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歌舞伎座 閉場式 [歌舞伎]

歌舞伎座さよなら公演

歌舞伎座 閉場式

平成22年4月30日(金)

一、御挨拶

松竹株式会社  会長 大谷 信義   

久保田万太郎 作詞
  吉住慈恭/二世稀音家浄観 作曲
一、
都風流

菊五郎

吉右衛門

仁左衛門
勘三郎
三津五郎
梅 玉
團十郎
幸四郎

一、京鹿子娘道成寺

玉三郎
時 蔵
福 助
芝 雀
魁 春

一、口 上

芝 翫
富十郎
藤十郎

一、歌舞伎座手締式

幹部俳優出演

御 礼

松竹株式会社  社長 迫本 淳一



新・歌舞伎座建築のため、今月をもって59年の歴史に幕を下ろす現・歌舞伎座の閉場式が開催されます。その番組が発表になりました。チケット発売は4月13日(火)。

現・歌舞伎座の座頭格、立女方、幹部俳優の勢揃いする踊りと口上、そして手締め。いよいよなんだなぁ、という実感が、ようやく湧いてきました。

それにしてもかなり注目なのは、女方5名が配役されている「娘道成寺」。これ、これはきっと(あくまでも推測ですが)5人がそれぞれ花子を踊るのですよね?ち、違いますかね?いや、そういうことでお願いしたいのですが>松竹制作部の皆さん。

どんな感じになるのかぁ。場面ごとに入れ替わって踊るのかなぁ。道行は福助丈、鐘見~乱拍子は玉三郎丈、廓づくしは時蔵丈、花笠は芝雀丈、山尽くしは魁春丈、という感じで(段構成などはあまり考えておりません)。そしてクドキは、5人揃って踊るとか!!うわ~うわ~、それ絶対素敵かも!!(以上は、本当に私の勝手な推測ですので、あてになさらないでくださいね)

立方衆8名による踊りも、ものすごく素敵だろうなぁ~。(妄想想像中)

…と、ここまで語っておきながら、おそらく仕事の都合で実際には観られないと思うのですが…(嗚咽)。幸運に恵まれた方は、ぜひともレポをお願いします(他力本願)。

現・歌舞伎座のラストラン。その場にいることができないとしても、心の中でしっかり見送りたいなと思います。

 


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歌舞伎座さよなら公演 御名残三月大歌舞伎 第一部 [歌舞伎]

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2010年3月27日(土)歌舞伎座 11:00開演

いよいよ歌舞伎座もクライマックスまで、あと1週間。そ、それまでに頑張って残っているレポを仕上げ…たいなぁ…(弱気)



■『菅原伝授手習鑑 加茂堤』

梅玉の桜丸、時蔵の八重、孝太郎の刈屋姫、友右衛門の斉世親王

三月の歌舞伎座から、三部制へと上演形態が変わりました。三月は名作「菅原伝授手習鑑」の名場面を3部に分けて上演し、合間に歌舞伎屈指の名作をとり混ぜるという趣向。(・・・『菅原伝授』はまとめて上演してくれてもよかったのに・・・松竹さんのいけず…)

第1部の序幕は、春うららかな風情のあふれる「加茂堤」より。若い2人が思いついたことから持ち上がった騒動が、やがては一族を悲劇へ導くきっかけとなります…。

とは言え、この幕では、のどかな春の日差しのもと、恋にはしゃぐ2組の恋人たちが繰り広げるお芝居を楽しみましょう

まずは、梅玉の若々しさ、瑞々しさにうっとり惚れ惚れ~♪軽やかな身のこなし、はんなりとやわらかで上品な物腰。立ち回りは凛々しく勇ましく、八重に接する時はどこまでも優しい旦那様。毎回のことですけど、惚れ直しました(笑)。 

桜丸の若女房・八重を演じたのは時蔵。きりりとした美貌とおっとりとした風情、細々と夫の世話を焼く女房ぶりが板についています。

何より、この場面では2人のラブラブっぷりにあてられっぱなし。見ててこちらが恥ずかしくなるほどのイチャイチャ仲良しぶりです(笑)。「女房、わしゃたまらんわい」という桜丸の科白に、「観てるこっちがたまらんわ!」と突っ込んでしまいました(←すみません)(←突っ込みすらも愛)。

孝太郎@刈屋姫は、たおやかで嫋嫋たる風情のしとやかな姫君ぶりがぴったりです。八重に連れられて来る時のいそいそとした足取り、恋しい人に駈け寄りたくても、桜丸&八重の手前、なかなかそうもできずにもじもじとするところ、斉世親王を見上げるときの瞳のきらめき、どこをとっても「恋する女性」の空気が漂っていました。かわゆい~

春の穏やかな風情の中で繰り広げられる一幕。巡りくる春の気配を感じながら拝見するのはまた格別です。



■楼門五三桐 

吉右衛門の石川五右衛門、菊五郎の真柴久吉。

大薩摩の立て弾きの後(粋でカッコいい~♪)、浅葱幕の幕が切って落とされると…舞台一面に、満開の桜景色!!どこまでも続く満開の桜に、客席で一足早いお花見の気分。まさに「絶景かな、絶景かな~♪」

薄紅色の世界の中に鮮やかに雄大に建つ南禅寺。朱塗りと豪華な装飾のほどこされた楼門が圧巻です。

その楼門の上で、悠々と煙管(きせる)をくゆらせる吉右衛門@五右衛門の大きさと言ったら!

そして、楼門の下で五右衛門の姿をとらえる菊五郎@久吉の怜悧な美しさと言ったら!!

文字通り、「平成の菊吉」による競演です。楼門の2階と階下、全身でお互いを意識しあい、火花を散らし合いながらも、それを表情に出すことはなく、悠然と構える二人。か・・・かっちょいい…!!!(ボキャ貧露呈)

この場面はほとんど仕どころもなく、まさに役者の格だけで見せなくてはいけません。両者の力が拮抗すればするほど、迫力があり圧倒的な場面になるだけに、菊吉でこの場面を観ることができたのは、本当に幸せなことでした。



■女暫(おんなしばらく

玉三郎の巴御前、我當の蒲冠者範頼、松緑の轟坊震斎、菊之助の女鯰若菜実ハ樋口妹若菜、吉右衛門の舞台番辰次。

外題の意味するとおり、有名な「暫」を女方が扮するという趣向。スーパーマンならぬ、スーパーウーマンですね。

玉三郎は、科白を張りあげるような口跡になるとちょっと声が割れてしまって気の毒だなぁと思うのですが、周囲を圧倒するオーラはさすが。菊之助と繰り広げる「大和屋の兄さん」「音羽屋の菊ちゃん」も、お決まりですがついついニンマリしてしまいますよね。

幕外で舞台番辰次@吉右衛門に「六法の踏み方」を教わるシーン、2人ともかなり熱心にしていて、微笑ましい限り。でも、「やっぱり恥ずかしい~」と恥じらいつつ去ってしまう巴御前、かわええ~☆



歌舞伎の醍醐味をフルコースで味わえる、豪華な三月第二部でした☆
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歌舞伎座さよなら公演 御名残三月大歌舞伎 第二部 [歌舞伎]

2010年3月24日(水) 歌舞伎座 14:30開演

第二部は『菅原伝授手習鑑』と『弁天小僧女男白浪』という人気演目のそろい踏み。

すでに3カ月近く時間が経過しているため、簡単なカンゲキメモとなってしまうことをお許しください…。また、記憶にあることをバーッと書き出しているので、記憶違いな部分もあろうかと思います。その節は遠慮なくご指摘くださいませ。



