横浜美術館 「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている a bit like you and me... 」 [展覧会]
2012年7月14日(土)~9月23日(日・祝) 横浜美術館
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嵐の大野智くんが尊敬する現代美術家・奈良美智さんの個展を見に行ってきました。
奈良さんと言えば、陶器のようになめらかな肌に様々な感情を秘めた瞳が印象的な子どもの絵が特徴的ですが、今回は初挑戦となったブロンズ作品も展覧。
まずはこのチラシからして凝っています。「夜まで待てない」(2012年)が採用されているのですが、B4サイズで、ちょうど顔の半分でB5に折り曲げる事が出来るのです。そうすると、右半分の顔と左半分の顔の表情の違いがより際立って見えるのです。1枚の絵で、こ~んなに表情や醸し出す空気が違って見えるなんて!面白いな~。
当日は、嵐道の師匠・チャミさんとみなとみらい駅から出発。横浜美術館前のエリアにはただいま大規模な建設工事中で白いパネルでぐるりと周りを取り囲んでいます。そのパネルのところどころに、色々な芸術家の言葉が学にはめ込まれてあります。勿論、奈良さんのも発見。
「子どもの絵とか描いていると、誰かに似ていたりする。
たとえば、君や僕にちょっと似ている時もあるし、
めっちゃ似ていたりもする。
そんなことを思うのが、楽しいんだ。」
混雑を避けて、10時の開館と同時に入場~。
館内に入った瞬間から、奈良ワールドが広がっています。
「White Ghost」(2010年)
今回の展覧会では、109点の作品のうち「White Ghost」を除いて、全てが2011年から2012年に制作されたもの。ブロンズ作品の鋳造でも時間が必要だし、2012年はまだ半分ちょっとしか過ぎてないんですよ?それなのに100点以上もの作品を創り上げることができるなんて!奈良さんの飽くなき創作意欲と集中力、発信力には脱帽です。
最初の展示スペース(第4展示室)には、初挑戦したというブロンズ作品が展示。どの作品も、360度ぐるりと観察することができます。
好きだったのは、「ちょっと意地悪」かな。見れば見るほど愛おしくなる不思議な空気感をまとった子です。
あと、目を開けているブロンズ作品のほとんどがそうなのですが、よ~く見ると、目の「水晶体」の部分がきちんと作ってあるのが印象的でした。
次の会場からは、絵画作品がズラリと展示されています。いちばん最初に目に入ってきた「in the Milky Lake / Thinking One」(2011年)は、乳白色に塗られた色の中に静かの佇む子どもの姿が描かれています。優しいミルク色の世界と、瞼を閉じている子どもの表情が何とも言えず切ない1枚。
奈良さんの作品をじっくり見るのは初めてだったのですが、本当にたくさんの色を使っているんですね。特に「in the Milky Lake~」でも、キャンバスをただ真っ白に染めるのではなくピンクやオレンジやグレーなどの色が塗り重ねられて、最終的に「白」が全体を包む、という感じになっています。だから、ひたすら無垢な「白」ではなくて、まろやかで陰のある「白」に見えるのですね。
それから、肌色が本当に素敵です。本当にね、めちゃくちゃいろんな色を使っているんだろうなーって思います。
一言で「肌色」と言っても、静脈が透けて見える「肌色」だったり、血の気が引いて青ざめる「肌色」だったり、色素が沈着したような「肌色」だったり、頬の赤みにうっすらと染まる「肌色」だったり。こんな色、どうやって作っているんだろう・・・って、いつまでも見つめていたくなります。
24時間テレビで奈良さんと大野さんがコラボしたチャリTシャツには、番組テーマである「未来」をイメージした双葉のイラストが描かれています。本展でも、「双葉」をモチーフにした作品が何点かありました。
ボール紙に描かれた何十点というドローイングも圧巻。奈良さんという方は、「描きたい!」と思った次の瞬間には筆が走りはじめるのでしょうね。
封筒の裏に描かれた作品も数点、展示されていました。「マラカス」(2012年)という作品は、モスクワにある美術機関の封筒の上に描かれています。冬の国というイメージがあるロシアからの封筒に、南国の楽器というイメージのあるマラカスを描くあたり、奈良さん素敵・・・(笑)。
無数に展示されたドローイングの中でも、「Stand Up Again」(2012年)という作品は強烈に心惹かれました。
ドローイングには色々なメッセージや文字も一緒に描き込まれていることが多いのですが、この作品だけは文字が何も入っておらず、ただ両手をついてひざをついた子どもが、じっと地面を見つめています。
前を見るでもなく、空を見上げるでもなく、ただ、目の前の地面を見つめている。その瞳には悔しさとか辛さとか、でも次に向かわなくてはいけないと自分を奮い立たせるような強い気持ちとかがにじみ出ていて。人間だったら誰もが体験するであろう「挫折」や「失敗」の瞬間が、ものの見事に切り取られています。
「山少女」(2011年)
きゅるんとした瞳が可愛い。ランダムに描かれている瞳の中の枡のひとつひとつに全く違う色が描き込まれています。奈良さんの内に無限に広がる興味への探求心を表現しているかのよう。
「夜まで待てない」
ちょっとわかりにくいのですが、向かって右側のお顔にだけ、お口からにょっと可愛らしいキバが見えているんですよ。右側の方がより目もすがめていて、より悪だくみしてる感じ(笑)。昼と夜の二面性を表現しているのかしら?
「春少女」(2012年)
やわらかいパステル調のバックに、これまたいろんな色を重ねてあります。左右の瞳の色が違っているのが印象的。
いちばん心に残ったのは、「Cosmic Eyes (未完)」(2012年)。
「春少女」のように、髪の長い子どもが淡く優しい色調で描かれているのですが、涙を堪えるように張り詰めた左右の瞳の中には、それぞれ「OH MY GOD」「I Miss You」という文字が、うっすら白い色で描き込まれています。彼女の瞳には、いったいどんな景色が映っているのか、そしてその景色を前に彼女はいったい何を思うのか・・・様々な想像をかきたてられ、様々な感情を呼び起こされる作品です。
* * * * *
奈良さんの作品には、甘さと毒、不安と安息、挫折と不屈、光と陰など、表裏一体となったものが偽りなく率直に、誠実に描かれているように思います。それゆえに、その作品に向き合う人々は自分の内なる「生身の思い」にも気づき、対峙させられるような居心地の悪さを一瞬感じるかも知れません。
けれども、その感情は人間であれば誰しも持ち合わせているもの。やがて、安心してその世界に身をゆだねて、ゆりかごのような安らぎを感じるように作品と対話する自分に気づきます。
そうそう、美術館に併設されているカフェ「Café 小倉山」にも奈良さんの作品が展示されてありますので、お見逃しなく!また、同時期に開催されている「横浜美術館コレクション展」では、奈良さんの初期の作品が展示されていますので、ぜひ足を伸ばしてみてください。新たな発見があるかも知れませんよ。
【今後の巡回予定】
横浜美術館
2012年7月14日(土)~9月23日(日)
青森県立美術館
2012年10月6日(土)~2013年1月14日(月・祝)
熊本市現代美術館
2013年1月26日(土)~4月14日(日)
凄い参考になりました。
ありがとう
by くみー (2012-08-22 14:30)
くみーさま、
コメント、ありがとうございます!!
くみーさまも、ぜひ奈良ワールドにどっぷり浸ってきてください☆
by ★とろりん★ (2012-08-22 18:45)