迎えるサントリー美術館の記念展。

開館以来、「生活の中の美」をコンセプトを数多の美術品を収集してきたサントリー美術館。今年は第Ⅰ期から第Ⅳ期に分けて、収蔵品のみを展示する展覧館を開催。約1年をかけてサントリー美術館の歴史と将来を見つめていく企画です。今回は第Ⅰ期。

まず入場すると、これまで開催された中でも代表的な展覧会ポスターがズラリと貼られています。

沖縄県が日本に復帰した1972年5月15日前後の日程をまたいで開催された展覧会「特別展観50年前の沖縄-写真で見る失われた文化財-」のポスターには「琉球政府」という文字が。新しい時代に先駆けたタイムリーな企画性と、それを実現させる意欲的な姿勢に関心しました。

もうひとつ驚いたのは、1984年に「異色の江戸絵画 -アメリカ・プライスコレクション」を開催し、伊藤若冲の作品を中心としたジョー・プライス氏のコレクションを、いち早く日本に紹介していたこと。

日本国内で若冲の知名度と評価が高まったのは、ここ10年ほどの事。さらにそれよりも20年近く前に、すでにプライスコレクションの価値を見いだしていたというのは、すごい先見性だと思います。

ちなみに、この時のポスターに使われたのは、おそらく「紫陽花双鶏図」の雄鶏の部分。最近、「若冲ミラクルワールド」で若冲の描いた鶏を見まくっていたので、「あら、こんなところで久しぶり~」みたいな親近感を感じちゃいました(笑)。

* * *

今期の展覧会は、サントリー美術館の収蔵品でも代表的なものを展観するとともに、新たにその仲間入りをしたものを初公開。

「生活の中の美」をコンセプトにしているだけあって、そのレパートリーは絵画から屏風、器など多種多彩。その中でもやはり、茶器や陶磁器など、「器」と屏風のコレクションは素晴らしいものがあります。

薩摩切子藍色被船形鉢.jpg
薩摩切子 藍色被船形鉢
19世紀中頃

透明感のある深い藍の中に浮かび上がる蝙蝠(こうもり)と巴の文様。ユーモラスな中にも職人の煌めくような技を感じる逸品です。


段流水海松貝模様縫箔.jpg
能装束 段流水海松貝模様縫箔
江戸時代 18~19世紀

こちらはね、5~6種類くらいの貝が集まってひとつの模様になっているのですが、よ~く見ると、それぞれの貝の配置や種類などが少しずつ入れ替わっていて、どれひとつとして同じ模様がないんですよ!芸が細かい~!!(←出た職人芸ラブ)


色絵鶴香合.jpg
野々村仁清 色絵鶴香合
江戸時代 17世紀後半

これ、大好き!いつ見ても本当に大好き!もう、色々な角度から見まくってきました(笑)。

何かの気配に、ついと首をのばして一点を凝視する鶴の一瞬の表情と動きを、鮮やかに切り取った名品。

全体のたたずまいの品の良さと言い、小首を傾げるようにしながらしなやかに伸びる細い首と言い、わずかにふくらみを感じさせるのど元のフォルムと言い、完璧。

幅3.4センチ、奥行7.7センチ、高さ9.7センチという小さな世界に、これだけイキイキとした命の息吹を感じさせるなんて・・・。ため息しか出てきません。ほんま、めっちゃええ仕事してはるわ・・・(感涙)。


* * *

そして、今回いちばん楽しみにしていたのは・・・新しく仲間入りしたという、若冲の作品!

・・・だったのですが、若冲の作品は会期前半のみの期間展示だったようです。ゴールデンウィーク中に行った時には観られなかったので、後半にもう1度行ってみたのですが、この時も見ることはできませんでした。

でも・・・、これはちょっと不誠実だなぁ、って思いました。

展覧会公式サイトの展示構成には「新収蔵品初公開 《雪舟から若冲まで》」と明記されていて、館内の展示スペースの看板や配布されている展示替リストにも、そうはっきり書いてあるのですよ。彼らの作品を、看板にするほど目玉としているのであれば、全期間、きちんとその作品を展示するべきだと思います。(ちなみに雪舟の作品も、後半は見られませんでした)

・・・と憤っても、見られないものはどうしたって見られないので、ショップでポストカードを購入。

墨梅図.jpg
伊藤若冲 棲鸞園画帖「墨梅図」
江戸時代 18世紀

水墨画です。墨の濃淡だけで示される雄弁な表現力と、と迷いのない力強い筆の動きが冴えます。

若冲ミラクルワールド」で、「水墨画」という新しい若冲の魅力を発見したので、まさにこれを見てみたかったのですが・・・。ちょっとがっくり、でした。

同じく「棲鸞園画帖(せいらんえんがちょう)」におさめられている円山応挙「酔李白図」は、会期後半のみの展示。

こちらは応挙らしい、優しくまろやかな線と着衣に色付けされた淡い色合いが、ふわふわと夢に遊ぶ李白の様子を表現していて、思わず笑みがこぼれてしまいます。こういう時のうとうとって、最高に気持ち良いんですよね~☆

酔李白図.jpg
円山応挙 棲鸞園画帖「酔李白図」
江戸時代 18世紀


もうひとつ、尾形光琳作と伝えられる「秋草図屏風」(重要美術品)も素晴らしかったです。萩や桔梗など秋の草花が描かれている中、白い菊の花だけは胡粉を盛り上げて白く浮き上がるような立体感を見せています。純白の花弁
1枚1枚が、まるで活きているようでした。

* * *

私自身が、サントリー美術館が素敵だな、好きだなと感じる理由は、きっと「日本のもの」をすごく大切にしているからだと思います。こちらの展覧会を見に行くたびに、「日本に生まれて良かったな、日本人で良かったなぁ」としみじみ思えるんですよね。

「日本の美」を再確認し、日本という国が生み出した美しい文化を、ありとあらゆる側面から、あらためて感じることのできる展覧会です。


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ラブ

大阪の天保山のサントリーミュージアムは閉館してしまって、
あらぁ〜、関西は文化が育たないのかなぁなんて思います。
東京はいいなぁ。
by ラブ (2011-05-18 15:55) 

★とろりん★

ラブさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!

関西空港もそうだと思うのですが、天保山のサントリーミュージアムはちょっと行きにくい場所にあると思うんですよね。東京のサントリー美術館は、もとから人が集まりやすいところに建てたのが良いと思います。会社帰りにもサラッと立ち寄れますしね。
by ★とろりん★ (2011-05-19 10:21) 

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