菅原伝授手習鑑 筆法伝授


菅丞相:仁左衛門
武部源蔵:梅玉
園生の前:魁春
戸浪:芝雀

仁左衛門の神々しさ、梅玉の凛々しさ、魁春の気高さと思慮深さ、芝雀のつつましさがそれぞれ際立つひと幕でした。まさに適材適所の配役。

とか美しくまとめてみましたけれども、実際は切っても切っても梅玉丈☆な展開に、ひとりウホウホしていただけなんですけど(笑)。

戸浪との不義の恋が原因で菅丞相に勘当された源蔵。久方ぶりに突然の呼び出しを受けて一体何を言われるのかという戸惑いと不安、それでも忘れていない菅丞相への忠義の気持ち、戸浪を気遣いつつも家中では厳しく接する姿など、始終伏し目がちな表情と少し肩を落としたようにした姿勢からも伝わってきます。

そんなわけで、勘当を許してほしいと願っても、菅丞相に「伝授は伝授、勘当は勘当」と厳しく言い渡され、こらえきれずに思わず突っ伏してしまう源蔵が哀れで…「菅丞相、良いじゃないですかっ!こんなに反省してるんだし、菅丞相のことを誰よりも思っていることだし、許してやってくださいよっ!」と、思わず3階席からダイブして菅丞相に詰めよりたい気持ちに駆られました(笑)。

仁左衛門の菅丞相は、もうすでに人のものではない境地にいたというか…。特に、藤原時平に陥れられて宮廷から連れ戻された際、静かに歩いてくる姿は、全ての思いを飲み込んで、ただ自分に用意された道-それが流罪という罰であっても-を歩んでいこうとする悲壮な決意がにじみ、圧倒されました。

恨み言、憤激の言葉ひとつ言わず、それでもスッと背筋を伸ばして立っている姿に、余計に耐えがたい怒りや苦しみが浮かび上がり、観る者の心を絞めつけます。

魁春の園生の前は、身分の高い奥方の気品を醸し出しながらもかつて自分に仕えてくれた戸浪に対する思いやりや優しさがあふれる演技で、キラリと光っていました。参内する菅丞相を見送ることができるようにと、自分の打掛の袖に戸浪を隠し、ひそかに別れを告げさせてやる場面など、本当に良かった。

『籠釣瓶-』の九重と言い、この園生の前と言い、人の心を慮り、温かな心遣いを見せる役どころが魁春は本当に当たります。

戸浪を演じた芝雀。勘当された後の苦しい生活というのは、彼女のたたずまいから感じ取ることができます。かつて園生の前に贈られた小袖に身を包み、恥じるように夫の後ろに身を隠しながら、ゆっくりと歩いて来る様子は、哀れで切なくて…。それだけに、園生の前に温かく迎えられた時のホッとしたような表情に救われます。

最後は夫の源蔵とともに、菅丞相の一人息子である菅秀才を預かることになるのですが、その背中にしっかりと菅秀才を背負い、しっかりとした足取りで花道を去っていきます。役者って、つくづく体力の要る仕事だなぁ~、と変なところで納得してしまいました(苦笑)。



弁天娘女男白浪

弁天小僧小僧菊之助:菊五郎
浜松屋倅宗之助:菊之助
鳶頭清次:團蔵
赤星十三郎:梅玉
忠信利平:左團次
南郷力丸:吉右衛門
日本駄右衛門:幸四郎

いやぁ~、七代目の当たり芸!菊吉競演!親子競演!兄弟競演!梅玉丈出演!(←とろりん的に外せないポイント)

もうもう、見どころ満載すぎる一幕ですよ。三か月以上経った今でも、この配役を見るだけで興奮してしまいます(笑)。

菊五郎丈…当代に揃う名優の中で、彼ほど「観客を"酔わせる"」という言葉がぴったりとくる役者さんはいないといます。そして、彼の「酔わせる芸」をもっとも堪能できるのがこの「弁天小僧」だと思います。

声の良さ、リズミカルな科白回し、メリハリのある動きの中で、清楚な令嬢からやんちゃな不良へ、そして自分でもそれとは気づかぬうちに南郷力丸に頼り、甘えてみせる末っ子キャラ…弁天小僧がその内面に潜ませている鋭さ、凶暴さ、甘さ、弱さを変幻自在に見せていくのです。

どれが彼の「本当の顔」なのか…客席はどんどん変容していく弁天小僧=菊五郎丈に惑わされ、彼の舞台に魅入られていくのです。すごい!すごいっすよ音羽屋!!(あまりにもボキャ貧過ぎる賛辞)

吉右衛門丈の南郷力丸。こういう世話物だとちょっと重くなってしまうかも、思ったのですが、どっしりと大きな舞台はさすが。菊五郎丈@弁天小僧がすっかり頼り切っているのが微笑ましい♪

稲瀬川勢揃いの場は、当代随一の立方役者オールスター総出演!それだけで華やかで豪華でありがたい感じです(?)。どの役者さんもその役柄にぴったりハマっているので、もううっとりと舞台を見つめるだけでした。

このように、役者が揃うだけで息をもつかせぬ圧倒的な舞台が出現するというのが、歌舞伎のマジックですよね。

歌舞伎の魔法に存分酔いしれることができて、本当に本当に幸せでした。

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歌舞伎座二月大歌舞伎 夜の部 [歌舞伎]

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思いだしたことをとりとめなく書き留めておりますが…。よろしければご覧ください。


■壺坂霊験記

目の見えない夫(三津五郎)と、その身をいつも心にかけている優しい妻(福助)の愛と絆が奇跡を起こす、実写版「日本むかし話」のようなお話です。

そんな都合よいこと、あるわけないよね~と思いつつも、個人的にはハッピーエンドで幸せな気分になるので、結構好きなお話です。いちばん好きなのは、仏さまのご加護で目が見えるようになった三津五郎が、自分の妻の美しさにびっくり仰天しつつ、「お初にお目にかかります」と挨拶するシーン。ほのぼのとした気分になります。

そして、いちばん最後。2人仲良く花道を去っていくのですが、夫の三津五郎はこれまでの癖で杖をついて歩いていこうとします。そんな三津五郎に向って福助が言う、「お前、もう杖は要らぬじゃないわいなぁ…」という科白に、思わずホロリ。冗談めかして言ったつもりが、その言葉の重さについつい涙があふれてしまう妻の姿に、これまでの苦労、そしてそのすべてを覆してしまう程の喜びの大きさが伝わってきて、こちらまでじ~~~んときました。


■高坏(たかつき) 

まずは、「松羽目」ならぬ「桜羽目」の華やかさ、晴れやかさに大きなどよめきが。歌舞伎ならではの華、ですね。一瞬にして観客の心を舞台に惹きつけてしまう装置や演出を、歌舞伎は本当によく考えられていると思います。

この作品の舞台は、京都周辺。「摂州三島の高槻(たかつき)団子」という語句が出てきます。外題(=「高坏」)とかけているのでしょうが、その土地出身の身としては、思わずニンマリ。

一度は観てみたいと思っていた、勘三郎の下駄タップ。軽やかなリズム感と重力を感じさせないステップに惚れ惚れしました。この月は、ちょうどバンクーバー五輪真っ最中でしたので、フィギュアスケートのスパイラルや「靴ひもアクシデント」(高槻の星・・・無念でした・・・)などがアドリブで入ってました。

勘三郎さんは、陽性の魅力にあふれる役者さんですよね。いるだけで、舞台がパァァーッと明るく華やかな気分になります。こんな明るい魅力を持つ勘三郎さん、次の幕ではどんな次郎左衛門を演じるのかしら・・・とドキドキしました。

■籠釣瓶花街酔醒

まず花道から七越、そして上手揚幕から九重の花魁道中が舞台を横切っていき、最後に、舞台中央に立つ今と盛りと咲き誇る桜の影から八ッ橋の花魁道中が現れる・・・というこの場面。

