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第十八回ルネこだいら 新春 能・狂言鑑賞会 [伝統芸能]

2012年1月29日(日) ルネこだいら大ホール 14:00開演


2年ぶりに山本家の『唐相撲』が見られるということで、急きょチケットを取って行ってきました。



解説/児玉 信 (石川県立能楽堂邦楽プロデューサー)

この日の番組のあらすじや詞章の説明などに耳を傾けながら何気なくプログラムの解説文(能楽プロデューサー・旅川雅治氏による)を読んでいたのですが、ある文章に目が釘付け。
(↓カッコ内はとろりん補足)



四世(現・東次郎師)は、この曲(『唐相撲』)のために、専用の装束・小道具・被り物・作り物を長期に渡って、令夫人と製作した、その相愛の結果が本日も舞台に輝く。


・・・・・・ヾ(≧∇≦)ノ"きゃああぁぁぁあ~~っっ[黒ハート]


奥様と一緒に舞台道具をお作りになるなんて、東次郎先生ってば!!なんて、なんて微笑ましいの!なんて仲睦まじいお2人なの!なんてラブラブなの~!!もう、こういうところが大好き過ぎるよ山本家!!

解説の時間をすっかり忘れて、同行者と2人、お互いにつつきあって悶絶してしまいました(笑)。
キャァ♪~(/≧∇)/\(∇≦\)~キャァ♪

ご、ごめんなさい児玉さん…。


仕舞 『融(とおる)

高橋 忍

地謡/金春憲和、辻井八郎、井上貴寛、中村昌弘


この公演では能と狂言が一番ずつかかるののが通例だそうですが、今回は東日本大震災被災地への手向けとして、仕舞が加えられました。源融伝説をもとにした曲で、融が奥州塩釜で生活を送った日々を思い出しながら月下に舞う・・・という曲。

金春流の実力派、高橋忍の舞は一分の乱れもなく隙もなく、きっちりと美しく端正です。その高橋を盛り立てる地謡も力強くて聞き惚れます。


能 『猩々(しょうじょう)

猩々/山井綱雄
高風/村瀬 慧

大鼓/佃 良勝
太鼓/梶谷英樹
小鼓/住駒充彦
笛/竹市 学

後見/本田芳樹、中村一路

地謡/本田布由樹、辻井八郎、金春憲和、高橋忍、中村昌弘、井上貴寛


「猩々」というのは海中に住むとされる架空の存在。酒好きなので顔がいつも赤く、幸せだから表情はいつも微笑みを浮かべています(面も、ふわりと穏やかな表情)。赤を基調にした装束に赤頭(赤色の髪をしたロングヘア鬘)という拵えです。

猩々に扮するは山井綱雄。持ち前の華やかさと美しい手指の動きに見とれます。「菊をたたえて夜もすがら」という詞章の通り、満開の菊の花々をあしらった上品で優雅な装束を身にまとっています。

猩々はとても陽気な性格で、お酒を飲んで気持ち良くなると、友人となった酒売りに汲んでも汲んでも尽きることのないs酒壺をプレゼントします。ふわふわと宙を舞うような足の動きと、所作板にドン!と足を落とす時の安定感のバランスが絶妙。それでいて上半身の動きは滑らかで、本当にお酒に酔って楽しそうに踊っているような風情です。

短い時間の中で、明るく晴れやかな気持ちになれる曲でした。


狂言 『唐相撲(とうずもう)

帝王/山本東次郎
日本人/山本則重
通辞/山本泰太郎
髭掻/山本則俊
唐人/山本則孝、山本則秀、山本凛太郎、若松隆、平田悦生、鍋田和宣、山本修三郎、荒井豪、寺本雅一、水木武郎、渡邊直人、江橋翔太、大河原敬、斎藤宇宏、古川昭浩、武田泰我、武田空我

後見/遠藤博義

笛/武市 学
小鼓/住駒充彦
大鼓/佃 良勝
太鼓/梶谷英樹


【あらすじ】

唐の帝王に長年お仕えしていた日本人の相撲取り。ある日、故郷に帰ろうといとまごいを願い出ます。相撲好きな帝王は、彼が帰国する前にもう1度だけ相撲が見たいと所望。日本人と帝王の臣下たちによる取り組みが始まりますが、臣下たちはそろいもそろって負け続き。ちょっとズルをしたり、大勢で取り組んだりとあの手この手を遣いますが、日本人に勝てる気配はありません。業を煮やした帝王は、自らが取り組みに参加すると言い出して・・・。

【カンゲキレポ】

拝見するのは2年ぶり(そのときの記事は
コチラへ☆。取組の様子も事細かに記しています)。

しかも今回は、東次郎師がシテ(帝王)をお勤めになるということで、いや絶対はコレは観ておかないとダメでしょう。約二百番ある狂言の曲の中で30名近くの人物が登場するのは、この『唐相撲』だけです。

まずは、橋がかりから帝王の座る玉座が運ばれてきます。これが折りたたみ式で、定位置で広げると見事に天蓋つきの玉座が出来上がるから驚き!客席からもどよめきが起きていました。

下手をしたらおふざけ感じ丸出しで賑々しいだけに終わってしまいそうな『唐相撲』ですが、質実剛健な舞台が真髄の山本家にかかると、やはり質実剛健な『唐相撲』でした(笑)。おもしろみがないとかそういうことではなく、ひとつひとつの科白やしぐさを崩すことなく仕上げていて、その中できっちりとおかしみやおもしろみ、笑いを引き出してくることができるのは、山本家だからこその力です。

日本人は、波に千鳥文様の装束がとても爽やか。唐人たちはカルサン袴や鮮やかないろどりの帽子などを身につけたり、華やかに装飾された槍や笠などを手にしていて、舞台は一気に異国ムードに。相愛の結果、輝いてる・・・[黒ハート]

20人超の臣下を連れて帝王が登場するのですが、この大きさ、大らかさ、立派さは東次郎だからこその「気」。特に橋懸りに登場直後、帝王にかざした笠を小刻みに動かし、それを合図に帝王が橋がかりから正面に直ってさっと装束を裾を広げて、また元に戻るのですが、この一瞬の動作に何とも言えない「気」を感じました。全ての空気を支配してしまうような、まさに帝王だからこその「気」。さすが東次郎師!

