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静岡県立美術館収蔵名品展 「カラーリミックス―若冲も現代アートも―」 [展覧会]

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2012年4月14日(土)~5月27日(日) 静岡県立美術館


「若冲ミラクルワールド」でも熱く語った通り、伊藤若冲が好きです。

若冲が、「桝目描き」という日本絵画史上でも稀に見る特異な技法で描いたのが、「樹花鳥獣図屏風(じゅかちょうじゅうずびょうぶ)」です。

桝目描きの技法で描かれた若冲の作品で、現存が確認されているのは3点のみ。うち1点は海外に、もう1点は個人所蔵となっており、定期的にその作品を観ることができるのは静岡県立美術館だけです。

今週、静岡県を旅していおた折り、ふいに耳に入ってきたのが「いま、静岡県美で『樹花鳥獣図屏風』が展示中らしい」という風の便り。もう、いても立ってもいられず、素早く用事を済ませて静岡県立美術館へダッシュ!!(←このあたりの決断力と瞬発力と行動力、日常生活でも活かしたいところです)

静岡鉄道「県立美術館前駅」から真っ直ぐ伸びる少し急な坂を、てくてく上っていきます。やがてその道は、緑と樹木に覆われて行き、ぽつん、ぽつんとアートなオブジェが点在するように。それらを眺めながら小高いの丘陵を上りきると、静岡県立美術館が出迎えてくれます。

現在、静岡県美では、収蔵作品の名品を集めた展覧会を開催中。そのタイトルは「カラーリミックス」。

展示のテーマは「カラー」。極彩色の絵画がならぶ「色の競演」から始まり、「モノクロームのリズム」、「闇から光へ―黒・紺・グレー―」、「自然の恵み―緑×青―」、「アースエモーション―情熱の赤・大地の黄」、「ゆらめく金」と、作品の持つ色彩に合わせて作品が展示されています。

「若冲[るんるん] 若冲[るんるん]」と小躍りしながら2階のチケット売場へ向かうと・・・


いきなり若冲キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

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「樹花鳥獣図屏風」(伊藤若冲、18世紀)

の、高精度複製画です!!

うわ~、感激!!

スタッフさんに確認したところ、こちらはレプリカなので撮影OK(フラッシュ禁止)との事。さっそく激写大会に突入。

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まずは右隻。

こちらは通称「獣尽くし」と呼ばれていて、23種類の動物が描かれています。麒麟など、空想上の生き物もいますよ~。

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吉祥のシンボル、白象が中心に描かれています。

「桝目描き」というのは、ひとつひとつ桝目を描いた上から色を乗せて絵を完成させていく技法。

まず、淡い墨で約1センチ四方の桝目を作ります。その上から、絵柄に合わせてごく淡い色を薄くぬり、下地を作ります。次に、やや濃い色で桝目ひとつひとつを正方形に塗り込めます。正方形の隅にいちばん濃い色を重ねて、ようやく桝目ひとつが完成します。さらに必要なところに色を重ねたり陰影をつけて、ようやく作品全体が完成します。

「若冲ミラクルワールド」で紹介されていた「鳥獣花木図屏風(ちょうじゅうかぼくずびょうぶ)」(ジョー・プライス氏所蔵)では、作品が完成するまでに描かれた桝目は約8万6千個と言いますから、ほぼ同サイズの「樹花鳥獣図屏風」もおそらく同じくらいの枡目が描かれていると思われます。

ひとつひとつの桝目に色を付けて、それを8万6千個も重ねていく・・・想像するだけで気が遠くなるような作業です。しかも若冲はそんな作品を2点も創り上げているとは!本当に、この方の飽くなき挑戦心と探究心には脱帽です・・・。

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鹿が不思議そうに見つめているのは・・・ラッコ???まるっこい感じが、とってもラブリー☆


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テナガザル。かーわいい☆


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続いて、こちらは屏風の右隻。

通称「鳥尽くし」と呼ばれているこちらの屏風には、32種類の鳥たちが描かれています。


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若冲が生涯愛したモチーフ、鶏さんです。


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高精度複製とは言え、鼻の頭がふれそうになるほど近づいて作品を見られるのは、嬉しい!!

よ~く顔を近づけて見ると、本当に細かい陰影やでこぼこの部分を表現するために、1センチ四方の桝目に細かく色が重ねられています。

そして何と言っても目を惹くのが、右隻の中心に大きく描かれている鳳凰。

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力強く風にたゆたう尾羽のダイナミックなこと!!