これも、歌舞伎の醍醐味と言える演出ですよね~!!七越、九重、八ッ橋と、花魁道中の規模や道中の人数、華やかさもグレードアップしていくのですが、それに合わせて、次郎左衛門の気持ちと同じように、観客の気持ちも高揚していくのですよね。

そしてとどめをさすのが、八ッ橋の浮世離れした美しさ。この美しさゆえに次郎左衛門も、そして彼女自身すらも破滅の道を進んでしまいます・・・。

「八ッ橋の笑い」の場面。とても妖艶で、でも優しくて、「魅入られる」とはこの事なんだな、と思い知りました。女の私ですら思わず息をのんだほどですから、その場で、間近でその微笑みを見てしまった次郎左衛門が、魂を抜かれてしまったような心持になるのも納得がゆきます。

玉三郎の美しさは言うまでもなく、どんどんエスカレートしてしまう女の性(さが)のありようが、本当につらくて、やるせなくて・・・愛想尽かしの後に吐き出すようにつぶやく「わちきゃ、つくづくいやになりんした」という科白にやるせなさ、哀しさ、諦めが込められていて、涙があふれました。

九重の魁春は、本当に穏やかで、優しい女性で。八つ橋が女の持つ激しい部分を表現しているのであれば、九重は女の優しさ・温かさを表現しているのかな、と思います。

満座の中で八つ橋に愛想尽かしをされ、居合わせた同業者にも馬鹿にされ、芸妓や幇間持などすべての人が、まるで潮が引いていくように次郎左衛門からスーッと離れて行った中、九重だけはその場に残り、羽織を次郎左衛門に着せかけます。その手つきの優しいこと。そして、「また店に遊びに来てくださいね」と声をかけてから部屋を出ていく時も、最後の最後まで、背中で次郎左衛門の気配を心にかけている様子が伝わってきました。

加賀屋・・・本当に素晴らしい舞台でした。

勘三郎の次郎左衛門は、愛嬌があるなぁ、というのが最初の印象。いつでもニコニコとしています。でも、その次郎左衛門の笑顔は、どんどん恐ろしくなっていきます。なんて言うのでしょう…。八ッ橋と出会い、茶屋に通い始めた頃のウキウキとした笑顔、栄之丞の姿を見つけて不安になりながらも笑顔を絶やさず、八ッ橋の愛想尽かしも、最初の時まで困ったような笑みを浮かべていて…。その笑みが凍りついた時、彼は声を振り絞ります。

「おいらん、そいつぁ袖なかろうぜ…」

この科白が、これほどまでに狂おしく聞こえたことはありません。なのに哀しくて、胸が締め付けられる思いがしました。

最期の場面。美しくも凄惨な、次郎左衛門による八ッ橋殺し。次郎左衛門に斬られた八ッ橋は、ぐぅーっと背中を反らしてややあった後、羽織っていた打掛がハラリと肩から抜け落ち、その空蝉が床に滑り落ちるかいなかの瞬間に、玉三郎の体も静かに崩れていきます。そのあまりの儚さ。言葉がありません…。

栄之丞を演じた仁左衛門。水も滴る男ぶりというのは、まさにこの方のためにあるような言葉。どこから見ても美しく男前。八ツ橋に次郎左衛門とのことを責める場面は、どうにもならぬ甘ったれな部分がほどよく出ていて、ため息が出てしまいます。

人間の業と哀しさ、吉原という世界の華やかさと闇が痛いほどに伝わってくる一幕でした。


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歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎 昼の部 『勧進帳』 『松浦の太鼓』 [歌舞伎]

2010年1月17日(日) 歌舞伎座 11:00開演

お正月の華やかな気分がまだまだ進行形の歌舞伎座へ足を運びました。今回は都合により、『勧進帳』と『松浦の太鼓』のみを拝見しました。



『勧進帳』

武蔵坊弁慶/市川團十郎          
源義経/中村勘三郎             
亀井六郎/大谷友右衛門             
片岡八郎/市川高麗蔵             
駿河次郎/中村松江            
常陸坊海尊/大谷桂三            
太刀持音若/中村玉太郎           
富樫左衛門/中村梅玉


さよなら興行で3度目の上演。昨年2月は吉右衛門が、9月には幸四郎が弁慶を演じて、いよいよ満を持して登場するのが成田屋・市川團十郎の弁慶です。

心が震えるような、熱いものがこみ上げてくるような感動的な舞台でした。『勧進帳』を観てこんなに心が震えたのは、初めてかも知れません。

さすが家の芸、團十郎の弁慶は大きさと豪快さ、義経への忠誠心、富樫への感謝の情などが存分に表現されていて、「たっぷりと」芸を堪能させていただきました。この、愚直なまでの義経への思い、大きさの中に潜む、悲壮なまでの死への覚悟が伝わってこそ、最後の跳び六法が活きてくるのではないかと思います。

富樫を演じた梅玉が、本当に素晴らしくて素晴らしくて・・・もう、贔屓目と言われても構いません。本当に情の深い、けれども内面の葛藤と迷いが伝わってくる、人間らしさあふれる富樫でした。

『勧進帳』で、富樫はいつ、自分の目の前に現れた山伏一行が義経主従だと見抜くのか、そしていつ、この一行を見逃して関を通すことを決意するのか、というテーマがあります。たぶん、それぞれに数多くの芸談や評論が残っていることでしょうし、私なんかが言うのもものっすごくおこがましいのですが・・・。

梅玉演じる富樫は、弁慶が勧進帳を読み上げている間、すすっと近くに寄ります。そしてハッとなり、その様子に気づいた弁慶もハッとして動作を変えます。この、すすっと近づく動作が、とてもさりげなく、何気なく見えたのです。

この時まで、梅玉@富樫は関守としての当然の任務として、山伏一行を止め、勧進帳を読むように命じただけに見えました。そして、弁慶が読み始めた勧進帳を何気なく覗き込もうとした、そんな様子。普段の生活で、たとえば誰かが近くで手紙や本を声に出して読み始めたとき、ついついその文面を覗き込むようなこと、ありませんか?

梅玉の富樫も、弁慶が朗々と読み進める勧進帳の文面を何気なく覗き込んだ、という感じに見受けられました。

ところが文面は白紙。まさか、と思わず強力(=義経)を見る。その富樫のただならぬ様子に気づいた弁慶が富樫に向き直る。

そして、問答へ。この問答で、富樫は義経と弁慶一行であるということを確信する。

けれど、この時点ではまだ富樫は迷っている。一行に関所の通過を許すべきか、止めるべきか。迷ったまま、それでも関を通ることを許しても、梅玉@富樫の内面ではまだ葛藤が続いているように見えました。けれども番卒の一人が「あの強力が義経に似ている」と注進した瞬間、自分の心を決める最後の機会だとばかりに太刀に手をかけます。

自分の目の前で義経を打擲し、鬼毛迫る勢いで詰め寄ってくる四天王と、彼らを押しとどめようとする弁慶とのせめぎあい。富樫は弁慶一行だけでなく、自分の内で激しい迷いとも闘っています。

お互いに必死の攻防の中で弁慶とまなざしを交わし、彼らの悲痛なまでの思いを受け止めた時、富樫はついに心を定めます。
一行を通すことを。そして、自らの死を。

梅玉の富樫には、このような感情の流れがあふれるほどに伝わってきました。

「いまは疑い晴れ申そう。とくとく誘い通られよ。」という科白のきっぱりとした潔さ。自分がすべてを受け容れる覚悟を固めた清々しさに、心を打たれました。

團十郎の弁慶も、常に義経に心を配り、舞台全体に心を配る、大きな舞台でした。関所では迫力あふれる姿で富樫を圧倒しながらも、最後には自らの危険を顧みずに関の通過を許し旅立ちを見送ってくれた富樫への、深い感謝の念がにじみ出ていました。