さてさて、いよいよ相撲が始まります。通辞(通訳)を勤めるのは泰太郎。唐人には「唐韻(とういん)」という日本語ではない単語で呼びかけます。

最初の取り組み相手は・・・「ソクシュン、ライライ!」

厳かな足取りで舞台に進み出てきたのは、則重の父でもある山本則俊。・・・ああ、「ソクシュン」!(笑)。則重は、軽く上手投げで勝利。

2番手は・・・「チャンリン、ライライ!」。ちゃ、ちゃんりん・・・?

舞台奥からスススッと進み出たのは、泰太郎の息子、凛太郎。・・・ああ、「凛ちゃん」ね!!(笑)

続いて「ソッコウ、ライライ!」と呼ばれたのは則孝。側転してどすんと倒れ込んでました。

そして大一番は「ソクシュウ、ライライ!」。日本人の弟、則秀が相手です。

がっぷり四つに組んで、長時間の取り組みになりそう・・・という空気になった瞬間、通辞がめっちゃイイ声で一言、「ニュースイ!!」。これには大爆笑。「水入り」の事ですよね☆

力水を飲ませてもらって、再度の取り組みとなった時も、手の位置とか足の位置とかにものすごく神経を配る通辞がラブリーでした(笑)。

7組目で再び呼ばれたチャンリン、「ブロウ(←おそらく、水木武郎)」と一緒になって日本人にくってかかるのですが、手足がもつれてごろんごろんを橋がかりを回転していき、揚幕の中へ消えていきました。勢いが弱かったのか途中で止まりそうになってしまって、則重がさりげなく押してやってました(笑)。

そんなこんなで、唐人たちは全滅(笑)。いよいよ帝王が自ら相手をしようと言いだします。

畳一畳くらいの玉座の上で、ひとさし舞う帝王。このゆったりとした動きも、裾をひとふりするだけで晴れやかで厳かな空気が辺りに充満していくよう。東次郎師の舞は見ているだけで幸福な気分になります。

舞い終えると、おもむろに生着替え開始(笑)。装束を脱ぐと、その下にはきちんとカルサン袴を着用。帝王・・・最初からやる気満々だったんですね☆

いざ対戦、と日本字人が取り組もうとすると、帝王と通辞の激しい抵抗にあいます。「え?え?どうしたの?」と思っていると、何でも「玉体に直接ふれるな!」とお怒りのご様子。・・・それじゃ相撲が取れないじゃん!(笑)

そんなわけで、帝王の上半身に荒菰を巻くことになるのですが、ここで思い切り躊躇する帝王(笑)。かわいい・・・☆

長いひげをお腹に垂らしたままで荒菰を巻いてしまったので、その髭を外へ出そうと登場するのが、髭掻。どんな働きをするのかは・・・ご想像にお任せします(笑)。だって、面白すぎてどう説明したら良いのか、わからないんですもの!

いろいろあって、ようやく日本人との取り組みが始まるわけですが、帝王を負けさせるわけにはいかない臣下たちは突き飛ばされそうになる帝王の体を後ろから支えたり、倒れないようにしたりとてんやわんや。てんやわんやの雰囲気の中で日本人は退出させられ、帝王は臣下たちの手車に乗って、意気揚々と引きあげていきます。

・・・ああ、このおかしさ、文章ではまったく伝わりません・・・(笑)。あれだけ騒然とした空気になりながら、退場する時はめっちゃくちゃ荘厳な空気に舞い戻るんですよ!その変わり身の早さ(?)が、面白くておかしくてたまりません!

あ~、今回も本当に楽しくて幸せな舞台でした!

前回は麻生市文化センター、今回はルネこだいらと、これまで『唐相撲』を拝見したのはホールでの舞台ばかり。今度はぜひ、能舞台で上演される『唐相撲』を拝見したいなぁ。30名の出演者が登場して、三間四方(約5.5メートルの正方形)の舞台にぎゅう~っと座ったら、一体どんな風なんだろう?想像するだけで楽しくなってしまいます☆

実はこの『唐相撲』、演舞場の三月大歌舞伎でもかかるのですよ!(→公演情報はコチラ☆

菊五郎丈が日本人、左團次丈が帝王の役とか。イキの良い菊五郎劇団のこと、取り組みの様子がよりパワフルでダイナミックになりそうな予感です!

* * * * *

北風が強く吹いてとても寒い1日でしたけれど、『猩々』で陽気な明るい酒に酔い、『唐相撲』で晴れやかな気分になりました。あ~、幸せ!!


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ラブ

御礼が大変遅くなっておりますが、TBありがとう
ございました。
by ラブ (2012-02-02 10:21) 

★とろりん★

ラブさま、

nice!とコメント、ありがとうございます!!
オンオフともにご多忙なご様子、どうか健康だけはお気を付けてくださいね。
またラブさまのブログにも遊びに行きますね~☆
by ★とろりん★ (2012-02-02 13:16) 

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