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サントリー美術館 「沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA 琉球王朝のいろとかたち」 [展覧会]

紅型チラシ.jpg
2012年6月13日(水)~7月22日(日) サントリー美術館
展覧会情報は、コチラから


サントリー美術館で22日まで開催していた「紅型」の展覧会に行ってきました。

「沖縄復帰40周年記念」と銘打たれた本展覧会ですが、サントリー美術館は沖縄が本土復帰する以前から、沖縄の伝統工芸品を集めた展覧会などを開催していました。1979年には、同じ染織でありながら技法や表現手法がまったく違う「津軽こぎん」とのコラボ展なども開催したそうです。

全国各地で生まれ育まれてきた、日本独特の「美」と「技」をとことん追求するサントリー美術館の姿勢には、毎回感心します。

紅型は、第二尚氏王統が琉球全土を統一した15世紀頃から生産が行われるようになり、18世紀半ばにはその技法が確立して、琉球王国の代表的な献上物のひとつとして知られるようになりました。

しかし、明治維新後に王府の後ろ盾を失ったその技術は衰退し、さらに沖縄戦により壊滅的な打撃を受けます。その後、沖縄の人々のたゆみない努力のおかげで、紅型工芸の技術は受け継がれ、現在では城間栄順先生をはじめとして、多くの紅型を目にすることができます。

今回の紅型展は、戦前に本土に渡ってきた紅型の作品を集めた展覧会。国宝や松坂屋コレクションなど、なかなか見られない作品が一堂に会しました。

1カ月あまりの会期中に3度も展示替えがあったそうな。会場に目にも華やかな紅型装束がずらりと並ぶ様子は、圧巻でした。ダイナミックにして繊細、大胆にして緻密、華やかでありながら優美。中国や日本など、外国からありとあらゆる「藝」と「美」を吸収し、独自のものに創り上げていった琉球王国。紅型はその真髄と言えるかも知れません。

展示構成は、以下の通り。

特別展示 琉球国王尚家に伝わる紅型衣裳
第1章 紅型の「いろ」と「かたち」
第2章 もうひとつの紅型―筒描
第3章 初公開 松坂屋コレクションの紅型衣裳

紅型というと、鮮やかな黄色地に赤や緑のビビッドな色彩で描かれたダイナミックな模様・・・というイメージがありますね。南国の強い日光に耐えうる顔料を使用するため、そのような色彩のものが多くなったようですが、やはり華やかでパッと目を惹きつけられます。

水色地菱繋ぎに松梅楓鳥模様衣裳.jpg
国宝 水色地菱繋ぎに松梅楓鳥模様衣裳(18-19世紀)

渋みの色地が落ち着きを醸し出していて、素敵。菱繋ぎの文様は、能装束を彷彿とさせます。裏地も凝っていて、桜や楓、扇模様などが無数に散りばめられています。こういったところにも、能楽の影響が繁栄されているのですね。

もうひとつ展示されていた「国宝 黄色地松皮菱に菊藤流水菖蒲模様衣裳」は、惚れ惚れするほどの鮮やかさ。

肩から袖にかけて菊と藤が、裾には菖蒲と菊、流水の文様がダイナミックに配置されていて、目が覚めるような華やかさです。キャプションには踊り装束として用いられたと書かれていました。南国の風にこの袖がふわりと翻り、優雅にターンする際に裾がひらめく様子は、得も言われぬ美しさだったことだろうな・・・と想像するだけでうっとりしました。

ここで気付かれた方も多いと思うのですが、実は菊や藤、菖蒲といった花は、もともと沖縄地域に咲くことはありません。そう、この装束の文様は、日本(当時は薩摩)から来る使者をもてなすために描かれたものなのです。

チラシ表に使用されている(↑トップの画像です)、「国宝 黄色地鳳凰蝙蝠宝尽くし青海立波模様衣裳」は、中国で幸福の象徴とされている鳳凰と蝙蝠が絶妙なバランスで配置されています。こちらはおそらく、中国からの使者を招いた宴で御披露目されたのでしょうね。

これまでの沖縄旅行でも感じましたけれども、琉球王国の外交手腕と言いますか、こういった「ソフト面」でのホスピタリティが究極まで突き詰められています。こういった心憎い演出が濃やかに考えられていると、ちょっと便宜をはかってやろうかな、とか思っちゃいますよねえ(笑)。