詰め寄りの場面、弁慶をはじめとした義経主従の決死の覚悟と富樫の葛藤がぶつかり合いせめぎ合い・・・それぞれの思いがすごくストレートに伝わってきて・・・涙が出ました。

熱くて清々しい、そして胸を締め付けられるような感動が残る舞台でした。

歌舞伎の役どころには、性根(しょうね)や肚(はら)など、役を演じる上での心構えや方向性の指針が受け継がれてきているので、それとは少し印象がずれているかもしれません。また、観る人の数だけ、舞台に対する感想や印象があると思います。あくまでも、私が観たその日の『勧進帳』の舞台から受けた感想だということを、あらかじめ御了承いただければと思います。



『松浦の太鼓』


松浦鎮信/中村吉右衛門               
其角/中村歌六            
鵜飼左司馬/澤村由次郎           
渕部市右衛門/中村松江             
早瀬近吾/中村吉之助            
里見幾之亟/中村種太郎            
江川文太夫/大谷桂三               
お縫/中村芝雀             
大高源吾/中村梅玉


『忠臣蔵』を素材にした作品は多々ありますが、こちらもそのうちのひとつ。松浦鎮信公は実在の人物だったそうです。詳しくは、mamiさまのブログ『みみずく通信』「松浦侯」の記事をご覧下さい~。

こちらの作品は初見だったのですが、忠臣蔵番外編の中でもにぎやかで楽しいお芝居です。

吉右衛門の松浦侯はいかにもお殿様~[るんるん]といった風情があって、素敵です。きっと、大藩のお殿様ってこんな感じだったんだろうな~、と思わせる無邪気さと、可愛いわがままぶり(家臣は大変ですけど>笑)。

皆に句を誉められて上機嫌だったのに、お縫が現れると途端にふてくされる様子(照れ隠し?)、其角に与えた家紋入りの羽織を、彼が源吾に渡してしまったと聞いて不機嫌になる様子、それでも其角と源吾の句のやりとりがすんごい気になる様子、討ち入りの陣太鼓(松浦家は吉良家のお隣に屋敷があったようです)に大喜びして、「加勢に行くぞー!!」と馬に飛び乗っちゃう様子(←家臣大あわて)とか、もう、はちゃめちゃなのに愛されるお殿様、といった感じが超ラブリー[黒ハート]

吉右衛門丈は肚芸をたっぷり見せる役どころが多いので、こういう軽快でおかしみのある役どころは珍しいですね。決して品が失われないので、はちゃめちゃで勝手わがままなお殿様も、愛すべき役としてきちんと立っているところは流石です。

お縫を演じた芝雀。ぽってりとした風情とおっとりとした動きが、いかにも奥御殿のお女中といった感じ。松浦侯が其角や家臣とあれやこれやと話をしている最中、お縫が舞台奥でお茶を点てる場面があるのですが、とてもなめらかで優雅な所作でした。(ちなみに、実在した松浦侯も茶人としても有名だったのだそうです。→「松浦侯」

個人的には、今にも馬に乗って吉良家へ馳せ参じようと意気込む松浦侯(と、必死で押しとどめようとする家臣達)のかたわらで、うっかり薙刀を持たされちゃって若干戸惑っているお縫さん@芝雀丈がすんごいキュートでツボでした(笑)。

梅玉の大高源吾。お芝居の冒頭、討ち入り前夜と討ち入りを果たした最後のシーンのみの出演ですが、手堅くて、品があって、やっぱり素敵でした。今回、高砂屋は素敵素敵と言いっぱなしですね(苦笑)。

其角が羽織をくれる時にも「他家の紋が入った着物を身につけるのは」と躊躇しながらも袖を通す場面では、武士としての誇りが垣間見えて、心に残りました。伏し目がちの梅玉さん・・・かっちょいい・・・(爆)。

其角を演じた歌六は、歌人らしい軽やかさと柔らかさ。お縫の姿を見て松浦侯が不機嫌になった理由をサラリと言い当ててしまう場面は陽気で飄々としていて、彼だからこそ言える事だな~と思わせる好演でした。



はぁぁ~、楽しかった!やっぱり歌舞伎は、楽しいし面白いですね!そして生の舞台は観るたびに発見や自分の新たな気持ちに気付くことが出来るので、不思議です。

今の歌舞伎座で歌舞伎を観られるのも、あと100日あまり。少しでも多く、あの空気を感じに行きたいなぁと思います。
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歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎 昼の部 [歌舞伎]

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2010年1月17日(日) 歌舞伎座 11時開演

諸事情により、『勧進帳』と『松浦の太鼓』だけ拝見しました。

この歌舞伎座で櫓を見られるのも、あと3月ちょっとですね…。

カンゲキレポは、ただいま脳内編集中です。しばらくお待ちくださいませ。m(_ _)m
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国立劇場 平成22年初春歌舞伎公演 [歌舞伎]

『旭輝黄金鯱(あさひにかがやくきんのしゃちほこ)』

2010年1月10日(日) 国立劇場大劇場 12:00開演の部


初芝居(初歌舞伎)は、隼町から!国立劇場で尾上菊五郎劇団による舞台を拝見しました。お正月に相応しい、華やかで豪快なお芝居でした。

※1月14日に追記しました。



【あらすじ】

盗賊、柿木金助(尾上菊五郎)は、大凧を用いて尾張・小田春長(尾上松緑)の居城である那古野(なごや)城天守の鯱(しゃちほこ)を奪い取ります。鯱の内部に隠されていた小田家秘伝の書物によって妖術を身につけた金助は、この力を用いて小田家を滅ぼし、天下取りを企てます。小田家の家臣、鳴海春吉(尾上菊之助)は、書物を奪い返す為に金助を追いかけますが…。

【カンゲキレポ】

全体としては、そうですね~、役の設定(実ハ○○)というのが複雑だったので物語としては全体的にまとまりがないかも・・・。(きっと、千秋楽までにどんどん洗練されてよくなっていくと思います。)

その分、スペクタクルな演出がふんだんに盛り込まれていて、エンターティメントとしての歌舞伎の華やかさ、ダイナミックさ、マニアックさというのは徹底して作り込んであります。

今回はネタバレですが、とろりん的ツボのシーンをダイジェストでご紹介したいと思います。



[かわいい] 宇治茶園 茶摘の場

はなみずきさまのブログでもこの場面は「宝塚のレビューなテンション」と評されていましたが、私もまったく同じような感想で、「うわぁ~、宝塚みた~い!!」と、ついつい興奮しちゃいました(笑)。

定式幕が引かれると、舞台一面に広がる若草色の茶畑。本舞台から奥へいくに従って階段のように緩い段差がつけられてあります。その段差を利用して、山吹色の着物を着た茶摘女たち(実は遊女たちによる余興)が3列に並んで板付き、踊っている、という趣向。もう、宝塚の大階段で踊る娘役達の群舞にしか見えません(笑)。

そこへ現れ、女たちと戯れる小田春勝(尾上松也)は、さしづめこの場面では男役トップスター。

茶摘女たちがはけた後に、春勝の許嫁である国姫(中村梅枝)が登場するのですが、濃い若草色の着物が鮮やかで、楚々として美しくて、まさにトップ娘役の風情。手に手を取って立ち去っていく春勝と国姫の姿は、デュエットダンスを終えたトップコンビを観ているかのようでした。

私の中でこの場面は、宝塚のショーで見られる大階段の娘役群舞→トップスター登場、娘役との絡み→トップ娘役登場、デュエットダンス、という風に脳内変換されていました(笑)。(参考→宙組公演『Amour それは…』