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鳳凰の胴をクローズアップ。

こうしてみると、陰影や羽毛の柔らかさを表現するために、若冲が多くの色を重ねていることがよくわかりますね。深緑や黄色、濃いめのピンクで塗られた部分は、屏風全体を観るようにして眺めてみると、ちょうど羽根のつけねや羽毛の陰影の部分として浮かび上がってくるのが本当に不思議。若冲マジックは、醒めることのない夢のようです。

個人的にいちばんのお気に入りは、コチラ。

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鳳凰の尾羽の下にこっそり飛んできた、キュートなカワセミさんです☆

もちろん、会場内では本物の「樹花鳥獣図屏風」に出会えました!

なんかもう・・・感動というよりは、「やっと会えた」という思いで胸がいっぱいでした。

上で紹介してきた複製画もさすがの精密さですが、やはり本物の極彩色のきらびやかさ、発色の鮮やかさは及びませんね。見れば見るほど鮮明で、ダイナミックで、緻密で、圧倒的。

若冲の絵は、本当に魔術のようです。何度見ても、見返すたびに、新しい発見がある。

ガラスぎりぎりまで寄って細かい部分をじっくり観察しても、一度離れて全体を見ると、「あ、あんなところに○○がいる」。そしてもう一度間近に寄って見ると、「あ、○○の近くに▽▽がいる」。一度、絵の前から離れて、他の作品を見てからもう一度戻って見てみると、「え、そんなところに■■なんていたっけ?」とビックリして、またまたガラス際まで寄ってしまう・・・の繰り返し。1時間近く、その前から離れることができませんでした。

* * *

今回の展覧会では、日本に残っているもうひとつの桝目描きの作品も見ることができました!

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「白象群獣図」(伊藤若冲、18世紀)

こちらは個人所蔵なので、特別展などでないとなかなか見られないのです。「樹花~」と同じ技法でありながらモノクロームの濃淡だけで表現されたこちらの作品は、シックで風雅な空気を漂わせています。

白象を中心に、麒麟やイタチ、鹿、栗鼠などがぎゅっと集まっています。白象のまどろむような瞳とその様子を見守るイタチ、周囲を駆け回る栗鼠、白象の影でちょこんと休憩している鹿(←角しか描かれていない)。

白象のダイナミックな配置とは逆に、周囲に集まる動物たちはさりげなく寄り添うように描かれていて、若冲の遊び心を存分に楽しめる作品です。


* * *


この2点を見ることができただけで、既にテンション上りきって満足感&達成感MAXの私でしたが(笑)、もうひとつ、大好きな作品にも再会できました。

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「群青富士」(横山大観、1917‐18頃)

2008年に国立新美術館で開催された横山大観没後50年記念展で見た時以来だから、約4年ぶりです(その時の記事は、コチラ)。

金色に染まる空、それともむくむくとわきたつ白雲の中に悠然と突き出る、富士の頂。青々とした稜線と、頂にわずかに残る雪の白。シンプルかつダイナミックな構成と鮮やかな配色の妙に、何度見ても心を奪われます。


* * *


最後の会場「ゆらめく金」の部屋では、定期的に会場内の照明が消えていき、また点灯していくという仕掛けがされています。朝→昼→夕方→夜という時間の移り変わりによって、絵画に描かれた「金」がどのように表情を変えていくのかを体感できる仕組みです。

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「群鶴図屏風」(石田幽汀、18世紀)

若冲とはまた違った、生き物の躍動感と生命力が凝縮された一作。見ているだけでエネルギーが湧いてくるような気持ちになります。


* * *


今回の企画展に合わせて、草間彌生さんの作品も期間展示されていました。


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「水上の蛍」(草間彌生、2000年)

草間彌生さんの作品にふれたのは、おそらくこれが初めて。「奇抜な色彩感覚と大胆すぎる構図」というイメージだったのですが、そのイメージが見事なまでに覆されました。

本当に美しい世界!コンテナくらいの大きさの箱全体が作品になっていて、鑑賞するにはその箱の中に入ります。扉が閉じられると広がるのは、蛍の光にあふれた無限の世界。自分の周囲の世界がこんなにも美しく見えるなんて・・・!

構造と素材は実はかなりシンプルなのですが、まるで夢の世界のよう。いつまでも、この世界に浸っていたくなります。

扉の開閉はスタッフさんがされていて、一定時間が過ぎると扉が空いて退室を促されるのですが、あまりにも離れがたくて、いったん部屋を出るや否や「すみません、もう1回入らせてもらって良いですか」とお願いして、再度入室させていただきました(笑)。


* * * * * 


閉館時間ぎりぎりまで粘って、たくさんの作品からたくさんの世界を感じることができました。

ああ、幸せな1日でした。

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展覧会情報はコチラから


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