黄色地牡丹雲に菊尾長鳥模様衣裳.jpg
黄色地牡丹雲に菊尾長鳥模様衣裳(19世紀)

鮮やかな黄色に大胆な配置で菊と尾長鳥が描かれています。この黄色を見ると、やはり琉球を感じますね。

松坂屋コレクションは、戦後では初めての公開になるそうです。1611年に名古屋に誕生した松坂屋は、自社製品の新たなデザインの研究史料として、1931年頃から染織史料の収集を開始。その中に沖縄の染織も多数含まれていました。沖縄が戦禍に巻き込まれる約15年前のこと。非常に貴重なコレクションですね。


水色地菱草花に熨斗模様衣裳.jpg
水色地菱草花に熨斗模様衣裳(19世紀)

沖縄の青空を思わせる、爽やかな青い地に草花や熨斗模様が細かく描かれています。表は爽やかで涼やかな印象ですが、裏地は水色ながら、梅の花や楓の葉?がところせましとビッシリ描き込まれていて、賑やかな感じ。表と裏で季節感も空気感も全く異なるものなんだなぁと感心しました。


東京・沖縄での会期は終了してしまいましたが、秋には大阪・名古屋に巡回予定です。大阪・名古屋会場でしか見られない展示品もあるそうな。お近くにお住まいの皆様、ぜひ足を運んでみてください☆


【巡回日程】

大阪市立美術館:2012年9月11日(火)-10月21日(日)
松坂屋美術館:2012年11月3日(土・祝)-11月25日(日)


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SATUK AZRE NAGAほか  HIDE KAZU HIKARI 

沖縄は少々あこがれの土地である。
常にお土産を頂き、お酒と料理を皆で味わう。
常に音楽と映像の中の風景である。が なぜか友人がいる。
5人の友人のうち2人は東京から移住している。
ラティーナと言う音楽雑誌の編集職のために沖縄に移住した者もいます。
沖縄で料理店を経営したいと 東京から移住した者もいます。
私は沖縄の友人から お酒と ゴーやチャンプルの作り方
そして美しい ガラス玉をいくつか頂き 宝物にしている。

サントリー美術館の魅力は 衣裳店 にもあると私は考える。
色鮮やかな衣装や生活道具は 文化と歴史 郷土愛も伝えてくれるが
平和もプライドも伝えてくれる。
衣装好きとしては 演劇部としては このような展覧会は非常に大切である。
ポストカードにしていただいているおかげで
様々な思いを 情報を遠方にも伝えることが出来る。
エレガントだけではない、暮らしの中の美と楽しさと光 鮮やかさを
教えてくれるのである。

黄色地牡丹雲に菊尾長鳥模様衣裳
水色地菱草花に熨斗模様衣裳(19世紀)
涼やかさと太陽をひしと感じさせてくれる展覧会 またお待ちしています。
by SATUK AZRE NAGAほか  HIDE KAZU HIKARI  (2016-04-06 16:53) 

SATUK AZRE NAGAほか  HIDE KAZU HIKARI 

沖縄は少々あこがれの土地である。
常にお土産を頂き、お酒と料理を皆で味わう。
常に音楽と映像の中の風景である。が なぜか友人がいる。
5人の友人のうち2人は東京から移住している。
ラティーナと言う音楽雑誌の編集職のために沖縄に移住した者もいます。
沖縄で料理店を経営したいと 東京から移住した者もいます。
私は沖縄の友人から お酒と ゴーやチャンプルの作り方
そして美しい ガラス玉をいくつか頂き 宝物にしている。

サントリー美術館の魅力は 衣裳 にもあると私は考える。
色鮮やかな衣装や生活道具は 文化と歴史 郷土愛も伝えてくれるが
平和もプライドも伝えてくれる。
衣装好きとしては 演劇部としては このような展覧会は非常に大切である。
ポストカードにしていただいているおかげで
様々な思いを 情報を遠方にも伝えることが出来る。
エレガントだけではない、暮らしの中の美と楽しさと光 鮮やかさを
教えてくれるのである。

黄色地牡丹雲に菊尾長鳥模様衣裳
水色地菱草花に熨斗模様衣裳(19世紀)
涼やかさと太陽をひしと感じさせてくれる展覧会 またお待ちしています。
by SATUK AZRE NAGAほか  HIDE KAZU HIKARI  (2016-04-06 16:54) 

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