松也丈と梅枝丈、お二人の若々しさと瑞々しさあふれる美しさが際立つ場面でもありました。

[かわいい] お茶尽くし

この「茶摘の場」では「茶」に掛けた科白もたくさんあって、それも楽しかったです。

「濃茶の縁は深緑」「甘露、甘露」「お茶を濁さずはっきりと~」等々、こういう言葉が巧みに取り込まれていると、何だか楽しいですよね。

それと、これは私の見間違いかも知れないのですが(2階のいちばん後ろの席からの見物でしたもので[あせあせ(飛び散る汗)])、茶園の中に山吹の花が咲いていたように見えたのですが、あれは、「道閑(作品中の役名。小田家の御家騒動のきっかけを作る張本人です)」にちなんでいるのでしょうか・・・?どなたか教えて頂けると嬉しいです。

※1月14日追記

少し調べてみましたところ、宇治を流れる宇治川流域には山吹の自生地があり、昔から宇治は山吹の花の名所として知られていたそうです。現在、山吹は「宇治市の花」に指定されています。また、茶の木は、「宇治市の木」よりひときわランクの高い「宝木」として大切にされているのだそうです。

[かわいい]  二幕目(尾張) 那古野城天守閣屋根上の場 宙乗り

盗賊の柿木金助が大凧に乗って那古野城天守屋根に降り立ち、壮麗な黄金の鯱とそこに隠されていた妖術の秘巻をも奪い猿、という場面。

菊五郎丈の宙乗り、噂に違わずすごい演出でした!!

劇場2階下手側に特設された鳥屋から大凧に身体をくくりつけた菊五郎丈が登場。対角線上にすぅーっと滑空して、客席上手に大きく迫り出した天守屋根に着地する、という演出です。

あんなに大きく迫り出している舞台装置は、初めて見ました!一部、客席の頭上にまで伸びているのです。そしてその屋根には、黄金にピカピカに輝く金鯱!!大きさもかなりあります。

この天守屋根にめがけて、大凧に乗って飛来してくるのが菊五郎丈。白地の大凧には、「虎」と力強く書かれています。

大凧は1階客席センター上手寄りの辺りで、いったん停止し、何と客席の方へ急降下。結構ギリギリまで下がっていた様子で、1階のお客さんからはどよめきが起きていました。その後、再び上昇し、風に揺られるかのようにくるくるとまわったり。

渋いお顔で大凧に乗っている菊五郎丈でしたが、お客さんの反応が間近に伝わるからか、すんごい楽しそうでした(笑)。

大凧の宙乗りの後は、金鯱に乗っての宙乗り!妖術を手に入れた金助が、その術を使って春長や春吉を苦しめ、金鯱を奪い去っていく・・・という展開なのですが、これは客席ではなく、舞台上で真上に上昇する演出。そうですね、あれだけ立派な鯱、大凧では重すぎて運べそうにありませんものね~。

[かわいい]  中村時蔵丈

ヒロインらしいヒロインが登場しない本作で、美しく力強く作品を引き締めていたのが、中村時蔵丈。国姫の乳母園生と、金助の母村路の二役をお勤めです。

敵同士に立つ、まるで正反対の立場のお役ですが、どちらのお役でも、騒動に巻き込まれてしまった国姫を思う心遣いに優しさと温かさが込められていて、じ~んと心に染みました。ふとしたことで国姫の誕生日を知った村路が、姫の為に贈り物をする場面は、心がほんのりと温かくなる、良い場面でした。

[かわいい]  大詰(伊勢) 御師大黒戎太夫内の場 金鯱観音

2007年の俳優祭で歌舞伎ファンの話題をさらい、度肝を抜いた(?)、菊五郎丈による「北千住観音」がその名も新たに「金鯱観音」としてバージョンアップし、復活しました!

いや~。生で拝見したのは初めてだったのですが、凄かったです。

登場する間際、劇場内が一瞬暗転して、ぼんやりと照明がついたと思ったら、舞台奥から浮き上がるように登場する金鯱観音!

先頭は菊五郎丈。頭上にはキラキラとまばゆい金の鯱。そして、菊五郎丈の背後から繰り出される無数の黄金の手・・・!!食い入るように見ていたので、腕が何本あったのかは数えておりません(苦笑)。

これら無数の手がお囃子と菊五郎丈の動きに合わせて、時に美しく、時にコミカルに、一糸乱れぬチームプレイを披露します。さすが、菊五郎劇団!

ちなみに、お囃子は時々J-POPも入っていました(笑)。

この場面は菊之助丈@鳴海春吉と尾上右近丈@おみつの美男美女カップルも素敵でしたねぇ~。右近丈は踊りを得意とされているからでしょうか、さりげない動きにも女らしい優しさがあって、立ち居振る舞いがとても綺麗でした。

でも菊ちゃん、もとい春吉さん・・・そんな、自分の意志なくおみつとの婚礼を受け容れちゃっても良いんですかっ。菊ちゃんの、そんな素直で無防備なところが女心をそそります(爆)。

[かわいい] 大詰(尾張) 木曽川の場 本水での立ち廻り

「鯉つかみ」ならぬ「鯱つかみ」の趣向。妖術を身につけた金助によって命を宿し、木曽川で暴れ狂う鯱を倒すために菊之助丈@鳴海春吉が激闘を展開します。

いや、これも大興奮のひとときでした。真っ暗に暗転した照明が再び上がると、本舞台には水をはったプールが出現。周囲は岩肌のようにごつごつとした装飾がほどこされています。

舞台奥からは、どどどどど・・・と劇場に響きわたるほどの水音をたてながら、本水が上から下へ滝となって怒濤の如く流れ落ち、左右からもかなりの勢いで水が放出されています。

その滝の内側から、激しく水に打ち付けられながら金鯱とともに迫り出してくる菊之助丈!鍛え抜かれた真っ白な身体に赤い褌を締めただけの姿で、本水の中で金鯱と激しい立ち廻りです!

激しい水音とともに滝壺に落下し、時に水にたたきつけられながら、豪快に水飛沫を飛び散らせて猛り狂う金鯱と格闘する様子は、本当に激闘です。

最初は真っ白な菊之助丈の身体と目にも鮮やかな褌の赤がインパクト強すぎて「いやんっ(/▽゚\)チラッ」みたいな感じだったのですが、死闘を繰り広げる菊之助丈の姿に、どんどん惹きこまれていきました。

濡れていて足場も悪く、全身ずぶぬれになりながらの立ち廻り。どうか千秋楽まで、お怪我のありませんよう、風邪をひかれませんように・・・。(水中で出番を待っている水衣さん達@金鯱も、本当にお疲れさまです!)



書きそびれてしまいましたが、松緑丈の鮮やかな身のさばきを楽しめる花道での立ち廻りも本当に素敵でした。松緑丈、口跡も爽やかではっきりしているので、科白を聞いているととても気持ちよくなります。

やっぱり歌舞伎は、理屈抜きに楽しむのがいちばんですね!過ぎゆくお正月気分を満喫出来た、晴れやかで楽しい春芝居でした!


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歌舞伎座さよなら公演 芸術祭十月大歌舞伎 夜の部 [歌舞伎]

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2009年10月18日(日) 歌舞伎座 16:30開演

『義経千本桜』

渡海屋・大物浦/吉右衛門、玉三郎、富十郎、段四郎 ほか
吉野山・川連判官館/菊五郎、菊之助、松緑、時蔵 ほか


芸術祭十月大歌舞伎 夜の部を拝見しました。

吉右衛門の知盛に菊五郎の狐忠信という、まさに「平成の菊吉」の競演。立女方として風格充分の玉三郎、円熟の時を迎えた時蔵のまろやかな芸、まさに今が花の盛りと言える菊之助の清廉な女方の芸・・・。

「今、この瞬間にいることの幸せ」をかみしめた、見応えたっぷりの舞台でした。

詳細なレポは、・・・しばらくお待ち下さい・・・m(_ _;)m

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歌舞伎座さよなら公演 五月大歌舞伎千穐樂 夜の部 [歌舞伎]

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2009年5月26日(火) 歌舞伎座 16:30開演

・「恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし) -毛剃(けぞり)-」
・「小猿七之助 御殿殿お滝  夕立」
・「神田ばやし」
・「鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと) -おしどりー」



今更で恐縮ですが、五月大歌舞伎@歌舞伎座の感想をアップしておきます。今回は【あらすじ】を省略しますこと、ご容赦下さい。

・「恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし) -毛剃(けぞり)-」

市川團十郎丈坂田藤十郎丈の共演。團十郎丈の大きさ・荒々しさと藤十郎丈の和事味・やわらかさが見事に融合した舞台でした。どちらの個性も際立ちながら、決して相手の個性を殺すことなく両建てとなっていたのはさすが。

物語の舞台が江戸でも上方でもなく、多くの国の人が行き交う船上、そしてその人々を受け入れる港町・博多であったというのも大きな要素かもしれませんね。

船上のシーンは、舞台一面に敷き詰められた波布で、夜の海の不気味さ、湿った香りを表現しつつ、船は360度回転できる大きな装置。船首で大きくにらみをきかせる團十郎丈@九右衛門の迫力といったら!

対する藤十郎丈は、いかにも上方のええとこのぼんさん、という感じ。出てくるだけでおっとりとなよやかな風情は絶品。悪事を目撃しても抗えず(まぁ、多勢に無勢でしたし…)、博多に流れ着いて、恋人のいる廓を頼って来る場面などは、みずぼらしい身なりになっても気品が失われず、山城屋だからこその舞台、という感じでした。

その廓で恋人・小女郎役として藤十郎丈@宗七を迎え入れるのが、尾上菊之助丈。におい立つような美しさです。それよりも何よりも、しっとりとした色気が備わってきましたね~。廓の2階にある自室で、宗七の髪を櫛ですいてやるシーンでは、一言の科白もないのに、櫛を動かすしぐさ、肩越しに宗七の顔を覗き込むまなざしに、愛情の深さを充分に表現。

何よりも驚いたのが、團十郎丈と藤十郎丈という東西歌舞伎の大看板の間に立つ役どころながら、その存在感がまったく薄くならなかったこと。後半、廓の中で鉢合わせした九右衛門と宗七の合間に入って2人を留める場面があるのですが、その中に入っても、必要以上に控えめになることもなく、それでいて鮮烈な輝きに満ちていました。

菊之助丈…この方は、どこまで輝きを極めていくのでしょうか。



・「小猿七之助 御殿殿お滝  夕立」

「小猿七之助」は、「網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)」の通称。巾着切り(今で言うスリ)の七之助が御殿女中のお熊(御殿での名前は、滝川)を強引に自分のものにしたことによって起こる事件を描いた作品です。

この作品のクライマックスのひとつ、雷鳴のとどろく洲崎(現在の江東区東陽町付近)の土手で、七之助が滝川を我が物にしてしまう場面を取り出し、舞踊仕立てにしたもの。ドラマのワンシーンを再現したような形式ですね。

いや~…ここは、音羽屋・尾上菊五郎丈中村時蔵丈による、男と女の色気炸裂のひと時でした(爆)。めっちゃくちゃ悪い男なのに、なぜか目をそらすことができない・・・。本物のワルですよ、ヤツは!!(笑)

そんな男を色気たっぷりに演じてしまえるのは、天下広しと言えども菊五郎丈だけですっ!!いやもう、久々に、歌舞伎見物中に鼻血が出ました(爆)。今でも、からげた着物の裾からのぞく菊五郎丈のたくましい足を思い出すと、身体が火照ってきます(自爆)。

対する時蔵丈も、目の見張るような美しさ。この方は感情の変化によってかもし出す「女」の部分も変化していくのが見せ所だと思いますが、前半の御殿女中らしい楚々とした雰囲気から一転、七之助もちょっと戸惑うほどになまめかしくなる様子は、もう~、眼福ですっっ(爆)。

いや~・・・歌舞伎座であんなに興奮するとは、思いもよりませんでした(自爆だらけ)。



・「神田ばやし」

実は私、この話をまったく違う風に想像していたんですよね…。

最初、チラシをざっとチェックしたとき、坂東三津五郎丈市川海老蔵丈をはじめ、山崎権十郎丈片岡市蔵丈坂東亀三郎丈亀寿丈など、イキの良い立方衆が配役されていたので、「これは、絶対に下町風情あふれる粋でいなせな話にちげえねぇ!(←すでに江戸っ子)」と、すっかり早合点。

(とろりんさんの、脳内「神田ばやし」)
  • 三津五郎丈も海老蔵丈も、他の立方衆は、火消しか大工。みなさん必要以上にイキが良い。
  • 衣装は立方全員、法被にさらし、そして半股引(はんだこ:短パンの長さくらいの股引)。もちろん、たくましい太ももがチラ見え。きゃ~[黒ハート] (/▽゚\)チラッ
  • 「神田ばやし」だけに、神田祭の御神輿が登場する。お祭特有のの躍動感と熱気炸裂~!!(5月はちょうど、神田祭の季節です)
  • みっちゃん(三津五郎丈)とえび様(海老蔵丈)の間で、おみつ(中村梅枝丈)をめぐって淡い恋の鞘当なんかが展開。結局、どちらもあいまいなまま。
  • 最後は、客席に背を向けて、沈みゆく夕日を見つめるみっちゃん(仁王立ち)とエビ様(片膝つき)で不器用な男同士の会話で終幕。(例:海老「兄貴ィ、終わっちまいましたね…」三津「ああ・・・」みたいなみたいな。きゃぴ [揺れるハート] ←?)

…ぜんっぜん、違う話でした(笑)。つーか、みっちゃんの役名が「家主彦兵衛」となっている時点で「こりゃ、なんか違うな」って気づこうよ、とろりん(笑)がっかり

実は、先に観劇なさっていたはなみずきさまのブログでレポを拝見するまでは、本当にこういう話なのだと思い込んでいました(苦笑)。はなみずきさまのレポを読んで、初めて「あれ、思ってた話と違う・・・?」と思って、あらためてチラシを読み返したのでした(汗)。

なんでもかんでも、思い込みはよくないという、良い教訓ですな。(そうか?)

さて、本来のあらすじ(汗)は、ある念仏講の晩に長屋の者たちが集まっていたところ、講中の掛金がなくなってしまい、家主の彦兵衛(三津五郎丈)は、変なタイミングでそそくさと立ち去った桶屋の留吉(海老蔵)が掛金を盗んだものと思い込んで・・・というお話。

ラストはいわば「結果オーライ」で、掛金の紛失は留吉のせいではないということが判明し、明るい雰囲気で幕となるのですが…。全体的に、これは好みが別れるお話かもしれませんね。

良い意味でも悪い意味でも「歌舞伎らしくない」お話ですから、「こういう作品を歌舞伎でも上演するんだ~」という意見もあるでしょうし、「う~ん、歌舞伎と言うには物足りない・・・」という感想をお持ちになる方もいらっしゃるかな、と。

個人的には、三津五郎丈がおじいちゃんという配役が判明した時点で、ちょっとテンションが下がっていたのは事実です(苦笑)。

物語自体はもっともっと練り上げる必要があるのでは…?と思いつつも、江戸の生活や風俗がふんだんに取り入れられているので、それはすごく興味深かったですね。長屋の間取りとか、昔の人の生活とか。

「(講中の掛金がだいぶ貯まったから)長屋の連中でどこか遊山に出かけよう」「そりゃぁ良いねぇ」みたいな会話もあり、昔から、町内会の旅行みたいなのがあったんだなぁ~と思って感心しました。

終幕は、やはり神田祭の季節。「神田ばやし」に乗って、失われた掛金の行方がわかったところで大団円。

この場面でも、江戸の長屋の日常的な生活が何気ない会話や人物の動きの中で巧みに表現されていて、面白かったです。梅枝丈@おみつが、汚れてしまった留吉の浴衣を洗って干す場面は、まさに江戸時代の長屋の日常生活のひとコマを見ているようでした。



・「鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと) -おしどりー」


かつて「平成の三之助」と呼ばれた、海老蔵丈(新之助)尾上松緑丈(辰之助)菊之助丈の三名によるファンタジックで美しい舞踊。

いやいや、幸せなひと幕でしたよ~[ぴかぴか(新しい)] 舞台中央のセリから、ポーズを決めた三人がせり上がってきた時の劇場中のどよめきと言ったら、すごいものでした。美しくて若々しい三人の花形役者が織り成す舞踊に、客席中うっとり。

この舞踊は前半と後半に見せ場が分かれていて、前半は遊女喜瀬川(菊之助丈)の行司で河津三郎(海老蔵丈)と股野五郎(松緑丈)が相撲をとる様子を見せ、後半では股野によって殺されたオスの鴛鴦の精(海老蔵丈)とメスの鴛鴦の精(菊之助丈)が股野を苦しませる、という展開になります。

「毛剃」に続いて太夫の装束で登場する菊之助丈は、ここでも清澄な美しさで場を引っ張ります。想い人に河野に対するしぐさと、嫌っている股野に対するしぐさが露骨に違うのですが(苦笑)、まったく下品にならず、愛嬌すら感じさせたのはさすがです。

場面変わって鴛鴦の精となって登場してからは、理不尽にも引き裂かれた夫を思う様子が、羽ばたくような振りの合間に見え隠れして、前場とは違った風情を見せました。

海老蔵上は美丈夫の姿がすっきりと麗しく、松緑丈(三人がそろうと、いつも敵役っぽくなってしまうのが気の毒ですが・・・)は力強く安定感のある踊り、そしてコミカルなしぐさで場を盛り上げました。



いや~、歌舞伎座で歌舞伎を見るのは、実は今年初めてです(汗)。(前回は、俳優祭で、本興行ではなかったので…)

あらためて、歌舞伎ってやっぱり良いなぁ、と思いました。

宝塚歌劇ですと、最初から最後まで意味不明に興奮しまくっているのですが(笑)、歌舞伎はしみじみと「あ~、アタシ、日本人だなぁ~」という気分に浸りながら、役者さんのカッコ良さや美しさをゆっくり堪能できます。(「小猿七之助 夕立」は、歌劇並みにアドレナリン噴出しっぱなしでしたが>笑)

う~ん、心から幸せな夜でした[ぴかぴか(新しい)]

歌舞伎座



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第35回俳優祭 『灰被姫 シンデレラ』 その弐 [歌舞伎]

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歌舞伎座の前にはためく「TOKYO 2016」のフラッグ。オリンピックが東京に来る(かも知れない)頃には、新しい歌舞伎座の歴史がすでに前進中ですね。



さて、役者さん方のサービス精神てんこ盛りの『灰被姫 シンデレラ』。前回までのレポは、コチラにてお楽しみいただけます。

いよいよ歌舞伎座開場式!!ロビーでは燕尾服が愛らしい、違う、凛々しい殿方(魁春丈、時蔵丈)と、ローブデコルテ姿もゴツい、違う、美しいご婦人方(彦三郎丈、段四郎丈)が、ぎこちない動きでダンスを踊っていらっしゃいます(微笑)。痴話喧嘩も、ド迫力のご婦人方を優しい笑顔でなだめる殿方。…萌…(爆)。魁春丈、おヒゲがラブリー[揺れるハート]

史上最強の司会陣、登場!!翫雀丈@美濃紋太郎氏と、亀治郎丈@白柳徹子さんです!(白柳て>笑)。

いや、このお二人、本当に芸達者!とりわけ亀ちゃん、動きから口調から容姿からちょっとぶっとびな衣裳から、全てにおいて本物そっくり!!

特に、ゲストのところへ移動する時の歩き方と来たら、本物かとみまがうばかり。式次第を読み上げている美濃氏にかぶせるかのように、「ほんとにねーおめでたいことですねーいやーほんとにすばらしいです」(早口)でつぶやき続けているのがたまりません(笑)。

隣で早口で話し続ける白柳さんに惑わされることなく、しっかりと式を進行させる翫雀丈@美濃さんもまた、スゴイです(笑)。



いよいよ来賓の登場!田之助丈&波之久里子さん@伊藤博文夫妻仁左衛門丈@グラント将軍團十郎丈@妻キャサリンなど、ズラ~リ!海老蔵丈@北島ノ宮殿下には、ひときわ大きな拍手が。

さて、スターが全員そろったところで、出席者の挨拶。歌六丈@福地源一郎が、歌舞伎座が完成することができたのは、千葉勝五郎さんのおかげです、と菊之助丈@千葉さんを壇上へ。

すると菊ちゃん、突如マイクに向かって、「吟じまぁぁ~すっっ!!」

…えっ、菊ちゃんが?菊ちゃんが!?ま、まさかっ。

「分離しているドレッシングをぉ~っ、彼女がふりふりしていたらあ~あぁ~あ~、なんだかイケそうな気がするぅーーー っっ!!!」

エロ詩吟、やっちゃったか!!やっちゃったか、菊ちゃん!!!何をやっても何でそんなに爽やかなんだ菊ちゃん!!(笑)

そんな菊ちゃん一世一代(のはず)のエロ詩吟は、翫雀丈@美濃さんに「ないと思います」と、バッサリ斬られて終了でしたが(苦笑)、菊ちゃんの意外な(?)芸の披露に、海老蔵丈@北島ノ宮殿下はご満悦の表情。



続いては、続々と来賓の挨拶。田之助丈はおっとりと上品なご挨拶。仁左衛門丈は「Yes,We Can!」と、一言で終了(笑)。麗しいドレス姿の團十郎丈@妻キャサリンは、何やらフランス語でご挨拶(後ろで海老蔵丈がかなりウケていました)。と思ったら、最後は「ちぃえええ~んじ!!(change)」で締めくくり(笑)。そんな異国カップルに観客は大喜び!!大向こうも怒濤の如くかかります。

そして乾杯は、北島ノ宮殿下。おもむろにグラスをとった殿下、突如、上着もシャツも勢いよく脱ぎ捨て、「○になって何が悪い!」とご挨拶。いや~~、これには吃驚。翫雀丈@美濃さんも、「まさかこれが聞けるとは」と一言(苦笑)。



「ご来賓の砂場さま~」と白柳さんがアナウンスすると、登場したのは扇雀丈@砂場の出前持ち。「砂場」は、実在するおそば屋さんです。そこへ七之助丈@銀の搭店員勘太郎丈@喫茶YOU店員鶴松丈@喫茶YOU女店員彌十郎@味助店員(登場した瞬間、ド派手に転倒。だ、大丈夫ですか!?)、亀蔵丈@ナイルレストラン店員など、歌舞伎座周辺に存在する人気レストランの店員さんが続々と登場。なんと、本物のナイルレストランの店長さんまで~!

まだ成長期の鶴松丈@喫茶YOU女店員は、小柄でボーイッシュな女の子、という感じで可愛い。「君、誰かに似てるねぇ、えーと、誰だっけ…」とたずねられた鶴松くん、いきなり左手をパンチングポーズを突き出し、満面の笑顔で、

「愛でぇすっっ[黒ハート][黒ハート][黒ハート]

なるほど~!!!(笑)言われてみたら鶴松くん、前田愛ちゃんに似てるわ~~~~!!!左手にはもちろん、婚約指輪とおぼしきリングがはめられていて、客席は大ウケ。

思わぬところで未来の花嫁に遭遇した勘太郎丈、思わず愛ちゃん、じゃなくて鶴松くんの後頭部を思いっきり、「ベシッ」と音がするぐらい殴っていました(笑)。でも、大きな拍手を受けて、客席に向かって深々とお辞儀。末永くお幸せに!



「歌舞伎座は工事に入ってしまいますが、変わらぬ御贔屓をよろしく~」とご挨拶して、店員連中は退場~。代わって華やかに登場したのは、新橋芸者衆一行と、それらを束ねる雀右衛門丈@雀耀楼女将、お京さんです!

御年89歳になられる雀右衛門丈。山崎咲十郎丈のひく人力車に乗って登場し、その上から客席に向かって一言挨拶を述べられる、というほんの少しの登場でしたが、キリッと着こなした着物が本当に素敵でした。

「本日はまことにおめでとうございます、おめでとうございます…」と繰り返されるお言葉に、幼い頃から立ち続けてきた歌舞伎座の舞台に、どれほどの想いが詰まっているのかと考えると、思わず涙が出てしまいました。京屋さんの元気なお姿、拝見できて幸せでした。



雀耀楼の半玉さんや芸妓さんの舞を楽しんで、一行が退場した後、水谷八重子さんによる場内アナウンスが入ります。そこで(やっと)登場するのが、硝子の扇が2枚。

この扇の持ち主を争って、舞競べが開催されます。来賓の方達にはホワイトボードが配布され、にわかに審査員に。

張り切って先陣を切ったのは、福助丈@銀子。○島美容室の「SAKURA-ハルヲウタワネバダ-」に乗って、激しいダンスを披露。あー、このゴテゴテな拵えは、この為だったんですね~。気が付いたら、巳之助くんと新悟くんのバックダンサーも従えています(笑)。2人も勿論、ひざ丈着物ドレスにすんごい色のカツラ。

踊り終わったら、採点開始~。久里子さん@伊藤博文夫人の採点は、厳しくも「1」。理由を問われて「つまんない」とバッサリ(笑)。

続いては、橋之助丈。…なのですが、美濃氏によって、ものすごい早めに切り上げられていました。当の橋之助丈御本人も思わずズッコケる始末(笑)。

そこへ、突然、「[るんるん]いざやカブかん かぶいておっどれー[るんるん]」と、かぶきたいそう「いざやカブかん!」の軽快なメロディーに乗って颯爽と登場したのが、染五郎丈@薮空棒之助。美濃さんに、「あんた、分かりやす過ぎるんだよっ!」と軽くおしかりを受けていました(笑)。

ここで染五郎丈が、舞をひとさし披露することに。いざ舞わんとしたその時、イケメンには目がない亀治郎丈@白柳さんが…

「薮空棒之助さん、ぜーったいに扇を落としませんよ、ぜーったいに落としません、ぜーーーーったいに落としませんからっっっ!!

…後がなくなった薮空棒之助さん、軽くたじろぎ(笑)。亀ちゃん、どんだけプレッシャーかけるんですか(苦笑)。

染五郎丈のブログによりますと、 実際に2枚の扇を使って踊る「加賀屋狂乱」の一場面をなさったそうなのですが、扇を投げて受け止めては、「キメッ(流し目)[ぴかぴか(新しい)]」、振りが決まっては「キメッ(流し目)[ぴかぴか(新しい)]」、とにかく「キメッ(流し目)[ぴかぴか(新しい)]」ポーズの多いこと多いこと(笑)。観客も大喜びでしたけれどもね。

やぶからぼうに登場した染ちゃん、舞終わると満足げに、これまたやぶからぼうに、そして爽やかに去っていきました~。

なかなか落とし主が見つからない中、いつの間にか歌舞伎座にやって来ていた左團次丈@魔法使い(勿論白いドレス)が、玉三郎丈@お国の手を引いて登場します。美濃氏にうながされて、恥ずかしがりながらもやおら余裕たっぷりに踊り出す玉サマ☆

玉三郎丈は、たぶん「鏡獅子」の二枚扇の部分を披露。その動きの美しさ、ドレス姿でその踊りを見られる面白さも手伝って、客席はため息をのみこんだように、玉三郎丈の動きに引き込まれていました。途中から差し金が入って四枚扇になるのですが、これも玉三郎丈の動きにあっていて、本当にお見事!!

言うまでもなく、玉三郎丈の踊りに客席のみならず舞台も拍手喝采!いや~、本当に素敵な踊りでした。

また、亀治郎丈と菊之助丈が、この時ばかりはモノマネもエロ詩吟も忘れて、玉三郎丈の踊りを食い入るように見つめていたのも印象的でした。立女方の背中を見つめて学ぼうとする若手女方の眼差しに戻っていたのが、何だか嬉しかったですね。



この後は、突如話がこじつけたようになるのですが、あまりの見事な踊りに居合わせた人々はお国こそ扇の持ち主に相応しいと言いますが、勘三郎丈@金子が、この娘は「灰被りだ」と言い放ちます。

そこでお国が「いつもお国とは呼んでくれない」と何度か言っているうち、左團次丈が本当の正体を顕し、歌舞伎座の守り神の使いに(衣裳はドレスのまま)。そしてお国に「お前こそ出雲のお国の生まれ変わりだ」と教え、お国を歌舞伎座の守り神のもとへと連れて行きます。…え!?ちょっとしたダジャレ!?

ここで盆セリが回り、舞台は歌舞伎座正面玄関へ。立てられている看板が、ちゃんと「第35回俳優祭」となっているのがポイント。

そこには、歌舞伎座の守り神として、芝翫丈(八重垣姫)、を中心に、富十郎丈(親獅子の精)、藤十郎丈(「河庄」治兵衛かな?)、幸四郎丈(松王丸)、吉右衛門丈(「毛谷村」六助)と、通常の興行と同じ拵えでたたずんでいます。

ここでは、少ししんみりとした展開になり、歌舞伎を守っていくのは役者の芸、そしてお客様の温かい声援が大事、みんなで力を合わせて新しい歌舞伎座も守っていかなくてはならない、と熱いメッセージが客席へ伝えられます。



ここでお芝居はひと段落。この後、お芝居の出演者と三津五郎丈や梅玉丈、お芝居には出演されていない役者さん方も勢揃いして、あらためてご挨拶。

芝翫丈の挨拶の中で「私どもにとりましては、我が家のような歌舞伎座で…(中略)思い出を残したいとつくりあげたものでございます」とおっしゃって、はっと胸を突かれました。人力車に乗って立ち去っていく雀右衛門丈の横顔がよみがえり、現歌舞伎座が役目を終えるということの意味の重さを、あらためて痛感しました。

最後は、役者さん方が声をそろえて、「百年、千年、万年と歌舞伎座を守っていきましょう!」と、新しい歌舞伎座、そして歌舞伎の未来への願いを込めたメッセージで締めくくられました。


ものすごくミーハーしまくった「俳優祭」でしたが(苦笑)、同時に現・歌舞伎座がなくなってしまうという事実を、あらためて実感した時間でもありました。

あの空間、あの空気、あの熱気。あの歌舞伎座だからこそ、あの歌舞伎座でないと出せない「幸福感」って、やっぱりあるものなんですよね。

夢心地に包まれながら、ちょっと寂しさにもふれて、でもそれを乗り越えたところにある、新しい歌舞伎座への期待感もあって。やっぱり歌舞伎、大好きです。



4回にわたってお届けした「第35回俳優祭」レポ、いかがでしたでしょうか?魂の叫びのままに書きなぐってみたら、ありえない量になってしまいました(汗)。楽しんでお読みいただけたら幸いです。

長文をお読みいただき、ありがとうございました!


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